ピボットとは?ビジネスにおける言葉の意味や企業事例、型、注意点を解説

ビジネスにおいて事業転換を意味する「ピボット」。ピボットを行うことで、企業の経営スタイルは劇的に変化すると言われています。

特に、起業したばかりの企業に関連したトピックでよく見かけるキーワードですが、一体どのような意味があるのでしょうか?

この記事では、経営者などの管理者の方に向けて、ピボットという言葉の意味や企業事例、型、注意点などを解説していきます。

ピボットとは?

ビジネスシーンで見かけることの多い「ピボット」というキーワードについて、本来の意味を解説しましょう。

ビジネスにおけるピボットの意味

一般的に「ピボット」と言えば、バスケットボールでの動作が有名ではないでしょうか。ボールを持っているプレーヤーが、片足を軸足としてもう一方の足を動かす基礎技術です。

ビジネスシーンにおけるピボットの意味は、エリック・リース著「リーン・スタートアップ」に記載されています。

「ピボットとは、製品やビジネスモデル、成長のエンジンについて、根本的な仮説を新たに設定し、検証するための行動である」。

エリック・リース著「リーン・スタートアップ」

つまり、事業の方向転換を指しています。「ピボット(Pivot)」は、アメリカのスタートアップ企業を中心に広く使用されています。

エクセルの機能「ピボットテーブル」

エクセルの機能「ピボットテーブル」は、表のデータを多角的に分析・集計する「クロス集計」を用いた機能です。

ピボットで成功した企業の事例

近年では、スタートアップ企業のみならず、大手企業もピボットに注目しています。大きな方向転換によって事業が成功した企業を紹介しましょう。

Facebook

「Facebook」は、プライベートからビジネスシーンまで幅広く利用されているSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)です。

しかし、設立当初のFacebookはハーバード大学の学生しか会員になれませんでした。

徐々に他の大学でも広まっていき、やがては高校生、13歳以上の人、というように会員条件が開放されていきました。

そして、全米における8割以上の学生がFacebookを利用するようになってからピボットが行われ、企業のアカウント開設が可能となったのです。

「ターゲットを変える」という些細な事業転換によって、全世界の人々が繋がれる世界最大級のSNSが誕生しました。

Instagram

写真共有アプリ「Instagram」は、今やあらゆるSNSを凌駕するトレンドの発信基地となっています。

そんなInstagramの前身となったのは、「burbn」というソーシャルチェックインアプリです。

現在地や写真を共有できる位置情報アプリですが、残念ながらヒットには至りませんでした。

そこで、開発者たちが見直したのが「burbnのコアな機能を一つだけ残せるとしたら何を残すか」という点であり、burbnを利用しているユーザーは写真の共有を楽しんでいることに注目しました。

burbnは位置情報機能のある写真共有アプリ「Instagram」にピボットし、見事大ヒットとなったのです。

Airbnb

「Airbnb」は、宿泊施設や民宿を探している人と、貸し出す人を繋げるWEBサービスです。

当初は、「ホテルを予約しづらい地域において、短期かつ簡易的な宿泊環境と朝食を提供する」というビジネスモデルでした。

始めこそ数えられる程度の登録者しかいなかったものの、ベッドや部屋の提供から「多目的スペースの貸し借り」へピボットしたことで利用者が急増。

このアイデアは、「ツアー中に自室を貸し出したい」というミュージシャンの要望から生まれたそうです。

ピボットにおける10個の型

ビジネスにおいて「事業の方向転換」を意味するピボットには、10個の型が存在します。それぞれの特徴を解説していきましょう。

Zoom-in pivot(ズームイン・ピボット)

Zoom-in pivot(ズームイン・ピボット)は、プロダクト(製品)の機能の一部をメインプロダクトに変更する手法です。

リーンスタートアップにおけるMVP、つまりは「顧客に価値を提供する際の最小限のアプローチ」をフォーカスし、プロダクトとして効率的に提供します。

Zoom-out pivot(ズームアウト・ピボット)

Zoom-out pivot(ズームアウト・ピボット)は、顧客のニーズや今後の課題をカバーできない従来の機能を強化・拡大し、プロダクト全体における主要機能に変更する手法です。

Customer segment pivot(顧客セグメント・ピボット)

Customer segment pivot(顧客セグメント・ピボット)は、ターゲットとするユーザーが定まった場合にペルソナ(企業が理想とする顧客像)を変更する手法です。

Customer need pivot(顧客ニーズ・ピボット)

Customer need pivot(顧客ニーズ・ピボット)は、顧客そのものを見直すことで、サービスに対する課題を再検証する手法です。

「顧客が得られるメリットが小さい」「顧客の課金意欲を刺激しない」と感じるプロダクトに有効なピボットです。

Platform pivot(プラットフォーム・ピボット)

