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調査リリース

2020/06/29

「ジョブ型雇用」に関する最新レポート
新型コロナをきっかけに加速する「ジョブ型雇用」
高生産性の実現にはKPIによる業務の細分化が必須

人事評価サービスを提供する株式会社あしたのチーム(本社:東京都中央区、代表取締役社長:髙橋恭介、以下あしたのチーム)は、新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)拡大に伴うテレワークの導入により露呈した、各企業の課題や問題点、今後すべき対策などについて言及した「ジョブ型雇用」に関するレポートを発表いたします。

欧米式の「ジョブ型雇用」注目の背景には何があり、なぜ今まで注目が少なかったのか、そして今後は浸透していくのか。そのうえで、ウィズ/アフターコロナの働き方はどうなっていくのかなどを本レポートで発表いたします。

 

■仕事を人に紐づける欧米のジョブ型雇用に対し人に仕事を紐づける日本のメンバーシップ型雇用

 
「ジョブ型雇用」が採用されてこなかった理由のひとつは、日本は会社の一員であることを重視する「メンバーシップ型雇用」の社会であるからです。これは「ジョブ型雇用」の対極ともいえ、背景には日本の働き方を象徴とする、終身雇用を前提とした年功賃金制度があります。

 日本型雇用のさらなる特徴は、「無制限・無制約雇用」です。ここには3つの無制限・無制約があります。

まず、1つめは時間です。残業や法定労働時間外の労働に対して制限・制約がなく、休日に上司との付き合いゴルフや、飲み会に同席するという時間も含まれます。

2つめは場所です。転勤に代表されるように、家庭の事情が考慮されずに、会社の指示で住む場所が変わることがあります。グローバル企業であれば海外転勤もありえます。

3つめは仕事です。部署異動があり、しかも異動の3日前に通達があるということも珍しくありません。日本ではこの3つの「無制限・無制約雇用」が長年行き渡っており、従業員もそれに従ってきました。

 背景には「ジョブ型雇用」の観点にある、専門性を磨くというスペシャリストの考え方がないことが挙げられます。日本は、正社員であればどの部署の仕事もできるべきであり、全員で協力して仕事をすることが効率化を図れるというゼネラリストの考え方が主流にあります。

そのため、新卒一括採用にて新卒をまず採用し、スキルがゼロのところから教育する文化が存在します。日本は終身雇用を前提とした年功給、そしてそこから導かれる新卒一括採用を長年行ってきました。これらは典型的な「メンバーシップ型雇用」であり、「無制限・無制約雇用」との表と裏の関係になっています。

 そのような中、ITの進化でエンジニアを中心に分業制が広がり、一人で仕事ができる環境と一人完結型の仕事への認知が広がっていきました。昨今のテレワークによって、この認知は「一人完結型PCワーク」へと浸透していくと推測されます。

現代はますます専門性が求められる時代です。WEB制作が分業制であるように、営業でもセクションを細分化すればインサイドセールスとフィールドセールスなど分かれています。業務が成熟化し、かつ事業規模が大きくなればなるほど分業制のメリットが出るため、今後日本でも「一人完結型PCワーク」が拡大するとともに「ジョブ型雇用」へとなっていくと考えられます。

 ドイツを例に挙げて考えてみます。なぜ、ドイツでは社員が2カ月の長期休暇をとれるかというと、仕事を人に紐づけることにあります。仕事を人に紐づけるというのは「ジョブ型雇用」の特徴でもあり、一方で日本の「メンバーシップ型雇用」は人に仕事を紐づけます。「メンバーシップ型雇用」の場合、一人一人がゼネラリストとなり、基本的に全ての業務ができなければなりません。従って、優秀な人に多くの業務が任され、負荷が集中することになります。

 一方、雇用契約書ベースであり、目標管理と報酬制度の中で「私はこれをやる人」という目標設定を明確に定めているのが、ドイツをはじめとする生産性の高い「ジョブ型雇用」の国々です。これは、専門を任せることで、ストロングポイントをもっと伸ばしていこうという考え方でもあります。

業務を細分化し、ジョブディスクリプションに落とし込むことで、どのような能力を持つ人が必要かということが明確になります。その能力にマッチした人を採用し、合意を取り、仕事に取り組むほうがより生産性を上げられるという考え方です。これが「ジョブ型雇用」のあり方です。

 

■働き方改革の流れの中で、コロナがジョブ型のきっかけに

 
 「ジョブ型雇用」への動きは、去年の末に経団連からも提唱されはじめました。そもそもなぜ日本は長時間労働にもかかわらず生産性が低いのかという課題から、今の時代に終身雇用と年功型賃金制度は難しいというテーマ、新卒一括採用をなぜやってきたのかという議論まで、「ジョブ型雇用」へ大きく変革しようという流れがうまれていました。これらを日立製作所の中西宏明会長が経団連の中で提唱し、多くの大企業が人事制度を変え、働き方改革を進めています。

 もともと、同一労働同一賃金や賃金格差の話にまで踏み込んで、働き方改革関連法案の議題が出始めたのが4年前、成立したのが2年前であり、施行は去年行われました。この大きな時間軸の中に突然新型コロナウイルスが発生しました。コロナ禍によって突然「ジョブ型雇用」のムーブメントが起きたと見られがちですが、そうではなく、そもそもの課題と、長い時間をかけた議論があり、これらを踏まえた最優先課題といわれていた法案が働き方改革関連法となっています。

