付加価値とは?正しい使い方や計算方法、価値の高め方

(画像=porcorex/iStock)

競争や変化が激しい現代のビジネスにおいて、鍵を握るのが「付加価値」です。付加価値とは、商品やサービスに企業独自の価値を付けることを意味します。

多くの企業は、同業他社との差別化を図る目的で、どのように付加価値を付けるかを懸命に試行錯誤しているのです。

また、財務会計の分野では、企業の収益や経営状況を表す言葉として用いられています。
そこで、ここでは付加価値の意味、使い方や価値の高め方、計算方法について解説していきます。

付加価値の意味は?

付加価値とは、商品やサービスが本来持っている価値に、
プラスα(アルファ)で付け加える価値のことを指します。

他社の類似商品と明確な違いを打ち出すことで、

顧客にアピールし売上の拡大も狙うのが目的です。

例えば、同業他社と同じ機能で似たような商品を販売しても、顧客に選ばれる理由がないため、競争に勝つことはできません。

このような場合、単純に価格が安い商品が顧客に選ばれるため、価格競争に巻き込まれてしまいます。

そうならないためにも、競合他社と差を付けるために「価格」以外で、選ばれる理由を商品に付ける必要があります。これが、付加価値なのです。

具体的には、次のように使われます。

  • 「競争社会に勝つために既存のサービスに新たな付加価値を付ける」
  • 「高品質なカメラ機能を付加価値として実装する」

付加価値額とは?

また、付加価値という言葉は、企業の経営状況を分析する際に、収益や生産性を算出する指標としても使われます。これを「付加価値額」といいます。

付加価値額とは、企業が事業活動によって生み出した価値を数値で表したものです。基本的には、売上から原価を差し引いた額で、利益とほぼ同義語として扱われます。

例えば、原価1,500円の製品を加工して2,000円で販売した場合、生産された付加価値は500円ということになります。

【付加価値額の計算式】

2,000円(売価)- 1,500円(原価)= 500円(付加価値額)

計算式で表すと、付加価値はこのように定義されます。しかし、企業の経営状況を分析する場合は、もっと複雑な計算方法になります。

企業の場合、一言で「原価」といっても人件費や外注費、諸経費など様々な項目が存在するからです。

付加価値額の計算方法

財務会計の分野において、企業の付加価値を算出する計算式として、主に2つの方式があります。それが、「控除法(こうじょほう)」と「積上法(つみあげほう)」です。

企業の経営状態や収益構造を判断する際の、重要な指標となる数値ですので、きちんと基本は理解しておかなければいけません。

そこで、ここからは企業の付加価値の計算方法について解説していきます。

控除法(こうじょほう)

最初の算出法である「控除法(こうじょほう)」は、売上の総額から経費(原価)を差引いて計算する方法です。中小企業庁方式とも呼ばれ、以下の計算式で求められます。

【控除法の計算式】

付加価値 = 売上高 - 外部購入価値

※外部購入価値には、材料費、購入部品費、運送費、外注加工費などが該当します。

積上法(つみあげほう)

2つ目の「積上法(つみあげほう)」は、生産の過程で生み出された価値を積み上げていくという考え方です。

日銀方式とも呼ばれ、以下の計算式で求められます。

【 積上法の計算式】

付加価値 = 人件費 + 経常利益 + 賃借料 + 金融費用 + 租税公課

人件費

「人件費」が積上法の項目として使われる場合、非常に細かく分類項目が定められています。例えば、「販売費」「労務費」「従業員の給与」「役員給与」「退職金」「福利厚生費」というような項目が存在します。

経常利益

「経常利益」とは、売上の総額から経費を差引いた「営業利益」に、その他で生み出された企業利益を加算した数値のことを指します。

賃借料

「賃借料」は、企業が事業を持続するにあっって必要となる土地や建物などの不動産費用、さらに機材や社用車にかかる費用も含みます。

金融費用

「金融費用」とは、企業が事業を営むために必要となる資金の調達にかかった費用のことを指しています。項目としては、「支払利息」「社債利息」「割引料」「社債発行費償却」などが含まれます。

租税公課

「租税公課」とは、企業が事業を経営するに必要な税金や出費を指します。具体的には、「国税」や「地方税」などが該当します。

純付加価値(じゅんふかかち)

