賃上げとは?2023年から取り組み企業が増えている理由や中小企業への影響

2022年の春闘をきっかけに、2023年から賃上げを実施する企業が増えています。他企業が賃上げをするなら自社もしたほうが良いのか?と迷っている経営層の方も多いのではないでしょうか。

賃上げを検討する際は、単に他の企業の実施状況を考えるだけでなく、賃上げが増えている背景も踏まえて長い目で判断することが重要です。

本記事では、賃上げの基礎知識から中小企業の実施状況、賃上げが増えている背景などをご紹介します。

賃上げとは?

賃上げとは、従業員の賃金を引き上げることをいいます。賃上げには定期昇給とベースアップの2つの方法があります。

詳しく見ていきましょう。

定期昇給

定期昇給は、年に1回〜2回あらかじめ決まったタイミングで実施される賃上げです。

ただし、決まったタイミングで必ずしも賃上げが行われるとは限りません。勤続年数、年齢、従業員の成績など企業が定めた基準も考慮して賃上げの有無・程度が決められるケースが多いです。

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ベースアップ(ベア)

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定期昇給は各従業員の勤続年数や成績などに応じて実施されますが、ベースアップはそうした基準に関係なく一律に実施されます。

基本給の底上げであり、物価上昇時に実質賃金の調整のため行われることの多い賃上げです。

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2023年から大幅な賃上げを行う企業が増加

2023年より大幅な賃上げを行う企業が増加しました。ここでは、その理由について解説します。

2023年の春闘をきっかけに賃上げへ

日本労働組合総連合会は、2022年に次年度の春闘で5%の賃上げを要求することを決定しました。これを受け、2023年度からの賃上げを発表する企業が増加しています。

2023年の春闘第1回集計では、大企業で平均1万3,110円の引き上げ(アップ率3.91%)、中小企業では平均7,864円の引き上げ(アップ率2.94%)という結果が出ました。

大企業は1993年、中小企業は1994年以来の高い水準です。

多くの企業が賃上げを決定した理由としては、円安や原材料費の高騰による物価上昇が挙げられます。今回のベースアップは、こうした状況下における実質賃金の調整という側面が強いといえるでしょう。

最大40%アップの賃上げを行う企業も

中には、最大40%もの賃上げを行う企業もあります。

ユニクロやGUを運営するファーストリテイリングは、全ての従業員を対象にしたベースアップの実施を発表しました。例えば新入社員の初任給は、25万5,000円から18%引き上げて30万円になります。

入社1~2年目の社員が就く新人店長の月収は29万円から39万円にアップし、年収換算すると36%のベースアップです。

他にも、イオングループは正社員で5~6%、パートタイムで7%のベースアップを実施しています。

東京ディズニーリゾートを経営するオリエンタルランドの場合は、約2万人に対して平均7%のベースアップを実施しました。パートタイム従業員やアルバイトについては時給を一律80円引き上げ、大卒初任給も前年より2万円増えています。

通常、ベースアップなど賃上げの対象となるのは労働組合員である正社員のみです。イオングループやオリエントルランドは、非正規社員であるパートタイムやアルバイトも賃上げの対象としている点が特徴的です。

近年賃上げが急増している背景

2022年の春闘で5%もの賃上げを要求していますが、それに至った理由はなんなのでしょうか?近年の動向を詳しく見ていきましょう。

これまでの日本の賃上げ状況

厚生労働省発表の「民間主要企業における春季賃上げ状況の推移」から、これまでの日本における賃上げ状況を見てみると、賃上げ額は1993年の1万1,077円を最後に、1万円を超えたことはありません。賃上げ率を見ても、1993年は3.89%でしたがそれ以降は下がり続け、2002年には1.66%と1%台に低下しています。

