企業倫理に反する行為や財務的な不正は、企業の社会的信頼を失墜させ、成長を阻む要因になります。そうした不正行為を未然に防止するには、企業の管理体制を整えガバナンスを強化することが重要です。
この記事では、ガバナンス強化の目的やコーポレートガバナンス強化の成功事例、社内でガバナンス強化を実践するための方法について解説します。
ガバナンス強化とは?
ガバナンス強化とは、企業経営や人事の領域で用いられる用語です。
もとは、管理する、統治するといった意味を持ちます。そこから、企業の管理体制を整える意味で「コーポレートガバナンス」という単語でも使用されます。
ガバナンスの英語「governance」
ガバナンス強化のもとになる英語の意味の「governance」は、管理・統治・支配という意味があります。
ガバナンスの意味
日本語の「ガバナンス」も英語と同様に、管理する・統治するという意味でつかわれます。単体で使用されることもあれば、「企業ガバナンス」「コーポレートガバナンス」とも呼ばれます。
これらの言葉が意味するのは、長期的な企業価値の上昇にむけた企業統制の取り組みです。具体的には、内部不正行為防止のために経営の監査機能を強化したり、競争力強化のために取締役会に社外取締役を招聘し経営体制を引き締めたりすることが当てはまります。
ガバナンス強化やコーポレートガバナンスの取り組みは企業によって異なります。経営を経営陣だけに任せず、第三者らの目線を入れて管理・統治を高めるのがガバナンス強化の基本です。
ガバナンスとコンプライアンスの違い
ガンバナンスと並列されて使われる言葉に、コンプライアンスがあります。
コンプライアンスは「法令遵守」という意味であり、企業や従業員が法律や一般的な社会倫理を守って活動することを指します。
企業の管理体制が十分ではないとコーポレートガバナンスが不足します。それゆえに、法律違反がおこり、コンプライアンス違反が発生するといったことが起こります。
コンプライアンスのために、外部から企業内を統治する仕組みであるガバナンスが求められるのです。
ガバナンスを強化する目的
ガバナンスの強化は、企業の不正を防止し、企業の社会的信頼や価値を上昇する効果があります。
2015年に、金融庁と東京証券取引所から上場企業が行うガバナンスの強化について、ガイドラインとするべき指針である「コーポレートガバナンス・コード原案」が公表されました。
2018年には改定案が発表され、以下5つの基本原則が、コーポレートガバナンスの目的として構成されています。
株主の権利・平等性の確保
コーポレートガバナンスは、株主の権利を守り平等性を保つうえで重要な役割を果たします。企業は株主の懸念や不安に耳を傾け、適切な情報を開示することで、株主がその権利を行使できる環境を整えます。
株主以外のステークホルダーとの適切な協働
企業の経営活動に携わるのは、株主だけではありません。従業員や顧客、取引先や地域社会など、あらゆるステークホルダーと密接に関連しています。これらのステークホルダーと協働し、企業のリソースを提供することで、企業は中長期にわたり持続的な成長を果たします。
適切な情報開示と透明性の確保
企業の不正を未然に防ぐため、会社の財政状態等の財務情報、経営戦略や抱えている経営課題、リスクマネジメント等について、法令に基づいて適切に情報を開示することが求められます。
取締役会等の責務
企業、とりわけ上場会社の取締役会は、株主に対する受託者責任・説明責任を踏まえ、会社の持続的成長を目指し、収益の改善を図らなければなりません。
そのために、企業戦略の方向性を示し、経営陣のリスクマネジメントを行うための適切な環境整備等の責任を果たすことが求められます。
株主との対話
企業は、企業価値向上のため、株主総会以外の場でも株主と建設的な対話を行う必要があります。
ガバナンス強化の事例
ガバナンスを強化するには、社外取締役や社外監査役の設置、判断基準を明確にした企業の行動規範や倫理憲章の作成、業務の責任と権限の明確化といった方法があります。
企業の透明性を担保するには、社長や経営陣に対して、第三者がかかわる環境を設定することが重要です。
以下に、企業価値を高めるために実際に取り組んだガバナンス強化の事例をご紹介します。
健全で透明性の高い経営を目指す花王
