HRマネージャーとは？仕事内容や求められるスキル、育成のポイントなど紹介

近年日本でもHRマネージャーという役職を設ける会社が増えています。では、HRマネージャーとは、どのような役割を果たす役職で、必要なスキルや仕事内容はどのようなものなのでしょうか。

本記事では、最初にHRマネージャーの意味を説明したのち、HRマネージャーの役割や仕事内容、必要なスキル、研修制度、育成のポイントなどを解説します。

HRマネージャーとは

HRマネージャーのHRのスペルはHuman Resourcesであり、日本語では「人的資源」や「人材」という意味がある言葉です。マネージャー（Manager）には「部門管理者」や「支配人」という意味があるので、一般的にHRマネージャーは「人的資源を効果的に活用するために管理を行う人材」といえるでしょう。日本では人事課長の役割です。

求人サイト上で「HRマネージャー」と検索すると外資系企業の求人がよく表示されますが、「人事課長」で検索すると国内の企業も多数表示されます。日本で活躍する外資系企業をHRマネージャーという役職は広く知られるようになりました。

HRマネージャーの役割

HRマネージャーの主な役割として5つ紹介します。

現場の管理

HRマネージャーは部長職など部門の管理者とは違い、実際の現場を管理することが役割のひとつです。例えば、部下の業務状況の確認、関係先への同行、仕事上のアドバイス、指導など現場の直接的な管理をします。

HRマネージャーは部下の直接的な管理をしつつ、自分も現場で実務を担当するケースが多いでしょう。

採用計画の方向性の策定

採用計画の方向性を策定するのもHRマネージャーの役割です。
採用計画はどこの部署に、何人、どのような方法で採用するか考えます。採用計画は、部門長が採択した採用戦略に合わせて行われます。

採用戦略は事業戦略に合わせてどのような人物像がどれくらい必要か考えられたものです。そちらをベースに採用計画を立てます。

部長への情報共有・報告

部長への情報共有や報告もHRマネージャーの大切な役割です。
現場に立って部下とともに働くHRマネージャーは、部門会議などでは部長が把握できない情報なども逐一出てきやすいです。

HRマネージャーは多くの情報の中から部長に共有した方がよいと思われるものを適宜提供して、報告する役割を担います。

HRマネージャーの仕事内容

HRマネージャーの役割を説明しましたが、ここでは、より具体的な仕事内容を紹介します。具体的には、前述した5つに加えて、職場定着促進、賃金・労働条件、各種窓口、管理職の4つがあります。

採用活動の仕事

採用活動の仕事では、自社の業績や景気、競合企業の動向を加味したうえで採用計画を考えます。細かなプロセスとして、募集要項の作成、応募者の書類選考、筆記試験、面接、最終面接などを計画し、他部署と協力しながら進めます。

人材教育の仕事

従業員の教育訓練や能力開発に関する計画を策定します。具体的には、新入社員研修、中途採用研修、既存従業員に対する年代別研修、管理職研修、自己啓発制度の設計などがあります。年間を通じた計画の実施も仕事の範疇です。

人事評価の仕事

経営層などと協議したうえで、人事評価システムの構築を計画します。最適なツールの導入設計、社員向け説明資料の作成と確認に加え、労働組合や従業員代表との折衝が必要になることがあります。

人事異動の仕事

人事異動に関する管理を行います。具体的には、各部門へのヒアリング、異動候補者の決定と面接、関係部署への通知などです。リストラや人員整理の管理もHRマネージャーの仕事に含まれるでしょう。

福利厚生と労務管理の仕事

福利厚生に関する仕事には、年金、医療、雇用、労災、介護といった社会保険や企業年金の承認があります。労務管理の仕事としては、従業員の出退勤管理、退職日の管理、休日や有給休暇の把握、給与計算などの賃金管理全般を行います。

