前回に引き続き、「あしたの人事クラブ」第8回交流会の模様をダイジェストでご紹介します。2人目のゲストは、Indeed Japan株式会社代表取締役の高橋信太郎氏。CMでもお馴染みの同社は、世界最大の求人検索エンジンを武器に日本でも積極展開中。企業の採用を支援する立場として、「超・人材不足時代を行く抜くための採用最適化手法」についてお話いただきました。
【Profile】
高橋 信太郎(たかはし しんたろう)
Indeed Japan株式会社 代表取締役/ゼネラルマネジャー
関西大学文学部哲学科卒。1989年リクルートに入社し、求人広告事業、新規事業開発室を経て、関連会社のMEDIAFACTORYに出向し出版事業に従事。2001年まぐクリック(現GMOアドパートナーズ)に転じ、06年代表取締役、13年GMOインターネットグループの常務就任。豊富な求人事業経験、ネットマーケティン事業を牽引してきた実績から16年に現職へ。
採用がますます難しくなることは、明らかな時代
本日は、「オウンドメディア・リクルーティング」が今後益々重要になっていくことをお伝えしたいと思います。オウンドメディア・リクルーティングとは、いわゆる企業のホームページを最大限活用して求職者を募る採用方法のこと。なぜ私がその話をするかといえば、Indeedという会社の事業とも関連しています。弊社はCMで「仕事さがしはIndeed」とお伝えしておりますので、事業内容をなんとなくイメージされている方もいらっしゃると思いますが、我々は求人サイトの会社ではありません。‟求人検索エンジン”の会社です。
Indeedに希望勤務地と希望職種を入力して検索すると、求人メディアや企業の自社サイトを問わずインターネット上のあらゆる情報から希望に沿った求人を表示します。この仕組みは今、世界60ヶ国で月間2億ユーザーが利用しており、世界最大の規模。日本でも月間のユーザーの訪問数は2,350万にもなっているとともに、日本の労働人口の約1/5は何かしらの形でIndeedの検索結果を目にしている状態です。
そうした立場を踏まえて、これからの採用市場についてお伝えしたいのは、「人材獲得競争がより一層激化していく」ということです。その理由のひとつは、労働人口の減少。今年新卒入社した世代が企業の役員を務めるような年代になると、現在の半数しか働き手はいません。つまり、世の中で仕事を必要とする人数が減っていく分、既存の採用手法だけを続けていては、年々採用しにくくなります。加えて、「35歳限界説」のようなかつての転職市場の常識も崩壊。人材の流動性も高まっています。これらの事柄から、人材確保が企業活動の生命線になる時代は間違いなく来るでしょう。
また、「求職者の要求が多様化している」ことにもご注目いただきたいです。売り手市場が続いていることもあり、求職者は昔よりも自分の希望が叶う環境を率直に求めるようになり、その結果ニーズはどんどん多様化しています。「やりがいのある仕事がしたい」「スキルアップができる環境に挑戦したい」といった昔からあった希望だけでなく、「出世しなくても構わない」「育児制度を積極的に活用したい」といった求職者も珍しくない時代。多様化すればするほど、求人情報サイトや転職エージェントといった、既存の情報源だけでは彼らを自社に振り向かせることが難しくなってきています。つまり、求職者へ提供できる新たな情報源が求められているのです。
オウンドメディア・リクルーティングで鍵となるふたつのコツ
その新たな情報源として有効なのがオウンドメディア。簡単に言えば「自社ホームページに求人情報を載せましょう」という話なので、「何を今さら…」と思われたかもしれません。しかし、一度ご自身の会社のホームページを見返してみてください。新卒採用のページはつくりこんでいるかもしれません。しかし、中途採用のページやアルバイトのページはありますか。あったとしても、新卒採用並みの情報提供ができているでしょうか。
オウンドメディアを中心とした情報提供(人事部のマーケティング活動)へと切り返ることには、いくつかのメリットがあります。その最大のメリットは、オウンドメディアをつくる過程で伝えるべき内容が定義・言語化され、個別の活動を促進させられること。採用活動には、「企業文化の言語化」「各部門(募集部門)の業務把握」「必要な人材(要件)の定義」が欠かせませんが、オウンドメディアでそれらの情報が充実していれば、求人媒体やSNSやリファラル(社員紹介)などでも活用できます。つまり、オウンドメディアを充実させることは、オウンドメディア単体での採用成果を上げるだけでなく、各施策の成果を高めることにも効果的なのです。
