承認欲求、自己顕示欲は人間が持つ性質の一つであり、どのような人にも持っています。とはいえ、あまりにも承認欲求が強いと人付き合いや人間関係がうまくいかなくなってしまいます。そこで今回は、自己顕示欲が強い人の特徴や原因、強い人との職場での付き合い方など確認していきます。自己顕示欲に対する理解を深め、スムーズな人間関係を築けるよう意識しましょう。
自己顕示欲とは?承認欲求など似た言葉との違い
そもそも自己顕示欲とはどのようなものなのでしょうか。ここでは、承認欲求や自意識過剰など似た言葉との違いも含め解説します。
自己顕示欲の意味
自己顕示欲とは、自分以外の周りの人間から認められたいという欲求のことです。「顕示」とは、はっきりと分かるように示すことで、自己顕示とは自分自身を目立たせるという意味のことを指します。
つまり、自分自身を目立たせることで周りの人から注目されたり、褒められたりしたいということをいうのです。
承認欲求との違い
アメリカ人心理学者マズローによって、人間の基本的欲求は「生理的欲求」「安全の欲求」「所属と愛の欲求」「承認欲求」「自己実現の欲求」の5種類があるとされました。承認欲求はその4番目にある欲求です。承認欲求は、相手から「承認」されたいという意味を指すのです。
例えば、会社で良い成績をおさめたり、賞など第三者から評価されたりすることで承認欲求は満たされます。さらに、周りの人から「すごいね」と褒められることなども挙げられるでしょう。
自意識過剰との違い
自意識過剰とは、周囲から自分がどう見られているか、どう思われているかを過剰に意識してしまう傾向を指すものです。また、自己評価が低く、常に自分自身に対する不安や疑いを持っている状態でもあります。
自己顕示欲は、他者に対して自分自身を認めて欲しいという欲求であるのに対し、自意識過剰は自分自身に抱く否定的な感情という点が大きな違いといえるでしょう。
自己顕示欲が出る理由・メカニズム
人は誰しも自己顕示欲を持っています。ただ、自己顕示欲が強く出るタイプと出ないタイプがいるだけです。では、強く出るタイプとはどのような人なのでしょう。
ここでは、自己顕示欲が出る理由やメカニズムについて解説します。
防衛本能の強さ
周囲に自分よりも強い(肉体的・精神的)人が多い場合、自分も強いことをアピールし、他者からの攻撃を防ぐ、もしくは精神的優位に立つという防衛本能から自己顕示が出ます。
自己肯定感の低さ
自己肯定感が強いと、周囲の評価に関わらず自分を大切な存在であると認識しています。しかし、自己肯定感が低いと、自分で自分を大切な存在だと思えません。
そのため、自己肯定感の低い人は自己顕示によって、周囲に認めてもらいたいと考える傾向があります。基本的には自分が理想とする姿と周囲との評価の差にギャップを感じた際に、人は自己顕示が強くなるといえるでしょう。
自己顕示欲が強い人の特徴
自己顕示欲の高い人にはいくつかの特徴があります。では、具体的な特徴はどんなものがあるのかをみていきましょう。
自分の話が多い
自己顕示欲の高い人は、自分の話が多いという特徴があります。なぜなら、相手から褒めてもらいたいからです。そのため、「〇〇をした」「〇〇さんから評価された」などという自分の自慢話や、身の上話を積極的にする特徴があります。
また、他人の話を横取りするという傾向もあります。例えば、ある人がブランドもののバッグを購入したという話をしたとします。一般的な会話であれば、いつ買ったのか、いくらくらいしたのか、どんな見た目なのかなど相手に話を聞くでしょう。
しかし、自己顕示欲の高い人は相手の話を聞くのではなく、「私も〇〇を買ったよ」などと自分の話題にしてしまうことがあります。このように自己顕示欲の高い人は自分の話が多いという特徴があります。
他人の評価を気にし過ぎる
自己顕示欲の高い人は、他人の評価をやたら気にしてしまう特徴があります。なぜなら、周りから褒められることを何よりも重視しているからです。自分のとる一つひとつの行動が相手にとってどう見られているのかを常に確認してしまうのです。
そのため、会議の場では自分の本音ではなく、自分がよく見えるような発言をとってしまうこともあるでしょう。他人を気にしすぎるあまり、自分自身のやりたいことやしたいことができていない人が多いのです。
承認欲求が強い
自己顕示欲の中のひとつである承認欲求が強い人も多いのが特徴です。承認欲求とは、相手に認められたい、褒められたいという欲求です。行動や言動の源泉が「相手に認められるかどうか」になっていることが多いです。
例えば、ミーティングで発言が多かったり、自分のやったことを積極的に周りに伝えたりする、などが挙げられます。逆に、自分自身が評価されない仕事や業務に全く興味を持たないという人もいます。
否定から会話に入ることが多い
他者の意見に同調していては、自己顕示欲は満たされません。そのため、自己顕示欲の強い人は他者の意見を否定し、異なる意見を言うことから会話に入るケースが多いといえるでしょう。
