中小企業経営者が検討したい社員の士気があがる法定外福利厚生について

(写真=nd3000/Shutterstock.com)

福利厚生には健康保険、介護保険、厚生年金保険などの社会保険である法定福利厚生と、企業側が任意で設ける法定外福利厚生の2種類に分類されます。法定福利厚生は法律で義務付けられていますが、法定外福利厚生に関しては、絶対に必要なものではありません。しかし法定外福利厚生は、間接的に社員の士気を上げ、組織の生産性を高める場合もあります。

ここでは法定外福利厚生の役割を改めて確認するとともに、実際に企業が取り組んでいるものと、社員側が求めているものの違いを解説し、中小企業経営者がどのようにして法定外福利厚生を制度化するべきかを考えます。

法定外福利厚生は企業経営への投資と考える

仕事で成果を出せば賃金が上がると知っていれば、モチベーションにつながり、賃金が上がった社員は士気も上がると思います。

それに対して法定外福利厚生は、直接的には社員の士気を上げることができません。なぜなら法定外福利厚生は条件さえ満たせば社員の全員が受けられるものであり、それが成果を出そうと思う理由にはならないからです。

しかし法定外福利厚生は社員の会社生活における心身の安定に役立ちます。たとえば住宅手当や家賃補助が出れば、住環境を確保してくれるという安心感が生まれますし、人間ドックの補助金制度があれば、健康面での安心感が生まれます。

一見すると企業にとってメリットがないように思えますが、法定外福利厚生によって多くの社員の心身が安定することにより、仕事への士気は高まり、生産性や実績の向上にもつながるのです。このように考えると、法定外福利厚生は間接的に企業経営にプラスの効果をもたらす投資であると言えるでしょう。

実際に企業が取り組んでいる法定外福利厚生

第一生命保険株式会社が2018年2月22日に発行した、2017年度『福利厚生に関する実態調査』によれば、すでに導入している法定外福利厚生制度のトップ5は以下の通りでした。

1.「介護による休暇制度」82%)
2.「メンタル対策(予防策としての相談窓口)」80%
3.「施設等の割引サービス」63%
4.「自己啓発支援制度(eラーニング等)」59%
5.「医療・介護の情報・相談先の提供」47%

一方で今後導入を検討している法定外福利厚生制度のトップ5は以下の通りでした。
1.「健康増進ツールの提供」49%
2.「医療・介護情・相談先の提供」36%
3.「入院した際の費用補助」35%
4.「自己啓発支援制度(eラーニング等)」31%
5.「メンタル対策(予防策としての相談窓口)」24%

働き方改革に関する取り組みとしては、「ノー残業デー・プレミアムフライデー(60%)」、「年次有給休暇の計画的付与(51%)」、「パート、アルバイトといった非正規労働者の正社員登用(48%)」をあげています。

このように見てみると、企業側が導入しているもしくは導入を検討している法定外福利厚生のメインは、社員の健康管理に関するものであり、直接的な金銭の補助制度に関しては積極的でないことがわかります。

企業の法定外福利厚生は社員が求めているものとズレている?

企業の法定外福利厚生は、実は社員側が求めるものとズレている可能性があります。

というのも2015年にマンパワーグループが実施した、過去・現在において仕事をしたことがある18~60歳の男女972人を対象にしたアンケートの中で、「会社の福利厚生として良いと思うもの」という質問に対し、「住宅手当・家賃補助」「食堂、昼食補助」「人間ドックなど法定外の健康診断」「育児休業、介護休業(法定以上)」「バースデー・リフレッシュ休暇」が上位にランクインしているからです。

つまり企業側が社員の健康管理に関する法定外福利厚生を重要視する一方で、社員側は直接的な金銭の補助制度を重要視しているのです。この結果から「法定外福利厚生を通じて間接的に社員の士気を上げる」という目的にはかなっていないと言えます。

社員のニーズにあった法定外福利厚生を制度化しよう

今回紹介した結果は、あくまで各アンケート調査に回答した企業や社員の意見にすぎません。そのため自社の社員に話を聞いてみたら、まったく違う回答になる可能性は十分あります。

しかし重要なのは、第一に企業を経営する側と、企業に雇われる側では法定外福利厚生についての考え方に違いがあるという点です。そして第二に、その違いは双方が意見交換し、実際に制度化してみて反応があって初めて明らかになるという点です。

中小企業経営者がこれから新しい法定外福利厚生を制度化しようと考えているのであれば、まず企業側と社員側で相違があることを理解し、そのうえで、「法定外福利厚生を通じて間接的に社員の士気を上げる」という目的に合うのかを、社員と一緒に考えていく必要があるでしょう。

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