育児休業給付金とは?支給条件や期間、計算・申請方法、延長条件などを解説

育児休業給付金のイメージ画像

人事部の社員が理解したい育児休業給付金ですが、複雑な制度という印象があるかもしれません。

しかし女性だけでなく、男性の育児参加にも注目が集まる中、育児休業給付金に強い注目が集まっていると言えるでしょう。

そこで今回は、育児休業給付金の支給条件、期間、計算方法、申請方法、延長条件などを詳しく解説していきます。

育児休業給付金とは

育児休業給付金とは、労働者(雇用保険の被保険者)が育児休業を取得した場合に支給される給付金です。

育児・介護休業法と雇用保険法に基づき、「育児を行う労働者の仕事の継続」と「育児休業中の収入減少の緩和」を目的に1995年にスタートしています。

育児休業給付金の対象になるのは、育児休業以前の2年間に11日以上勤務した月が12ヵ月以上ある労働者です。

育児休業中の賃金が育児休業開始時の80%未満に低下するなど、一定の条件を満たした場合にハローワークに申請することで、子が1歳に達するまで支給されます。

支給額は休業開始から180日目までは最大67%、休業開始から181日目以降は最大50%です。

子供が保育園に入れないなどの事情があれば、再度申請することで支給期間の延長(最長で子が2歳に達するまで)も認められています。

なお、もともとは失業等給付の雇用継続給付に含まれていましたが、2020年4月以降、失業等給付から独立した給付という位置づけになりました。

育児休業給付金の支給条件

育児休業給付金の受給・支給条件について解説します。下記の1と2を満たすことで支給を受けることができます。

1.労働者(雇用保険の被保険者)が1歳未満の子を養育するために育児休業を取得すること

育児休業対象者は男女を問わないため、母親だけでなく父親も育児休業給付金の対象になります。子供に実子・養子の別はなく、後述する期間雇用者も支給の対象となります。

ただし職場への復帰が前提なので、育児休業取得時に退職が決まっている場合は支給の対象となりません。

2.育児休業開始日前の2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある完全月が12ヵ月以上あること

12ヵ月に満たない場合は、時間数が80時間以上の月を1ヵ月として取り扱います。

また、期間を定めて雇用される者は、上記の1と2に加えて、次の条件を満たす必要があります。

3.同一事業主のもとで1年以上雇用が継続していること

4.同一事業主のもとで子が1歳6ヵ月に達するまでの間に労働契約が満了することが明らかではないこと

このような受給資格を満たしたうえで、育児休業中の賃金が80%未満に低下するなどの条件に該当すれば、育児休業給付金を受けることができます。

育児休業給付金の支給期間

育児休業給付金の支給期間は、育児休業開始日から、子が1歳に達するまでの期間です。

育児休業開始日とは、女性の場合は産後休業期間の8週間終了の翌日。男性の場合は配偶者の出産予定日または出産日から対象となります。

なお、パパ・ママ育休プラス制度を利用した場合は子が1歳2ヶ月に達するまで。同じく延長要件に該当する場合は1歳6ヶ月まで。さらに保育園に入れないなどの場合に再申請することで、子が2歳に達するまで延長が認められます。

育児休業給付金の計算方法

育児休業給付金の支給額は、事業主の支払賃金額の割合によって異なります。

たとえば休業開始時の賃金日額をA、支給日数をBとした場合、A×Bに対する事業主の支払賃金額の割合が13%以下であれば、A×B×67%(休業開始から181日目以降はA×B×50%)が支給されます。

ただしA×Bに対する事業主の支払賃金額の割合が13%超80%未満(休業開始から181日目以降は30%超80%未満)であれば、A×B×80%-支払賃金額となります。A×Bに対する事業主の支払賃金額の割合が80%以上であれば不支給です。

具体的な事例で考えてみましょう。

休業開始時賃金日額8,000円(賃金月額24万円)、支給日数30日、事業主の支払賃金額なし(賃金月額の13%以下)の場合の計算式はこうなります。

8,000円×30日×67%=160,800円

同じ条件で休業開始から181日目以降はこうなります。

8,000円×30日×50%=120,000円

このように計算方法は一見複雑ではありますが、事例で考えると分かりやすいのではないでしょうか。。

育児休業給付金の申請方法

育児休業給付金は基本的に事業主が「育児休業を開始した労働者の受給資格確認」と「育児休業給付金の支給申請」を行います。

受給資格確認の申請方法

受給資格確認の届出種類は「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書(育児)」と「育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書」です。他に賃金台帳や出勤簿などを持参する必要があります。

提出期限は受給資格の確認のみ行う場合は初回支給申請日まで。初回支給申請も同時に行う場合は、休業開始日から4ヵ月経過日の属する月の末日までとなっています。

届出先は事業所の所在地を管轄するハローワークです。

受給資格がある場合は「育児休業給付受給資格確認通知書」と「育児休業給付金支給申請書」。受給資格がない場合は「育児休業給付受給資格否認通知書」が交付されるので、被保険者に渡しましょう。

