近年ビジネスシーンでもよく耳にするようになったマルチタスク。一人ひとりの能力を最大限に引き出すことが必要不可欠となった現代では、マルチタスクで業務をこなすことは当たり前となってきています。ただ、マルチタスクは人間の脳の仕組みには合っておらず、脳疲労を起こし業務効率の低下を招くという意見もあります。
本記事では、マルチタスクについて、シングルタスクとの違い、仕事で必要とされる理由、事例、苦手な理由、苦手な人の特徴、メリット・デメリット、行うコツなど紹介します。
マルチタスクとは
そもそもマルチタスクとはコンピュータで使用される用語で2つ以上あるプログラムを1台のコンピュータで1つのプログラムの入力・出力の間に、もう1つのプログラムを実行することで、あたかも同時に実行しているように見えることをいいます。
そこから派生して、ビジネスの現場ではいくつかの仕事を同時に行うことをマルチタスクと呼ぶようになりました。例えば、報告書の作成をしながら、メール返信や電話の対応を行うのもマルチタスクに当てはまります。
スマホのマルチタスク機能とは
スマホのある機能もマルチタスクと呼びます。
スマホのマルチタスク機能とはホーム画面に戻らなくとも、起動中であれば他のアプリケーションが一覧となって切り替えられる機能のことです。ただし、あまりに多くのアプリケーションを起動してマルチタスク機能を使用すると電池の消耗が早いので注意が必要です。
マルチタスクとシングルタスクの違い
マルチタスクの反対の言葉がシングルタスクです。シングルタスクとは、従来からあるコンピュータのシステムで、一度にひとつアプリケーションしか実行できません。ビジネス上でも、複数のタスクを同時進行で遂行するのではなく、ひとつのタスクを集中してこなすことを言います。マルチタスクとは全くの正反対の言葉でしょう。
マルチタスクが仕事で必要とされる理由
人口減少と人材不足が深刻化していくなかで、一人の人が複数の業務をかかえることが当たり前となってきました。また、IT技術の進化により、電話以外でもメールやチャットでスピーディなやりとりが必要とされる中で、業務上で小さなマルチタスクが発生する場面も増えています。
さらに日本では、欧米と違ってまだまだジェネラルな育成方法が強い社会文化があるので、マルチタスクが発生しやすいです。このようなマルチタスクを遂行が求められる中、いかにうまくマルチタスクを遂行するかと言う点が重要視されているでしょう。
マルチタスクの例
ここでは、実際にビジネスの現場で発生しやすいマルチタスクの例を紹介します。
関連性のない業務の遂行
関連性のない二つの業務を同時に進行しなければならない場合、マルチタスクが発生します。例えば、営業担当者として新規顧客獲得のための資料を作成しているとします。その作業とは別に、プロジェクトチームにも所属しており、海外での営業戦略への意見提言を求められているとしましょう。
資料作成する納期と、提言資料を作成する納期が近い場合にはスケジューリングをして同時進行での業務が発生します。また、顧客にどのような提案を行おうか、海外展開はどうなっていくのだろうかといった各業務に関連した想像などに脳の領域が持っていかれやすいでしょう。
業務遂行とチャットへの返信
報告書の作成などひとつの業務を遂行しながら、チャットへの返信を行うこともマルチタスクに含まれます。チャットひとつの返信であったとしても、作業を一旦中断することで、また報告書の作業に戻る際に、どの作業を行っていたか、どのように書くつもりだったのか思い出す必要があるでしょう。
また、報告書の作成に戻った後も「どのような返信がくるだろう」「あの書き方でよかったかな」などの考えが脳の領域をとってしまいます。どのような小さな作業であっても、複数の作業が同時に発生している場合はマルチタスクと言えるのです。
音楽を聴きながら業務を行う
実は音楽を聴きながら業務を行うのもマルチタスクに含められます。
