現場で業務を推進する「プレイヤー」と「管理職」。立場が異なる両者を兼務する役割として注目されているのがプレイングマネージャーというポジションです。
働き方の多様化や、人口減少による人材不足が進む中で、管理職でありながらプレイヤーでもあるプレイングマネージャーが注目を浴びています。
この記事ではプレイングマネージャーの概要や役割、難しさ、求められる能力、能力を発揮するためのコツについて解説します。
プレイングマネージャーとは
プレイングマネージャーとは、その名の通り「プレイヤー」としての役割と、「マネージャー」としての役割の2つを求められるポジションのことをいいます。
プレイングマネージャーの概要
プレイングマネージャーという言い方は、もとは野球など、スポーツ界における「選手権監督」のような役割で使用されてきました。
日本のビジネスの世界に登場したのは、バブル崩壊後です。経営状況が悪化し、人件費削減に伴うリストラ。管理職の人数が減ったことにより、部下を指揮し、かつ営業も行えるようなマルチタスクができる人材が求められるようになりました。
ほかにも情報通信技術の発展により、組織内の意思疎通の速さが激化。企業の指揮系統は、より素早く判断を下し、綿密でかつ簡潔なコミュニケーションが必要とされるようになりました。
昔ながらの部署間の調整や、部下から報告を受けて決定を下す管理職では、刻々と変わるビジネスの現場では追いつけないというのが、プレイングマネージャーが必要とされる背景です。
また、組織が小さいスタートアップ企業では、マネージャーが敏腕営業マンとしてチームを引っ張り、中小企業で代表取締役が自ら取引先に出向き営業することは珍しくありません。
プレイヤーの個人目標を達成する力と、マネージャーのチーム目標に向かい部下を動員する力の両方を持ったプレイングマネージャーは、多くの組織で必要とされる人材といえます。
プレイングマネージャーの役割
プレイングマネージャーは、チームを刺激する優秀なメンバーであり、かつチームをけん引する魅力的な上司でもあります。組織内で以下のような役割を果たします。
• 個人目標を達成するため、ほかのメンバーと刺激し合いながら、高い成果をあげる
• チームの目標を明確に伝え、メンバーと密にコミュニケーションをとりながら、適切かつ素早い判断でチームを正しい方向に導く
• 現場での各メンバーの役割、得手不得手を理解し、個人に合った指導方法で部下を育成する
プレイングマネージャーと管理職の違い
プレイングマネージャーと従来の管理職との違いは、現場の目標達成に実際的に貢献しているかどうかです。
プレイングマネージャーは個人の目標とチームの目標の両方に責任を持ち、動き回りながら営業数字を重ねます。一方、管理職は部署やチームの目標のみに注力します。
プレイングマネージャーは、チームの一員でもあるため、現場の状況を理解し、メンバー間の結束を強くする役割を果たします。
一方で、実務に時間を割く以上、統率する部下が大人数になればなるほど、マネジメントが追い付かないというデメリットもあります。
その点でいえば、部下の指導やチームの統率に注力できる管理職は、大規模な人数をまとめるのに適しています。
プレイングマネージャーは、万能ではありません。組織の在り方によって、プレイングマネージャーが適しているのか、マネジメントに注力する管理職を置くべきか、検討する必要があります。
プレイングマネージャーが必要とされる背景とは
バブル期に急増したプレイングマネージャーが今必要とされている背景には、IT技術の急速な発達により、意思決定の速さが必要になっている他にもあります。
人口減少によって優秀な人材が減少することも、必要とされる理由のひとつ。
少ない人材で現場の実働と管理職の両方を果たせる社員を育成することで、社内のマンパワーを有効に活用しようとの動きがあるのです。
また、働き方が多様化し、年功序列などの従来からある雇用システムが崩れてきていることも影響。
「年齢を重ね経験を積み管理職に就く」という決まった働き方から、「本人がどんな働き方をしたいか」を基に、年齢に関係なく本人が一番能力を出せる働き方を取り入れる動きが活発化しています。
その多様な働き方のひとつとして、プレイングマネージャーを選択する社員も少なくはないのです。
プレイングマネージャーが活躍する職種(エンジニア職・営業職)
プレイングマネージャーが、とりわけ活躍する職種として、「エンジニア」と「営業」があります。2つの役職での、プレイングマネージャーに求められる役割を紹介します。