花王は、企業の持続的な成長のために、財務的および非財務的の両方の側面から戦略・取り組みの強化を行っています。
特徴的なのは、2030年までに花王がどのような企業でありたいのかのビジョンを示した「花王ウェイ」です。心を込めた“よきモノづくり”を通じて、豊かな生活文化の実現と社会の持続可能性への貢献を使命としています。
企業の基盤となる価値観と行動原則を共有することで、経営陣だけでなく株主やステークホルダーと共通認識を持った対話を可能としています。
役割を明確にして企業統治を体制下したパナソニック
パナソニックは、透明性の高い事業活動と公正かつ正直な行動を迅速に行うため、コーポレートガバナンスを重要な戦略基盤と位置付けています。
グローバルな規模で38もの事業部を抱える大企業は、意思疎通や決定の仕組みが重要です。それを支えるのは、事業軸と地域軸で分けた7つのカンパニー制と呼ばれる体制です。
カンパニー制では、各カンパニーがそれぞれの担当地域と事業部の進化・変化の促進に責任を負い、成長戦略の実現を牽引します。
そのほか、グループ全体の経営戦略機能を支える「コーポレート戦略本部」、全社経営管理機能を担う「プロフェッショナルビジネスサポート部門」など、責任と役割を明確化した体制を築くことでガバナンス強化を図っています。
ガバナンス強化の方法・やるべきこと
では、自社のガバナンス強化に取り組むにはなにをするべきでしょうか。経済産業省から発行されている『コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針』を参考にしつつ、以下の5つの方法を解説します。
会社のビジョンの設定・見直し
ガバナンスの強化は、会社の不正を未然に防ぎ企業の社会的価値を長期的に高めるために行います。
その前提として、企業の「どのような会社になりたいか」というビジョンが求められます。どんな貢献を社会にしていきたいのか・どのような精神を優先して企業活動を行うのか…。言語化し、経営陣・社内で共有することにより、企業が同じ方向を向いて進むことができます。
社外取締役や監査役の設定・見直し
コーポレートガバナンスには、第三者の目線が重要です。
経営戦略から財務状況まで風通しの良い状態をつくることが、経営の健全化を促進します。このとき、社外取締役や監査役は、ニュートラルな目線で経営陣に意見できる組織として機能します。
経営や業務の透明性の確保
業務プロセスが不透明であったり、特定の人員や組織に依存した意思決定は企業不正を引き起こす一因になります。
ガバナンス強化のために、経営や業務に関する数値・課題を明確化し、社内・社外へと公開することが大切です。
担当者以外の人間がプロセスや結果をチェックする体制をつくることで、自動的に不正を抑制する機能を果たします。
ガバナンス強化の取り組みの社内周知
企業活動の中心になるのは、企業の人材です。
ガバナンスの強化に、従業員の理解は欠かせません。
企業がいかなる方向性で、どのような取り組みを行っているのか、定期的に社内に向けて周知しましょう。コーポレートガバナンスの意義を繰り返し伝えることが、従業員の意識を改革し、作られた体制やプロセスを遵守しようという意思を生み出します。
コーポレートガバナンスの取り組みの社外広報
コーポレートガバナンスの取り組みの強化は、株主や取引先、顧客といった社外のステークホルダーの企業に対する信頼を生み出します。
企業ウェブサイト等で取り組みを公開する、プレスリリースを出すといった地道な取り組みが企業価値の上昇につながります。
人事評価制度の透明性はシステム導入で確保
ガバナンス強化により、企業の活動はより公平性や平等性を保つことができます。
監査役等を設置した財務状況の透明性担保のほか、社内の人事評価制度の透明性を確保するのも、経営活動を健全化させる一つの手段です。
とくに、評価者の主観に頼りがちな査定では、明確な昇給の基準や給与テーブルの設定が重要です。
自社に沿った評価制度を確立し、評価の基準に沿った査定内容を関連する人員と共有することで、納得度の高い人事評価制度を運用できます。
公平性・透明性の保たれた評価は、社員のやる気を促します。ひいては、企業の売上アップや事業価値の上昇につながるでしょう。
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