人生100年時代構想会議とは?注目のテーマ、社会人に必要な能力を解説

医療の発達による高齢化は今後も加速し、「人生100年時代」に突入すると言われています。

より人生の時間が長くなる現代では、人々の生き方や働き方も変化が求められるようになりました。今回は、人生100年時代や、日本で開催された「人生100年時代構想会議」の内容、また人生100年時代のために必要な力などを見ていきます。

世界一の長寿国である日本をはじめ、世界が新しい時代に対してどのような取り組みを進めているのか理解し、新しい人生設計についての理解を深めましょう。

人生100年時代とは?

人生100年時代とはとは、リンダ・グラットンとアンドリュー・スコットの著書である『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)100年時代の人生戦略』(東洋経済新報社)で提唱した言葉です。

著書の中で人生100年時代は、『寿命が(100歳前後まで)今後伸びていくにあたって、国・組織・個人がライフコースの見直しを迫られている』ということを指す言葉として用いられています。

高齢化や長寿化は日本だけではなく世界的に急激に進んでおり、World Materによると2007年生まれの2人に1人が100歳を超えると言われるほど。寿命が伸びていく中で、人生設計を考え直すという動きが国全体として必要だと訴えられています。

人生100年時代構想会議とは?

人生100年時代構想とは、日本が人生100年時代のために行っている取り組みです。

2017年9月8日に「人生100年時代構想推進室」で掲げられました。人生100年時代構想会議では、超長寿社会において人々がどのように生きていくのか、そのために必要な経済・社会システムがテーマです。

人生100年時代構想会議において総理は以下のように述べています。

第一に、全ての人に開かれた大学教育の機会確保についてであります。志があっても経済的に恵まれない若者が勉学に専念できる環境整備が必要であり、教育負担の軽減のため、給付型奨学金や授業料の減免措置などの拡充・強化を検討すべきとの意見を頂きました。この方向で議論したいと思います。

第1回構想会議

人生100年時代構想会議では、教育機会の確保や、高等教育改革、高齢者採用、社会保障制度の改革などについて議論されました。

人生100年時代構想会議の、主な参加者が以下メンバーです。

  • 議長 
    内閣総理大臣
  • 議長代理 
    人づくり革命担当大臣(議事進行)
  • 副議長 
    文部科学大臣、厚生労働大臣
  • 構成員 
    副総理兼財務大臣、内閣官房長官、女性活躍担当大臣、一億総活躍担当大臣、経済産業大臣
  • 有識者 
    • 議員リンダ・グラットン(Lynda Gratton) (62) 英国ロンドンビジネススクール教授
    • 三上洋一郎(19) 慶應義塾大学2年生、
    • 株式会社GNEX代表取締役CEO 米良はるか(29)
    • READYFOR株式会社代表取締役CEO 品川泰一(39)
    • 株式会社ユーキャン代表取締役社長
    • 宮本恒靖(40) 現ガンバ大阪U-23監督、元サッカー日本代表主将他

人生100年時代構想会議のテーマ

人生100年時代構想会議では、教育、雇用、社会保障などさまざまなテーマについて議論されました。それぞれの内容や、今後の課題について見ていきましょう。

教育機会の確保、負担軽減、無償化

日本で問題視される少子化は、子育てや教育にかかる費用の高さが要因のひとつと言われています。

「国立社会保障・人口問題研究所「第15回出生動向基本調査(夫婦調査)」によると、理想の子供数を持たない理由について、30歳未満では76.5%、30〜34歳は81.1%が「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」と回答しています。

こういった問題を解決するため、厚生労働省では幼児教育の無償化を発表。具体的には、3歳か5歳までの子どもたちの幼稚園、保育所の費用を無償化。また、0歳から2歳の子どもに関しては、住民税非課税世帯を対象として無償化します。

