「しっかり管理しているつもりでも社員がなかなか成長しない」そんな人事部の悩みは、もしかすると目標管理制度に課題があるかもしれません。
MBBは、社員のモチベーションを高めながら、組織としても成長できるマネジメント方法として最近注目を集めています。今回は、MBBが必要とされる背景から具体的な導入方法まで解説していきます。
MBBとは
MBBとは、Management by Beliefの略で「思いのマネジメント」と訳されるマネジメント手法の一つです。
ビジネスにおいてMBBは、組織をより良くし目標管理制度を補完するためのマネジメント方法とされています。MBBの特徴は、組織一人ひとりの持つ「思い」を大切にしている点です。
MBBは、個人・組織が持つ思いや価値観を共有にした上で、それらを実現するための目標設定を指します。それぞれの持つ思いを尊重することで、生き生きとやりがいを持って働きながらも、高いパフォーマンスを発揮できるのです。
MBBは一橋大学名誉教授の野中郁次郎氏を中心に、同大学院教授の一條和生氏とともに提唱されました。同氏らは、『MBB:「思い」のマネジメント』というMBBに関する書籍も出版しています。
MBBの3つの特徴
MBBへの理解を深めるために、MBBの3つの特徴を見てみましょう。
1. 個人と組織の価値観がリンクする
一番の特徴としては、個人の大切にしている価値観が組織とリンクするという点です。MBBは個人の価値観から生まれる思いを、仕事に反映させることを目的としたマネジメント手法です。
2. ルールよりも思いによる行動起点
特に会社での人間の行動起点は「ルールを守るため」というものが強くなります。例えば8時間の勤務時間だから、勤務中は私語厳禁だから、といったルールを守るために行動を選択することが多くなります。
しかし、ルールを起点とした行動はどうしても保守的なもの。MBBは、そういったルールではなく、「やりたい」という思いを起点にしている特徴があります。
3. 会社への帰属意識が高まる
MBBには、会社への帰属意識が高まりやすいという特徴があります。
個人的にやりたいことを実現できる会社に、人は愛着や長く働きたいという動機を持ちやすいです。
MBBを活用することで、テレワークなどにより低下しやすい帰属意識を高める効果が期待できるでしょう。
MBBが必要とされる目標管理制度MBOとは?
MBBは、MBOによるマネジメントに疲弊した企業に導入され始めています。
MBOとは、Management By Objectiveの略で「目標によるマネジメント」と訳されます。アメリカの経営学者ピーター・F・ドラッガーによって提唱された目標管理制度です。1990年代~2000年代にかけ、多くの日本企業によって導入されました。
MBOは個人に主体性を持たせることを特徴としており、社員自ら目標を設定し、進捗管理も主体的に行います。
本来、MBOを実行に移していくためには上司と部下の密なコミュニケーションが欠かせません。
しかし、コミュニケーション不足に陥った企業では、MBOは主体的に行動する機能が失われ、トップダウン式の「ノルマ管理ツール」と化してしまったのです。
十分な説明のないまま目標数値が与えられる、達成率のみで評価されるなど、MBOの運用が形式化しかえって悪影響を及ぼす企業が増えました。そこで注目され始めたのが、MBBです。
MBOとMBBを組み合わせた方がいい理由
MBOによるマネジメントに疲弊した企業が、MBBを加えることで組織力の向上に繋がったというケースは年々増えてきています。
ただ目標を細かく設定するだけではなく、その背景にある社員ひとりひとりの夢や思いを尊重することで、社員は自己成長のために仕事に取り組むようになるからです。組織と社員の双方にとって最適なアウトプットをすることができます。
単に目標を数値的に管理するだけでは社員のモチベーションは上がりませんし、思いを大切にするだけでは成果を出すことはできません。
MBOとMBBそれぞれの強みを生かすことで、組織にとっても社員にとっても最良の結果を生み出すことができるのです。
MBBの具体的な3つの実施方法
