総務部や人事部で採用、エンパワーメント施策、人事評価、労務、給与計算など人事に関わる業務の幅は広く、専門性も必要とされます。急な業務の変更で給与計算の担当に配置され、どのように業務を進めたらいいのか不安な方も多いのではないでしょうか。
本記事では給与計算担当者の仕事に関する、基本的な情報をお伝えします。給与計算担当者が実際にどんな仕事を行うのか、どんなスキルが必要なのか知りたい人は、ぜひ参考にしてください。
給与計算担当者の業務内容とは
● 従業員に毎月賃金を支払う
● 国に正しく税金を納める
上記が、給与計算担当者が行う主な業務です。
「賃金の支払い」についてもう少し具体的にいうと、基本給や手当を合算した総支給額から、税金や社会保険料などの各種控除を差し引いて、実際の従業員の手取り額を計算して給与明細票で掲示することまで、給与計算担当者の業務です。
給与は従業員の労働の対価です。
その支払いに対する責任は大きく、給与計算担当者は、計算をきっちり見直す丁寧さや、社会保険制度・税制度の知識、また社内規則の知識を併せて持っていることが求められます。
地味な事務仕事と思われがちですが、責任が大きいぶんやりがいもある仕事だといえるでしょう。
給与計算担当者の実務の流れ
- 勤怠締め
- 労働時間の集計
- 給与支給額の計算
- 保険料と税金の計算
- 給与の振込処理
- 社会保険料・税金の納付
上記は、給与計算担当者が行う、実際の仕事の流れです。
給与は原則毎月1回以上、一定の期日に支給しなくてはいけません。締め日から計算を始めて、支給日前に振込手続きを終わらせておく必要があります。
それぞれの実務について、下記で詳しくみていきましょう。
勤怠締め
毎月の賃金締切日にあわせて、各従業員の勤怠情報が正しいかどうかを確認します。
欠勤・早退の抜け漏れや残業時間、その他不審な点の確認です。必要に応じて、従業員本人や上長に確認をとりましょう。
労働時間の集計
勤怠締めを行った後、給与計算に必要な労働時間を項目別に集計します。
- 総労働時間
- 遅刻や早退の時間
- 欠勤日数
- 時間外労働
- 休日労働
などが、給与計算に必要な項目です。特に割増手当がつくような時間外労働・休日労働・深夜労働の集計は、間違いやすいので慎重に行わなくてはいけません。
労働時間の集計が間違っていると、次に行う給与支給額の計算に正しく反映されないので、細部まで気を抜かずにチェックを行います。
給与支給額の計算
集計した労働時間数をもとに、給与支給額の計算を行います。
- 就業規則などで規定された基本給
- 役職手当
- 通勤手当
- 住宅手当 ……など各種手当
上記の項目を加算します。そして、遅刻・早退・欠勤などを控除(支給額から差し引き)します。
引っ越しにより通勤手当が変更になったり、扶養家族構成の変化で家族手当が変更になったりするので、各従業員の状況は常に把握しておきましょう。
保険料と税金の計算
先に計算した総支給額から控除するものに、保険料と税金があります。
- 健康保険
- 雇用保険
- 厚生年金保険
- 介護保険
これらが、控除する保険の種類です。従業員それぞれが加入する保険ごとに保険料の計算方法や加入条件が異なります。条件に変更がないか、標準報酬月額の変更に必要な手続きに漏れがないかなど、随時確認する必要があります。
- 住民税
- 所得税
そしてこれらが、給与から差し引く税金です。
住民税には都道府県税と市長区村民税が含まれており、前年の所得に応じて課税されます。
所得税は、従業員それぞれの1年間の所得に応じて課税されます。概算額を毎月の給与計算から天引きし(源泉徴収)、年末調整で最終的な所得税額が確定します。
総支給額から保険料と税金を差し引いた額が、従業員が実際に受け取るお金「手取り」です。
給与の振込処理
手取りが確定したら、賃金台帳や給与明細の作成、各従業員への振込手続きを行います。
社会保険料・税金の納付
従業員の給与から控除した、各種社会保険料と住民税・所得税を納付します。
社会保険料は役所から送付される納入通知書をもとに月末までに納付し、住民税・所得税は翌月10日までに税務署に納付する必要があります。
ここまで述べてきた「勤怠締め」~「社会保険料・税金の納付」までが、給与計算担当者が担う大切な実務の流れです。これらを毎月、確実にこなしていきます。
給与計算担当者に必要なスキル
給与計算の業務を行うにあたって、必須の専門資格はありません。
実際、人事異動や前任者の退職などによって、まったくの初心者が突然給与計算担当者になるケースは数多くあります。
中途採用では、文系の大学卒業者や、ジョブローテーションなどにより実務経験が豊富な人物にスポットがあたることが多いようです。
特に、人事部で人事労務業務を担当した経験がある人は、給与計算担当業務に馴染みやすいために重宝されます。
給与計算担当者に必須の資格がないとはいえ、誰にでも簡単にできる業務ではありません。
従業員によって異なる雇用条件・労働契約に合わせて、間違いのないように計算処理ができる丁寧さが必要です。
また、労働基準法や税金に関する法律をよく知っていること、その知識を常にアップデートしていることが求められます。
【給与計算担当者にオススメの資格1】給与計算実務能力検定
