新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と共存する新しい生活様式として、オフィス以外の場所で勤務する「リモートワーク」という働き方が注目されています。
リモートワーク制度のメリットや課題を分析しながら、導入にあたり検討しておきたいポイントについて解説します。低コストでの制度導入を実現するため、国や自治体の助成金制度も要チェックです。
リモートワークとは
リモートワークという言葉は「テレワーク」と同じ意味で用いられていますが、厳密には異なる定義を持っています。テレワークの定義を踏まえて、リモートワークとの相違点について説明します。
テレワークとリモートワークのちがい
テレワーク(teleworking)は、遠いという意味を表す「tele」と、働くことを意味する「work」を組み合わせた造語です。
1970年代にアメリカでの大気汚染問題が深刻化する中、環境への配慮から自宅で仕事をする仕組み(在宅勤務)が生まれたとされています。
国内では1984年に、日本電気(NEC)が1人1台のパソコン環境を備えるサテライトオフィスを設置したことが、テレワークの初事例です。
この事例では、家庭内での時間を確保するために出社の負担を減らすことに主眼が置かれており、働き方改革の先駆けと考えられます。
リモートワーク(remote working)という言葉にも、遠いという意味を持つ「remote」が含まれていますが、語源は明らかにされていません。
一方、2000年代初期にはネットワーク経由でパソコンを操作する技術(リモートデスクトップ)が確立しており、それ以降に生まれた言葉だと考えるのが有力です。
ICT環境があれば自由に仕事場所を選べることから、日本航空(JAL)では2017年7月に、旅先や帰省先などでのリモートワークを認める「ワーケーション」を導入しています。
SNSやWeb会議ツールなどを用いて、チームメンバー等の関係者とコミュニケーションを取り合えることも、リモートワークの特徴です。
国内におけるテレワークの定義
一般社団法人日本テレワーク協会では、テレワークを「情報通信技術(ICT技術)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方」として、次の3パターンで定義しています。
- 在宅勤務
- モバイルワーク(移動中や取引先での勤務)
- サテライトオフィス勤務
リモートワークでの働き方もこれらの3パターンに集約でき、ICT環境を活用するという共通点もあることから、リモートワークとテレワークの定義が同一視されているのが実情です。
といっても、国内では行政機関を中心に「テレワーク」という言葉が浸透しているため、一般的な会話ではテレワーク、ICT業界など自由度が高い業界ではリモートワークと使い分けるのが無難でしょう。
リモートワークのメリット
リモートワークを導入することで、企業運営にかかるコスト削減にとどまらず、生産性向上などのメリットがもたらされます。ダイバーシティ経営を実践する環境づくりにも有益です。
従業員・企業の生産性が向上する
リモートワークを導入することで、個人で業務に集中する環境が整い、時間あたりの生産性(人時生産性)の向上を目指せるのがメリットです。
外勤先であっても、問い合わせや要望に対し迅速・的確に対応できるため、企業の信頼性向上にもつながります。
現場や得意先で入手した情報・資料をリアルタイムで共有できる点も、意思決定の迅速化に一役買っています。自然災害など不測の事態により通勤が困難となった場合でも、自宅や安全な場所で業務を続行でき、BCP対策にも有効です。
従業員のワークライフバランスを充実できる
リモートワークでは勤務する時間や場所の自由度が高く、家事や育児・介護と両立しやすいのが特徴です。
ライフイベントに伴う退職を回避でき、経済的な安定を守りながら長期的なキャリア形成を実現しやすくなります。
節約できた通勤時間を地域活動への参加に充て、職場以外での居場所を作りながら新たなビジネスチャンスを獲得するという事例もみられます。
リモートワークの導入がワークライフバランスの充実、ひいては従業員満足度(ES)の向上につながるでしょう。
多様な人材を獲得できる
働き方にリモートワークを加えることで、オフィス近隣だけでなく全国各地から優秀な人材を採用できる可能性が広がります。
副業やパラレルワークを容認する企業が増えているため、業種・分野に特化した人材を短時間勤務者として迎え入れ、企業の付加価値向上を目指す戦略も実現可能です。
リモートワークでは「通勤」というプロセスを省略できるため、障害者・高齢者を在宅勤務者として雇用し、企業の社会的責任(CSR)を果たすことも考えられます。
リモートワークの課題
情報セキュリティや労務管理を中心とした課題を解決しておくことが、安全かつ健全なリモートワークの実施への第一歩です。
情報セキュリティへの不安
リモートワークでは、社内で管理している情報を外部に持ち出すため、個人情報や機密情報の漏えいリスクが伴います。
パソコンやスマートフォン等(端末側)のセキュリティが万全でも、第三者によるのぞき見(ショルダーハッキング)の不安を払拭できません。
リモートワークの実施ルールを定めたり、従業員に対するセキュリティ研修を実施したりすることで、不安の緩和につながります。社外に持ち出す端末に遠隔データ消去サービスの契約を結んでおくことも、セキュリティリスクの軽減には効果的です。
労働時間の管理が困難
労働時間設定の柔軟度が高い反面、適切な労働時間管理が難しくなることが、リモートワークを推進する上での課題です。
特に自宅では、仕事と家庭生活の両立を意識する余り、長時間労働や深夜労働が発生する頻度が高くなる懸念もあります。
