人事部担当者にとって、自社に直接的に利益をもたらす営業マンの育成は急務であるとともに、持続して実施すべき施策です。営業マンにはコミュニケーション能力だけでなく計画性や論理的思考と行動力、頑健な心身など、非常に幅広いスキル・特性が求められます。
本記事では営業の仕事内容や必要とされるスキル、特性について整理するととともに、営業マンを育成する方法について解説するので、ぜひ、参考にしてください。
営業とは
営業とは、広い意味では企業などが利益を得るために継続して事業活動をすることです。「営業時間」「営業所」といった使い方をします。
狭い意味での営業が意味するところは、販売・販促・マーケティングなどを中心とした消費者・顧客・市場を対象に行う活動です。「営業部」「営業マン」といった使い方をします。
営業部に所属する社員(営業マン)の主な業務は、定期的または必要に応じて不定期的に、自分が担当する取引先企業や顧客など得意先へ出向き、顔つなぎをしつつ自社商品・製品・サービスなどの紹介やセールス(売り込み)をすることです。また、新規顧客の開拓も営業マンの重要な業務に含まれます。
営業マンの業務内容について、以下でさらにくわしく説明します。
営業の仕事
営業マンの仕事の基本は、顧客との契約を取り付けることによって会社に利益をもたらすことです。その手段として、顧客が求めている情報をリサーチして提供したり、自社が製造する商品・製品や提供するサービスを顧客に紹介して売り込んだりします。得意先を訪問するスケジュール管理や顧客と円滑な人間関係を築く交際術など、幅広いスキルが必要な仕事です。
また、営業戦略を立てるためのリサーチと企画作成も営業マンの仕事です。契約を成立させて利益を上げるためにはターゲットとなる企業や個人客・消費者をどのように設定すべきか、出向くべき企業の絞り込みとアプローチ方法を検討・決定・実行します。
このように営業マンの仕事の範囲は幅広く、単に自社製品・商品・サービスを売り込むだけの仕事ではありません。
営業の種類
営業には主に「法人営業」「個人営業」「代理店営業」「ルート営業」「新規営業」「反響営業」の6種類があります。それぞれの種類について以下で解説します。
法人営業
法人営業とは企業や組織・団体などを対象に営業活動を行うスタイルです。個人顧客でなく大規模な組織と取引するため、契約金額や取り扱う製品の量などが大規模になる傾向があります。
法人営業では顧客を納得させて信頼を得ることにより契約につなげるため、根拠に基づいて理論的かつ合理的なアプローチを行う営業スタイルが中心です。リサーチやデータ収集に基づくマーケティングスキルや資料を作成してプレゼンテーションを行うスキルが求められます。
個人営業
個人顧客を対象に営業活動を行うスタイルが「個人営業」です。営業をかける相手が実際に購入する顧客となるため、契約を締結する相手と決裁者が異なる法人営業よりも顧客との距離が近い分、営業活動をスムーズかつ短期間に行えます。
個人営業に置いて用いる営業手法は、取り扱う商品・製品・サービスによりさまざまです。対法人の新規営業のように電話でアポイントを取ったり飛び込みで営業したりする場合もあれば、金融商品や不動産など顧客の問い合わせや来店に対応する形の営業活動もあります。
代理店営業
商品・製品のメーカーやサービスを提供する企業の代理店として営業活動を行うスタイルが代理店営業です。メーカーやサービス提供企業と代理店契約を結び、販売実績によってインセンティブを獲得する仕組みが主となります。
数ある代理店の中から自社での販売数を伸ばすために商品やサービスのアピールポイントなどを工夫する必要があり、営業職の中でも特にスキルが求められる種類の営業です。
ルート営業
既に取引関係のある企業を定期的に訪問する営業スタイルをルート営業といいます。ルート営業では先方の担当者と顔をつなぐことにより、継続的な取引の維持を図ったり、新しいサービスや商品・製品を売り込んで契約締結のために奔走したりします。既存顧客と密なコミュニケーションをとることによって先方の課題やニーズをヒアリングし、深い信頼関係を築いていくことがルート営業の要です。
