マイスター制度とは、高い技能と豊富な経験を持つ「マイスター」が若手社員の指導や人材確保を行う制度です。ドイツ発祥の制度ですが、実用的な技術や知識が身につく人材育成方法として、日本でもさまざまな企業で注目されています。
マイスター制度とは具体的にどのようなもので、どのようなメリットがあるのか、制度導入時の注意点や日本企業での導入例も交えて解説していきます。
マイスター制度とは?
マイスターはドイツ語で「巨匠」「名人」という意味で、専門的な知識や技能、豊富な経験を持つ人のことを指します。マイスター制度はこうした「マイスター」が後進者を指導・育成する制度です。
ドイツ発祥のマイスター制度
マイスター制度の発祥地はドイツです。
ドイツでは手工業などの職人になりたい場合、義務教育終了後に職業訓練を受けます。職業訓練学校で知識を習得しつつマイスターから実技を学び、「ゲゼレ」という国家資格を取得するのです。そしてさらに訓練を積んで国家試験に合格すると、マイスターになれます。
ものづくり大国ドイツを支えるこの制度は、後継者不足や技術力の低下といった課題を解決できるものとして日本でも注目されています。
マイスターとマスターの違い
マイスターと似た言葉として、「マスター」があります。
同じような使い方をされることも多いですが、マスターは英語であり、バーや喫茶店の主人を指したり、動詞として使われたりすることもあります。一方、マイスターは主に「巨匠」「名人」を指す言葉としてより限定的に使われる言葉です。
厚生労働省が行う「ものづくりマイスター制度」
日本では、厚生労働省が若年技能者の育成、ものづくり分野における人材確保を目的として、「ものづくりマイスター」「ITマスター」「テックマイスター」による「ものづくりマイスター制度」を行っています。
ものづくりマイスター制度とは?
「ものづくりマイスター制度」は、厚生労働省による若年技能者人材育成支援等事業です。ものづくりマイスターに認定された人が以下のことを行います。
- 若年技能者などへの実務指導
- ものづくりの魅力発信、技能検定者への実務指導による人材確保
ものづくりマイスターの認定要件は、(1)「ものづくり分野で1級技能士相当以上の技能」あるいは「技能五輪全国大会で上位3位の実績」を持つこと、(2)実務経験15年以上であること、(3)後進者育成に意欲的であることとされます。
対象となる分野は、技能検定または技能五輪競技の対象となる職種のうち、建設業および製造業に該当する111職種です。
ITマスター
ITマスターは、中小企業の若手社員に対して実務に役立つIT技術を教える人です。また、学生に対してはウェブデザイン、ITネットワークシステム管理、グラフィックデザインなどの指導を行います。
テックマイスター
テックマイスターは、中業企業の若手社員や工業高校の学生に対し、IT技術を使ってものづくりの環境・効率・品質を改善する方法を指導します。
マイスター制度導入のメリット・デメリット
マイスター制度を企業に導入する場合のメリット・デメリットを見ていきましょう。
メリット
マイスター制度の主なメリットは以下の3つです。
- 後継者の育成に役立つ
- 技術の継承を正確に行える
- 生産性UPが期待できる
確かな技術と豊富な経験を持つマイスターなら細やかかつ正確な指導ができるため、質の高い後継者育成につながるでしょう。
質の高い後継者が多く育てばその分、生産性の向上も見込めます。
デメリット
マイスター制度の主なデメリットは以下の3つです。
- 技能の選別が必要になる
- 技術革新が起こりにくくなる
- モチベーションの維持が難しい
マイスターの知識・技能は長年の経験で培われたもので、技術革新とは相性が悪い傾向にある点、特定の技能を極める中で社員が将来の幅の狭まりを感じる可能性がある点にも注意しましょう。
マイスター制度の導入事例
マイスター制度には厚生労働省によるものと、企業独自が設定しているものがあります。両方の事例を見ていきましょう。
サカイ引越センター
サカイ引越センターは、企業独自のマイスター制度を導入しています。
技術講習と安全運転講習、技術講師試験、指導経験を通してハイレベルな梱包・運搬技術、応対マナー、会社の知識を身につけたスタッフが、サカイマイスターとして他スタッフの指導を行います。
高島電機
電気機器の卸売り商社である高島電機は、厚生労働省のものづくりマイスター制度を導入してマイスターから機械設計の指導を受けました。
その結果より深い商談ができる、クライアントの設計図の不備に早く気づけるようにるなど、ワンランク上の営業活動・業務の効率化が実現しました。
まとめ
確かな技能と経験を持つマイスターから指導を受けるマイスター制度を導入すると、質の高い人材育成が可能になります。OJTなどによる現在の教育がうまくいっていない、人手不足で若手を教育する余裕がないなどの場合は、導入を検討してみるとよいでしょう。
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