では、オウンドメディアを充実させるには何をすれば良いのでしょうか。大きくはふたつのコツに分類できます。ひとつは、「Shared Value Content(シェアードバリューコンテンツ)」の充実。自分たちの会社はどんな企業であり、何を大切にしているのか、そこで働く人々はどんなことに情熱を注いでいるのかを伝え、共感してもらう情報を増やすことです。求職者は、「自分自身の価値観にフィットする会社か」という観点でみなさんの会社を見ています。そうやって共感した人ほど入社後のエンゲージメントが高く、活躍している傾向にあるのではないでしょうか。だからこそ大切にしてほしいのは、自社のありのままを伝えること。今の時代、過度に良く見せようとすると見抜かれます。自社の存在価値や自社らしさを象徴するエピソードやコンテンツが何かを棚卸して、率直にさらけ出した方が、かえって共感を呼びやすいです。
ふたつめは、「Job Description(ジョブディスクリプション)」の充実。いわゆる仕事内容や人材要件について書かれている募集要項のことですが、日本企業のホームページにおける求人情報は、職種名と仕事内容が2~3行書かれている程度の状態がほとんどです。しかし、AmazonやLINEなどオウンドメディアを採用に活用している企業は、ジョブディスクリプションが非常に丁寧。仕事内容の詳細な説明があるのはもちろん、所属する組織の構成や人材要件に関する記述も丁寧で、なおかつ同じ職種でも役割や携わるサービスが異なれば、それごとにジョブディスクリプションを掲載しています。これが何を意味しているかといえば、「役割と能力の見える化」。つまり、求職者が読めば、自分がこの仕事に向いているか一目瞭然の状態にするということ。ジョブディスクリプションを丁寧に書くほど、うってつけの人材がと出会える確率が高まり、結果的にエンゲージメントも向上します。
このように、オウンドメディア・リクルーティングは、やり方次第で採用のマッチング精度を飛躍的に向上させることができます。それは、採用業務を効率化することはもちろん、従業員の定着率向上にもつながり、組織全体の生産性を向上させるものなのです。
中小企業が大企業に勝つような、‟採用の番狂わせ”を起こせる
さて、ここまでご紹介したことを実践しても、なかには「うちの会社のホームページを見にくる人なんて多くないよ」とお感じの方もいらっしゃるでしょう。そんな方にこそ、私たちIndeedです。はじめにご紹介した通り、Indeedは検索エンジンですので、インターネット上に存在する求人情報をクローリングして、ユーザーが検索した結果として表示される仕組みです。そのため、ホームページが充実していればいるほど、世界最大規模の求人検索エンジンであるIndeedで多くのユーザーに情報を届けることが可能なのです。
こうした、オウンドメディア中心の採用活動や、Indeedのような仕組みが世の中に広がることによって、何が起こるのか。私は、‟採用の番狂わせ”が起こると思っています。従来の採用は、予算のある大手企業に優秀な人材が集まりやすい構図になっていました。なぜなら、求人媒体はビジネス構造上、価格の高い広告ほど上位に表示されるため、多額の費用を投じにくい中小企業やベンチャー企業は、求職者から発見されにくい側面がありました。
しかし、オウンドメディアの情報がユーザーの入力した検索キーワードによって表示される世界では、企業規模や予算の大小は関係ありません。これまでは優秀な人材の獲得に苦戦していた中小・ベンチャー企業が、大手企業に競り勝つような番狂わせが起こせるはず。深い共感と理解によって紡がれる採用活動には、そうしたドラマを起こす可能性があると共に、入社後の大活躍、ひいては組織生産性も最大化していきます。ぜひオウンドメディア・リクルーティングをご実践ください。本日はありがとうございました。
――「あしたの人事クラブ」第8回交流会では、ゲスト2名とあしたのチーム代表の髙橋恭介によるパネルディスカッションも行いました。その模様は次回お届けいたします。
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