絶対評価と相対評価の違いとは? メリット、デメリットを3つずつ解説

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人事評価において、絶対評価と相対評価のどちらが優れているのかが長く議論されています。

どちらにも一長一短ありますが、現在の経営環境をふまえると絶対評価を推す声が多いのが実情です。それは中小企業においても例外ではありません。

絶対評価と相対評価それぞれの特徴と、絶対評価が重視されるようになった理由をみていきましょう。

絶対評価と相対評価の違い

人事における絶対評価とは、設定された目標をどの程度達成できたかによって処遇を決定する評価方法です。目標をクリアすれば高評価がつき、未達成だと低評価がつきます。他社員との比較ではなく、評価基準に従って一人一人を客観(絶対)的に評価するので、周囲の成績に左右されることはありません。

評価基準は一律ではなく、部門や職種あるいはポジションによってそれぞれ作成されます。スポーツに例えると、42.195kmを〇時間〇分以内に走ればオリンピック出場資格を与えるというものです。

それに対し相対評価とは、他者との比較により評価する方法です。「AさんよりBさんの方ができた」「CさんはDさんよりできなかった」と、集団の中で順位を決めることで優劣をつけます。オリンピック資格は上位5人に与えるのが、分かりやすい例です。

相対評価においては、たとえ自分の目標を達成しても、他にそれを超える結果を出した社員がいれば評価は下がります。逆に、未達成でも周りの結果がそれよりも悪ければ、相対的に評価が上がります。

相対評価は、評価する側からすると判断がしやすいのが長所ですが、される側からすると分かりにくい短所があります。頑張っても評価されない時もあれば、手を抜いても評価される時もあるためです。何をもって給料が上がるのか明確でない状態は、モチベーションを著しく低下させます。

 絶対評価相対評価
方法期首に立てた目標の達成度で評価する。
被評価者の順位付けにより優劣を決定し評
価する。
メリット
✔︎ 目標を達成すれば、他の被評価者に関係になく評価されるためフェアで納得感がある。

✔︎ 順位付けで評価するため、定められて給与原資の枠内での分配が容易である。

デメリット✔︎ 昇給原資との調整が困難である。
✔︎ フェアな評価とはならない場合がある。

✔︎ 部下の給与を上げるために甘めの評価になる。

✔︎  仮にすべての社員のパフォーマンスが期待外れであっても順位付けにより高評価者が発生する。

相対評価とは

他者との比較で成績を決める評価方法のことです。例えば、Aランク10名、Bランク25名と評価の枠を定めておき、分類して評価します。

集団内での相対的な位置づけが明確になるため、評価者にとっては評価しやすい側面があります

絶対評価とは

あらかじめ決められたノルマを達成できたかで評価する手法です。

絶対評価のメリットは、評価対象者一人ひとりを客観的に評価できる点です。個人のキャリアや実績に基づき評価できるため、組織内の適正評価につなげやすい側面があります。

ただし、評価者の個人的な主観で評価が変わってしまうのがデメリットです。

絶対評価は、個人の成長や達成度を正確に測定するのに適していますが、評価者が厳正に評価できない環境では、正しい評価を下せない可能性があります。

絶対評価が重視されるようになった理由

人事においては、絶対評価を取り入れるべき考え方が主流になってきています。その理由は、絶対評価の持つ透明性にあります。

どのような基準に基づいて、どのような結果になったのかが明らかであれば、人事評価に対する信用度が上がります。

社員がきちんと評価されている実感を持てなければ、どのような制度もうまく機能することはないので、透明性や客観性は不可欠な要素と言えるでしょう。

絶対評価を取り入れることによって、社員のパフォーマンスが上がることも期待できます。

具体的な方向性を示すことで必要な業務に集中でき、無駄な業務が減ります。自身の目標の達成が組織にどのような結果をもたらすかをイメージできれば、モチベーションの向上にも役立つでしょう。

その結果、組織全体の力が最大限に発揮できます。

学校現場においても、相対評価より絶対評価を採用する動きが見られます。

学校では、学年や学級などの集団においてどのような位置にあるかを見る「集団に準拠した評価」(=相対評価)が長く重視されてきました。

しかし、少子化にともない個性を重視したり、評価への信頼性を高めたりする必要が生じたことから学習指導要領が改正され、2002年以降は「目標に準拠した評価」(=絶対評価)による成績評価へと大きく流れが変わりました。