新規営業
新規顧客を獲得するために営業活動を行う手法が新規営業です。新規営業の具体的な営業手法として、電話で面談のアポイントを取って商談を行う「テレアポ営業」や、アポイントを取らずに顧客を訪問する「飛び込み営業」など、強く働きかけるスタイルがあります。
ただし、新規営業の中には主に顧客からの問い合わせに応じて営業を行う「プル営業」もあるなど、さまざまな手法が用いられています。
反響営業
顧客からの問い合わせに対応する形式の営業方法を反響営業といいます。顧客主導であり受動的な営業となる点が特徴です。主な営業方法は顧客からの問い合わせに応じて面談のアポイントを取り、商談を行います。
最初から製品・商品・サービスに関心を持ってコンタクトを取ってくる顧客が相手となる営業のため、比較的精神的なプレッシャーは少なめです。
営業の主な業務の内容
営業マンが行う主な業務の内容には、「アプローチ先顧客候補の選定」「提案・プレゼン」「見積もり・受発注作業」「納品・請求作業」「継続的なケア」などがあります。それぞれの業務について以下でそれぞれ、解説します。
アプローチ先顧客候補の選定
営業の最初の仕事は、商品・製品・サービスなどを売り込むアプローチ先・顧客候補を選定することが営業の第一歩です。アプローチ先の選定後は、顧客がそれぞれ抱える問題や課題を解決する提案ができるような営業内容を検討・決定します。
逆に言えば、売り込む商品・製品・サービスが顧客の抱える問題・課題を解決できるかどうかがアプローチ先を選定する基準になるのです。
提案・プレゼン
上記で検討・決定した内容に基づき、顧客の問題や課題を解決する提案やプレゼンを行います。この段階で必要になるものが売り込む商品・製品・サービスの内容を伝えるプレゼン資料です。どれほど優れた商品・製品・サービスであっても、その価値や顧客の問題解決につながることを納得させることができなければ契約には至りません。
見積もり・受発注作業
顧客に提案内容に関心を持ってもらった後、見積もりを作成します。自社の利益を確保しつつ、顧客の予算や問題・課題の解決と一致させる方向で契約金額をすり合わせていく必要があるのです。
納品・請求作業
契約内容に基づき、商品・製品・サービスを納品します。納品は別の部署や営業事務が行うケースもあるでしょう。必要に応じてトラブルへの対応もしなければなりません。
納品完了後は請求書を作成し、請求作業を行います。決済時にトラブルにならないように、契約の段階で請求方法や請求時期、支払い方法や支払期限を決めておきましょう。また、請求後は期限内に決済されているかの確認をすることも営業や営業事務の業務範囲です。
継続的なケア
その後も営業の業務は続きます。納品完了後も、顧客との関係維持、トラブルや不具合が発生した場合の対応などが必要です。アフターフォローをしっかりと行うことにより顧客の信頼を獲得でき、今後の新たな取引に結び付けていくことができます。
営業に必要な5つのスキル
営業に求められる主なスキルとは、「コミュニケーション能力」「好奇心」「商品知識・経験」「ヒアリング能力」「課題発見能力」です。各スキルについて以下で解説します。
コミュニケーション能力
コミュニケーション能力とは一般的に、相手と意思疎通を図る能力であり、営業に欠かせないスキルの1つです。顧客に商品・製品・サービスに関する情報を正確に伝えることは営業の基本であり、そうしてこそ顧客の関心を引き付けて契約に導くことができます。
コミュニケーション能力においては、会話スキルの巧拙だけでなく、相手に提供するべき情報をわかりやすく伝えられるかどうかがポイントとなります。また、顧客と契約条件について交渉する場合も相手の言いなりにならず、納得してもらえるように説明しなければなりません。
好奇心
幅広い分野に好奇心を感じられることも営業に必要なスキルの1つです。顧客の業界や課題に強い関心を抱いてこそ、顧客目線に立って解決策を考え、提案できます。また、変化の激しい現代における営業マンには、常に最新の情報を得るべくアンテナを立てておき、臨機応変に対応できるスキルも必要です。