その後は2022年まで5,000~7,000円、2%前後の賃上げで推移してきています。

長い間、日本では大規模な賃上げは行われてこなかったことがわかるでしょう。

物価上昇に対応が必要になった

先述の通り1993年以降、賃上げ額も賃上げ率も低い水準で推移している日本ですが、2023年には大企業・中小企業ともに約30年ぶりの高水準を記録しています。

こうした変化の背景には、円安が進んでいることに加え、ロシアのウクライナ侵攻やエネルギー・原材料費の高騰により物価の上昇が進んでいることが挙げられます。

多くの企業が賃上げに着手するようになったのは、こうした状況の中で従業員の生活を守るためといえるでしょう。

賃上げをして実質賃金を調整し従業員の生活を守ることは、企業にとっても重要です。物価高で今の給与では生活が苦しくなった場合、優秀な従業員はより高い給与を得られる企業に転職してしまう可能性があります。

こうした優秀な人材を引き止めるためにも、物価高に対応すべく賃上げを実施する企業が増えているのです。

人材獲得のための賃上げ

企業が賃上げを実施する背景には、人手不足も挙げられます。

少子高齢化の影響もあり業種・業界問わず人手不足が問題になる中、優秀な人材の争奪戦は激しくなっています。そのような中で優秀な人材から選ばれる企業になるには、高い給与水準を保つことも重要です。

また、物価高な状況の中で賃上げを行えば、従業員を大切にする企業として印象も良くなるでしょう。

同時に、人手不足の状況下では今いる従業員で生産性を上げること、今いる人材の流出を防ぐことも重要です。賃上げは従業員のモチベーションとエンゲージメントを高めることにもつながるため、この点でも賃上げは人材獲得・確保に効果的だと考えられているのです。

中小企業も賃上げを検討すべき?

大企業での賃上げが注目されがちですが、中小企業は賃上げをする必要はないのでしょうか。ここでは、中小企業が賃上げを検討すべきかについて考えていきます。

中小企業向けに「賃上げ促進税制」が開始

中小企業の賃上げについて考える際には、2022年4月1日から施行された「賃上げ促進税制」の存在を考慮に入れましょう。

賃上げ促進税制とは、従業員の給与を前年度より増加させた中小企業に対して、その増加額の一部を法人税額から控除する制度です。

増加額と法人税額の控除額は次のとおりです。

  • 1.5%の給与増額:増加額の15%を税額控除
  • 2.5%の給与増額:増加額の30%を税額控除

上記に加えて、教育訓練費を10%増額させるとさらに10%の税額控除を受けられます。

中小企業の62%が賃上げを実施

日本商工会議所が発表した2023年度の正社員の賃金動向によると、中小企業の約62%が所定内賃金のアップを実施しています。引き上げ額3%以上の企業は50%を超え、近年の日本における賃上げ状況を考えると大幅な増額であるとわかるでしょう。

ただし、業績好調につき賃上げを行う企業ばかりではありません。業績が改善しないが引き上げを行うという「防衛的な賃上げ」は、賃上げを実施する企業の41.4%を占めているのです。

半数以上の中小企業が賃上げをしていると知ると自社も賃上げすべきか迷うかもしれません。しかし、業績改善が伴わない中で賃上げしている企業も多い点を踏まえ、慎重に検討する必要があるでしょう。

人材確保や社員の定着に賃上げが必要か

業績が伴わない中でも賃上げを実施する中小企業が多いのは、人材確保や社員の定着のためであると考えられます。

日本商工会議所のデータによると、85%の企業が「人材確保・定着や モチベーション向上」を賃上げの理由に挙げているのです。

賃上げにより人材確保・社員の定着が進めば、賃上げ時には業績が伴っていなくても、のちのち業績が上がる可能性もあります。

よって、自社に賃上げの体力があるかという点とともに、人材確保・定着の必要性も考えて長い目で賃上げを検討することが重要です。

賃上げは戦略的に検討を

賃上げは、物価高の状況下で従業員の生活を守り、人材を獲得・確保するために重要です。2022年から始まった賃上げ促進税制もあり、企業にとっても賃上げはメリットがあるといえるでしょう。

しかし、業績改善を伴わない賃上げは企業にとってリスクにもなります。一方で、リスクを負ってでも賃上げすることで将来的にメリットが得られることもあるため、現在の企業の体力とビジョン・課題などを踏まえ、戦略的に賃上げを検討しましょう。

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