人件費とは?内訳や決め方・計算方法・考え方・削減方法

企業活動において、絶対に外せない経費となる人件費。人件費と一口にいっても、実は給料だけを指す言葉ではありません。

人件費の正確な意味や、売上における適正な割合を算出する方法は、企業の収益性を判断するうえで欠かせない知識といえます。

この記事では、管理者や人事担当者なら知っておくべき人件費の概要や内訳、人件費率の求め方や改善方法について解説します。

人件費とは?

人件費とは、従業員に支払う給料のほかに、各種手当や賞与、社会保険料等の福利厚生費、社宅費用など、雇用によって発生する様々な費用のことを指します。

役員報酬や退職金など、意外な項目も人件費に含まれるため、経営状況を判断するためには内訳を正確に把握しておく必要があります。

人件費の内訳(勘定項目)

それでは、人件費の各勘定項目について詳しく解説していきます。人件費の勘定項目は、基本的に以下の4つに分けられます。

給与手当

従業員に支払う給与と各種手当を指します。基本給のほか、残業代や休日手当、家族手当などの各種手当金、業績によって支払われるボーナス、通勤手当や社宅費用といった現物給付がこちらに含まれます。

パート・アルバイトの社員に支払う給与は「雑給」として処理されるケースもありますが、基本的にはこちらの給与手当に含まれます。

福利厚生費、法定福利費

福利厚生費とは、福利厚生を目的として企業が支払う費用全般を指す言葉です。従業員の慰安を目的としたサークル活動や社員旅行にかかる費用、結婚・出産祝い金や慶弔金といった冠婚葬祭費用、社宅費用なども福利厚生費となります。

その中でも、法律に基づき企業が負担することが義務付けられている費用のことを法定福利費といいます。健康保険、厚生年金保険、介護保険等の社会保険費用、労災保険や雇用保険などの労働保険費用の一部または全部を会社が負担して支払います。

役員報酬

役員や監査役など、特定の役職を持った従業員に支払われる報酬で、従業員の給与手当とは区別されます。役員報酬を決めるには、定款による規定か株主総会での承認が必要であり、また、役員には従業員のように各種手当金は支給されません。

退職金

退職金とは、従業員の年齢に関わらず、退職に際して企業から支払われる賃金のことです。

退職金には、退職する際にまとめて一度に支払われる「退職一時金」と、一定額が年金として支払われる「退職年金」の2種類があります。

退職金の制度は企業の就業規則によって取り決められており、退職金制度に法的義務はないため、制度が存在しない会社もあります。

人件費率の計算方法

売上に対して人件費が占める割合のことを「人件費率」といいます。人件費率が高いほど人件費負担が利益を圧迫していることを示しており、経営状況の見直しが必要と考えられます。人件費率は、以下の式で求められます。

人件費率=人件費÷売上

労働分配率と売上高人件費率

人件費の割合を計算には、「労働分配率」と「売上高人件費率」の2種類があります。それぞれの計算方法を紹介します。

労働分配率

労働分配率とは、「付加価値額」に対して「人件費」が占めている割合のことです。付加価値額とは、元値に対して企業が付け加えた価値のことを指します。例えば、1000円で仕入れた製品を1400円で売ったとき、400円が付加価値額となります。つまり、粗利益のうち人件費が占める割合を、労働分配率をいいます。

労働分配率は以下の式で求められます。

労働分配率=人件費÷付加価値額×100

具体例を考えてみます。A社の売上(付加価値額)は、毎月の売上が1500万円で、仕入れ総額が500万円、給与や福利厚生費を含めて人件費が450万円かかっているとします。この場合の労働分配率は、以下の通りになります。

4,500,000÷(15,000,000-5,000,000)×100=45

ですので、労働分配率は45%です。

日本の企業の平均的な労働分配率は40~60%といわれていますが、業種によって大きく差があります。自社の値が適性かどうか判断するさいは、同業他社と比較してみてください。

売上高人件費率

売上高人件費率は、売上高に占める人件費の割合です。労働分配率が、売上から仕入れ額を引いた粗利益を基に計算するのに対して、売上高人件費率は総売上のうち人件費が占める割合を計算します。労働分配率と同様に、この割合が高ければ高いほど、経営における人件費の負担が大きいことを示しています。