自分は相手よりも良い意見を持っている、立場が上であるなどのアピールにつながり、自己顕示欲が満たされます。
負けず嫌い
相手に対して負けを認めることは、失敗や敗北を受け入れることであるため、負けず嫌いも自己顕示欲が強い人の大きな特徴です。
その相手だけではなく、周囲からも自分は弱い人間だと思われることに耐えられないため、自己顕示欲が強い人は負けを認めない傾向があるといえるでしょう。
協調性がない
自己顕示欲の強い人は、協調性がない場合があります。というのも、自己顕示欲は「自分自身を、目立たせる」ことによって満たされるからです。
そのため、自分が目立たない、評価されないことには消極的になってしまい、複数人で何かを行うことを苦手としています。そのため、他の人と協力することや、一緒に何か成し遂げるような協調性はなく、個人プレーを好みます。
相手を褒めない、認めない
自己顕示欲の高い人は、他人が評価されていることを不服に思ってしまうことがあります。なぜなら、「他人が評価されている=自分は評価されていない」と考えてしまうからです。
そのため、自分自身も相手を褒めたり認めたりすることを嫌がる傾向にあります。たとえ心の中では相手をすごいと思っていても、それを口に出さなかったり、「本人の実力ではなく運だ」などと言ったりすることもあるでしょう。相手の功績を素直に褒められない、認めないのも自己顕示欲の高い人の特徴です。
嘘・偽りが多い
自己顕示欲の高い人は自分自身の言動や行動に嘘や偽りが多い傾向にあります。相手によく見られたいあまり、自分自身の能力や実績を大袈裟に話してしまったり、本音では思っていないが相手によく見られるために違う行動をとってしまったりすることがあるのです。
そのため、その人の本音がわからないということも多いでしょう。本音のままの自分では周りから評価してもらえないと思うゆえに、言動や行動に嘘が生じてしまうのです。
自己顕示欲が強くなる原因
自己顕示欲が強くなってしまうのには、いくつか理由が挙げられます。具体的にどんなことがあって自己顕示欲が強くなってしまうのかを見ていきましょう。
自分に自信がない
自分の自信の無さから、自己顕示欲が高くなるケースは少なくありません。自分を自分で認められないゆえに他人に認めてもらうことでしか欲求を満たすことができない可能性もあります。
これまで学校の受験や就職活動などを通して、自分の納得がいく結果を出せなかった人などに多く当てはまります。今いる環境でなんとか周りに認められることで誰かを見返したい、自分自身に自信を持ちたいという思いから承認欲求が強くなってしまう場合もあるでしょう。
仕事やプライベートが上手くいっていない
仕事やプライベートなど、自分自身の生活に満足していない人も承認欲求が強くなる原因です。毎日の暮らしに満足が行っておらず、少しでも満足するため手段として「他人からの評価」を気にするのです。自分の自信の無さと共通する部分もありますが、自分が満足できていないゆえに他人から褒められる、認められることを求めてしまいます。
例えば今の職場に満足できていなかったり、仕事で良い成績をおさめられていなかったり、また、プライベートで何か悩みを抱えていたりする場合もあるでしょう。
育ってきた環境に愛情が欠けていた
育ってきた環境に愛情が欠けていたことが原因で、自己顕示欲が強くなってしまう人もいます。
例えば、両親からあまり構われていなかった子どもが小学校や中学校でヤンチャばかりすることはよくあります。誰かに構ってほしい、相手をしてほしい、という理由から自己顕示欲が強くなってしまうのです。幼少期の環境は大人になっても大きく影響します。
そのため、今はそうでなくても、小さいころ両親や周りからの愛情に欠けていた人も自己顕示欲が強くなってしまう可能性があるのです。
自己顕示欲が強い人との職場での付き合い
自己顕示欲の強い人と一緒に仕事することで、ストレスを感じてしまう人は少なくありません。特に協調性のない人との関わりは苦労も多いでしょう。
最後に、自己顕示欲が強い人とのうまい付き合い方について紹介していきます。ストレスなく仕事を行うためにも、ぜひ下記の取り組みを実践していきましょう。
適度な距離を保つ
苦手と感じる人には、適度な距離を保つのが一番です。関わることで自分自身に大きなストレスがかかってしまっては、仕事もうまくいきません。必要最低限の場合をのぞき、極力関わらないようにするのが良いでしょう。自己顕示欲の強い人は、とにかく他人に構ってもらいたがります。
そのため、少しでも話を聞いてくれる人はその対象となってしまいます。あからさまに距離をとるのはトラブルにつながりますが、適度に距離をとっておけば「この人は構ってくれない」となり自慢話などに付き合わされる可能性も下がるでしょう。
反論せずに受け入れる