「給与計算実務能力検定」は、一般社団法人実務能力開発支援協会が定めている民間資格です。
毎月の給与計算方法や年末調整など、給与計算担当の仕事を幅広くカバーしています。
この資格に合格できるレベルまで勉強すれば、給与計算担当者に必要な基本的な知識は身に付いていると、考えてもよいでしょう。
【給与計算担当者にオススメの資格2】マイクロソフト オフィス スペシャリスト(MOS)
給与計算担当者にとって、PCスキルは欠かせないものです。
そのスキルを証明するために有効な資格が、マイクロソフト オフィス スペシャリスト(MOS)という資格です。
試験は、エクセルやワードなどの各ソフト、そして難易度によって分かれています。
給与計算を担当する人であれば、スペシャリストレベル(一般)の取得を目指すとよいでしょう。
給与計算担当者が注意する5つのポイント
給与計算担当者が、仕事のうえで注意しなくてはいけないことは様々あります。
例えば1番分かりやすい計算ミス。ヒューマンエラーはどれだけ気を付けても起こるものですから、間違いが起こっても気付けるようなシステムづくりのほうが大事だといえます。
以下では、基本的な計算ミス以外に注意したい、5つのポイントを解説していきます。
賃金支払いの5原則を忘れない
「賃金支払いの5原則」は、労働基準法第24条で定められた給与の支払いに関する法律です。給与の支払いの根幹的な決まり、と考えて差し支えありません。
- 通貨払いの原則
- 直接払いの原則
- 全額払いの原則
- 毎月1回以上払いの原則
- 定期日払いの原則
当たり前のことのように思えますが、当たり前のことだからこそ、万が一違反した場合の罰則が、労働基準法違反に対する罰則のなかでも重く設定されています。企業側に30万円以下の罰金、違反内容によっては懲役刑もあり得ます。
「賃金支払いの5原則は“絶対に”守る」と意識しておきましょう。
残業手当・休日出勤手当など割増賃金の加算を忘れない
労働基準法では、法定労働時間を週40時間と決まっています。
これを超える残業をした場合、割増率は残業手当が25%、休日出勤手当が35%です。
また夜22時から翌朝5時までの時間帯の勤務については、別途深夜業として25%割増しなくてはいけません。
これら残業手当・休日出勤手当・深夜手当などの割増率は、給与計算でミスが起きやすいところなので、十分注意しましょう。
割増賃金の端数処理は定められたとおりに行う
割増賃金の端数処理を、給与計算担当者が独自の判断で行ってはいけません。
労働基準法において、処理の仕方が決まっているからです。
「1時間あたりの割増賃金額に円未満の端数が生じた場合、50銭未満の端数を切り捨て、50銭以上1円未満の端数を1円に切り上げる」
「1ヵ月間における割増賃金の総額に1円未満の端数が生じた場合、50銭未満の端数を切り捨て、50銭以上1円未満の端数を1円に切り上げる」
上記内容が、正しい端数処理の仕方です。誤った端数処理を行うと、法律違反となる可能性があるため、慎重に計算しましょう。
個人情報の漏洩に気を付ける
給与明細を印刷したまま、プリンターや机に放置していませんか?
これは個人情報の漏洩に該当するので、わずかな時間であってもNGです。
給与明細を印刷したら、他の人の目に触れないように取り扱いには注意し、別の人に誤って配布することがないようにも気を付けて、各従業員に渡しましょう。
社会保険料の改定をきちんと反映する
● 社会保険料が改定されているにも関わらず、給与ソフトに反映するのを忘れていた
● 社会保険料を改定しなくてはいけないのに、届け出を忘れていた
こうした社会保険料の改定に関するミスは、よく起こります。
社会保険料の改定そのものを忘れていた場合、将来の年金額などに影響が出てしまうので、かなり大きな問題になります。
昇給・降給などの際は、社会保険料の改定の反映忘れ・届け出忘れが起きないように、十分気を付けましょう。
給与計算担当者の年収相場
給与計算担当を含む、総務の仕事の平均年収は約371万円です。
月給で換算すると31万円、初任給は20万円が相場だといわれています。
また、派遣社員の場合は平均時給1,392円、アルバイト・パートの場合は平均時給976円とみられています。
全体の給与幅は広めの傾向があり、勤め先や能力によって給与には大きく差がつくのでしょう。
参考:求人ボックス 給料ナビ
給与計算担当者の人材育成に力を入れよう
以上、給与計算担当がどんな仕事なのか、どんなことに注意して仕事にあたるべきなのか、お伝えしました。
はじめて給与計算の業務にあたる人には、自社で扱う給与計算ツールの使い方を教える必要があります。また、自社の就業規則や賃金体系について、そして労働関係の法令について学ぶ機会も必要です。
給与計算担当者本人も、教える立場の人も、じっくりと取り組みましょう。給与計算は事務的な仕事ではありますが、会社の基盤に関わる重要な業務を担うので、決して軽視できません。
もしも将来転職するとしても、人事総務として給与計算を担当していたという経歴は、「信頼できる人物」「丁寧な仕事ができる人物」という印象を採用担当者にあたえます。誰にでもできるわけではない給与計算の仕事に、やりがいを持って取り組みましょう。
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