演繹法は一般的な事実を前提に結論を導き出す手法で、ロジカルシンキングの一つとしても知られています。正確な情報をもとに話を進めると相手への説得力が高まるのがメリットですが、場面によっては帰納法を組み合わせる工夫も必要です。
今回は、演繹法を用いた考え方の順序・ポイントや演繹法を用いる際の注意点を解説します。演繹法と帰納法の違いも確認した上で、演繹法と組み合わせた推論方法についても紹介します。交渉やプレゼンなどのシーンで、ぜひ活用してみてください。
演繹とは
演繹とは、一般的に知られている事実や事例をいくつも関連付けて必然的な結論を導き出す考え方です。三段論法とも呼ばれることもあり、「AならばB」「BならばC」というように複数の前提条件を示した上で「AならばCである」というように論理を展開していきます。
観察事項や仮説を一般論にあてはめていくため、考えがぶれずに自然な流れで結論にたどり着けます。仮説と一般論さえ正しければ、おのずと結論も正しくなるのが演繹の特徴です。そのため、演繹は数学的な思考方法ともいわれています。
演繹法の具体例を紹介します。
・目標を達成すると評価が高くなる(観察事項)
・目標を達成した同僚は高い評価を得られた(事例1)
・自分が目標を達成した(事例2)
・目標を達成すると自分も高い評価を得られるから頑張ろう(導き出される結論)
前提とする一般論が多いほど情報の精度が高くなり、導き出した結論の説得力が高まるわけです。
演繹法を用いる際の注意点
演繹法を用いる際は、関連付ける情報を正しく選択しないと論理が破綻し、話の説得力が失われるので注意が必要です。演繹法を用いる際にありがちな失敗例と、成功につなげる方法を簡単に紹介します。
1.間違ったルールを用いて論理展開してしまう
ルール:食べ過ぎると太る
事実:私は少ししか食べない
結論:たぶん私は太らないだろう
正しい結論のように見えますが、生活環境によっては食べる量が少なくても太る可能性があります。結論を導き出す前に、当てはめるルールと事実のつじつまが合っているかどうかを再確認しましょう。
2.先入観で論理展開している
ルール:若者はマナーが悪い
事実:この地域は若者が多く住んでいる
結論:この地域の人はマナーが悪いだろう
若者はマナーが悪いという先入観をもとに結論を導いていますが、すべての若者のマナーが悪いとは限りません。提示するルールが正しいかどうかを、複数の情報をもとに精査することが大切です。
3.古いルールで論理展開している
ルール:昔、新入社員だった私はプレゼンに失敗した
事実:新入社員がプレゼンに挑戦しようとしている
結論:新入社員はプレゼンに失敗するだろう
過去の経験則をもとに結論を導き出していますが、自分の体験と他人の体験は異なります。環境の変化によってルールが変わる可能性があるので、最新の傾向を理解した上で仮説を立て、結論を導き出すよう意識しましょう。
4.そもそも収集した情報が間違っている
ルール:売り上げが上がると株価も上がる
事実:A社の売り上げが上がっている
結論:A社の株価が上がりそうだ
株価が上がる要因は「売り上げ」だけとは限らず、業績や市場の動向にも左右されます。間違った情報をもとに結論を出さないようにするためには、1つの情報に依存せず幅広い視点で情報を収集する姿勢が大切です。
5.論理構成上で必要な前提が隠れていると誤解の原因になる
事実:雨が降っていると、私は濡れてしまう
結論:今日は雨の予報なので、自動車で出かけよう
納得できる結論ですが、結論にはいくつかの前提条件が隠れています。例えば「現時点では晴れているが風が強い」「雨具を持っていない」などのような条件です。
話の流れによっては、誰もが知っている常識が省略されることも考えられます。後で誤解を招かないよう、前提条件とセットで物事を伝える習慣を付けるようにしましょう。
演繹法を用いた考え方の順序とポイント
演繹法を使いこなすことができれば説得力の高い文章を作成でき、ビジネスや普段の会話でもわかりやすく話を展開できます。演繹法を用いた考え方の順序とポイントを紹介します。
1.結論から考える
話の説得力を高めるには、相手に伝えたい結論を最初に考えるようにします。出すべき結論によって、当てはめるルールや事例が異なるからです。
複数の解釈が可能なルールでも、前提条件を多数組み合わせることで解釈がはっきりすることも少なくありません。話の論理が破綻しないよう、説得力のある前提条件を用意しましょう。
2.結論が導かれる理由を考える
話に説得力を持たせるためには、結論が導かれる理由を明確にしておくことも大切です。自然な流れで結論を導き出せるよう、複数の事実や事例を無理なく関連付けられるよう意識する必要があります。話の中で根拠を求められることもあるため、想定される質問を考えながら理由付けを行うのもポイントです。
3.一般的に当たり前であることを探す
多くの人に知られている事柄をもとに結論を導き出せれば、相手にとってわかりやすく納得感も得られます。反対に、一般の人になじみが薄い事柄を関連付けると、理屈で言いくるめられたという印象を与える可能性があります。話す相手の性格や立場に配慮して、当てはめる事実・事例を探すようにしましょう。
演繹法と帰納法の違い
演繹法、帰納法ともに論理的な思考方法ですが、事実や事例の当てはめ方が異なります。
帰納法とは演繹法とは対照的に、さまざまな事実や事例に共通する傾向をまとめた上で結論につなげる考え方です。事実や事例が多いほど説得力が増し、情報の客観性が高いという印象を与えることができます。前提条件と事実の組み合わせが1つでも結論を出せる演繹法とは対照的です。
例えば「イタリアン(イタリア料理)が人気で、メディアでも注目されている」という結論を導き出す場合には、以下のように事例を積み上げていきます。
・イタリアンの特集が、複数のテレビ番組で放送されている
・イタリアンがトレンド入りしている
・YouTubeなどの動画サイトでイタリアンの動画がバズっている
・多くのインフルエンサーがSNSやブログでイタリアンを話題にしている
演繹法と同様に、論理構成に矛盾があったり誤った前提で結論を出したりすると説得力を失う恐れがあるため注意が必要です。
演繹法と帰納法を組み合わせた推論方法
演繹法と帰納法のメリットを組み合わせた仮説演繹法という考え方も登場しており、研究開発分野だけではなくビジネスシーンにも取り入れられています。
仮説演繹法とは、帰納法によって作った複数の仮説を演繹によって一般的な事実・事例に当てはめて予測を立て、それぞれの仮説を検証・修正した上で結論を導き出す方法です。
演繹によって正しい結論を出す前に、帰納法で得られた最新の情報を使って仮説を立てていきます。精度の高い予測ができる反面、立てた予測が正しくても論理的に確かだという確証が得られない点には留意が必要です。
仮説演繹法を用いることで新しい主張が引き出され、思考の幅が広がります。立てた予測の一つひとつが正しいかどうかを実験や観察で検証していくため、導き出された結論の信頼性も高まります。
演繹法で思考の幅を広げビジネスで使いこなそう
演繹法は多くの人に知られている事実や事例をもとに結論を導き出すので、自然な流れで話を進めることができます。一方、帰納法では複数の事実や事例の共通項から結論を導き出すため、客観性の高さを印象づけることが可能です。
また、帰納法によって発見した課題に対する仮説を立て、演繹法で予測・検証を行う「仮説演繹法」という方法も活用されています。思考の幅を広げ、ビジネスシーンで説得力の高い会話ができるように演繹法を取り入れてみてはいかがでしょうか。
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