Platform pivot(プラットフォーム・ピボット)は、「アプリケーションのプラットフォーム化」もしくは「プラットフォームの放棄」を行う手法です。

競合相手が出現した際に、自社プラットフォームではなく単一アプリケーションとして攻めるのも一つの手です。

Business architecture pivot(ビジネスモデル・ピボット)

Business architecture pivot(ビジネスモデル・ピボット)は、ビジネスモデルを「低い販売量による高利益」から「薄利多売」への変更、もしくはその反対を指す手法です。

Value capture pivot(収益モデル・ピボット)

Value capture pivot(収益モデル・ピボット)は、広告収益やフリーミアム、手数料といったレベニュー(定期的な収入)の発生源を変更する手法です。

Engine of growth pivot(成長エンジン・ピボット)

Engine of growth pivot(成長エンジン・ピボット)は、「スティッキー・エンジン(粘着型)」「バイラル・エンジン(ウイルス型)」「ペイド・エンジン(支出型)」といった成長エンジンを変える手法です。

Channel pivot(チャネル・ピボット)

Channel pivot(チャネル・ピボット)は、販売経路または流通経路を変更する手法です。レンタルショップのTSUTAYAが、ネット販売や映像配信事業を開始したケースが有名です。

Technology pivot(テクノロジー・ピボット)

Technology pivot(テクノロジー・ピボット)は、新しい技術を駆使しつつ、これまでと同じソリューション(問題解決)に立ち向かう手法です。

ピボットピラミッドとは?

ピボットを行うにあたり、企業の管理者が意識するべき「ピボットピラミッド」について解説しましょう。

ピボットピラミッドの意味

ピボットピラミッドとは、事業においてピボットするべきポイントを視覚化するものです。

いわば、サービスを急成長させたい起業家や、新規事業を試みる大手企業のピボットを手助けしてくれる指標です。

ピボットピラミッドは、

  • 「顧客(Customers)のピボット」
  • 「課題(Problem)のピボット」
  • 「ソリューション(Solution)のピボット」
  • 「テクノロジー(Tech)のピボット」
  • 「グロース(Growth)のピボット」

という5つのステージに分けられています。

5つのピボットステージについて

5つのピボットステージについて解説しましょう。

顧客(Customers)のピボット

ピボットピラミッドの最下層。ターゲットを変更するピボットを行う場合、実行するタイミングによってはピボットピラミッド全体の見直しが必要となります。

課題(Problem)のピボット

課題をピボットすることで、上層部に位置する3つのピボット再評価する必要があります。

ソリューション(Solution)のピボット

課題を確認した上で顧客の声に応えるために、既存のソリューションよりも優れたプロダクトを作る必要があります。

テクノロジー(Tech)のピボット

下層部のピボットが成功しても、「需要に見合ったサーバーを用意できない」といったテクノロジーの課題にぶつかることがあります。選択次第では企業の成長やリテンション達成を妨げるでしょう。

グロース(Growth)のピボット

ピボットピラミッドの頂点、最終目標はグロース(成長)です。チャネルの飽和状態やコストの重負荷を避けるためにも、経営者は常にフレッシュなグロース戦略を練るべきです。

ピボットの注意点

ピボットは成功例だけでなく、失敗例もあります。ビジネスにおいてピボットを行う際の注意点を把握しておきましょう。

企業の軸をブラさない

ユーザーの声を真っ向から受け止めすぎずに、深層心理であるインサイトを発見することを心がけましょう。

ピボットを実行する際も、企業として貫くべきビジョンや、ピボットが不要なミッションを守ることが大切です。

ユーザーの視点を無視しない

インサイトを追求することは、市場やユーザーのストレートな視点を無視することではありません。

ニーズに合わせて事業を変化させつつも、大胆な取り組みが必要となります。失敗から学んだアイデアをもとに、ひらめきを得るようにしましょう。

逃避としてのピボットを行わない

事業が波に乗らないというだけで安易にピボットを行うのは危険です。ピボットはビジネスにおける最終的な選択肢だと考えましょう。

ピボットを現実逃避で終わらせないためには、問題が生じた理由の仮説を立てて、解決策や新たな展開方法を実行する。そして、仮説と実行の結果を徹底的に検証します。

事業転換をする際は人事評価制度の見直しもお忘れなく

ビジネスにおけるピボットは、企業にとって大きな変化をもたらします。

安易なピボットの結果が失敗に終わってしまっては、従業員からの信頼を失いかねません。

組織が一体となって建設的なピボットを行うためにも、人事評価の見直しをおすすめします。事業転換をする際は、「ゼッタイ!評価」などの専門サービスを活用してみましょう。

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