社員の「5段階評価」がダメな理由

(写真=Jirsak/Shutterstock.com)

日本の企業でこれまで主流だった勤続年数が賃金に反映される「年功序列」型の人事評価制度が、約20数年前から、社員に「生産性の向上」を求める動きとともに、次第に「成果主義」へ移行しています。限られた時間の中で、高いパフォーマンスを発揮できる社員が求められ、企業がそれをきちんと評価できるシステムが重要になります。

現状を振り返ってみると、残念ながら今でも残業を続ける社員が減らず、生産性が低いままに留まっている企業がいまだに多いように見受けられます。原因の一つとして、人事評価制度に何らかの問題があるように思われます。そこで今回は、社員を評価する場合に従来の一般的な5段階方式のままでいいのか、あるいは変えるとすると何段階方式がベストなのか、考えてみます。

よくある社員の5段階評価

子どもの頃の通信簿で、5段階評価を経験している人も多いと思います。レストランや店頭などでよく見る顧客満足度アンケートも、「とても不満・不満・普通・満足・とても満足」の5段階が多くなっています。この流れを受けるかのように、多くの企業では一般的に社員の評価として「S・A・B・C・D」のような5段階評価が行われてきました。

100点満点で社員一人ひとりに評価点を付け、40点までがD、41~55点までがC、56~70点までがB、71~85点までがA、そして86点以上がSという具合です。

ランク D C B A S
評価点 40点以下 41~55点 56~70点 71~85点 86点以上

よく見てみると、1つのランク内でも15点もの開きがあることが分ります。学生時代のテストを思い出せば、その点数差は容易に想像できますが、100点満点中56点でも70点でも評価のランクが同じということには多少、違和感があります。

社員のモチベーションをアップさせ、生産性を向上させ、給料にも正当に反映させることが人事評価制度の基本目的です。しかし、70点の社員が56点の社員と同等の評価をされるのでは、社員自身が納得できないのではないでしょうか。

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5段階評価のマイナス点

5段階評価にはもう一つ落とし穴があります。実は5段階評価では、最高評価と最低評価は付かないことがほとんどです。日本人の気質から、なかなか最高評価を付けることがありません。最低評価も然りです。

結果として、「S・A・B・C・D」と5段階のランクがあっても、SまたはDと評価されることはほとんどなく、実質的には3段階評価といえます。評価の良し悪しを決めるには、残るはCとAということになりますが、これもせいぜい数パーセントといったところでしょう。現実には、余程の理由が無ければ、わざわざ大きな差をつけたがらない上司が日本の企業には多いのです。

結局、多くの場合、真ん中のBが選択されることになります。これでは15点も差があるにもかかわらず、実は社員間の差はほとんど付いていないのと同じと言えます。頑張っても、頑張らなくても同じ評価をされるのなら、モチベーションが下がる社員が出てくるのは当然で、とても生産性の向上にはつながりません。

オススメは4段階評価

オススメは4段階の人事評価制度です。4段階にすれば、どちらともつかない真ん中、つまり「普通」を無くすことにつながります。4段階評価では、4は「習慣化できて素晴らしい」、3は「及第点」、2は「褒められないライン」、1は「まったくできていない」という評価で「普通」はありません。

人事評価において、果たして「普通」というのは正当な評価でしょうか?「良くも、悪くもないから普通にしておこう」では社員のやる気が起こらず、パフォーマンスもアップしません。社員の頑張りを正当に評価して、給与に連動させ、評価に対し納得させることが大切です。生産性がアップすれば、会社の業績アップにもつながり、企業と社員間の好循環が生まれる、これが人事評価制度の重要な意義のはずです。言い換えると、人事評価制度は正当な給与を決めるためはもちろん、人材育成のためにも運用されるべきなのです。

実際、5段階評価の場合、1と5はなかなか付きません。しかし、4段階の場合は1と4が付けやすくなります。そのため、プラスでもなくマイナスでもない曖昧な「普通」を無くし、きちんと正当な評価に基づく差をつける、これが4段階評価の優越性なのです。このような4段階評価のアプローチを踏まえて、貴社の人事評価制度も一度、見直してみてはいかがでしょうか。

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