聞き流しているようでも、歌詞や音楽の音程・リズムなど脳は処理に領域を使用しており、同時に業務を行えばマルチタスクにあたります。特に日本語の歌詞などは頭に入ってきやすく作業が滞りやすい原因となる可能性が高まるでしょう。
しかし、音楽を聴きながら業務を行うのは、心理的なメリットや、飽きを解消してくれる効果が期待できるので、一概によくないとも言えません。
マルチタスクが人間の脳は苦手
マルチタスクを実施すると人間の脳は疲労を蓄積しやく、作業効率が下がると言われていますが、それはなぜなのでしょうか。複数端末の同時利用するなどが常態化している人の前帯状皮質灰白質と呼ばれる脳の一部が、密度が小さくなることが報告されています。
前帯状皮質灰白質の密度の低下が、脳の認知機能を低下させ、作業効率を下げているのではと推論されているのです。人間の脳はマルチタスクを実施するのが苦手で、かつ密度が小さくなってしまうという現象まで起こりやすいので、上手く脳疲労を避けてマルチタスクを実施することが重要でしょう。
マルチタスクが苦手な人の特徴
ここでは、特にマルチタスクが苦手な人の特徴をみてみましょう。
完璧主義
完璧主義な人はマルチタスクが苦手な傾向があるでしょう。
完璧主義な人はものごとの細部にかけて、間違いがないよう完璧に仕上げたいと思う傾向があるため、脳の処理に領域を使用しがちです。そこにマルチタスクをもってくると両タスクの細部が気になるため、他の人よりも負荷が増加。
また、処理しきれずに、二つとも中途半端な出来上がりになってしまったとストレスをためやすい傾向にあるでしょう。
スケジュール管理が苦手
スケジュール管理が苦手なこともマルチタスクが苦手な人の特徴です。
スケジュールを立てて、その日程通りに上手く業務を遂行することが苦手なため、仕事が溜まりやすくそれにストレスを感じやすいです。
スケジュール管理が苦手な人は、複数の仕事を任せられるとどこから手をつけていいのかわからなくなったり、他のタスクが気になってひとつの仕事に集中できなかったりする特徴があるでしょう。
ひとつのことに深く集中しやすい
ひとつのことに熱中して集中しやすいタイプも、マルチタスクが苦手な傾向があります。
複数の仕事を同時進行的に処理していける人は、バランスよく集中力を分散させており気づきの能力が高いです。ただその分深く考えて本質的な結論を導き出すといった作業が苦手な方も少なくなりません。
一方、一つの事に集中しやすいタイプは深く集中しているため、そこでのパワーを発揮しやすい分、他のタスクについて察して作業を行う能力が低い傾向にあるでしょう。
マルチタスクのメリット
ここではマルチタスクのメリットを3つ紹介します。
複数のタスクを遂行できる
まずは複数のタスクを同時期に遂行できるという点が最大のメリットです。シングルタスクのみで仕事を行うと、他のタスクのスタート時期が遅れてしまうため、複数のビジネスを同時進行する場合に遅れがでてしまいます。
マルチタスクで業務を行えば、とりあえずスタートは切れるので、次の業務は他の人に任せるなど、他者に任せて進めてもらっている状態で他の仕事ができるなどのメリットを享受できるでしょう。
他者とのコミュニケーションが活発化
マルチタスクアは他者とのコミュニケーションを活発化させるメリットがあります。マルチタスクを避ける場合、部下など他の人達はその人に話しかけにくい空気が出てしまいます。
そうすると、他者とのコミュニケーションが不足して、コミュニケーションによって生まれるシナジーを享受することができません。マルチタスクを実施している状態であれば、他者も気軽に話しかけることができ、コミュニケーションが活発化するでしょう。
情報が入ってきやすい
情報が入ってきやすい点もマルチタスクのメリットです。
マルチタスクは複数かつ幅広い情報を取り入れながら脳が処理している状態でしょう。そもため、マルチタスクでタスクを進めることで、シングルタスクで集中してタスクを進めるよりも情報が入ってきやすいというメリットがあります。
