多能工とは、マルチスキルとも言い換えられる「一人で複数の業務や作業を行うこと」を指す言葉です。
労働人口が減少する日本において、一人ひとりの従業員が能力を高め、複数の業務を遂行させる能力は非常に重要です。
そこで今回は、多能工という言葉の解説や導入におけるメリットやデメリット、導入手順についてみていきます。
多能工とは?
多能工とは、一人の従業員が複数の作業や業務を行うことを指します。
例えば、ある従業員が営業も経営も行うなどが例に挙げられるでしょう。
基本的に従業員にはそれぞれ役割と仕事がそれぞれ分けられていますが、二つ以上の仕事を行うことを多能工というのです。
もともと多能工という言葉は、工場などの生産現場で使用されてきました。
より生産性高く製品を作るため、一人の従業員が複数のラインを担当する場合などに使われます。
「マルチタスク」とも言い換えられ、一人または一度に複数の仕事を担当する際に使用される言葉であることがわかります。
多能工の対義語にあたるのは「単能工」です。
単能工は、ある定められた仕事のみを行うことを指し、ある種スペシャリストとも言えるでしょう。
多能工、多能工化のメリット
多能工化することによって、現場にはさまざまなメリットがあります。具体的にどんな効果があるのかを見ていきましょう。
業務負荷の均等化
多能工化により、業務負荷の均等化が可能となります。
一人の業務を仕事内容や業務内容で括らないからです。
例えば、同じ経理という仕事であっても、忙しい部署と暇な部署では業務量は異なるでしょう。
しかし、担当している仕事以外のことを任せなければ業務の負担は均一化されません。
業務量があまりにも違うと、従業員から不満が出たり、離職率が上がったりするリスクも懸念されます。
多能工化させることで一人一人の業務量にフォーカスしながら仕事を任せることで、業務負荷の均等化が図れるのです。
組織・チームワークの強化
多能工化は組織・チームワークの強化にも役立ちます。
なぜなら、自分の担当内外かかわらず多角的な視点を持って仕事に取り組めるようになるからです。
担当業務をかっちりと決めてしまうと、自分の担当外のことには関心を持たなくなったり、人任せになったりしてしまう場合が多いです。
しかし、複数の仕事を兼務することでさまざまな立場の人の気持ちを理解できるようになり、「もっとこうしたら良いのではないか」「〇〇さんは今忙しいから手伝おう」など主体的に物事に取り組めるようになるのです。
その結果、組織・チームワークの強化にもつながります。
働き方改革の実現
多能工化は、働き方改革の実現にもつながります。
一人一人の業務量を均一にし、効率を重視しながら働けるようになるからです。
例えば、業務の枠組み関係なく、得意な人が担当する、手の空いている人が担当するという風に分担できれば、業務の無駄はカットできるでしょう。
また、一人の従業員が複数の業務を行うことでコミュニケーションコストも下がります。
そうすることで労働時間や残業時間の削減などといった働き方改革にもつながるのです。
事業継続性の実現
多能工化によって事業継続性の実現も可能となります。
というのも、多能工化は属人的な業務からの脱却にもつながるからです。
ある業務を一人の人に任せていると、その人しかできない状況を生みだしかねません。
しかし、多能工化するためには属人的に行っていた業務を言語化し他者に教える必要があります。
複数の人数に業務を継承することで、継続的に事業を行えるようになるのです。
今現状は多能工化の必要がなくても、長い目で見たさいに多能工化は必要になってくるでしょう。
多能工、多能工化のデメリット
多能工、多能工化のメリットを紹介してきました。
多能工、多能工化することはメリットだけではなく、デメリットもあります。
続いては多能工、多能工化のデメリットを見ていきましょう。
業務の無駄が発生しやすい
多能工化は、業務の無駄が発生する可能性が高いです。
一人の従業員が複数の仕事を行うことでかえってコミュニケーションコストがかかるなど、不慣れなことが原因で無駄な工数が発生する可能性があるからです。
また、多能工化を行うためには、複数のメンバーに情報を共有しなければいけません。
もちろん、長期的な目線では必要なことですが、場合によっては無駄な工数になるだけで終わってしまう可能性もあるからです。
そのため、誰に何の仕事を任せるべきなのかは慎重に判断しなければいけません。
育成に時間と費用がかかる