企業においても学校においても完全に相対評価がなくなったわけではありませんが、全体としては絶対評価を重視する傾向が強くなってきているのは確かです。

人事評価制度における相対評価のメリット・デメリット

人事評価制度における相対評価のメリット・デメリットを紹介します。相対評価を人事評価制度へ導入を検討されている企業の方は参考にしてください。

相対評価の3つのメリット

相対評価の3つのメリットは、以下のとおりです。

  • 評価しやすい
  • 評価の偏りが少なくなる
  • 競争が活発化する

相対評価を効果的に活用することで、組織全体の生産性向上やイノベーション促進にどのようにつながるのかメリットを知り、理解を深めましょう。

1. 評価しやすい

相対評価は評価者にとって理解しやすく、これにより評価のばらつきを抑制できます。

例えば、個々の社員の絶対的な能力や経験を詳細に検証する必要がなく、単純に他の社員と比較して評価できます。

評価がしやすくなることで、評価プロセスが簡素化され、評価にかかる時間と労力を大幅に削減できるでしょう。

2. 評価の偏りが少なくなる

相対評価は、評価の偏りが出づらく、バランスの取れた評価が可能になります。

絶対評価だと、成績のよい者と悪い者で大きく評価が偏る可能性があります。しかし、相対評価では、S評価は何名、A評価は何名のように、高評価や低評価の偏りが少なくなるのが特徴です。

また絶対評価では、評価が中間に集中しやすい側面があります。相対評価は順位づけするため、無難な評価への偏りを防げます

3. 競争が活発化する

相対評価は社員同士が切磋琢磨して競争し合える環境を作り出せるメリットがあります。

他者と比較し、目に見えて順位を付けられるため、被評価者の闘争心を高められ、活発な組織作りに寄与するでしょう。

また競争を通じて、従業員個々の成長にもつながり、自己成長を促進できます。

相対評価の3つのデメリット

相対評価の3つのデメリットは、以下のとおりです。

  1. 個人の成長はフォーカスされづらい
  2. 所属するグループや部署に左右される
  3. 適正な評価ができない

個々の取り組みや努力が見逃される可能性など、相対評価にはデメリットがあります。本章で確認しましょう。

1. 個人の成長はフォーカスされづらい

相対評価は、他者との比較によって成績を決める評価方法です。そのため、個人がどれだけ努力し成長しても、周囲の成績が同様に上がっていれば、その成長は評価に反映されにくくなります。

例えば、ある従業員がスキルアップや成績向上に努めても、同じチーム内の他のメンバーも同様に成績を上げていれば、その従業員の相対的な評価は変わらない可能性があるでしょう。

個人の努力や成長が正当に評価されず、不満やモチベーション低下を招くリスクは考えておかなくてはいけません。

2. 所属するグループや部署に左右される

相対評価では、同じ能力や実績を持つ従業員でも、所属するグループによって評価が大きく変わる可能性があります。

例えば、ある部署で優秀とされていた従業員が、別の部署に異動したら評価が下がるリスクも考えられます。

また、所属するグループのレベルが高いケースでは、個人がどれだけ努力しても評価されにくい状態になってしまうでしょう。

3. 適正な評価ができない

グループの規模が少なかったり優秀な人材が集まったグループに所属していたりすると、適正な評価ができないケースが相対評価では発生します。

グループが少人数の場合、被評価者の母数が少なくなってしまい、適正な評価が難しくなります

優秀なグループでは、個人の能力が高くても、周囲との比較で評価が決定するため、低い評価を受けるおそれもあるでしょう。

人事評価制度における絶対評価のメリット・デメリット

人事評価制度における絶対評価のメリット・デメリットをそれぞれ解説します。

  • 絶対評価の3つのメリット
  • 絶対評価の3つのデメリット

メリット・デメリットを知り、絶対評価を導入すべきか検討しましょう。

絶対評価の3つのメリット

  1. 明確な評価が可能
  2. モチベーションの向上
  3. 効率的なスキルアップ

それぞれ詳しく解説します。

1. 明確な評価が可能

目標への達成度で評価がきまるため、曖昧な評価を排除できるメリットがあります。

人事評価への不満でよく挙げられるのが、上司の裁量重視の判断基準が不明瞭な評価。日本ではこれまで年功序列、終身雇用が前提の雇用システムであったため、曖昧な評価が横行してきました。

絶対評価、成果主義の評価を取り入れることで、評価基準を周知させ明確な評価を実現できるでしょう。

2. モチベーションの向上

目標が評価と直結するため、努力すべきところが明らかになり社員のモチベーション向上を助けます。

目標を達成しても、しなくても評価に直結しない場合と比べて、目標達成への求心力が上がると同時に、成果に対して相応の評価をもらえることが次の仕事へのやる気につながるでしょう。

3. 効率的なスキルアップ

絶対評価は成果で見る厳しい評価とらえられるかもしれませんが、結果がはっきりとする分自分が不足している部分も明らかになりやすいです。

「達成できなかったのは何が足りなかったのか」の観点から、自身のスキルアップが必要な部分が明確になりやすい仕組みです。
そのため、それに関連したスキルアップを重点的に行え、効果的なスキル向上が期待できるでしょう。

