企業が採用予定者に対して送付するのが「内定通知書」です。
採用活動の一連の流れの中で、求職者に内定通知書を発行することで雇用関係は成立します。
そのため、内定通知書の内容を精査しておかなければ、後から思いがけないトラブルが生じてしまうこともあるでしょう。
企業の採用活動を担う人事担当者は、内定通知書を作成するにあたって基本的なポイントや法的な面で問題がないかをチェックしておく必要があります。
今回は内定通知書の記載項目と内定取り消しの条件、作成のポイントについて解説していきます。
内定通知書とは
内定通知書はオファーレターとも呼ばれるものであり、採用活動を経て応募者に対して内定したことを知らせるものです。
企業においては内定通知書を必ず送付しなければならないという法的な義務は生じませんが、後からトラブルが起こってしまうのを防ぐためにも内定通知書を発行したほうが無難だと言えます。
一方で、求職者側が企業に対して提出する書類としては、「内定承諾書」があげられます。
内定を得た求職者が、内定を承諾したうえで入社することを誓約した書類という意味合いがあるのです。
内定承諾書は内定通知書と同封して送るのが一般的であり、求職者の署名・捺印を得たうえで返送してもらう流れとなります。
内定承諾書は法的な拘束力を持つものですが、民法の規定によって2週間以内であれば解約できると定められています。
人事担当者としては、求職者とうまくコミュニケーションを取りながら、入社の受け入れ準備を進めていきましょう。
法律で定められた「内定」とは
応募者に対して内定したことを伝えた時点で雇用関係は成立してしまうため、内定の取り消しは解雇に該当してしまう点に注意が必要です。
内定したことを伝える書類である内定通知書は、民法における労働契約と見なされるので簡単に解除することができません。
正当な理由がなく内定を取り消してしまうと、解雇権の乱用と判断されてしまう場合もあるため注意が必要です。ちなみに、「内々定」の場合では法的拘束力がなく、労働契約は成立していません。
解約権留保付労働契約とは
「解約権留保付労働契約」は、解約権を企業側が留保した形で交わす特殊な労働契約のことを指します。
たとえば、新卒採用予定者に対して「学校を卒業できなかった」など特別な内定取消事由が生じてしまったときのみ、解約権が行使できるといったものです。そのため、すでに採用予定者側から内定承諾書をもらっている段階で内定取消としてしまうと、就業機会を奪われたということで損害賠償請求をされてしまう可能性もあります。不当な解雇と判断されれば、解雇予告手当にあたる損害を請求される場合もあるのです。
「採用通知書」との違い
「採用通知書」は名前の通り、採用予定者に対して採用することを知らせる書類のことです。
採用通知書は内定通知書とほとんど同じ意味ですが、採用通知書そのものに法的な定義はありません。
企業によって採用通知書を内定通知書といった意味合いで用いている場合もあるため、どのような意味を持つ書類なのかは企業によって異なる面があります。
ただし、採用予定者に誤解を生じさせるようなことは避けるべきであり、書類に関して質問を受けたときには丁寧に説明することを心がけましょう。
「労働条件通知書」との違い
「労働条件通知書」とは、企業側から採用予定者に対して雇用契約を結ぶときに示す書類のことであり、労働条件を通知する義務があります。
労働条件通知書に記載すべき内容としては、労働契約の期間・就業場所・業務内容・始業と終業時間・休憩時間などであり、休日や賃金の計算方法、解雇を含む退職に関する事項などを盛り込みます。
労働条件通知書を労働者に対して示すときには従来は紙のみとなっていましたが、2019年4月以降は労働者の同意を条件として、PDFデータやメールで通知することも可能となっています。
企業が「内定」を取り消すには
企業が採用予定者に対して内定を出したにもかかわらず、後から取り消すことは労働契約法第16条の解雇制限の規定によって厳しく制限されています。
客観的で合理的な理由がなく、社会通念上相当と認められないときは解雇権を濫用したものと見なされて解雇は無効となるのです。