では、さっそくMBBの実践方法を見ていきましょう。ここでは具体的に、以下3つの方法を紹介します。
- キャリア上に目的意識を持ち、フレキシブルさは残しておく
- ワークとライフをインテグレートさせる
- シャドーワークを認める
キャリア上に目的意識を持ち、フレキシブルさは残しておく
日々の仕事にやりがいや楽しさを持つためには、目的意識を持つことが大切です。今目の前の業務が自分自身の夢や目標にどう繋がるのかを日々意識することで、自分自身の仕事の意味を見出すことができます。
そして、自主性を保つためにフレキシブルさは残しておきましょう。ガッチリとした行動計画を固めてしまうのではなく、適宜軌道修正できる柔軟性を残しておくことが重要です。
業務を行う上で「もっとこうした方が良い」「この計画は非効率だ」など自分自身で考えながらより良いものにブラッシュアップすることで、自主性や仕事へのモチベーションを高めることができます。
ワークとライフをインテグレートさせる
仕事の上で自己実現をするためには、ワークとライフをインテグレート(統合・集約 )させることが重要です。
昨今「ワークライフバランス」という言葉が叫ばれていますが、仕事か私生活を完全に分けるのではなく、双方を融合させることでより良いアウトプットに繋がります。
自分の夢や目標は仕事と私生活で完全に切り離すことはできないでしょう。例えば、「信頼される人になる」「こんなサービスを世の中に提供したい」といった思いは、ワークとライフが一体になってこそ達成できます。
もちろん、時間的・意識的な住み分けは必要です。どちらかに偏ることがないよう、バランスを取りながらも両方の要素の繋がりを意識して改革に取り組むようにしましょう。
シャドーワークを認める
最後に、社員のシャドーワークを認めることも大切です。シャドーワークとは、影の仕事を訳される報酬の発生しない業務のことです。
ここで指すシャドーワークとは、それぞれの思いから自発的に取り組む業務のことです。報酬が発生しない業務は、無駄ととらわれがちですが、MBBにおいては新たなイノベーションを起こすためにシャドーワークは効果的とされています。
また自発的に考えさせることは、社員の成長にも繋がります。それぞれの行動を自分たちで律することができれば、細かな指標やルールは必要ありません。ルールよりも、思いを大切にして柔軟に行動できる雰囲気作りを行いましょう。
MBBの導入手順
実際に、MBBを目標管理制度に導入する際の手順を紹介します。
STEP1. 目標の設定
まず、MBBを目標管理制度に導入する際にポイントとなるのが、目標設定の際に個人の目標や価値観をリンクさせることです。
企業から求められるからという理由で、目標を立てるのではなく、まず自分は人生の中で何を果たしたいか、どういう自分でありたいかと言う所に立ち戻ります。
「誰かの役に立ちたい」「自分にしかできないことを表現したい」「優しい人間でありたい」など漠然としたことでもOKです。
そういった個人の人生における目標と、仕事上の目標を一部分でもリンクさせて目標を立てます。
STEP2. フレームワークを活用
次に、漠然としている目標を細分化して、達成するために必要なことを洗い出していきましょう。
より具体的にしていく際に、マインドマップやマンダラチャートといったフレームワークを活用することがおすすめ。
細分化する中で、自分の思いに気付くこともありますし、具体化していく中で実際にどう行動すればいいかが見えてきます。
そもそも、個人の目標が出てこないという人には、SWOT分析を活用するとよいでしょう。
STEP3. PDCAの実施
MBBが効果を発揮しやすい理由は、個人の価値観に紐づいているため、社員が日常的にポジティブに実行しやすいから。
日頃の行動に落とし込めているかが重要です。
立てた目標や具体的な行動指針を定期的に確認して、意識的に日頃の業務にあたるよう指導します。
うまくMBBが機能していないと感じた場合には、修正することも大切です。
STEP4. MBBが親しまれやすい制度の導入
MBBが機能しやすいよう、親しまれやすい制度を導入することも重要。
MBBを仕事に反映した人向けに表彰を設けるなど、ユニークな制度で企業文化としてMBBを取り入れていくとよいでしょう。
