マイスター制度とはドイツ発祥の指導・育成制度!日本との違いやメリットを解説

マイスター制度とは、高い技能と豊富な経験を持つ「マイスター」が若手社員の指導や人材確保を行う制度です。ドイツ発祥の制度ですが、実用的な技術や知識が身につく人材育成方法として、日本でもさまざまな企業で注目されています。

マイスター制度とは具体的にどのようなもので、どのようなメリットがあるのか、制度導入時の注意点や日本企業での導入例も交えて解説していきます。

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ドイツ発祥のマイスター制度とは

マイスター制度とはを示した画像

マイスター制度は、高度な専門技術を持つ人材に資格を与え、支援・育成する仕組みです。「マイスター」はドイツ語で「名人」や「巨匠」を意味し、優れた技能や知識を持つ人物を指します。

ここでは、マイスター制度について以下の3点を解説します。

  • ドイツのマイスター制度で必要な「ゲゼレ」
  • ドイツと日本の教育制度の違い
  • マイスター制度で取得できる資格は2つ!対象業種も解説

ドイツでは国家試験に合格した者をマイスターとして認定し、手当や優遇措置を設けています。さらに、技術の研鑽だけでなく、後輩の指導を通じて技能の継承も重視し、後継者不足や伝統技術の断絶を防ぐために導入され、日本にも影響を与えてきました。

ドイツのマイスター制度で必要な「ゲゼレ」

ゲゼレを取得するには、義務教育修了後、3〜3年半の「デュアルシステム」で職業訓練を受ける必要があります。職業訓練学校で知識を習得しつつマイスターから実技を学び、という国家資格を取得するのです。

その後、さらに訓練を積んで国家試験に合格すると、マイスターになれます。

なお、訓練期間中は雇用主と契約を結び、手当を受給できるのが特徴です。

ドイツと日本の教育制度の違い

ドイツのマイスター制度の背景には、個々の特技や関心を伸ばす教育方針があります。

教育制度の詳細は州によって異なりますが、6歳から4年間の基礎学校を経た後、進路に応じて以下3つの道に分かれます。

  • 職業訓練を受ける「ハウプトシューレ」
  • 上級専門学校の「レアルシューレ
  • 大学進学を目指す「ギムナジウム」

また、日本との教育制度の違いは、9歳の時点で「大学へ進学する」のか「職業訓練を受ける」のかを選択することです。ドイツでは、早い段階から本人の適性や志向に応じて、教育を受けられる仕組みになっています。

マイスター制度で取得できる資格は2つ!対象業種も解説

ドイツのマイスター制度で取得できる資格は以下の2つです。

  • 手工業マイスター
  • 工業マイスター

手工業マイスターには、大工や家具職人、ガラス職人など94種類の資格があり、そのうち41種類は開業にマイスター資格が必須です。

一方、工業マイスターは金属加工や自動車整備士、産業機械工など300以上の職種が含まれ、昔からある手工業に、産業革命や大量生産型によって発展してきた職種が多い傾向です。

マイスターとマスターの違い

マイスターと似た言葉として、「マスター」があります。

同じような使い方をされることも多いですが、マスターは英語であり、バーや喫茶店の主人を指したり、動詞として使われたりすることもあります。一方、マイスターは主に「巨匠」「名人」を指す言葉としてより限定的に使われる言葉です。

日本の厚生労働省が行う「ものづくりマイスター制度」

日本では、厚生労働省が若年技能者の育成、ものづくり分野における人材確保を目的として、「ものづくりマイスター」「ITマスター」「テックマイスター」による「ものづくりマイスター制度」を行っています。

ものづくりマイスター制度とは?

「ものづくりマイスター制度」は、厚生労働省による若年技能者人材育成支援等事業です。ものづくりマイスターに認定された人が以下のことを行います。

  • 若年技能者などへの実務指導
  • ものづくりの魅力発信、技能検定者への実務指導による人材確保

ものづくりマイスターの認定要件は、(1)「ものづくり分野で1級技能士相当以上の技能」あるいは「技能五輪全国大会で上位3位の実績」を持つこと、(2)実務経験15年以上であること、(3)後進者育成に意欲的であることとされます。

対象となる分野は、技能検定または技能五輪競技の対象となる職種のうち、建設業および製造業に該当する111職種です。

ITマスター

ITマスターは、中小企業の若手社員に対して実務に役立つIT技術を教える人です。また、学生に対してはウェブデザイン、ITネットワークシステム管理、グラフィックデザインなどの指導を行います。

テックマイスター

テックマイスターは、中業企業の若手社員や工業高校の学生に対し、IT技術を使ってものづくりの環境・効率・品質を改善する方法を指導します。

マイスター制度導入のメリット・デメリット

マイスター制度を企業に導入する場合のメリット・デメリットを見ていきましょう。

メリット

マイスター制度の主なメリットは以下の3つです。

  • 後継者の育成に役立つ
  • 技術の継承を正確に行える
  • 生産性UPが期待できる

確かな技術と豊富な経験を持つマイスターなら細やかかつ正確な指導ができるため、質の高い後継者育成につながるでしょう。

質の高い後継者が多く育てばその分、生産性の向上も見込めます。

デメリット

マイスター制度の主なデメリットは以下の3つです。

  • 技能の選別が必要になる
  • 技術革新が起こりにくくなる
  • モチベーションの維持が難しい

マイスターの知識・技能は長年の経験で培われたもので、技術革新とは相性が悪い傾向にある点、特定の技能を極める中で社員が将来の幅の狭まりを感じる可能性がある点にも注意しましょう。

マイスター制度をはじめ、評価制度にはさまざまな種類があるため、現状の評価方法が最適ではない可能性があります。

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マイスター制度の導入事例

マイスター制度には厚生労働省によるものと、企業独自が設定しているものがあります。両方の事例を見ていきましょう。

サカイ引越センター

サカイ引越センターは、企業独自のマイスター制度を導入しています。

技術講習と安全運転講習、技術講師試験、指導経験を通してハイレベルな梱包・運搬技術、応対マナー、会社の知識を身につけたスタッフが、サカイマイスターとして他スタッフの指導を行います。

高島電機

電気機器の卸売り商社である高島電機は、厚生労働省のものづくりマイスター制度を導入してマイスターから機械設計の指導を受けました。

その結果より深い商談ができる、クライアントの設計図の不備に早く気づけるようにるなど、ワンランク上の営業活動・業務の効率化が実現しました。

まとめ

確かな技能と経験を持つマイスターから指導を受けるマイスター制度を導入すると、質の高い人材育成が可能になります。OJTなどによる現在の教育がうまくいっていない、人手不足で若手を教育する余裕がないなどの場合は、導入を検討してみるとよいでしょう。

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