「生産性を高めるにはどうしたらいいだろう?」
少子高齢化による労働人口の減少や、働き方改革での効率化により、企業の生産性向上への関心は高まっています。
ホーソン実験とは、1927年から5年間にわたって行われた生産性向上に関する実験です。100年近くたった今でも、人材育成やマネジメントにかかわる考え方として学びの対象となっています。
ここではホーソン実験とはなにか、そこから導きだされた効果と現代の実務での活用方法についてご紹介します。
ホーソン実験とは
ホーソン実験とは、アメリカのウェスタン・エレクトリック社のホーソン工場で実施された4つの実験のことをいいます。
1924年から1932年まで8年もの間実施され、さまざまな条件下で労働者の生産性の変化についての仮説を立て実証が行われました。
当時は第一次世界大戦後の好景気であり、自動車の生産をはじめ、各種産業が飛躍的に拡大した時代です。
この頃主流であった管理方法はテイラーシステムと呼ばれるもの。作業量や作業手順をマニュアル化し、どのような人材でも一定の成果が出せるようにするという管理方法でした。
こうした多くの産業が飛躍的に成長するなかで、効率化だけではない、労働者の生産性向上に関連する要素を導きだしたのがホーソン実験です。
ホーソン実験から導き出された結論は、決定的ではなく反論はあるものの、「職場の外的環境ではなく人間関係が生産性に影響する」として今日のビジネスでの考え方に影響を及ぼしています。
ホーソン実験の具体的な4つの実施内容
では、ホーソン実験でどのようなことが実施されたのか、4つの実施内容について紹介します。
ホーソン実験ではじめに考えられていたのは、環境が生産性に与える影響でした。そのため、照明の明るさによって変化する生産性を調べる「照明実験」が最初に行われました。
その結果をもとに、「組み立て実験」「面接実験」「パンク配線作業実験」と合計4つの実験が行われました。
照明実験
照明と生産性の関係を観察するために実施された実験です。仮説は明るい照明で生産性がアップするという予測でしたが、最終的な結果では明るさと生産性にたしかな相関性は見られませんでした。
実験では、照明の明るさを変えその下でコイル巻きの作業速度をはかりました。常に明るい状況で作業するグループと、回数を追うごとに照明が暗くなるグループとにわけて実験を開始。
結果は照明が暗くても生産速度が上がっていたり、明るくても下がっていたりなど、作業環境と生産性に関連性が導きだされないものでした。
組み立て実験
疲労と能率の関係を調べるために行われた実験です。休憩時間や就業時間を変更し、部屋の温度から賃金などの労働条件を変更しながら、生産性と作業能率を記録しました。
この実験では、はじめは賃金や休憩時間といった条件を改善することで、作業能率に向上が見られました。
しかし、その後の実験で労働条件を元に戻しても、作業能筆が引き続き向上したため、外部要因と生産性にたしかな相関関係は導き出せませんでした。
実験対象となったグループに「共通の友人がいて、チーム間の連携が強かった」「メンバーが実験の目的を最初から知っていた」ことなどが心理的に影響し、生産性向上に関係しているのではないかと指摘されました。
面談実験
賃金制度や就業時間よりも、管理の在り方の質の良さ(人間関係の有効性)が作業能率に影響を与えることを確かめるために実施された実験です。
現場での状況を理解するために、2万人を超える従業員に対してインタビューが実施されました。
その結果、従業員の満足度は外的要因ではなく、個人の主観的な感情や好みから生じていること。
生産性と職場環境の関連性は小さく、逆に従業員の労働意欲が人間関係に左右されると指摘されました。
バンク配線作業実験
バンクの配線作業とは、電話交換機製造の工程のひとつです。現場作業員たちが、集団的にどのような機能を持ち形成されるかを解明するために行われたのがこの実験です。
これまでの3つの実験からは、「現場に小さなグループがあり、それが社会統制機能を果たしている」と仮説がたてられました。
この実験では、仮説にあわせてインフォーマルな組織の集団が発見されました。集団をマネジメントする監督者とメンバーは防衛と共存の関係にあり、個人間の関係性が生産性・作業能率・品質と相関していると指摘されました。
ホーソン実験から導き出された効果
この4つのホーソン実験から導き出された結論は、「外的要因や職場環境ではなく、人間関係が労働生産性に影響する」というものです。
- 生産性向上に、物理定な労働条件はあまり関係ないと推量される(※被験者へ実験することを伝えていたことから確かとは言い難いが)
- 生産性向上に関与する要因は、職場の人間関係やその人達・仕事への想いなど感情によるものが大きい
- 職場の良好な人間関係を築けている方が成果を発揮できる
以上の効果から、それまではいかに効率的に従業員を管理するかに重点を置いていたマネジメント手法が、人間関係に焦点を置き科学的なアプローチを用いて、働く人間の感情に配慮する管理方法が考えられていくことになりました。