また、積上法で付加価値を算出する場合に、ポイントとなるのが「減価償却費」です。

上記の計算式のとおり、「減価償却費」を含めない形で求められた付加価値額を「純付加価値(じゅんふかかち)」と呼びます。

「減価償却費」は、他社から購入した固定資産に対してかかる償却費なので、企業が生み出した付加価値には含まれない、という考えに基づいています。

粗付加価値(あらふかかち)

一方で、「減価償却費」を含めた形で算出した付加価値を「粗付加価値(あらふかかち)」と呼びます。以下の計算式で算出します。

【 粗付加価値の計算式】

付加価値 =人件費+経常利益+ 賃借料 +金融費用+租税公課+減価償却費

「減価償却費」を含める・含めないで2つの算出法が存在する積上法ですが、一般的には「減価償却費」を含める「粗付加価値」が使われています。

減価償却(げんかしょうきゃく)

「減価償却」とは、固定資産を時間の経過に合わせて、費用を計上する方法です。減価償却として計上される費用が、先程の積上法でポイントとなった「減価償却費」に該当します。

この減価償却費の計算方式には、「定額法」と「定率法」の2種類があります。「定額法」は、毎年同じ額を減価償却費として計上していく方法です。

例えば、耐用年数が5年間のシステムを200万で購入したとします。このとき、200万円を初年度に一括で計上してしまった場合、残りの4年間はシステムを利用するにも関わらず、経費が計上されないことになります。

これでは、損益のバランスが崩れてしまい、企業の会計として望ましくありません。

そこで、200万円を耐用年数の5年間で均等に分けて、毎年40万円ずつ原価を償却していくのです。こうすることで、企業として適正な損益バランスが保てるのです。これが定額法を適用した場合の、減価償却費の計上です。

【 減価償却の計算式】

定額法 購入費200万円 ÷ 耐久年数5年間 = 40万円

定率法

「定率法」は、初年度に大きな額の減価償却費を計上し、その後に一定の率の減価償却費を計上していく方法です。

企業の収益が順調であり、初年度に大きな額の減価償却費を計上できる余裕がある場合に、この定率法を使います。

先程の事例を使って、具体例を挙げて説明します。

償却率を0.4とした場合、初年度に200万円×0.4=80万円が減価償却費となります。2年目は、残りの120万円に償却率0.4を掛けた48万円を減価償却費として計上します。

このように、減価償却費の残高に、一定の償却率を掛けて計上する方法が定率法です。

【計算式】

定率法 購入費200万円 × 償却率0.4

付加価値を高めるには?

それでは、企業が付加価値を高めには、どのような取り組みを行えば良いのでしょうか。

ポイントとなるのが、「付加価値率(ふかかちりつ)」「付加価値生産性(ふかかちせいさんせい)」の2つです。

そこで、この2つに関して詳細を解説していきます。

付加価値率(ふかかちりつ)

企業の付加価値の良し悪しを判断するときに使われる指標が「付加価値率(ふかかちりつ)」です。

付加価値率とは、売上高に対する付加価値の割合を示す数値で、企業の生産性の状況を表す目安として利用されます。具体的には、以下の計算式で算出されます。

【付加価値率計算式】

付加価値率 = 付加価値 ÷ 売上高 × 100(%)

例えば、原価1,500円の製品を加工して2,000円で販売した場合、生産された付加価値は500円になります。このときの付加価値率は、25%になります。

500円 ÷ 2,000円 × 100 = 25%

付加価値生産性とは?

次に、「付加価値生産性(ふかかちせいさんせい)」です。

付加価値生産性とは、労働者一人あたりの付加価値生産額表す数値で、企業の労働生産性を判断するときの指標として使われています。

具体的には、以下の計算式で算出されます。

【付加価値生産性の計算式】

付加価値生産性 = 付加価値 ÷ 従業員数

例えば、原価1,500円の製品を2名の従業員で加工して2,000円で販売したとします。

このとき、付加価値は500円で、付加価値生産性は250円ということになります。

当然ながら、この付加価値生産性が高いほど、企業の全体の生産性が高いことになります。

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