エイジハラスメントとは?年齢差別の具体例や対応策を解説

セクハラやパワハラとともに企業が対応すべき問題「エイジハラスメント」。

エイジハラスメントをテーマとしたテレビドラマが放送されたこともあり話題の言葉となりました。エイジハラスメントは被害者にとって深刻な悩みであり、なおかつ加害者には自覚がないことも少なくありません。

経営者や人事・総務担当者は良好な職場作りのためにも自発的に改善に取り組む必要があります。この記事ではエイジハラスメントの具体例や対応策について解説します。

エイジハラスメント(エイハラ)とは

エイジハラスメントとは、年齢や世代が違うことを理由にした差別的な言動や嫌がらせです。

パワーハラスメントやセクシャルハラスメントと同じくハラスメント(嫌がらせ)の一種で、「エイハラ」とも呼ばれます。

もっとも、エイジハラスメントに該当する言動はパワハラやセクハラの要素を同時に含んでいることもあり、そのような場合にはそれぞれを明確に区別することが簡単ではありません。

区別する際のポイントとしては、相手を攻撃する際の理由として年齢を持ち出す場合がエイジハラスメントに該当すると理解しておきましょう。

パワハラやセクハラはすでに広く普及している言葉であるのに対して、エイジハラスメントは現在まさに広まりつつある言葉です。

そのため、中には無意識のうちにこういった言動をしているというケースもあり、コンプライアンス担当者や経営者にとって対処は簡単ではありません。

小説・ドラマで一躍話題に

エイジハラスメントが注目を集めたきっかけの1つとして、この問題を扱った内館牧子さん小説と、それを原作にした武井咲さん主演のテレビドラマ。その名も「エイジハラスメント」です。

作品内では、主演女優が演じる30代のパート主婦が、年齢による差別や嫌がらせを受ける様子が描かれました。

年齢を切り口にしたリアルな人間模様は斬新で、テーマの社会性の高さや共感できる内容によって反響を獲得し、エイジハラスメントという言葉が広まるきっかけになったのです。

「若いから」「おばさん」エイジハラスメントの具体例

エイジハラスメントにはどのような例があるのでしょうか。ここではエイジハラスメントの具体例を紹介します。


年齢に応じて呼称を変える

年齢に応じて、その年齢を強く表現するような呼称を使う場合はエイジハラスメントに該当します。

例えば「おばさん」や「おじさん」といった言葉は、その年齢を露骨に表現する言い方。こういった呼称は、呼ぶ側は好意的に使ったとしても、相手が傷ついてしまうこともあり、用いること自体がエイジハラスメントと見なされるケースもあります。

逆に上司が年下の部下に対して「ちゃん」をつけて呼んだり、ちょっとした会話の中で「君はまだ若いから……」と言うなど、若さを表す言葉も同様です。

例え社員同士の仲が良い職場であっても、周囲の人物が不愉快に感じる可能性もあります。

年齢に関連したプライベートな話題に踏み込む

年齢に関連してプライベートな話題に触れることもエイジハラスメントに当たる可能性があります。

職場では、自然な流れの中で年齢が話題になることはあるものです。

一緒に働く人がどのような人物なのかを知ろうと考えるのは社会人として健全な興味ですし、そもそも仕事においてチームワークを発揮するにはお互いへの理解が欠かせません。

そのため、業務経験やキャリアの話題になった時に、年齢やプライベートの話題に触れるということもありえます。

こういったコミュニケーションは、双方が求めているのであれば問題にはなりません。ただし、中には年齢やプライベートについて口にしたくない人がいることも事実です。

特に、年齢に関連して恋人がいるのか、結婚しているのかどうかといった問題が絡む時にはなおさらでしょう。

上司が職場の雰囲気を和まそうとしたり、仕事でのコミュニケーションを深めたりする意図がある場合でも、相手の気持ちによってはエイジハラスメントと解釈されてしまう可能性があります。

世代で一括りにする

世代ごとの特徴によって相手を一括りに決めつけたり、世代を持ち出して攻撃したりすることもエイジハラスメントの例です。

例えば、一般的に世代を指す時に使われる用語として「ゆとり世代」や「就職氷河期世代」、「ミレニアル世代」などがあります。

これらの言葉そのものは時代の特徴を表現するものであって、特に善悪の意味合いを持つ訳ではありません。

しかし、実際にこういった言葉を用いる場合は注意が必要です。相手によってはその世代に属することを快く思っていない可能性があります。

また、文脈によっては相手が偏見を持たれていると感じる可能性もゼロではありません。

世代を持ち出す場合、特にネガティブなイメージと結びついた文脈ではエイジハラスメントに該当することがあるのです。

年齢を理由にして仕事の割り振りを変える

年齢を過度に意識して仕事の割り振りを決めることもエイジハラスメントに当たる可能性があります。

人材には適性があり、同じ仕事でも人によって向き不向きが異なるのは間違いありません。

そのため、その人の適性を考慮して仕事を割り振るのは自然なことです。もちろん、家庭の事情や体力・健康面、妊娠・子育ての状況などに配慮して仕事の割り振りを調整することも問題ありません。