エンジニア職
エンジニア職のプレイングマネージャーは、担当する領域で実際に手を動かすと同時に、プロジェクト全体の工程を把握し、進行管理を行います。
そのため、一つの領域だけでなく、フロントエンドからバックエンド、インフラ周りといった、広範囲にわたる知識が求められます。
また、チーム内の管理だけではなく、社外やエンジニアチーム以外の部署とのやりとりも、プレイングマネージャーの仕事です。
その際、優秀なプレイングマネージャーは、プログラミングの知識を持たない人間に対して、専門用語を多用せず、プロジェクトの現状や問題点を伝えることができます。
担当領域以外の知識を学び、交渉などコミュニケーションスキルを磨くという点で、プレイングマネージャーのポジションは、エンジニアにとってキャリアを広げる選択肢といえます。
営業職
営業職も、プレイングマネージャーが活躍する代表的な職種です。マネージャーが現場に立つことで素早く顧客ニーズを把握し、営業活動や提案内容に反映できるメリットがあります。
また、顧客との関係性に精通しているため、部下が営業活動で躓きやすい点を予測し、丁寧な育成やフォローアップが可能です。
企業の戦略に沿った営業活動を行い、プレイングマネージャー自身の行動によってチーム全体の営業力を強化していくこと。これが、営業職のプレイングマネージャーに求められる役割です。
プレイングマネージャーに求められる能力(時間管理能力/コミュニケーション能力/学習意欲/指導スキル)
2つの役割を果たしているプレイングマネージャーには、下記の能力が求められます。
時間管理能力
個人目標とチーム目標の両方を達成するため、多岐にわたるタスクを抱えるプレイングマネージャーにとって、時間管理能力は必須のスキルです。
時間管理能力とは、「スケジュール管理」「タスク管理」「時間リソース管理」の3つを指します。
• タスクごとの締め切りを設定し、進捗を確認すること。
• タスクの優先順位を決めること。
• タスクごとにかかる時間を把握し、適切なリソースを配分すること。
このような時間管理ができて、個人レベルや部署レベルなど、各レイヤーごとのタスクを滞りなく実行・管理することができます。
もちろん、人間の管理能力だけでチーム全体を把握するのは限界があります。そのため、スケジュール管理ツールや、メンバーの営業状況がわかる支援ツールなどを導入するのも、プレイングマネージャーの負担を減らし、全体の業績を上げる一つの方法です。
コミュニケーション能力
プレイングマネージャーは、クライアント、部下、各部署のマネージャーなど、多様な立場の人々と接します。そのため、常に相手のことを想像し、主張を理解してもらえるような、高いコミュニケーション能力が求められます。
エンジニア職のように、専門用語を部外者にもわかりやすく伝える能力はもちろんのこと、現場と上層部の間に入り、双方の主張に耳を傾け、落としどころを探る高度な交渉能力も必要です。
中間に立つプレイングマネージャーが優れたコミュニケーション能力を発揮することで、チームの結束力を強化できます。
学習意欲
プレイングマネージャーは、自分の範疇の業務だけではなく、部下の業務範囲など、多岐にわたる領域での知識が求められます。
営業のプレイングマネージャーであれば、サービスや商品の幅広い知識から、営業としての商談スキル、クライアント情報にも精通していなければいけません。
さらには、マネージャーとして、人の上に立つとはどういうことか、指導能力や育成能力を身に着ける必要があります。
プレイヤーのメンバーから脱するためには、新しい知識や能力を身に着けるための学習意欲が欠かせません。
プレイングマネージャーに就任したばかりの社員は、プレイヤーとしては優秀でも、マネジメントは未経験です。人を動かすには何が必要か、自ら学び行動することが求められます。
指導スキル
プレイングマネージャーとして、最終的にチーム目標を達成させるためには、メンバーを適切に指導することが重要です。
部下の足りない部分を見抜き、本人の能力を伸ばせるようなフォローを行います。
優秀なプレイヤーであるほど、すべて自分で完結したがります。
しかし、優秀な部下を育てるには、一から十までを教えてしまうのは不十分です。
マネージャーはあくまで補佐の立場であり、最終的に部下が自分一人の力で業務を遂行できるよう、育成しなければなりません。
部下の働く意欲を掻き立て、一人前に育てられる指導スキルが、プレイングマネージャーには必要です。
プレイングマネージャーは難しい?
