ビジネスシーンでよく「スキーム」という言葉を耳にします。
なんとなくその意味をわかっていても、人に説明できるほどしっかりと理解している人は少ないかもしれません。
この記事ではスキームという言葉の基本的な意味や用法を説明したうえで、仕事で役立つ事業スキーム作成のポイントを解説します。
スキームとは?
まずは語源を知ったうえでビジネスシーンにおける「スキーム」という言葉の使い方を理解しておきましょう。
言葉の語源
スキームは英語で「scheme」と書き、「枠組みを持った計画」という意味をもつギリシャ語が語源。その他「陰謀を企てる」「図解」「図表」といった意味をもち、現代においても「体系的な計画」を示す言葉として使われています。
ビジネスシーンでの使い方
ビジネスの場面でスキームという言葉は、「構想を練る」といった意味で使われます。
また、広い意味で捉える場合には、作戦計画・策略・計略・構想・目論み・企図などといった意味合いで使われることもあります。
スキームは「目標達成に向けた具体的な方法や枠組み」のことを指し、単に「予定を立てる」という意味で使われる「プラン」という言葉よりも踏み込んだ意味を持っているのです。
そして、スキームと似たような意味を持つ言葉に「ストラテジー」というものもありますが、こちらは将来を見通した戦略を示す言葉。
それに対して、スキームは、目の前の現実的な課題を解決するために立てる戦略だといえます。
マーケティングや営業の場面においては、これらの言葉の意味を的確に捉える必要があります。
スキームと「フロー」「ロジック」「スキーマ」は別の意味?
スキームに似た意味をもつビジネス用語は「プラン」や「ストラテジー」の他にもあります。中でもよく聞くのが、「フロー」や「ロジック」。また、混同されやすい言葉に「スキーマ」があります。
フローは「仕事の流れ」を意味する言葉であり、仕事の始まりや途中経過、そして終わりまでの一連の流れを示すものです。
この言葉は単体でも使われますが、ワークフローやフローチャートといった形で組み合わせて使われる場合も多くあります。
ワークフローは取り組むべき仕事の進め方を図表などにまとめることを指し、複数の人間で作業を進める場合に使われるもの。
フローチャートは作業手順を図式化したものであり、「どの作業をいつ行うか」を可視化できます。
ロジックは英語の「logic」からきており、論理といった意味を持ちます。
論理は「考えの道筋」を示すものであり、複雑な物事を分かりやすく簡潔に伝えていくための考え方がロジックということになるのです。
スキーマは英語の「schema」のことで、図、概要などを意味します。
スキームがビジネスプランなどで使用されるのに対して、スキーマはスキームを説明する際などに概要を表したり、図で説明したりする部分的なところを指すでしょう。
スキーム ( scheme ) | 計画 |
フロー ( flow ) | 手順 |
ロジック ( logic ) | 論理 |
スキーマ(schema) | 概要 |
簡単にまとめると、スキームは「計画」、フローは「手順」、ロジックは「論理」、スキーマは「概要」。
4つの言葉には明確な違いがあるのです。
英語のやりとりで「スキーム」を使うときの注意点
スキームと混同しやすい用語に、枠組みを意味する「フレームワーク」があります。スキームと「フレームワーク」が異なる点とは、スキームが「枠組みのある計画」「体系的に実行するための計画」など継続的なニュアンスを含むことに対し、「フレームワーク」は単なる枠組みであって「計画」といった意味を含まないことです。
それから、アメリカ英語におけるスキームは「謀略」「悪だくみ」「陰謀」といったネガティブな意味も持つため、使用する時は相手の誤解を生まないよう注意しなければなりません。
ビジネスシーンにおけるスキームの使用例
「スキーム」という言葉はビジネスシーンにおいて「〇〇スキーム」といったように他のワードと組み合わせて使われることが多くあります。
スキームを使ったさまざまな言葉の意味について説明します。
連携スキーム
「連携スキーム」とは、たとえば産学連携のように1つの組織の枠組みを超えて協力していくことを指します。
企業内においても部署ごとに単独で成果を出そうとするよりも、ほかの部署と連携することで、相乗効果で良い成果に結びつくことがあります。
うまく連携スキームを構築できれば、技術協力や商品の開発コストの削減といった効果が期待できます。
評価スキーム
「評価スキーム」とは、ビジネスシーンにおいては人事評価や事業評価などに用いる枠組みであり、人や企業を評価する制度を示します。