また、MBBを踏まえた仕事の報告制度や、人事評価制度の策定も効果的。
思いは形では見えないだけに、制度を充実させることも大切でしょう。
MBB以外に目標管理制度を機能させるポイント
MBBを活用した目標管理制度(MBO)を導入する場合、下記のポイントも含めることでより効果を発揮できます。今回は、以下の3つのポイントについて解決していきましょう。
- 上司とのコミュニケーションツールであることを忘れない
- 行動評価できる人事評価制度の整備する
- 目標シートをクラウド上で管理し、上司と部下のフィードバックを円滑にする
上司とのコミュニケーションツールであることを忘れない
MBOによる目標設定は、上司とのコミュニケーションツールの一つに過ぎません。
目標設定は、指標や行動を見える化するためにシートなどで管理する場合が多いですが、シートが報告ツールになっている企業も少なくありません。
シートに記載されている数値や結果だけを追うのではなく、コミュニケーションも大切にしましょう。
特に、途中経過の確認や振り返りは重要です。それまでのプロセスが目標に対して良かったのか悪かったのか客観的に考えることで、より良いものにブラッシュアップできるからです。
例えば、目標数値に達成していた場合どのような工夫をしたのか、未達の場合の反省点など、定期的に振り返りを行います。適宜、上司はアドバイスをしながら一緒に目標の軌道修正を行うことで、PDCAを早いペースで回すことができます。
行動評価できる人事評価制度の整備をする
目標設定シートを作成する際には、成果目標だけではなく行動目標も追加しましょう。ただ数値的な目標を追うだけではなく、プロセスも大切にすることで再現性のある行動ができます。
例えば、「受注金額◯◯円、受注◯◯件」といった数値目標を立てていた際に「特に目標達成の為の行動はしていなかったが、たまたま大型案件が入った」といったケースを想定します。
もちろん、その場合でも数値目標は達成ですので評価はされるべきです。しかし、プロセスが不明瞭なため再現性がありません。
どのようなプロセスを踏んでその結果を導いたのかはより重要です。「受注金額◯◯円、受注◯◯件を達成する。その為に〇〇(必要な具体的な行動)をする」といった風にプロセスの目標も設定し、その達成度も見ていきましょう。
また、目標シートにもプロセスを確認できる欄やコメント欄を設けるようにしましょう。達成までの道のりが明確化され、振り返りがしやすくなります。
目標シートをクラウド上で管理し、上司と部下のフィードバックを円滑にする
働き方改革やパンデミック対策によって、テレワークが加速する昨今。リモートでも円滑なコミュニケーションをとるために目標シートはクラウド上で管理することをおすすめします。
「あしたのクラウド™HR」は、目標設定シートをクラウド上で管理可能。そのため、ボタン一つで社員の目標シートを確認できます。クラウド上でコミュニケーションを密にとることで高速にPDCAを回すことも可能です。
また、AIが目標設定の課題点を指摘してくれるため、組織の人財育成やマネジメント力向上にも繋がります。他にも、全社員の評価をグラフで可視化できる機能で公正で適切な評価ができます。
「どんなツールか詳しく知りたい」という方はサービスガイドが公開されていますので、ぜひダウンロードしてみてください。
MBBや人事クラウドシステムを活用して目標管理制度を改善しよう
組織をより良くするためには、数値的な目標だけではなく「思い」も大切です。
MBBを導入することで、組織の一人ひとりの思いに共感し合え、生き生きとモチベーション高く働くことができます。目標設定においては、上司と部下とのコミュニケーションも欠かせません。
「あしたのクラウド™HR」のような人事クラウドシステムを活用することで、たとえリモートで働いていたとしてもすぐに社員の目標を把握できます。
現在の目標設定管理制度に課題を感じている場合、まずはMBBや人事クラウドシステムなどを活用して改善してみましょう。
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