 繰り返しになりますが、あくまでも、コロナ禍によるテレワークはひとつのきっかけにすぎません。しかしながらこのきっかけは大きなインパクトを与えました。オフィスワーカーの多くが体験し、メリットを知ったことに加え、横並びの考え方をもつ日本企業にとって、周りの企業がテレワークを導入するならば、他の企業も継続して導入していくことが予想されます。

 

■ジョブ型にはKPI設定=業務の細分化が欠かせない

 
 「ジョブ型雇用」には、業務の細分化が欠かせません。このためには通称KGIと言われるKey Goal Indicator、重要目標達成指標を最終目標とするKPI(Key Performance Indicator)、つまり重要業績評価指標の設定が必要です。目標を達成するために「そのために・そのために」と要素分解し、地道に利益を上げて確保して積み重ねた先にKGIがあります。

 これはBtoCやBtoBなど、ビジネスモデルは問いません。たとえば最終目標のKGIを売り上げとすると、その下層となるKPIは商談件数×成約率×単価となります。この場合、まずは商談件数を目的とし、そのためには新規を開拓しよう、セミナーを打とう、タイアップしよう、広告を強化しよう、となり、行動が決まります。このように、業務を細分化する力がなければ、ジョブ型は成立しません。経営者にはより戦術の精度が求められるようになります。

 KPIに関して部門はあまり関係なく、例えばバックオフィスである総務でも、利益に対して要素分解し、日々の業務に対して目標設定が可能です。たとえばコピー機のカウンター料金を見える化し、月1回の会議の場で料金を発表するといったことを行います。料金を下げることが目標となり、「達成するためにはどうするか」という発想で社員のコピー使用に対する意識改革を、啓蒙活動などによって行っていくというわけです。

 

 「そのために・そのために」というアクションプランが重要になります。テレワークが理にかない、会社の最終的な目標が部の目標に練り込まれ、部の目標が自分たちのチームの目標に練り込まれ、チームの目標を達成するために一人ひとりの個人の目標がつながっていきます。すなわち、この階層が「そのために・そのために」という階層と同じということです。目の前の目標がはっきり見えるからこそ、自発的に目標に対する行動も生まれてきます。

 

■スペシャリスト礼賛時代が到来し、中途採用が活性化

 
 2020年も下半期に突入するなか、これからどうなるか考えてみます。まず、特に大企業においては新卒神話がゆるやかに崩れ、その分中途採用が重要視されるようになるでしょう。スペシャリスト人材にスポットが当たり、特にヘッドハンティングやリサーチ型の中途採用市場が活性化されるでしょう。

 評価制度では、KPIが重視されていきます。経営者や人事がどれだけやりきれるかということがポイントですが、自分たちの会社の強みはどこか、どこを伸ばしていけば利益が出るかという議論を堅苦しくなく、ゲーム感覚で捉えられれば、進めやすいのではないでしょうか。人事制度は硬くなりがちですが、パワーバランスをどう傾けるか、パズルゲームのようなもので考えることができます。

 一方で、「ジョブ型雇用」に関して、その概要や成果のプロセスが紹介されても、評価をどうすればよいかという先の議論がされていないように見受けられます。プロセスはKPIのブレイクダウンのことで、自分たちで設定した目標や評価項目を人事評価にきちんと反映させれば問題はありません

 大事なのは「そのために・そのために」というブレイクダウンが進み、日々の仕事の数値目標が設定されることです。そうすれば自ずと、そのためには自分がどう行動すればいいのかというプロセスの目標を作り上げることができます。会社規模でいえば、利益目標は億単位になるかもしれませんが、各セクションで細分化していけば、バックオフィスの啓蒙活動によって、たとえば光熱費を月2万円削減することで、これも会社の利益貢献となるのです。利益に関わるのは、決してフロントに携わる者だけではありません。

 億単位の利益と比べれば、数万円は微々たるパーセンテージかもしれませんが、利益に対する数値目標を設定させ、達成するためのプロセスが重要です。そしてこの設定は、自分たちの行動によって達成できる範囲の数値目標であることが大前提です。実現可能であってはじめて、「そのために」という行動に移す思考が生まれます。これからは「ジョブ型雇用」とともに、KPIを重視した評価制度と中途採用の活性化がトレンドとなるでしょう。

 

■中小企業は「セルフジョブ」が今後のカギ!

 
これまで述べたことは、大企業を中心として動きつつあります。それでは中小企業はどのような点を抑えるべきでしょうか。

中小企業がジョブ型を実現するカギは個別目標設定にあると考えます。大企業のように分業制を行うことができず、マルチタスクでの就業が当たり前の中小企業には、「セルフジョブ」「セルフKPI 」「セルフコンピテンシーということが必要になります。これらの流れは、もちろん大企業にも起こるでしょう。

 個別目標設定は無理ではありません。むしろプロフェッショナルの世界では当たり前に行われています。目標設定とそのプロセスを可視化するOKR(Objectives and Key Results)手法を人事評価へ応用すると上手くいくと考えています。あしたのチームは、セルフジョブ実現をサポートします。

 

■株式会社あしたのチーム会社概要
代表者  :代表取締役社長 髙橋 恭介( https://www.ashita-team.com/ )
本社所在地:〒104-0061 東京都中央区銀座6-10-1 GINZA SIX11F
事業内容 :・報酬連動型人財育成プログラム「ゼッタイ!評価®」
      ・人事評価クラウド「あしたのクラウド™HR」
      ・社長コーチングプログラム「あしたのコーチ™」
資本金  :5億9,010万円(資本準備金含む)
設立   :2008年9月25日