ビジネスシーンでは「アサイン」という言葉が使われます。アサインは任命するなどの意味で使用される他、「ジョブアサイン」をひとつの単語として使われることもあります。アサインの意味や、ジョブアサインについての知識は、マネジメントや人材育成の質を高めるために役立ちます。
本記事では、ビジネスシーンにおけるアサインの定義と、ジョブアサインの手順、効果的に実施するポイントを解説します。
アサインとは
ビジネスシーンで使われる「アサイン」には、配属や担当業務を「割り当てる」「任命する」などの意味があります。英単語のアサイン(assign=割り当てる・任命する)の意味と同様で、実際、英語圏のビジネスシーンでもそのまま同じ意味で使われることがあります。
まずはその定義について、類似の言葉との違いを含めて確認しておきましょう。
アサインメントとの違い
アサインという用語が使われるのと同様の場面で、「アサインメント」という言葉が使われることがあります。
アサイン(assign)は動詞形で、アサインメント(assignment)は名詞形というだけで、基本的な意味の違いはありません。
例えば「アサインメントを受け入れる」など、文章の流れで名詞形にする必要がある場合に、アサインメントが使われます。
ジョインとの違いとは
ジョイン(join)とは、ビジネスシーンでは「参加する」「合流する」などの意味があり、アサインと似た場面で用いられます。
アサインとの違いは、「能動的」であることです。アサインは上司から任命されるなどの受け身の言葉ですが、ジョインは自分から参加していく能動的な意味があります。
例えば「新規プロジェクトにジョインしたいと思います」などの使い方です。
アサインの基本的な使い方
アサインという用語の基本的な使い方を確認しておきましょう。
ビジネスシーンにおいてアサインは、例えば以下のように使われます。
- Aをプロジェクトリーダーにアサインする予定です。
- 私は来月より営業部長にアサインされることになりました。
- この業務に誰をアサインするか検討中です。
これらは「ジョブアサイン」と呼ばれる活動の一場面です。
ジョブアサインは、経営・マネジメントにおいて重要な活動の一つとして知られています。ジョブアサインを適正に行えるかどうかは、業績や人材育成、従業員のモチベーション向上などに影響するためです。
アサインの意味を知るためには、ジョブアサインについての理解を深める必要があります。ジョブアサインについて詳しくは、この記事内で後述しているので参照してください。
業界別アサインの使い方
アサインという用語は、業界によって違う意味で使われることもあるので注意が必要です。
「割り当てる」という基本的な意味は共通ですが、割り当てをする対象が異なることがあります。主な3つの業界について、アサインがどのように使われるのかを確認しておきましょう。
観光・ホテル業界
観光・ホテル業界で、アサインは「客室などの割り当て」という意味で使われることがあります。
例えば以下のような使い方です。
- 〇〇様は子連れなので、角部屋のA室にアサインした
- 座席のアサインは、事前にお客様に選んでもらうシステムです
予約する側ではなく、ホテル側・航空会社側が「予約者を割り当てる」という意味合いで使われます。ホテル業界で、部屋の割り当てをする際に使われる「ルームアサイン」や、飛行機の座席割り当てを指す「シートアサイン」などの用語もあります。
人材業界
人材業界では、「紹介」「派遣」などの意味合いでアサインが使われることもあります。例えば以下のような使い方です。
- 追加で2名をアサインしてほしい
- 今月から〇〇社にアサインされることになりました
こちらも「人材を派遣する側」の動詞として使われるため、派遣される人材が主語の場合は「アサインされる」となります。
「仕事を割り当てる」という意味とほぼ同じで、後述する「ジョブアサイン」と同様の使われ方です。
IT・コンピューター業界
IT業界では、「機能や数値などの割り当て」の意味で使われることがあります。
例えば以下のような使い方です。
- PCのキーボードのF1キーに、よく使う機能をアサインする
- マウスのサイドボタンにアサインされた機能を変更する
このように、キーボードやマウスなどの特定のボタンに対して何らかの機能を割り当てることを「キーアサイン」といいます。