評価方法を体系化することで、企業として社員や外部からの信頼度が高まり、同時に強固な組織づくりが実現できます。
逆に、不透明かつ不公平な人事評価をしていると、組織に対して不満を抱えてしまう社員も出てしまうでしょう。客観的な判断を行えるように、可視化された人事評価のシステムを導入するというのも1つの方法だといえます。
関係者がきちんと納得できる合理的な仕組みを整えることが重要です。
販売スキーム
「販売スキーム」とは、企業が提供する商品やサービスについて販売の面から一連の流れを捉えていくことを指します。
販路の拡大や販売方法を見直す際に用いられる枠組みであり、販売会社・消費者・商品メーカーといった関係先を軸として考えます。
顧客満足度・クレーム対応・アフターサービス・フィードバックといったそれぞれの項目が、販売においてどのような結びつきや影響を持っているのかを把握し、課題点を洗い出していきます。
販売スキームを用いることで、売上の向上や販売不振の改善といった課題をクリアしていく方法を探ることができます。
運用スキーム
「運用スキーム」とは、主に金融業界で使われるものであり、顧客から預かった資産の運用方法を、図表などを用いて簡潔に示したものを指します。
特定の期間における資産額の増減や運用状況を説明し、顧客の理解度を高めるために役立てられます。
また、将来発生するリスクや選択できる運用方法の把握、資産運用の段階的なステップなどを盛り込むこともあります。
運用スキームで資産の推移を可視化することによって、今後の投資判断に役立てる狙いがあるといえるでしょう。
返済スキーム
「返済スキーム」とは、企業が抱える借入金の返済計画を立てる際に用いられます。
金融機関などから資金調達を行った場合は、契約内容にあわせて返済を行わなければならないため、綿密な返済計画を組んでおく必要があります。
返済時には利息の支払いもあるので、借入金が多ければ多いほど経営を圧迫してしまいます。
企業の財務状況や事業の将来性などを踏まえたうえで、返済に支障が出ないような仕組みを整えていくために、適切な返済スキームを検討する必要があります。
投資スキーム
「投資スキーム」とは、株式などの有価証券や不動産といった金融商品に対して、どのような配分で投資するのかを決める枠組みを指します。
特に集団投資スキームといった使い方をする場合には、多くの投資者から資金を集め、収益を出資者に分配する仕組みとなっています。
投資スキームという言葉は主に金融業界で用いられるものであり、資産運用型と資産流動化型の2つのタイプに分けられるのです。
資産運用型ではファンドマネージャーが運用を行い、収益を投資家に還元する仕組み。
資産流動化型であれば、不動産を証券化して販売することで資金調達を行うことになります。
企業再生スキーム
「企業再生スキーム」とは、経営不振や財務状況が悪化している企業を再建するために用いる枠組みです。
対象となる企業が置かれている状況を把握したうえで、事業や収益化の仕組みを再構築していくことを目的としています。
再建のための最適な方法を探っていくものであり、再生計画の策定もしくは清算手続きといったプロセスを踏んでいきます。
人員整理・資産の売却・設備投資の見直しなど、幅広い視点で企業をチェック。
経営を立て直すために債務が重荷になっている場合には、債権放棄やリスケジュールなどを行い、早期に財務基盤を整えていきます。
事業スキームの作り方
「事業スキーム」とはビジネスシーンにおいては事業計画のことを指します。
また、資金調達の場面で事業スキームという言葉を使うときには、事業計画書のことを指す場合もあります。
似たような言葉として事業プランというものがありますが、前述の通り、プランとはあくまでも「予定」であり、構想段階のものを意味します。
一方事業スキームは、計画実現のための具体的な方法を示すものであり、そこには明確な違いがあります。
事業スキームを作成する際には、事業のコンセプトやビジョン・事業領域・収益化の方法・自社の強み・財務計画といった5つのポイントを押さえておく必要があります。
- 事業のコンセプトやビジョン
- 事業領域
- 収益化の方法
- 自社の強み
- 財務計画
事業のコンセプトやビジョン
まず、事業のコンセプトやビジョンを設定します。実現可能性の高いビジョンを掲げ、いつまでに目標を達成すべきかを決めます。
事業領域
事業領域は物理的定義と機能的定義の2つから考えることが重要です。
物理的定義は顧客に提供する商品やサービスそのものであり、機能的定義は商品やサービスを提供する機能から事業活動の範囲を決めていくものです。