育児休業給付金の申請方法

育児休業給付金申請の届出種類は「育児休業給付金支給申請書」です。他に賃金台帳や出勤簿などを持参する必要があります。

提出期限は支給対象期間の初日から起算して4ヵ月経過日の属する月の末日まで。届出先は事業所の所在地を管轄するハローワークです。

各支給単位期間の支給要件を満たす必要がありますが、支給を受けられない場合も「次回支給申請期間指定届」と変更して提出します。

また、支給申請は2ヶ月ごとが原則ですが、本人が希望すれば1ヵ月に一度の支給申請も可能となっています。

育児休業給付金の延長条件

育児休業給付金の支給期間は子が1歳に達するまでですが、延長によって子が1歳6ヵ月または2歳に達するまでとなります。下記の1,もしくは2の条件を満たすことで延長されます。

1.育児休業の対象となる子を保育所に入れたいと希望し、市町村に申し込みを行っているが、1歳または1歳6ヵ月に達する日後も当面その実施が行われない場合

つまり子供を保育園に預けられない場合に育児休業給付金は延長されるということです。ただし無認可保育施設は対象となりません。

2.常態として育児休業の対象となる子の養育を行っている配偶者であり、その子が1歳または1歳6ヶ月に達する日後の期間、常態としてその子の養育を行う予定であった者が、以下のいずれかに該当した場合

・死亡
・負傷、疾病などで子の養育が困難な状態
・婚姻の解消などで配偶者が子と同居しなくなった
・6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内に出産する予定または産後8週間を経過しないとき

このような場合に手続きを行うことで、支給対象期間は1歳6ヵ月または2歳まで延長されます。

他にも、パパ・ママ育休プラス制度を利用することで、子が1歳2ヵ月に達する日の前日まで延長可能です。

パパ・ママ育休プラス制度とは、子の父親と母親(パパとママ)が共に育児休業を取得する制度で、まずは母親が育児休業を取得した後、父親が育児休業を取得する、といった使い方も可能です。

育児休業給付金の知っておきたいこと

育児休業給付金で知っておきたい内容を解説します。

1.離職が決まっている労働者も支給されるか?

労働者(雇用保険の被保険者)の離職が決まっている場合、育児休業給付金は受給できません。職場復帰が前提の制度だからです。

そのため、すでに離職している場合だけでなく、離職が決定している場合も支給されないので注意しましょう(不正受給すると処分を受けます)。

2.育児休業給付金を受給している期間に仕事はできるか?

育児休業給付金の受給中に一時的に就労した場合も、その後に育児休業に戻ることが決まっていれば支給対象となります。その場合は支給申請書の「支払われた賃金額」に記入を行います。

ただし、支給単位期間の就業日数は10日以下、もしくは10日を超える場合は就業時間が80時間を超えないという要件があります。

3. 第2子の育児休業給付金は支給されるのか?

第1子の育児休業給付金を受給中に第2子を妊娠した場合、第2子の受給資格を満たせば、新たに育児休業給付金の対象となります。ただし第1子の育児休業給付に関しては、第2子の産前休業開始の前日に終了します。

4. 再度の育児休業について支給されるのか?

育児休業給付金を短期間(1ヵ月など)受給して職場復帰した場合、もう一度同じ子の育児休業給付を受けることはできません。ただし下記の理由があれば受給できます。

・1回目の育児休業の終了が他の子の産前産後休業・育児休業を取得したためであって、当該他の子が死亡した場合や養子となったこと等により同居しなくなった場合
・1回目の育児休業の終了が介護休業を取得したためであって、介護対象家族の死亡、離婚、婚姻の取り消し、離縁等により対象家族の介護を行わなくなった場合
・配偶者が死亡した場合
・配偶者が負傷、疾病等により子を養育することが困難となった場合
・婚姻の解消等により配偶者が育児休業に係る子と同居しなくなった場合
・育児休業の申出に係る子が負傷、疾病又は身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり世話を必要とする状態となった場合
・育児休業の申出に係る子について、保育所における保育の実施を希望し、申込を行っているが、当面その実施が行われない場合
・産休特例期間内※に育児休業を実施した場合
・延長事由に該当するものであって、配偶者が子の1歳に達する日において育児休 業をしており、被保険者の育児休業開始予定日が1歳に達する日の翌日である場合など一定の要件を満たす場合。

参考:厚生労働省「確認書」

育児休業給付金で休業期間中を安心して過ごそう

育児休業給付金とは、受給資格を満たす労働者が育児休業を取得した場合に支給される給付金です。

受給期間は子が1歳に達するまでですが、保育園に預けることができないなどの理由があれば、最長で2歳に達するまで延長可能です。

支給額に関しては、休業開始後180日目までは最大で休業開始時賃金日額の67%、181日目以降は最大で50%です。

このように育児休業給付金には「育児休業中の収入減少の緩和」という側面があるので、休業期間中も安心して過ごせるでしょう。

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