(引用元)国立社会保障・人口問題研究所

リカレント教育

有意義な人生を送るためには、年齢にかかわらず教育を受けられるリカレント教育が求められます。

これまでは高校、大学まで教育を受け、新卒で会社に入り、定年後は仕事をせず年金などで暮らすという3ステージに分かれた人生設計が主流でした。

しかし、人生100年時代においては、より多様な生き方が重要視されるため、何歳でも学び直しができる社会を目指します。

なかでも、大学の教育・研究力の強化や実践的職業教育はリカレント教育に必要不可欠です。全ての大学でリカレント教育を強化するためには、eラーニングシステムの導入、企業との連携による社会人向け教育プログラムの導入が急務とされています。

人材採用の多様化

人生100年時代では、人材採用の多様化も必要不可欠です。人生100年時代では、老後資金や社会とのつながりの面で考えても、従来の「65歳で引退」といったライフプランの実現は難しいでしょう。

より長く働くことが求められる社会では、人材を雇用する企業が、何度でも人生設計をし直せる環境作りが求められます。

その中で挙げられるのが、企業の人材採用の多様化です。これまでのように新卒一括採用のみに頼るのではなく、採用時期や採用年齢にかかわらない通年採用や、高齢者採用などに力を入れなければいけません。

高齢者雇用

人生100年時代では、一般的に70から80歳まで働くことが求めると考えられています。しかし現在、55歳から64歳までの年齢で、フルタイムで働く人々はたった60%しかいません。

高齢者のフルタイム勤務を増やすためには、IoTやビッグデータの活用、適切な教育などによる高齢者雇用の活性化が必要不可欠です。

また、現在のような長時間労働や少ない休日の状態で80歳まで働くことは体力面、精神面ともに難しいため、より柔軟な働き方が求められます。

全世代型社会保障

ライフスタイルが多様になる人生100年時代では、高齢者だけではなくすべての世代が安心して過ごせるための社会保障改革が求められます。

全世代型社会保障では、社会保障支出のバランスを見直し、負担を軽減することが目的です。具体的には、厚生年金(被用者保険)の適用範囲の拡大や在職老齢年金制度の見直し、医療提供体制の改革などが挙げられます。

人生100年時代に必要な「社会人基礎力」

「社会人基礎力」は、2017年度に開催した「我が国産業における人材力強化に向けた研究会」において、個人の企業・組織・社会との関わりの中で、ライフステージの各段階で活躍し続けるために必要な力として定義されました。

人生100年時代を生き抜くためには、これまでの当たり前とは異なる「社会人基礎力」が求められます。具体的にはどのような力なのか、どんな時に必要となるのかを見ていきましょう。

前に踏み出す力(アクション)

変化の激しい現代では、変化を前向きに捉えて自らの力で前に踏み出す力(アクション)が大切です。

ただ指示を待つのではなく、主体的に行動する力、まわりの人間を巻き込み、関係を構築するための働きかけ力、困難に乗り越え最後までやり切る力などが挙げられます。前に踏み出す力(アクション)は、自分自身が社会で成し遂げたいことを遂行するために求められます。

考え抜く力(シンキング)

ライフステージの変化や、情報の多い現代で生き抜くためには、正しい情報を正しく読み取るための考え抜く力(シンキング)が求められます。

具体的には、目の前の問題を発見するための課題発見能力、正しい情報を読み取り、正しく選択する計画力、抽象思考を行うための創造力などが挙げられます。

人生100年時代を有意義に生きるためには、一生涯学び続けることが大切です。何を学ぶか、どう学ぶかという視点において、考え抜く力(シンキング)は求められます。

チームで働く力(チームワーク)

チームで働く力(チームワーク)なくして、働き方や生き方が多様化する現代を生き抜くことはできません。多様な人たちと繋がり、お互いの価値観を超えて信頼関係を築くためには、発信力・傾聴力・柔軟性・情況把握力・規律性・ストレスコントロール力などが求められます。

自分以外の考えや経験を持った人たちと共存することで、多様な体験・経験や能力を組み合わせることを可能とします。そうすることで、活躍の場や領域をより広げることができるのです。

上記のような社会人基礎力は、大学や民間研修・教育事業者といった教育機関や、企業、組織、現場での研修や座学、評価によって高められ、能力の発揮・自己実現・生産性の向上などの後押しになるとされています。

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