企業によっては、海外勤務の日本人スタッフの管理や、国内で働く外国人スタッフの管理を行うケースもあります。

職場定着促進の仕事

従業員の職場定着率を高める仕事として、企業のミッションやビジョンなどの周知や、業務改善の提案をとおした働き甲斐の向上、組織風土の醸成などを行います。

賃金・労働条件、各種窓口としての仕事

賃金・労働条件を決定したり、変更を行ったりする際に、労働組合や従業員代表者との協議や交渉を行うのもHRマネージャーの仕事です。労働局、労働基準監督署、ハローワーク、社会保険事務所との窓口になることもあります。

管理職の仕事

管理職として、人事課の仕事の進行状況の管理や、部下への指導やアドバイスなどを行います。

求人票に掲載されていた仕事

ここまで解説した仕事以外で、求人サイトの仕事内容欄に掲載されていた内容に以下がありました。

• 従業員エンゲージメントの調査
• ヘルス＆ウェルネスプログラム
• 政策提言
• 労働安全衛生対応
• コーチング
• タレントマネジメント
• コンサルタントの役割

など、このようにHRマネージャーの仕事は多岐に渡ります。

HRマネージャーに必要とされるスキル

HRマネージャーに必要とされるスキルには、マネジメントスキル、コミュニケーションスキル、分析力、共感力があります。それぞれ解説していきます。

マネジメントスキル

HRマネージャーはマネジメントスキルが不可欠です。特に人材育成のシーンでは、従業員が不足している能力を見極めたうえで、対策を図らなければなりません。トラブルが発生した際の解決力・対応力も求められます。

コミュニケーションスキル

HRマネージャーは日々、さまざまな人と接するため、コミュニケーションスキルが重要になります。自社の役員や従業員だけではなく、前述したように窓口として交渉役を担うためには、会話力以外にも、ライティングスキルを磨く必要があるでしょう。

具体的にコミュニケーションスキルが求められるシーンとして、自社のミッション・ビジョンの従業員への周知、求職者の面接対応、プレゼンテーション、リストラや人員整理の伝達などがあります。

特にリストラや人員整理では透明性が大切です。対象の従業員に対して、今後予測される変化を早期に何度も伝えながら、冷静かつ平等に最新情報を示す必要があります。

分析力

HRマネージャーはデータを分析するスキルが求められます。

たとえば自社の離職率が高い場合、今までのデータをもとに「どのような離職理由が多いのか」「どのようなパーソナリティーの従業員が多いのか」などを分析することで、改善策につなげられる可能性があります。

そもそも中途採用した従業員のパフォーマンスが高ければ、改善策に時間とコストを使うよりも、積極的に欠員募集を行うほうがよいかもしれません。そのような判断はデータの分析によってわかることです。

ほかにも、企業によっては従業員の再就職支援プログラムを実施することがありますが、やはり分析力によって適切な方向性を提示できます。

正しくデータを分析するスキルがあれば、経営層に対して「どのくらい改善できているのか」も証明できるため、分析力はHRマネージャーにとって重要な要素です。

共感力

HRマネージャーは従業員の気持ちに寄り添う必要があります。従業員が悩みや不安を抱えた際、気軽に相談できる相手にならなければ、適切な人事管理は難しいからです。そのためには一方的に話すのではなく、聞き上手になる必要があります。

「このHRマネージャーは自分の気持ちを理解してくれている」と従業員が思えば、素直に悩みや不安を打ち明けてくれますし、適切な対策を講じることができます。

たとえば、「育児と仕事の両立に悩んでいる」と打ち明けた従業員に対して、フレックスタイム制や在宅ワークを提案してみたり、「上司との関係に悩んでいる」という従業員に対して、他部署への異動を打診してみたりといった対応が考えられるでしょう。

HRマネージャーに必要とされる研修制度

HRマネージャーに必要な研修制度として、管理職研修、マネジメント研修、コミュニケーション研修、セクハラ・パワハラ研修の4つがあるので解説します。

管理職研修

管理職研修とは、管理職としての立場を意識し、適切な役割を担うために必要なスキルを習得する研修です。HRマネージャーにとって大切な人事の環境整備や、部下への指導・アドバイスの方法を学ぶことができます。