売上高人件費率の計算式は、以下の通りです。

売上高人件費率=人件費÷売上×100

先ほどのA社の例をとって考えてみると、売上が1500万円で人件費が450万円ですから、

4,500,000÷15,000,000×100=30

となり、売上高人件費率は30%です。

売上高人件費率の平均は、小売店20~30、サービス業で40~60%とされています。業種によってその平均率には大きく差異がありますので、一概に小さければわけではないという点を留意してください。

最適な売上高人件費率にするために

労働分配率や売上高人件費率を計算し、人件費が経営を圧迫していると判断された場合、改善のためにはどのような対策をとるべきなのでしょうか。いくつか対策方法をご紹介します。

売上高をあげる

一人当たりの生産性を高め、売上高を向上させれば人件費の割合を下げることができます。生産性の向上に成功すれば、人件費の負担が軽減するだけでなく、継続的な収益増が見込めるため、会社経営においては抜本的で健全な対策方法ともいえます。

とはいえ、当然ながら突然生産性を高めて売り上げを向上させようと思っても、一朝一夕でなし得ることではありません。

現状を分析し、ネックとなっている問題点を洗い出したうえで、長期的に改革を行っていく必要があります。現状分析を行うには、社員一人一人の生産性を可視化し、適正に評価することが先決です。

データの集計や分析を人的に行うと余計に人件費がかかってしまいますので、専用のツールを使ったほうが効率的です。

その上で、人事評価を見直し、人材の適切な配置ができているか見直しましょう。従業員それぞれの特性を把握して、現在の人的リソースを最大原因活用することが生産性向上のカギといえます。

社員数を減らす

売上高の向上と同時に人件費削減の効果的な手法として考えられるのが、社員数を削減することです。

月収30万円の正社員を雇ったとき、年間の人件費は500万円以上かかるとされています。さらに退職金の積み立てや備品などの経費も増加することを考えると、社員を新たに雇う負担は大きいことがよくわかります。

社員数を減らせば、かかる人件費も大きく削減できますので、最も即効性のある施策がリストラであるといえるでしょう。

ただし、リストラを行うことで会社の評判を落としてしまうという大きなデメリットがあることは理解すべきです。

リストラを行ったことが外部に知れてしまうと、「業績が悪い会社」「従業員をないがしろにしている会社」という悪い評判がついてしまいます。

取引先や銀行との関係に影響を及ぼすだけでなく、今後の採用活動でも苦労することになりますので、最後の手段ととらえてください。

人件費を削減する

コストカットの施策として着手しやすいのが、残業時間を削減することです。社員の残業時間を企業が管理していないと、無駄な残業が発生してしまい、その分人件費も肥大していきます。

残業を許可制にする、ノー残業デーを作る、タイムマネジメント意識を徹底するといった残業規制の施策を行うことで、残業代の削減を期待できます。

大切なのは、「絶対に残業してはいけない」とするのではなく、必要な残業は認めて、その分の報酬はしっかり支払うことです。社員のやる気を引き出しながら、時間管理をしっかり行うことで無理のないコストカットが実現します。

人事評価制度を見直す

また、現在支払っている報酬を見直すことも重要です。そのためには、現在の人事評価制度を再検討し、成果に見合った報酬を出せるよう評価基準を整えることです。

正当な評価によって報酬を支払うことは、従業員のモチベーションアップにもなり、業務の生産性向上にもつながります。

気を付けてほしいのが、闇雲に給料を下げてはいけないということです。給料を下げて従業員の意欲低下を招いてしまうと、優秀な人材の流出にもつながり、長期的に企業の不利益となってしまいます。

人件費の見直しとともに人事評価制度の見直しを

人件費は、企業経営を考えるうえで重要な指標であり、適切な人件費率を把握しておくことが大切です。

人件費率を改善するためには、闇雲に給料を減額したり、従業員数を減らすのではなく、生産性の向上や残業時間の削減といった、抜本的な労働環境の改革を行うほかありません。

中でも、従業員一人一人の生産性を向上させるためには、人事評価制度を見直して、適材適所の人材配置をすることが課題となります。

業務の成果や従業員の特性を可視化し、現在のリソースを最大限に活用することが長期的な利益増加につながります。現状の分析には、ツールを活用すると効率的でおすすめです。

まずは、人事評価制度の見直しをはかるところから始めてみてはいかがでしょうか。

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