育成に時間と費用がかかる可能性があります。
多能工化を行うためには、育成は必要不可欠です。
しかし、その時間と費用も考えた上で育成をしなければ結果として無駄になってしまう可能性もあります。
特に専門的なスキルを研修する場合には育成には長い時間がかかってしまうでしょう。
従業員の向き不向きなども考慮し、任せられそうな業務から少しずつ教えていくなど、育成方法やコストもしっかりと考えながら行う必要があります。
適正な人事評価制度が必要
従業員を多能工化する際には、それにあった人事評価制度が必要です。
なぜなら、複数の仕事を掛け持ちで行っている場合従来の人事評価では全てのパフォーマンスをきちんと評価されない可能性が高いからです。
また、営業のような数値で成績を出せる部署と、バックオフィスでは評価の指標も異なります。
どの従業員であっても、どの業務であっても正当な評価を行えるような方法を模索することが必要です。
離職に繋がる可能性も
多能工化は正しい方法で行わなければ、離職に繋がる可能性も高いです。
なぜなら「入社した時の業務内容が違う」というクレームにつながるからです。
多くの従業員は自分のやりたいと思う業務以外のことを任せられることを嫌がります。
また、入社したばかり従業員に対して多能工を求めてしまうと、「元々の契約と話が違う」「求人広告には書いていなかった」などトラブルにつながる可能性も大いにあるでしょう。
そのため、多能工は安易に行うべきものではありません。
従業員としっかりコミュニケーションをとりながら双方が納得した状態で進めていきましょう。
多能工化の導入手順
多能工化のメリット・デメリットを見ていきました。続いては、それぞれの導入手順について確認していきましょう。
STEP1 業務の洗い出し
まずは現状の業務を洗い出しましょう。
うまくいっている部分をわざわざ多能工化させる必要はありません。
属人的な業務になっている部分、無駄なコストがかかっている部分、人手が足りていない部分などを中心に、多能工化を検討していきましょう。
その際にも現場の従業員とコミュニケーションをとりながら、多能工化の必要性や方向性などもしっかりと話し合うことが大切です。
STEP2 業務の可視化
多能工化の必要があると考えた業務を可視化させていきます。
多能工化とは、ある業務を複数の従業員に教えることから始まります。
そのため、これから習得していく業務をしっかりと第三者にも理解できるよう可視化させる必要があります。
特に属人的な業務になっている部分は、業務未経験者でもしっかりと理解できるレベルまで洗い出すようにしましょう。
STEP3 スキル習得計画と実施
業務を可視化できたら、スキル習得のための計画を立てていきましょう。
どれくらいの期間、そしてコストをかけて教育していくか決定します。
そして実際に業務を習得できれば、多能工を実践していきます。
その際も周りの従業員とコミュニケーションを取りながら現場で問題が起こっていないかもしっかりとチェックしていきます。
STEP4 評価と振り返り
多能工化は定期的に評価と振り返りを行いながら進めます。
業務に問題はないのか、業務コストや従業員の負荷など企業側だけではなく従業員目線でも改善していきながら進めましょう。
多能工化の導入事例
多能工化はすでに日本の企業でも実績が増えてきています。最後に、トヨタホーム株式会社と株式会社星野リゾートの導入事例を見ていきましょう。
トヨタホーム株式会社
トヨタホームでは、住宅部材工場で多能工化が実践されています。
通常工場で勤務する従業員は現場の応援など行わないことが多いですが、トヨタホームでは繁閑に合わせて柔軟に人員配置が行えるように育成に注力しています。
例えば、近年のブロードバンド化に伴い配線担当の従業員は3倍に増えました。
このように、複数の業務にフレキシブルに対応できる従業員を増やしています。
参照:日本経済新聞
株式会社星野リゾート
星野リゾートでは、従業員に対してフロント、客室、レストランサービス、調理補助の4つの仕事をできるように教育しています。
顧客接触時間を増やす、業務バランスを保つなどさまざまな効果がありますが、一番の狙いは他社に負けないような人材を育成することです。
多能工化に伴い人事評価制度も整えており、それぞれのスキルの習得度と実践度を細かく数値化しています。
参照:リクルート
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