自己顕示欲の強い人の自慢話や嘘に反論するのではなく、受け流すことを意識しましょう。反論してしまうと相手を逆上させ、トラブルに発展する可能性が高まります。
ただし、相手の話に無理に乗る必要はありません。話は反論せず受け流しておけば、相手も自分もストレスなくコミュニケーションが取れるでしょう。
反面教師にする
自己顕示欲の高い人は自分自身の反面教師にできるでしょう。自慢話が多かったり、自分の話ばかりしたりする人は相手にとって気持ちの良い存在ではありません。相手の行動や言動を見て「自分はそうしないようにしよう」と思える貴重な機会とも言えます。
そのように接することで自己顕示欲の強い人とのコミュニケーションもポジティブに捉えられるでしょう。
承認欲求を理解する
相手の話を受け止め、承認欲求の強さを理解してあげましょう。承認欲求の強い人は、自分に自信がなかったり、これまで愛情が足りていなかったりと何かとネガティブな原因があります。
確かに相手の自慢話を聞くことはストレスになりますが、その背景を考えて理解してあげることで、ストレスも少なくなるでしょう。
嘘・偽りは訂正が必要なケースも
嘘や偽りが業務に師匠を来す場合、訂正が必要なケースもあります。
ただし、言い方には十分気を付けましょう。トラブルにならないよう、「嘘」の部分だけを訂正するように気を付けます。相手が話を盛っている、大袈裟だ、ということまで関与してしまうと相手の気分を害しかねないからです。
自己顕示欲の強さをチェック!
自分が自己顕示欲の強い人間であるかどうかを自身で判断するのは簡単ではありません。そこで、自己顕示欲の強さをチェックしてみましょう。
以下の項目から3つ以上当てはまれば自己顕示欲が強い傾向があるため、注意が必要です。
- 周囲から目立ちたがり屋だとよく言われる
- 些細なことであってもSNSやブログに書き込み投稿してしまう
- SNSやブログには自撮り写真を投稿することが多い
- 「私は」「自分は」など会話のなかで一人称をよく使う
- 自分が目立つためであれば周囲の人間が目立てなくても気にしない
- 会話をしていて気がつくと聞き役ではなく話役になっている
- 会議や朝礼、社内イベントなどで人前に出て話すのが好き
- 他者の話を遮って自分の話をしてしまい注意されることが多い
- 髪を切るたびに前とは違うスタイルにしてしまう
- 他者から批判をされてもあまり気にならない
- 声が大きく、話している際の動きも大きい
- 自分よりも目立っている人を見ると嫉妬心が沸き上がり、より目立つための方法を考えてしまう
自身の自己顕示欲との向き合い方
上記の診断で自己顕示欲が強い傾向があった場合や、元々自己顕示欲が強く悩んでいるといった場合、自身の自己顕示欲とどう向き合っていけばよいのでしょう。
ここでは、3つのポイントを紹介します。
自己肯定感を高める
自己肯定感が低いと、自分自身を大切に思えません。その結果、周囲に自分の強さをアピールし褒めてもらうことで、自己を肯定するしかなくなります。
自己肯定感を高めるには、自分の現状を受け入れること、そして他者から見える自分ではなく、自分自身で評価基準を決めることです。
周囲に褒められることを求めず、自分で自分を褒められるようになれば、自ずと自己肯定感は高まっていくでしょう。
他人と比較しない
他者との比較も自己顕示欲を強めてしまう要因の1つです。
自己顕示欲が強い人は他者との比較で自分が優位に立てるか、負けていないかを重視します。しかし、他者との比較で自分が優位に立てたとしても、それは一時的なものでしかありません。
時が過ぎればまた別のことで他者と自分を比較し、それを延々と続けることになってしまいます。他者と自分を比べるよりも、自分自身に向き合い集中することが重要です。
自己顕示欲を長所と捉える
自己顕示欲が強いことをネガティブに捉えず、長所として向き合ってみるのもよいでしょう。
- 自分の意見を言えることを「強み」と捉え、積極的に活かすようにする。
- 周囲の人からアドバイスを受け、自己顕示欲を自身の成長につなげられるようにする。
- 目標を設定し、それに向かって挑戦する。
などにより、自己顕示欲を肯定的な方向に向けることで、自己肯定感の向上にもつながります。
自己顕示欲と上手に付き合おう
自己顕示欲とは、自分以外の周りの人間から認められたいという欲求です。自己顕示欲自体は誰もが持っているものですが、あまり強すぎると周囲に迷惑をかけてしまうケースも少なくありません。
自己顕示欲が強くて悩んでいる人は、自己肯定感が低く、自分に自信がない傾向があります。そのため、まずは他者と自分を比較すること、他者に褒められることを評価基準にすることを止め、ありのままの自分を受け入れることが重要です。
そのうえで、自己顕示欲を長所とするため、周囲のアドバイスを受けつつ、自分の強みを見つけていくことが成長にもつながっていくでしょう。
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