ジョブアサインとは
業界を問わず、アサインという言葉は「ジョブアサイン」にまつわる場面で登場します。ジョブアサインとは、仕事の割り振りや配属を決めることです。
ジョブアサインは主にマネジメントの一環として行われます。組織やチームの目標達成のために、どのような業務や役職が必要なのかを考え、適材適所に人材をアサインしていく活動です。マネジメントにおいて重要な概念であり、ジョブアサインを効果的に実施できるかどうかは、組織の目標達成や人材育成などに大きく影響します。
ジョブアサインの重要性
ジョブアサインは以下の3つの点で、ビジネスにおける重要度が高いといえます。
- 業績アップ
- 人材育成
- 従業員のモチベーション向上・維持
効果的なジョブアサインができるマネージャーがいるチームは、人材が適材適所に配置され、各メンバーの能力が引き出されることで「業績アップ」が期待できます。
また部下に上手く仕事を任せ、効果的に経験を積ませることによる「人材育成」の促進のためにも、ジョブアサインは重要です。
さらに、適切なジョブアサインは従業員の責任感や仕事のやりがいなどにつながり、「モチベーション向上・維持」にも役立ちます。
ジョブアサインの手順
ジョブアサインの手順について詳しく知るために、リクルートワークス研究所の提唱している「ジョブ・アサインメントモデル」が参考になります。
ジョブ・アサインメントモデルとは、ジョブアサインの方法を4つのステージに分けて考えるフレームワークです。4つのステージを意識して実施することで、効果的なジョブアサインに必要な活動全体を網羅できるというもの。以下より、その4つのステージについて詳しく見ていきましょう。
参考:ジョブ・アサインメントモデルのすべて|研究プロジェクト|リクルートワークス研究所
目標設定
1つ目のステージは、チーム・組織が目指す「目標」の設定です。
数値目標を決定し、その達成のために必要な具体的な業務や、必要なポジション・役職などの「ジョブ」を決定していきます。経営陣などからマネージャーに降りてきた目標数値や期限などについて、擦り合わせなどを行い、会社全体や各メンバーへの影響なども考慮しながら目標数値を調整します。
その目標は、そのままチームに伝えるとは限りません。チームとしてはそれよりも高い目標を掲げるなど、「目標をどのようにチームに伝えるか」について工夫することも重要です。
職務分担
次は、誰をどの業務・役職(ジョブ)にアサインするかを決めるステージです。
必要なスキルや、求められる資質などをよく考慮して、最適な人材をアサインしていきます。単に割り振りを通知するだけでなく仕事の役割について十分に説明し、「アサインされた」という意識を担当者に持たせることが、このステージのポイントです。
期限や権限など、ジョブの詳細をしっかり伝え、アサインされた担当者が責任を持って自主的に行動できるようにします。
達成支援
3つ目は、各メンバーが目標達成できるよう「支援」するステージです。
ジョブアサインは、「仕事を割り振って終わり」ではありません。割り当てた仕事が順調に進んで目標を達成するようサポートする活動も含まれます。
例えば問題が発生した際のフォローや、目標達成が難しくなったときに軌道修正できるようサポートするなどです。重大な問題については責任を取り、自ら問題解決にあたるなどの対応も、ジョブアサイン担当者の役割に含まれます。
仕上検証
仕事が完了した後の「検証」も、ジョブアサインの成功には不可欠なステージです。目標の達成度合いや、その過程について振り返り、次回に活かせるように分析を行います。批判的なフィードバックだけでなく、良い点を褒めるなど、モチベーションアップにつながるフィードバックを忘れないようにすることが重要です。
また、マネージャーがメンバーを分析するだけでなく、本人が自己分析するような仕組みをつくることも重要といえます。さらに、検証する対象には、ジョブアサインを担当する「マネージャー自身」も含まれることを忘れてはなりません。自身のジョブアサインの各ステージに問題がなかったかどうか内省し、マネジメントの質を向上させていきましょう。
ジョブアサインを上手に行うポイント
ジョブアサインを効果的に行うには、いくつかのコツを押さえておくことが重要です。特に重要度の高い4つのポイントを以下に解説します。