特に今までに経験がなく、はじめてHRマネージャーの仕事に就いた場合に重要な研修といえます。

マネジメント研修

マネジメント研修とは、目標管理やストレスマネジメントのような部下の育成・管理や、経営に必要な知識やスキルを習得するための研修です。研修内容によっては座学だけではなく、実践的なロールプレイングによって部下との対話方法などを学べます。トラブルが発生した際の対処法についても習得できるでしょう。

コミュニケーション研修

コミュニケーション研修とは、業務内外のコミュニケーションですれ違いを起こさないために、適切なコミュニケーションのベースを学ぶための研修です。HRマネージャーは幅広い年齢層の従業員と関わる必要があるため、大切な研修といえます。

セクハラ・パワハラ研修

セクハラ・パワハラ研修とは、従業員に対して「どのような言動や行動がハラスメントに該当するのか」を学べる研修です。近年の日本ではセクハラ・パワハラ以外のハラスメントも話題に上がっていますし、前述したようにHRマネージャーは立場も性格も異なるさまざまな従業員と接するので重要な研修です。

優秀なHRマネージャーを育成するポイント

優秀なHRマネージャーを育成するポイントとして、人事部長とHRマネージャーの違いの理解、プレイヤーとマネジメントの両立、目標の明確化と部下への伝達、適切な人事制度と評価システムの再構築の4つがあるので解説します。

人事部長とHRマネージャーの違いの理解

社内に人事部長という役職が存在する場合、主に戦略の立案を行うケースが多いでしょう。一方のHRマネージャーは（企業によっても異なりますが）、戦略を遂行する立場といえます。

そのため「HRマネージャーは経営層よりも現場寄りの立場」ということを説明しながら、人事部長との違いを明示して育成する必要があります。

マネジメントとプレイヤーの両立

HRマネージャーは部下の仕事内容や効率性などをマネジメントする一方、上司の指示に沿って的確に業務を遂行しなければなりません。マネジメントとプレイヤーの両方の立場を担うため、「どうすればスムーズに業務を進められるのか」を教示する必要があります。

目標の明確化と部下への伝達

明確な目標を部下に伝達する能力がHRマネージャーには求められます。目標が不明瞭な場合、部下は「どのように行動すればよいのだろう」と悩むだけではなく、それぞれが違う意識を持ち、異なる方向性で仕事を進めるリスクが生じます。

明確な目標に基づく適切な指示によって部下の方向性が定まるため、育成のポイントに含めるとよいでしょう。

適切な人事制度と評価システムの再構築

適切な人事制度と評価システムの再構築も、優秀なHRマネージャーを育成するには欠かせません。近年は管理職への昇進に意欲的ではない人も増えています。

その原因のひとつが、仕事と報酬が連動していない従来からの人事制度・評価システムの運用です。管理職は社員と比較して仕事の幅が広がり、管理にも責任を持つようになるため仕事の負担が増えます。

仕事量・成果・責任に対する対価がきちんと支払われる仕組みでなければ、意欲的なHRマネージャーを育成することは難しいでしょう。まずは、自社の人事評価制度の見直しを実施します。

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HRマネージャーの人材育成に力をいれよ

HRマネージャーは「人的資源を効果的に活用するために管理を行う役職」であり、日本では人事課長の役割といえます。主な仕事内容として、採用活動、人材教育、人事評価、人事異動、福利厚生と労務管理、職場定着促進、賃金・労働条件、各種窓口、管理職の9つがあります。

また、HRマネージャーに必要とされるスキルはマネジメントスキル、コミュニケーションスキル、分析力、共感力の4つです。そのために管理職研修、マネジメント研修、コミュニケーション研修、セクハラ・パワハラ研修を実施するとよいでしょう。

実際にHRマネージャーを育成する際は、「適切な人事制度と評価システムの再構築の理解」などを心がけることが大切です。