しかし、「人員整理の必要性がある」「解雇回避のために最大限の努力を講じた」「解雇対象者の選定が合理的」「手続きに妥当性がある」という4つの条件をすべて満たした場合には、内定を取り消すことができます。
単に業績の見通しが厳しいといった理由だけでは内定取消が認められないため、慎重に判断をする必要があるのです。採用予定者とよく話し合ったうえで、ハローワークなどの関係機関に相談をしてみましょう。
内定者が「内定」を辞退するには
内定者が内定を辞退する場合には、入社日の2週間前までに連絡をするのが一般的です。
これは、民法第627条第1項にもとづくものであり、内定者は内定承諾書を提出した後でも辞退可能です。
企業側としては内定辞退者が一定数出ることも見込んで採用計画を立てておく必要がありますが、中小企業であれば1名の辞退者が事業計画にも影響を与えてしまう面もあるでしょう。
内定者から辞退の連絡を受けた段階で、人員計画に問題がないかを精査して、適切に対応していく必要があります。
内定通知書の項目と作成ポイント
内定通知書は決まった書式があるわけではないため、企業側が自由に作成することができます。ただ、内定者に対して採用が内定したことがきちんと伝わる文面を作成する必要があるでしょう。
内定通知書とあわせて労働条件通知書も送付する場合もあります。内定通知書を作成する際にどのようなポイントに気をつけるべきかについて解説していきます。
1.採用決定の意思表示
内定通知書の書面では、まずは採用試験に応募してくれたお礼を述べたうえで、採用が内定したことを応募者に伝えましょう。
文面は冗長にならないように気をつけて、端的に企業側の意思が伝わるように作成するのがポイントです。
内定通知書は一般的には郵送で行いますが、その前に採用通知をメールなどで知らせることもできます。
特に競合他社との採用を競っているときには、内定が決まったことを早めに応募者に対して伝えましょう。
採用の合否をメールで通知することを事前に伝えておき、後日改めて内定者に対して内定通知書を郵送する必要があります。
2.入社年月日
内定通知書には、入社日や出社日に関する事項を盛り込んでおきましょう。内定を辞退する場合には、入社日の2週間前までに連絡してもらうように伝えておくことも大切です。
内定者は2週間以内であれば内定辞退を申し出ることができるため、後からトラブルになってしまうことを避けるためにも、あらかじめ伝えておきましょう。
内定通知書は応募者に対して内定が決定したことを迅速に知らせる役割を持つので、文面は必要最小限に留めるほうが無難です。
内定者に伝えるべき事項が多い場合には、別に送付状を作成してそちらに記載するなど工夫をしてみましょう。
3.入社日に必要な書類関連
内定通知書を送付する際には、内定受諾書や入社誓約書、労働条件通知書などを一緒に送ることもめずらしくありません。
書類がたくさんある場合には、署名・捺印して返送してもらうものと、入社日に持参してもらうものをきちんと伝えておきましょう。
採用予定者が多ければ、事務手続きにわずかなミスがあるだけでも作業量が増えてしまうので注意が必要です。
返送してもらう書類があるときには、返送先を記載した返信用封筒も同封します。
4.内定取消事由
内定通知書には、内定取消事由についても明確に記載しておく必要があります。内定通知書を送付した段階で、企業と内定者の間には雇用契約が成立しているため、内定取消事由の記載は気をつけておきましょう。
内定取消が認められるケースとして、内定者側の都合としては「書類に虚偽内容を記載した」「病気やケガ」「学校を卒業できない」「犯罪行為」などがあげられます。
ただ、これらの理由があればすぐに内定を取り消せるわけではなく、内容の程度によって慎重に判断することが大切です。
一方で、企業側の都合としては経済情勢の悪化や大規模災害の発生などがあげられるでしょう。
具体的には、整理・解雇要件を満たしておく必要があり、合理性が認められない理由については解雇権の濫用となってしまうので注意が必要です。
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