モチベーションを意識して目標設定をする
目標設定においては、「モチベーションにつなげること」を意識することがポイントです。目標が、単なる「上から与えられたノルマ」になってしまっては、モチベーションにつなげることができません。何のためにその目標を達成するのか、各自が意識できるようにすることが重要です。
ジョブ担当者のモチベーションだけでなく、ジョブアサインをするマネージャー自身のモチベーションも高まるように工夫しましょう。それには各自が、目標の深堀りや再解釈などをして、「自分の目標」として落とし込む活動が必要です。
人材育成を意識したアサインをする
ジョブアサインでは「人材育成」の観点を忘れないようにすることも重要です。
目先の成果や効率だけを考えると、どうしてもスキルや経験の「適正」だけでアサインを決めてしまいがちです。人材育成のためには、将来的な成長も見越して、経験したことがない新しい分野に挑戦させるようなアサインを決めることも重要といえます。
目標設定から仕上検証まで、4つのステージ全てにおいて「人材育成」の意識を忘れないようにすることが、ジョブアサインの成功には不可欠です。
アサイン後のサポートは適切な頻度・レベルで行う
各メンバーが任された仕事を順調に進められるよう、アサイン後のサポートをすることは重要ですが、「手を出しすぎる傾向」にならないよう注意しなければなりません。細かい指示を出しすぎると、メンバーの成長につながらず、「いつも見張られていて、やりにくい」と感じられることにもなりかねません。
とはいえ逆に、何でも部下に任せるだけの「丸投げ」になることも避けるべき状況です。担当者の自主的な行動に任せつつも、適切な頻度とレベルでサポートやフォローをすることが、ジョブアサインを成功に導くポイントです。
成功・失敗の両方について検証をする
仕上検証の際は、目標を達成できた場合などの「成功」と、達成できなかった「失敗」の両方について分析することが重要です。成功を「再現」できるようにして、さらに高い成果が出せるよう成長してもらうには、成功の要因が何かを分析することが不可欠です。
失敗の原因についても一緒に分析することで、モチベーションが落ちないように助けることができます。
ジョブアサインの2つの企業事例
高い成果を収めているマネージャーは実際、どのような方法でジョブアサインをしているのでしょうか。実際の事例を、以下に2つ紹介します。
株式会社IDOM
1つ目は、中古車の買取・販売で知られる株式会社IDOM(旧・株式会社ガリバーインターナショナル)の事例です。高い成果を出している、ある店長は「目標の伝え方」を工夫しています。経営者側から降りてきた必要な目標に対して「それよりも高い目標」を設定し、部下には本来の目標を知らせないとのこと。
全員が楽しく仕事ができる状況を優先しつつ、各メンバーが大切にしていることを尊重しながら目標達成できるよう、メンバーの強みを活かしたアサインを実施。支援の部分では、数字につながる仕事以外の雑務をできるだけ排除し、「営業に集中させる」ようにしています。
ユニリーバ・ジャパン
次に紹介するのは、スキンケア製品などで知られるユニリーバ・ジャパンの事例です。ユニリーバ・ジャパンのあるマネージャーは、上から設定された目標に対して、「Why」をよく検討しています。つまり、目標の背景などについて深掘りして考え、自分なりに「咀嚼」してから部下に伝えるという流れです。
また、目標達成のためにどうすればよいかをマネージャーの独断で考えるのではなく、チームのメンバーと集まってアイデアを出し合いながら相談しています。
その結果、自然に「私はこのジョブをやりたい」という自主性の向上につながっているとのことです。支援については、月1回の個人面談を実施し、振り返りや調整をしています。
アサインを上手に行いモチベーションアップにつなげよう
アサインは、マネジメントにおける重要な活動の一つです。適切なジョブアサインは、業績アップや人材育成だけでなく、モチベーションに大きく影響し、定着率などにも影響を与えます。
基本的なジョブアサインの手順やポイントを意識し、効果的なジョブアサインを実施していきましょう。
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