個人の目標を達成しつつ、チーム全体の業績も上げる。まるでスーパーマンのようなプレイングマネージャーというポジションですが、その役割の複雑さゆえに、組織が円滑に機能するには難しさも抱えています。
優秀な人材なのに、彼/彼女がマネジメントを行うとチーム全体がうまく回らなくなる。そんなプレイングマネージャーには、次のような課題がみられます。
タスクを抱え込んでしまう
一つは、優秀であるがゆえに、自分ですべてを実行しようとするプレイングマネージャーです。
自分ならできるという感覚が強いため、タスクを他人に振り分けることがうまくありません。
ただのメンバーであれば機能していたとしても、マネジメント業務が加わると話は別。あっという間にタスクがあふれ出し、プレイングマネージャー本人どころか、チーム全体が機能不全に陥ります。
自分が頑張ればうまくいく、と思い込む自己犠牲の精神は、裏を返せばほかのメンバーを信頼していないということ。優秀なプレイングマネージャーになるためには、他人を信じて任せる勇気が必要です。
やりかたを押し付ける
こちらも、優秀であるがゆえに、指導方法に問題があるプレイングマネージャーです。プレイヤーとしての自分のやり方を絶対視し、ほかのメンバーにも押し付けようとします。
どんな職種でも、人によって向き不向きなやり方があります。マネジメントする立場である以上、それぞれの部下の特性を把握し、各人に合った指導方法で育成する技量が求められます。
一つのやり方の押し付けは、チーム全体の停滞を招きます。働く意欲を削ぎ、業績が下がってしまうことにもなりかねません。
このように、2つの役割を持つプレイングマネージャーは、狭い視野に陥らないバランス感覚が要求されます。だからこそ、プレイングマネージャーとして経験を積むことは、キャリアのステップアップにつながります。
プレイングマネージャーが能力を発揮するための3つのコツ
それでは、2つの役割を持つプレイングマネージャーが困難さを乗り越えるためには、どうすればよいのでしょうか?プレイングマネージャーが能力を発揮するためのコツを3つ紹介します。
タスクを細分化する
まずルーティーンで発生する仕事を細分化して、把握します。
特に管理職としての仕事は毎月必要な事務仕事が多く発生するので、重点的に仕事を洗い出します。
そして、事務職や部下に任せられる仕事は任せるようにします。
自分が必要な仕事とそれにかかる時間を把握するためにも、まずルーティーンの仕事がどれくらいあるか分けて把握しましょう。
重点的に取り組む方を決め明言する
管理と現場の仕事を2人分両方行うことは難しいです。
どちらも、がむしゃらにやろうとすることが、オーバーワークにつながり、プレイングマネージャーが上手く仕事ができない原因になりがちです。
周りも、当人が他の仕事をどれくらい行っているのか把握できないため、両方の仕事を振りやすくなってしまいます。
そこで、重点的に取り組みたい方を決め、上司と部下にその点を説明しておくことが重要です。周囲にも認知してもらうことによって、業務バランスを取りやすくなるでしょう。
スケジールは7割程度にする
プレイングマネージャーは仕事の幅が広い分、随時急に入ってくる仕事も多くなります。
そのため、面談などの決まったスケジュールは7割程度にとどめておき、余裕を持って仕事を進めるとよいでしょう。
それにより、焦って仕事しどちらかの仕事にシワ寄せが行くことを防げます。
結果、新たなアイデアなどを創出しやすいことも利点です。
プレイングマネージャーの活躍を推進する際は、人事評価制度の見直しを
プレイングマネージャーに抜擢される人材は、おのずと優秀なプレイヤーである社員です。
しかしながら、優秀であるからといって、万能なマネジメント能力を有しているわけではありません。
本人の適正を理解し、マネージャーとして一段成長できるような支援が必要です。
また、多種多様なタスクを抱えるプレイングマネージャーが、部下を適切に指導するには、個人の評価を記録し、確認できる公平な人事評価制度が欠かせません。
組織のなかでプレイングマネージャーの役割を強化する際は、あわせて人事評価制度の見直しも忘れずに行いましょう。
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