ホーソン実験の効果とピグマリオン効果の違いとは
ホーソン効果とおなじ心理行動を実験した結果に、ピグマリオン効果があります。これは、アメリカの心理学者ローゼンタールが提唱したことで知られています。
ピグマリオン効果とは、期待をかけるとその対象の成果が伸びるという考え方です。
この実験は、小学校の生徒を対象に実施されました。ランダムに抽出した生徒に対してテストを実施。テストは普通の知能テストでしたがその結果をもとに、生徒たちの先生に対して、「将来的に成長が期待できる生徒とそうでない生徒」という「嘘」を伝えました。
すると、でたらめに選出された「将来の成長が期待できる生徒」が、8か月後の知能テストで大きく成績を伸ばしました。
このことから、生徒を指導する立場である先生が、対象に対して「期待」をかけることで、成長が促されたという仮説が導き出されました。今日では、ピグマリオン効果は、人材育成やスポーツ、教育の場で利用されています。
ホーソン実験とピグマリオン効果は、どちらも生産性や成長に人間関係が影響すると導きだしたものです。
ただし、ホーソン実験が他者との人間関係など感情的な要因により能力を向上させる主張であるのに対し、ピグマリオン効果は他者に期待をかけることで、その人の能力を向上させようとするものです。
ホーソン実験が特定のグループ内で作用するのに対して、ピグマリオン効果は一対一の関係で効果を発揮すると考えられています。
ホーソン実験の効果を仕事に活かす3つの方法
では、ホーソン実験の結果をもとに、職場での生産性向上に役立つ方法をご紹介します。
チーム間のコミュニケーションを活発にさせる
ホーソン実験では、人間関係が生産性に影響を与えるとしています。そのため、職場での生産性向上を考えるのであれば、チーム間のコミュニケーションがどのように行われているかに注目しましょう。
業務を円滑に進めるのに必要な情報提供が、同僚間でなされていることが大切です。
メンバーが自分の仕事だけに注力するのではなく、ほかのメンバーの仕事状況を知ることで、業務負担をサポートしたり、業務に役立つスキルや知識をお互いに教え合ったりすることができます。
仕事以外の場での親交を深める
人間関係の形成には、仕事以外の場のかかわりも大切です。ランチを共にしたり、朝会のミーティングで雑談を導入したり、何気ないかかわりが、人と人との関係性を作ります。
近年では、オンラインツールを利用したコミュニケーションも盛んです。業務に関連する情報のやりとりだけでは、どうしても殺伐とした雰囲気が流れてしまいます。
オフィスであれば、社員がコーヒータイムにくつろげる休憩スペースを設置する。オンラインであれば、雑談できるスレッドを作成するなど、気軽に会話ができる場を設けるといいでしょう。
相談役となる良きリーダーを配置する
放っておけば、職場のメンバー同士が仲良くなるとは限りません。そんなとき、チームの上に立つリーダーがメンバー間のコミュニケーションを促進することで、人間関係を良好に保つことができます。
メンバー間で発生するコミュニケーションミスについても、相談役としてのリーダーがいることで緩衝材となり、円滑な人間関係を保つことができるでしょう。
ホーソン実験の効果を活かした事例
さいごにホーソン実験の効果を活用し、職場の生産性向上につなげた株式会社サイバーエージェントの事例をご紹介します。
サイバーエージェントは、「びっくり退職」と呼ばれる社員の急な退職が多く、人事評価制度に課題を抱えていました。
そこで、社員の人事評価の納得度の違いについて部署別に調査を行いました。その結果、社員の納得度が高い部署では評価面談だけではなく、週に1回・月に1回というように、部下と上司が定期的に目標への進捗と成果について話し合う場を設けていることがわかり、それを活用することにしました。
同社では、人事評価制度の改善策として「月イチ面談」を実施。面談では、先月の振り返りから今月に行うこと、中長期的なキャリアの話など、上司から部下へのフィードバックと、部下の話に耳を傾けることが重点的に実施されました。
月イチ面談を導入したところ、現場からは「安心できる」という声が多数きかれ、また部下も上司からのフィードバックを的確に受けることで、目標達成に向けての行動が定まり、労働意欲の活発化と離職率低下につながる効果がみられました。
ホーソン実験効果を活かして生産性アップを図ろう
労働条件や就業環境の整備は、働きやすい環境をつくるうえで大切な要素です。ホーソン実験で判明した効果からもわかる通り、それと同様に、人間関係による感情要素が従業員にもたらす心理的効果を無視することはできません。
特に、受けた評価について従業員が満足し公平性を感じているかは、来期に向けた行動と生産性を決定します。
社内の人事評価制度を公平に保つには、自社に即した人事評価制度の構築・運用が必要です。
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