VUCAの時代といわれる今、企業と従業員が一緒にキャリアデザインを考えることで、企業の生産性向上と従業員のエンゲージメント向上を両立できると注目されています。
今回は、キャリアデザインの目的や設計方法、企業がキャリアデザインを支援することで得られる効果について解説します。
キャリアデザインとは?
キャリアデザインとは、自分自身が理想とする職業や働き方・人生を主体的に描き、自己実現するための設計図です。
キャリアデザインの中には具体的な行動計画であるキャリアプランをはじめ、スキルを積み重ねる道筋であるキャリアパス・職業能力を身につけるキャリア形成も含まれています。
自己理解を深めながら、一貫したキャリアの方向性を検討できるのが特徴です。
キャリアデザインを描くことで目標が明確となり、キャリア選択の譲れない軸となるキャリアアンカーも形成されます。
もっとも、現在は社会情勢の予測が難しいVUCAの時代に突入しており、雇用情勢や時代の変化や価値観・ライフスタイルの変容に応じてキャリアデザインの変更を加えていくことになるでしょう。
キャリアデザインの目的
キャリアの軸を確立して自分らしい働き方を実現することが、キャリアデザインの大きな目的です。
目標を持って仕事に取り組んでいても、転勤や人事異動などでキャリアプランの変化を余儀なくされる場面に遭遇することもあるでしょう。
そのような場面でも、自己実現という目標があれば変化を能力向上のチャンスだと受け止め、前向きに仕事に取り組めます。
また、自己実現に向けた行動を明確化することも、キャリアデザインの目的です。
自分の理想像がはっきりすることで、自己研鑽などに主体的に取り組めるようになり早期離職も防げるかもしれません。
つまり、キャリアデザインでは会社という枠組みにとらわれずに、自己実現の観点からキャリアを考えていく仕組みなのです。
キャリアデザインが注目される理由
社会構造や働き方の変化に伴って企業・労働者双方のキャリア観も大きく変わり、キャリアデザインへの注目度が高まっています。
その中でも大きな変化が、終身雇用や年功序列制度の崩壊です。
大企業に就職したといっても定年まで働き続けられる確証はなく、転職の可能性があることを前提にキャリアについて考える必要が出ています。
副業・兼業やリモートワークの普及拡大といった働き方の多様化もあり、自己実現の方法を具体的に設計するキャリアデザインが重要視される傾向です。
平均寿命が年々伸びていることから、人生100年時代といわれるようになりました。
2021年4月からは70歳までの就業機会確保が努力義務化されることになり、より長い期間のキャリアデザインを構築する必要性も出ています。
自ら考えて行動する姿勢が社会人に求められるものになっていることもあり、キャリアデザインの主導権が、企業から労働者側へ移りつつあるといえます。
キャリアデザインの設計方法
企業側からキャリアデザインの支援を受けられる場合もありますが、将来どのような人生や働き方を実現したいかを、まずは自分で考えてみる必要があります。
個人レベルで取り組める、キャリアデザインの設計方法を解説します。
なお、企業が従業員にキャリアデザインの支援を行う場合も、同様のアプローチで進めていきます。
1.現状の把握
キャリアデザインの設計にあたっては、将来の自分がどんな職業に就き、どのような働き方で仕事をしているかを想像することが必要不可欠です。
その上で、次の5点に着目して過去の自分を振り返ります。
年齢ごとに表に書き出すと、自分の強み・弱みをわかりやすく把握できます。
- これまでの職歴や経験業務
- 仕事で得た知識・技能
- 困難に直面した時の行動
- 仕事上で大切にしていたこと
- 仕事をする上で嫌いだったこと
自分に関する客観的な情報を収集するために、心理テストや適性検査といった診断ツールを活用したり、上司や同僚からフィードバックをもらったりするのも有効です。
2.将来的なキャリアの設計
現状を把握できたら、将来的なキャリアを設計します。
勝ち負けや善し悪しという観点ではなく「自分は、どのような人生や働き方を実現したいか」を理想として具体化することが大切です。
やりたいことがわからない人は、どんな姿でありたいかを軸として定めておけば、偶然の出来事をチャンスに転化(キャリアドリフト)させられるでしょう。
5年後・10年後の労働市場を想像してみるのも効果的です。
その上で、現在の自分が目標へ到達するまでのキャリアパスを作成します。