しかし、仕事のアサインを単純に年齢だけで決めてしまうとエイジハラスメントになる可能性があります。

例えば、シニア社員が、まだまだ体力的にも仕事をこなすことは可能で意欲もあるのに、シニアだからという理由だけで一律に希望を却下するのはエイジハラスメントと受け止められるリスクがあるでしょう。

あるいは、若手だからといって多くの仕事を任せることも同様です。

体力・健康面や家庭の事情などに配慮して仕事の割り振りを考慮するのは親切ではありますが、年齢だけを強く意識した決め方は問題になる可能性があります。

ビジネスの場では実力が大切である以上、あくまでも適性やスキルに応じて最適な仕事を任せるのが理想的です。エイジハラスメントを避けるには、しっかりと人事プロセスについて説明できるようにする必要があります。

エイジハラスメントの予防策

防止策としては、社内でエイジハラスメントに気をつける意識を喚起させることが大切です。

そもそもエイジハラスメントとは、パワハラやセクハラなどの広く知られている言葉とは違ってまだ普及段階にあります。

エイジハラスメントという概念すら知らず、悪意のないまま無意識に該当する言動をしている社員がいてもおかしくありません。

また、ハラスメントはもともと相手が嫌だと認識して初めて成立するもので、線引きが難しいという問題もあります。

本人はごく自然なコミュニケーションとして行なっている場合でも、それが相手からするとネガティブに受け止められているケースもなくはありません。そこで、注意喚起が必要なのです。

エイジハラスメントへの注意喚起を行うために良い方法としては、社員への一斉周知や研修などが挙げられます。

周知方法は朝礼や全体集会、社内一斉メール、社内ポータルサイトなどが定番です。研修では、他のハラスメントやコンプライアンスなどとともにエイジハラスメントの意味や注意点などを紹介する方法があります。

エイジハラスメントの防止策

防止策としては、社内調査を実施することが考えられます。

社内調査とは、アンケートや聞き取りにてエイジハラスメントに該当する事例がないかをリサーチする方法です。これによって、該当する可能性の高い事案を吸い上げられれば、未然にエイジハラスメントを防止できます。

また、社内調査は事態が発生してからの対応策としても効果的です。早期に対処して致命的な事態になることを防止できます。

あるいは、調査によって事実関係を突き止めて事案を解消し、本人への注意喚起や被害者へのケア、再発防止策の策定などができるようになります。

社内調査と並行して、情報提供を受け付けるための相談窓口を設置することも効果的です。これによって実態の把握が可能になるだけでなく、被害社員にとっての早期ケアにもつながります。

エイジハラスメントが発生した場合の対処法

エイジハラスメントは未然に防ぐことが重要ですが、万が一社内で発生してしまった場合には、どのような対処をするべきなのでしょうか。

実際に発生した場合の対処法を確認し、いざという時にすぐ対応できるように備えましょう。

  1. 相談窓口がエイジハラスメントの相談を受け付ける
  2. 必要に応じて相談者本人、相手、第三者へのヒアリングを行う
  3. 事実確認の有無を判断する
  4. ハラスメント対策委員会による協議を行う
  5. 相談者本人、相手、第三者へ事情徴収
  6. 会社として対処方針を決定
  7. 相手が懲戒に値する場合、就業規則に基づき処罰し、相談者本人に報告する
  8. 相手が懲戒に値しない場合、相談者本人の説明をし、ケアを行う
  9. 今回のエイジハラスメントは解決とする
  10. 再発防止措置を策定する

基本的な流れは上記のようになります。

なお、相談窓口が受けた後に実際上記の進行を担うのは一般的に人事部・労働組合となるでしょう。

エイジハラスメント被害による社員の退職を防ぐために

エイジハラスメントを苦痛に感じて退職を考える社員も少なくありません。

また、エイジハラスメントは被害者にとって重大な問題であるだけでなく、企業にとっても深刻な問題です。

経営者や人事・総務担当者は、職場環境の悪化や貴重な人材の流出といった最悪の事態を防ぐためにも、問題を軽視せず企業全体で対策を講じる必要があります。

具体的には、実態調査や社員のケアに取り組まなければなりません。必要に応じて、周知・研修や実態調査といった取り組みを行いましょう。

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