絶対評価の3つのデメリット

絶対評価の3つのデメリットは、以下のとおりです。

  1. 昇給原資の調整が困難
  2. 成果までのプロセスが加味されない
  3. 数値化できない業務への適用が困難

人事評価は、組織の成長と個人の発展を促進する重要なツールです。絶対評価のデメリットを理解し、適切に対処することで、より効果的で公平な評価システムを構築できます。

1. 昇給原資の調整が困難

絶対評価では、昇給の原資をどれくらい確保しておけば良いか予測を立てることが難しくなります。相対評価であれば、社員同士を比較して、あらかじめ決まっている昇給の予算を振り分ければよいので、調整がしやすくなります

絶対評価では、全員が成果を出した場合、予想以上の昇給金額となり、調整が困難になるデメリットがあります。

2. 成果までのプロセスが加味されない

絶対評価は成果までのプロセスが評価されないという難点があります。

成果は本人の実力や努力だけでなく、社会情勢などの外的要因によっても左右されることがあります。

その時点では成果が出ていない事柄であっても、それまでのプロセスがどうであったかによって将来的に貢献しそうな人物であるかどうかの評価には違いが出るでしょう。

3. 数値化できない業務への適用が困難

事務職や研究職など業務内容の中には数値化が難しかったり、成果が出るまでに長期の時間が必要だったりするものがあります。

そういった評価の時点で数値ができない業務に絶対評価を適用することは難しいです。適用したとしても、曖昧さが残りやすいでしょう。

絶対評価運用のポイント

中小企業も例外ではありません。社員が1人でもいれば、絶対評価の導入を検討してみて良いかもしれません。

「個人に対して正当な評価を行い、報酬によって応える」という姿勢は、従業員の規模とは無関係に必要だからです。少ない社員だから手厚く人事評価ができるという自信は、「人数が少ないから相対評価が簡単」と言っているにすぎません。

もちろん、絶対評価を導入すれば万事うまくいくわけではありません。運用においては、さまざまな課題が存在します。まず、目標や評価基準は単純な業務成績だけでなく、プロセスや行動レベルまで考慮することが求められます。

1990年代に多くの企業がアメリカ式成果主義を導入した際、社員が自身の業績を重視するあまり部下の育成に消極的になるなど、間違った個人主義が横行しました。

そのため、業績評価だけでなく、それを生み出すプロセスや適性などを踏まえた行動評価も、併せて行う必要性が明らかになりました。

また、目標設定は社員それぞれに対して行われなければなりません。所属する部門や職種、勤続年数やポジションによって求められる要素やレベルは異なります。技術部門1年目の社員と営業部門の10年目の社員では、越えるべきハードルが違うのは当然のことです。

以上のことから分かるように、人事における絶対評価は運用上の負担が大きいのが実情です。それだけに、人事評価は単なる給与査定ではなく、人材育成も兼ねていると考えるべきです。

絶対評価においては、経営者と社員の間で目標に対する合意が取れていることが非常に重要です。経営環境や個人の適性から評価基準を交渉・共有化し、評価のフィードバックを行うことは、社員の育成に大いに役立つと考えられます。

  • 個人の能力やポジションに合った目標(客観的基準)を設定すること
  • 結果だけではなくプロセスや行動レベルにも着目すること
  • 目標をすり合わせることによって社員の人材育成につなげること

上記3点に注意しながら、適切な人事評価制度を取り入れることにより、企業全体の長期的なパフォーマンス向上につながります。

相対評価運用のポイント

相対評価を効果的に運用するためのポイントは以下のとおりです。

  • 明確な評価基準の設定:具体的な基準を設けて評価の透明性を確保します。
  • 評価者のトレーニング:評価基準や方法の研修を行い、主観やバイアスを抑えます。
  • 定期的なフィードバック:評価結果を具体的に伝え、改善点や目標設定をサポートします。
  • 公平な評価の実施:全従業員に基準を周知し、透明性を持たせます。
  • 評価結果の活用:人材育成や組織改善に評価結果を活用し、能力開発プランを策定します。

上記を実践することで、相対評価の効果を最大化し、組織の成長を促進できます。

絶対評価を上手に活用して公正な人事評価を実施しよう

絶対評価は成果で判断するため、評価基準が明確で、評価にありがちな曖昧さを排除できるメリットがある一方で、プロセスや質的な評価をも排除してしまうデメリットがあります。

絶対評価は人事評価に必要考え方ではありますが、コンピテンシー評価など他の評価方法を組み合わせながら、自社に合った活用方法を見つけることが重要です。

人事評価者への評価も加味しながら、社員が実力を発揮させやすい人事評価システムの構築を目指しましょう。

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