職業部分では何歳でどんな職業・ポジションに就いているかを、目標と必要なスキルとあわせて書き出します。
結婚・育児・住宅購入といった自分自身のライフイベントと関連付けることが、ワークライフバランスを考える良いきっかけになるでしょう。
3.実現プランの立案
将来的なキャリアの設計ができあがったら、実現プランを立案します。
現在の自分の仕事と将来的なキャリアをリンクさせることで、仕事に取り組むモチベーションが高まるのがメリットです。
今すぐに取り組むべきこと、あるいは後回しにしても問題なさそうなものというように優先順位をつけて、プランを立てましょう。
理想の実現に足りない技術や能力がある場合はリストアップし、どのように習得していくかについても検討しておきます。
資格を取得する場合は試験開催が年1~2回のものもあるため、合格に向けた勉強計画を別途立てておきましょう。
4.プランの実施と見直し
立案した実現プランに基づき、具体的な取り組みを進めていきます。
人事評価を受ける時期に合わせるなど、定期的に計画達成度の確認と振り返りを行うことが大切です。
未達の部分がある場合は、到達に向けて行動プランを見直すようにします。
PDCAサイクルに沿って見直しを進めるとわかりやすいですが、思うように行動(Do)できなかった場合は計画(Plan)に問題がなかったかを再確認する必要があります。
特に個人の実現プランでは、行動と計画に対するチェックと必要な軌道修正を忘れないようにしましょう。
企業が取るべきキャリアデザイン支援
キャリアデザインを人事異動の判断材料として利用したり、社員のモチベーションアップを促すツールとして活用したりする企業もあります。
そのため、キャリアデザインを設計しやすいように企業側がサポートすることも大切です。具体的な支援内容を紹介します。
1.キャリアカウンセリング
社員が自分のキャリアについて考える機会を提供することが、企業によるキャリアデザイン支援の第一歩です。
新人研修をはじめ中堅社員や管理職候補、現場のエキスパートなど、社員の特性に応じたプログラムを設定するとよいでしょう。
社員の性格や仕事ぶりを理解しているメンターや上司がキャリアカウンセリングを行うと、実務に活かせる有効なアドバイスが期待できます。
カウンセリングを行うメンターや上司にとっても、社員の価値観を知る機会となります。
最新の適性テストや自己分析手法を用いて潜在能力を発見するために、外部の講師を活用するのも有効です。
2.キャリア面談
メンターや上司、あるいは人事担当者が面談を行い、キャリアの方向性を社員と共有した上で「気づき」を促します。
仕事の問題を解決したり、キャリアを活かせる人員配置を検討したりと、面談目的は多岐にわたるのが特徴です。
社員が望む仕事と企業が求める仕事とのすりあわせにより、共通目標を作る場としても機能します。
定期的な面談を設けて社員が相談しやすい環境を整えることで、離職防止やモチベーションの維持・向上にもつながります。
キャリア面談の効果を高めるためには、キャリアデザインシートを用いるなど目標を明確化することが大切です。
3.柔軟な人事制度
企業が柔軟な人事制度を構築することも、キャリアデザインのもとで成長する機会を社員に提供するには有効です。
例えば、自分の経歴や能力・実績を活かして他部署への異動を実現できる社内FA制度や、一度転職した人を再び自社の社員として迎える出戻り制度の導入などが考えられます。
長期間の学び・研究にも対応できる、サバティカル休暇を設ける企業もみられます。
実務とキャリア形成を両立できる仕組みとして在宅勤務や時短勤務、あるいはフレックスタイム制度の導入も有効でしょう。
キャリアデザイン支援の効果、メリット
企業がキャリアデザインの設計を支援することで、価値観や行動特性を把握した上で主体的な行動を促しながら組織・企業の生産性を高められるのがメリットです。
個々の社員が主体的な行動を実践することで、組織が活性化されて風通しの良さにもつながります。
個人目標の達成に向けた行動実践の積み重ねにより能力が向上し、組織にも還元されて生産性の向上を実現できるでしょう。
ひいては企業全体の競争力強化にもつながり、社員にとって存在価値が高い企業に変革するチャンスを得られるのも、キャリアデザインの支援で得られる効果の一つです。
その結果、社員のエンゲージメント向上につながります。
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