商品知識・経験
当然のことながら、売り込む商品・製品・サービスに関する専門的な知識が営業マンには求められます。商品・製品・サービスのラインナップやオプションなどが全て頭に入っていること、あるいは、必要に応じて即座に情報を引き出し顧客に提示できる準備が営業には必要です。
くわえて、机上の知識に留まらず、その商品・製品・サービスを実用するうえで起こりうる顧客の疑問やトラブルについても把握しておき、有用なアドバイスを顧客に提供できるだけの経験値を持っていることが望ましいでしょう。前任の担当者や過去資料などから過去事例を学んでおくようにしましょう。
ヒアリング能力
営業活動における最重要スキルが、顧客の要望を傾聴し正しく理解するヒアリング能力です。顧客が抱える問題・課題、悩みや不安を正確に把握できてこそ、顧客が望む解決へ導く提案をすることができるのです。
端的に問題や課題を伝えてくれる顧客ばかりではありません。顧客のペースで話してくれる内容にしっかりと耳を傾け、顧客が抱えている問題や求める解決策が何であるのかを汲み取るヒアリング能力は営業マンに欠かせません。
課題発見能力
ヒアリング能力が高いだけでは営業として十分ではありません。ヒアリングの後、顧客の抱える課題とは具体的に何であるかを明確化・言語化する「課題発見能力」が必要です。課題の発見がなければ有効な解決策も見つけることはできません。
顧客が抱える課題の90%以上は、まだ表面化するに至っていないが漠然と不安を感じるといった潜在型の課題であると言われています。そのため、営業が顧客の代わりに問題点を整理し、課題を明確化して再提示しなければなりません。
課題を発見し再提示することにより、顧客のニーズを引き出せれば契約につなげやすく、継続的な関係を作ることも可能です。
営業に向く人の5つの特徴
営業に適性がある人には、その思考と行動のパターンに特徴があります。思考パターンと行動パターンのどれか一つだけでなく、すべてを併せ持っていることが営業マンの能力として重要です。以下で、それぞれの思考・行動の特徴について解説します。
論理的思考と行動
営業を成功させるためには、顧客や潜在顧客に対してやみくもにアプローチするだけでは非効率です。そこで、「どうすれば顧客の課題を解決できるか」「どうすれば信頼を得られるか」などを論理的に思考しつつ、行動してその結果を検証し改善を図っていく努力必要になります。
PDCAを繰り返しながら、すぐに良い結果を得られなくてもコツコツと論理的思考と行動とを継続できる人は営業に向いているといえるでしょう。
計画的な思考と行動
営業に向いている人は先を読んで判断したりスケジュール管理をしたりと計画的な思考と行動をします。市場や顧客・潜在顧客のリサーチを実施して課題発見に努め、トラブルを未然に防ぐ対策も怠りません。商談に臨む時は事前準備や根回しもしっかりと行います。
根回しとは、契約における顧客や顧客企業の担当者の権限やキーパーソン(契約決定権を持つ人)を把握しておく、商談を効率的に進めるために先立って資料を提供しておく、といったことです。
積極性
指示されたり顧客に要求されたりしなくても自ら積極的に情報収集し、行動に移せることも営業に向く人の特徴です。また、フットワークの軽さや行動の速さも営業において有利になるケースが多いといえます。
くわえて、人間関係を築き維持することへの積極性も重要です。顧客に対して細やかな気配りをし、連絡やアフターフォローを面倒と感じずにマメに働きかけるなど、積極的な性格と行動力が営業マンの実績に良い効果をもたらします。
肉体的な強さ
健康で体力があり、多少のオーバーワークでも病気をしない頑健さがあることも、営業に向いている人の特徴です。営業マンは多忙で不規則な生活になるケースもあるため、肉体的な強さが求められます。