事業領域をきちんと定めることによって、無計画な経営の多角化を避けられます。
収益化の方法
また、事業を継続させるためには、収益化の方法を構築しなければなりません。自社の商品やサービスを把握して、シチュエーションに応じた収益化の仕組みを見つけていく必要があります。
自社の強み
そして、人材・技術力・ブランド力・ノウハウ・販路といった自社の強みも改めて見直してみましょう。
財務計画
さらに、自社が抱える経営面や営業面でのリスクを把握し、資金の使い道や売上予測など、具体的な財務計画を練り込むことで事業スキームが完成します。
事業スキームは、できるだけ簡潔にまとめることが重要。
事業スキームの核となる部分が明確になっていれば、外部の相手にもしっかりと伝わります。
また、現場の声をきちんと汲み取り、実行性の高いものに仕上げることを意識しましょう。
さらに、事業スキームを磨き上げるためには、客観的な事実を内容に反映させることも大切。
競合他社や業界の動向を分析して、客観的な根拠に基づいた事業スキームが完成すれば、事業は今よりも大きく前進することでしょう。
事業スキーム作成のポイント
事業スキームを作成する際のポイントとして、下記3つ説明します。
内部・外部環境分析の活用
事業スキームを作成する際には、自社の内部環境や市場の外部環境を分析することが重要です。自社の強みや弱み、市場のトレンドや競合情報などを収集し、それを踏まえた上で事業スキームを検討することが必要です。
実行可能か可能性を確認
事業スキームを作成する際には、机上の空論ではなく具体的な実行可能性を確認する必要があります。資金や人材など、必要なリソースが揃っているかどうか、実現可能なスケジュールで進めることができるかどうかなどを検討し、実際に実行できるスキームを作成することが重要です。
共通の用語を使用する
事業スキームを作成する際には、関係者が共通の用語で意思疎通できるようにすることが重要です。異なる分野や職種の人たちが集まる場合、専門用語など通じないことがあるため、配慮が必要です。できる限りわかりやすい用語を使用し、誤解を招かないようにしましょう。共通の用語を使用することで、スキームの意図を明確にし、円滑な意思疎通を図ることができます。
スキーム図の作り方とは
ビジネス上で、スキームとはスキーム図として図解で表されるのも一般的です。スキーム図は、ヒト・モノ・カネなどビジネスの流れを第三者でもわかるように図式化したものです。
相関図型、フロー型、樹形型などスキーム図には種類があります。対象となる事業の商流にあったスキーム図の種類を選ぶとよいでしょう。まずは、対象とされる事業の要点を整理し、明記したい流れを細い矢印・太い矢印、イコールなど記号で定義してから、関係性を示していきます。定義する記号をあまり増やしすぎず、できるだけわかりやすく伝えられるスキーム図を目指しましょう。一般的なスキーム図の作り方は、下記の通りです。
- 上から、「顧客」「事業」「事業者」の内容について順番でイラストを設置する
- 最低限「モノ」「カネ」の流れを矢印で記載する
- 補足事項については流れの中に吹き出しで文章を入れる
1.情報・要点の整理
スキームに関係するヒトを書き出し、ヒト・モノ・カネの関係性や動き・流れ、それぞれが発信するもの・受信するもの、関係するメリットといった要点を整理します。
2.各要素を記号化する
上記で整理した情報・要点を図形や矢印などの記号に置き換えます。似通った種類の記号は統一するなど、記号化のルールをあらかじめ決めておくようにしましょう。
3.記号の配置
スキーム図の中に上記で記号化した要素を配置し、わかりやすくまとめていきます。この時、重複する要素がないか、逆に、入れるべき要素が不足していないかをチェックしましょう。既存のスキーム図を参考に配置を考えるのも有効な方法です。
スキームの意味を理解して事業拡大を目指そう
スキームは、構想を練るという意味や、作戦計画・策略・計略・構想・目論み・企図などといった意味があります。ビジネス上の目標達成のために、スキームを立てて達成のための具体的な方法や枠組みを決めることは重要です。
ビジネス上のさまざまな場面で使用できるスキームですが、スキームを説明する際に相手の理解度を深めるためにスキーム図を使用することも有効と言えます。
スキームの意味や作り方をしっかりと理解し、自社の事業拡大に役立てるとよいでしょう。
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