マルチタスク中に関連性のない情報源で得た情報が実は一方の方のタスクでもいいヒントになったということも少なくはありません。そのため成果物のクオリティがあがるといった予期せぬメリットも得やすいでしょう。
マルチタスクのデメリット
ここではマルチタスクのデメリットを3つ紹介します。
作業効率の低下
マルチタスクは作業効率の低下をまねく点がデメリットです。
人間の脳はマルチタスクの対応にはかなりの負荷がかかるため、認知能力が低下し作業効率が下がってしまいます。
そのため、シングルタスクと比較すると、ひとつのタスクを遂行するのに時間がかかったり、ミスなどにより思うようなクオリティの成果物が完成しなかったりということにつながりかねません。
ストレスの増加
ストレスが増加してしまう点もマルチタスクのデメリットです。シンプルに脳疲労が蓄積する事象自体が人のストレスになってしまいますし、マルチタスクを行った場合、仕事を抱えやすくなってしまうので負荷が増大します。
ストレスがかかった状態ではさらに作業効率が低下するといった事態が起きやすく、悪循環を生んでしまうのです。
脳疲労の蓄積
脳疲労の蓄積もマルチタスクのデメリットです。脳疲労は肩こりや頭痛など人の身体に影響を及ぼします。企業のベースであるヒトが健康的に働けないリスクは大きなデメリットと言えるでしょう。脳疲労をできるだけ避けて疲労が蓄積しすぎないようにうまく解消していくことが必要とされます。
マルチタスクを行うコツ
マルチタスクが今の働き方に必要不可欠になってきており、さまざまなメリットがある一方で、ストレスなど健康面への心配も懸念されることがわかりました。
ここでは、マルチタスクを上手く実行するコツを3つ紹介します。
シングルタスクを行う時間を決める
ひとつめに、時間を区切ってシングルタスクを実行する時間を設けることが大切です。考えなしに、とにかくマルチタスクできた仕事を処理しているのでは、脳疲労が恒常化してしまい身体への影響が心配されます。「マルチタスクは脳・身体に負担がある」ということをまずは意識して、上手にマルチタスクの時間を決めることが大切です。
例えば、朝はメールの返信や社内の人とのコミュニケーションなどマルチタスクを実施することを決め、午後から夕方までの3時間は誰とも連絡を取らずに、シングルタスクに集中するなどです。マルチタスクの時間を短縮化することで脳への負担を減らせる一方で、意識的にシングルタスクを実行することで作業効率のアップが見込めるでしょう。
環境を変える
タスクを実行する際の環境を整えることも、マルチタスクを円滑に進めるポイントです。マルチタスクを行う際は会社に出社して行い、シングルタスクを実行する際は自宅やカフェなど集中できる環境で作業を行うのが好ましいでしょう。
いかにシングルタスクを実行しようと思っても、会社に出社してしまうと話しかけられたり、新たな業務が増えたりとしがちです。人とのコミュニケーションを避けるために、数時間だけでも集中できる環境に身をおいてシングルタスクを実行することで、マルチタスクの方も効率的に処理できるでしょう。
マインドフルネスを取り入れる
マインドフルネスを取り入れることも、円滑なマルチタスクを遂行するポイントです。マインドフルネスとは、今この瞬間に意識を向けた状態のことで、瞑想をすることで到達します。
脳をリラックスすることができ疲労の解消が見込めます。いち早くグーグルはマインドフルネスの時間を設けており、社員のストレス軽減および生産性のアップに効果を感じているようです。マインドフルネスを実施することで、健康的なリスクを避けマルチタスクを上手く進められる可能性が高まるでしょう。
脳疲労を防ぎつつ上手にマルチタスクを行おう
マルチタスクは現代のビジネス環境では、欠かせない業務遂行方法ですが、作業効率やストレスなどの点で懸念があります。マインドフルネスなどリフレッシュ方法も工夫しながら、上手に活用することが必要でしょう。
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