営業は顧客先を回るなど社外での活動はもちろん、プレゼン資料作りなど社内での業務も決して少なくありません。また、顧客のペースに合わせてスケジュールをやりくりしたり、顧客と良い関係を築くために就労時間外の対応をしたりすることもあります。
精神的な強さ
営業には多くのストレス源があるため、ストレス耐性の高い精神的な強さが必要です。たとえば、飛び込み営業の場合は営業をかけた先で冷たい反応をされることが珍しくありません。また、商談を進める中で手ごたえを感じていたにもかかわらず、契約の直前になって競合他社に負けるケースもあります。それから、社内では営業成績や達成ノルマなどのプレッシャーもあるでしょう。
営業を長く続けていける人は、他人からどんな対応をされてもくじけない気の強さや、失敗してもいちいち落ち込んだり傷ついたりしないなど良い意味で「プライドが高すぎない」といった特徴があります。失敗を恐れずチャレンジを楽しめることも、営業に向いた人に共通しています。
営業スキルを向上させるための4つの育成方法
営業マンの育成方法には大きく分けて社内研修と人事評価制度の2つがあります。社内研修は営業実務のノウハウを身に付けさせることが目的、人事評価制度は営業マンが自ら成長しようとする意欲を維持・喚起することが目的です。
社内教育制度には業務を実際に行いながら研修するOJTや座学研修のOFFJTがあり、先輩営業マンが講師になれば教える側にとっても成長の機会になります。OJTやOFFJTで教えるべき内容は以下の3つです。
必要なスキルを具体化したうえで習得させる
営業の仕事には、電話アポイント、商談・プレゼン、クロージング(契約締結)といった段階があります。営業マンの育成において、営業活動の各段階で役立つスキルを段階別で具体的に示し、習得させることが大切です。たとえば、電話でのアポイント取りに必要なスキルは会話力、商談に必要なスキルはプレゼン資料作成や良い雰囲気づくり、契約締結する段階で必要なスキルやハウツーは決済期日の決め方や決済方法などです。
売り込む商品・製品・サービスへの理解を深めさせる
顧客や潜在顧客に何を聞かれても即座に答えられるように、営業マンは売り込む商品・製品・サービスを熟知していなければなりません。営業マン育成にあたり、顧客に提示する資料を暗記するほど読み込ませることはもちろん、開発部門や接客部門など社内各部署からの情報にも触れさせるようにしましょう。
事前準備とロールプレイング
商談の際は営業に行った先でスムーズに商品・製品・サービスに関する説明や契約手続きができるように、事前準備を徹底することが大切です。営業マンを育成する上司や先輩がプレゼン資料の内容をチェックし、プレゼンのロールプレイングをさせるようにしましょう。しっかりと準備させることによって、営業マンが自信をもって営業活動に励めます。
上記の社内研修と同時に重要な育成方法が人事評価制度の再構築です。以下で解説します。
人事評価制度の再構築
いくら社内教育が優れた内容であり営業マンが実績を上げられるようになったとしても、人事評価によって努力と実績に報いていかなければ、営業マンのモチベーションを高く保つことは困難です。人事育成制度を見直すと同時に、それに合った人事評価制度を再構築していく必要があります。
人事評価制度の見直しに当たって重要なことは、評価基準を明示して公正に評価することです。また、企業の目標と営業マン一人ひとりの目標が同じ方向であることも大切です。
人材育成に力を入れて営業力を強化しよう
営業マンにはコミュニケーション能力や論理性、計画性、積極性、行動力、強く健康な心身など多彩なスキルと特性が求められます。営業は幅広い分野でのスキル・特性が必要な業務のため、優秀な営業マンを育成するのは容易ではありません。
そこで、OJT・OFFJTなどの社内研修を充実させるとともに、人事評価制度の再構築を行って社員のモチベーションを高める必要があります。人事評価制度再構築に関する疑問がありましたら、あしたのチームまでお気軽にご相談ください。
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