クラウド型の勤怠管理ツール(タイムカードアプリ)を用いるなど、客観的に労働時間と休憩・中抜け時間を把握することが求められます。
カメラ撮影機能のあるツールを用いる場合は、作業状況の撮影ルールを明確化するなど、プライバシーへの配慮が必要です。
社内コミュニケーションの減少
Web会議システムやSNSの活用により情報交換が容易になった一方で、オフラインでコミュニケーションを取る機会が減少する傾向にあります。
生身の人間と触れ合う機会が少ないために、孤独感を感じる人もいるくらいです。カメラやマイクでは微妙な表情を共有しづらい分、言葉豊かにコミュニケーションをとる習慣づくりが重要さを増してくるでしょう。
リモートワーク推進とは矛盾しますが、必要に応じてオフィスに出社したり、対面で打ち合わせする機会を設けたりすることも、メンタルヘルスを良好に保つために有効な手段です。
リモートワーク導入のポイント
リモートワークを効果的に活用できるよう、ICT環境の整備や従業員への周知が大切です。業務の成果に応じた評価制度に切り替えるチャンスともいえます。
リモートワーク推進体制の構築
リモートワークの導入にあたっては、生産性の向上や多様性の創造といった、実現したい効果を明確化しておくことが重要です。
例えば、株式会社カルビー(食品メーカー)では柔軟度の高いリモートワークを実現するため、2020年7月からオフィス勤務者を対象に単身赴任の解除やフレックス勤務のコアタイム廃止を打ち出しています。
導入過程において、経営層と現場との間で十分な意見交換を行い、目的意識を持った仕組みづくりがリモートワーク定着への秘訣といえます。オフィス勤務とリモートワーカーとの間で、待遇の不平等が起こらないような仕組みづくりも重要です。
ICT環境の整備
オフィス勤務と同レベルの執務環境でリモートワークを遂行できるよう、ICT環境を整備する必要があります。佐賀県庁の事例では、全職員にWebカメラとイヤホンマイクを貸与したり、数百セットのタブレットや仮想デスクトップを準備したりするなど、徹底した環境整備が行われています。
中小企業では個人所有の端末を活用する事例(BYOD)もみられますが、業務に必要なソフトウェアを会社負担で導入するなどの配慮が必要です。モバイルルーターを貸し出すことも、公衆wi-fi利用に伴うセキュリティリスクを回避するために有効だといえます。
社内ルールの設計と周知
勤務時間の考え方やリモートワークを遂行する姿勢についてルール化しておくことが、業務の質を高める秘訣です。
フレックスタイム制度を導入することで、最大3か月のスパンで労働時間・休憩時間を柔軟に設計でき、時間利用の効率化が実現します。
在宅勤務やワーケーションを行う場合でも、業務時間帯は就業規則(服務規程)が適用されることや、業務の成果によって人事評価が実施されることを周知しておくことも大切です。
なお、テレワークに関する社内ルールは就業規則の一部として機能するため、従業員代表(労働者の過半数を代表する者)の意見聴取や労働基準監督署への届出が必要なので留意しておきましょう。
リモートワークの助成金
リモートワークの導入に活用できる、中小企業を対象とする国や自治体の助成金・補助金制度を紹介します。
なお、助成金支給要項では「テレワーク」と表記されていますが、リモートワークを導入する場合も同じ条件で申請可能です。
働き方改革推進支援助成金(テレワークコース、厚生労働省)
Web会議システム等のテレワーク用通信機器の導入や、就業規則改定・従業員への研修に必要な費用を助成する制度です。
企業が指定したテレワーク対象者全員が、評価期間中に平均週1回以上在宅勤務またはサテライトオフィスで勤務することを条件に、最大300万円(1名あたりの上限は最大40万円)が支給されます。シンクライアントPC(ディスクレスPC)以外のパソコンの購入費用は助成対象外なので注意が必要です。
評価期間は1か月~6か月の間で企業が自由に設定できるので、無理なくテレワークを推進できます。
IT導入補助金(経済産業省)
プレゼンス(在席)管理ツールやパソコンのリモート(遠隔)操作ツールといったソフトウェアを導入する費用や、導入・保守サポート代金を補助する制度です。
サブスクリプション方式のソフトウェアを導入する場合は、1年分の利用料金が補助対象となります。補助率は導入費用総額の2分の1以内、補助額30万円~150万円未満(A類型)と、150万円~450万円(B類型)の2パターンです。
ITベンダー(IT導入支援事業者)と協働で申請を行う仕組みなので、見積・商談を依頼する際は「IT導入補助金を利用したい」と表明することをおすすめします。
テレワーク活用・働く女性応援助成金(テレワーク活用推進コース、東京しごと財団)
東京都内に本社・事業所を置く企業を対象に、テレワークの導入費用やサテライトオフィスの利用料を助成する制度です。
サテライトオフィス利用時の併設保育利用料も助成されるなど、助成範囲は多岐にわたります。助成率は2分の1、助成額は最大250万円で、サテライトオフィスの利用料は別枠で助成を受けられます。
テレワーク導入費用の助成を受ける場合、働き方改革推進支援助成金やIT導入補助金との併給ができないので注意が必要です。
人事評価システムの整備でリモートワークを推進
リモートワークの導入により、生産性の向上とワークライフバランスの充実が両立できるなど、働き方に変革がもたらされます。
zoomなどのWeb会議アプリの普及により、オフィスと同様のコミュニケーションをオンラインで実現できる環境も整いつつあります。
従業員の評価方法が気になるところですが、人事評価システム「あしたのクラウド」を活用することで、どんなに離れていても業績本位の評価を実現可能です。
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