新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、営業時間の短縮や外出自粛の呼びかけなどを、毎日のニュースで目にするようになりました。そんな中、2021年2月3日に新たに成立したのが「まん延防止等重点措置(まん防)」です。
この記事では「まん延防止等重点措置」の内容や発出基準、罰則、緊急事態宣言との違いなどについて解説していきます。担当者の方は会社としてどのような対策をすべきか考えるためにも、まん延防止等重点措置についてしっかりと理解しておきましょう。
まん延防止等重点措置とは
新型コロナウイルスをはじめとする感染症の、特定地域からのまん延を防ぐための措置です。「まん防」「重点措置」などと省略されることもあり、2021年2月3日に成立した新型コロナ対策の改正特別措置法で新しく設けられたものです。
緊急事態宣言が発出される前でも感染拡大防止策を集中的に講じられる措置となっており、特徴には下記のようなものが挙げられます。
・休業要請はできないが、対象地域では営業時間変更などの「要請」ができる
・要請に応じなかった場合には「命令」ができる
・命令にも応じなかった場合には罰則が設けられている
・要請や命令を行なうにあたり、必要があれば立ち入り検査なども行える
なお、まん延防止等重点措置の発出自体は首相が行ないますが、具体的にどの区画や市区町村を対象にするかなどは各都道府県の知事が指定します。
まん延防止等重点措置発出の基準
政府の新型コロナ対策分科会が提示した4段階の「ステージ」で、感染状況は表されます。この中のステージ4が緊急事態宣言発出の目安であるため、その前段階のまん延防止等重点措置はステージ3が発出目安となります。
ステージ3は「感染者の急増や医療提供体制への大きな支障を避ける対策が必要な段階」とされており、このステージ3と判断される目安には、例えば次のようなものがあります。
・医療のひっ迫具合(確保病床使用率20%、入院率40%)
・1週間あたりの新規報告数(10万人あたり15人)
ただし、あくまでこれらは目安であり、まん延防止等重点措置は総合的な判断で発出されます。そのため、感染の急拡大が収まりつつあったとしても、緊急事態宣言が解除されたあとの地域などで適用される可能性もあります。
まん延防止等重点措置の対象地域・期間
対象となる地域は、原則的に都道府県内の特定の区画・市区町村単位となります。まん延防止等重点措置は特定地域からの感染拡大を防ぐためのものであるため、状況に合わせて細やかに対象地域を決められるようになっているのです。
なお、まん延防止等重点措置の発出期間は1回につき6ヶ月以内です。ただし、期間の延長は何度でも可能です。
まん延防止等重点措置の罰則内容
事業者には罰則として過料が設けられており、その具体的な金額は下記のようになっています。
命令に応じなかった場合:20万円以下の過料
立ち入り検査を拒否した場合:20万円以下の過料
都道府県知事が営業時間短縮の要請などを行なった際に、正当な理由なく応じなかった場合、「命令」が出されます。その「命令」に反した場合に、過料が科されます。なお、正当な理由の具体例としては次のようなものが政府によって通知されています。
・近隣に食料品店がないなど、地域住民が生活を維持することが困難になる場合
・新型コロナウイルス対策に関する重要な研究会等を施設で実施する場合
・エッセンシャルワーカーの勤務地周辺にコンビニや食料品店などがなく、併設の飲食店が休業することで業務の継続が困難になる場合
「経営状況が悪化している」「お客様が居座って閉店できない」等の理由は正当な理由に該当しません。もし要請に応じないという選択をする場合には、くれぐれも注意が必要です。
まん延防止等重点措置による事業者への要請内容
アクリル板の設置や、利用者の対人距離の確保、従業員や顧客へのマスク着用周知、手指消毒、換気の徹底など、今では日常化しつつある要請内容の他にも、事業者に対する要請には次のようなものがあります。
・飲食店は営業時間を20時までに短縮
・知事より飲食店で酒類を提供しないよう要請があった場合、酒類提供の停止
・昼間に営業しているスナック店などでのカラオケの自粛
・定められた人数上限や規模要件等に沿ったイベント実施
・「出勤者数の7割削減」を目指した、在宅勤務やローテーション勤務の徹底
・在宅勤務などの実施状況の積極的な公表
ニュースを見ていると飲食店へ向けた営業時間短縮などの要請が印象的ですが、実際には様々な事業者や場所に要請が出ています。自社がまん延防止等重点措置の対象地域にある場合、県や市区町村のホームページを適宜確認するようにしましょう。
また、対象外の地域に自社がある場合でも、「自社の地域が対象に含まれたときの対応方針」「社員が住んでいる区域が対象に含まれたときの方針」などを、予め定め、社員に周知しておくと良いでしょう。いざというときの混乱や戸惑いを最小限に抑えられるため安心です。
まん延防止等重点措置による住民への要請内容
対象区域への住民には、日中を含めた不要不急の自粛をはじめ、下記のような要請が出されています。
・路上や公園などにおける、集団での飲酒の自粛
・営業時間の短縮を要請した時間以降の、飲食店利用の自粛
・感染防止対策が徹底されていない飲食店などの利用自粛
・営業時間短縮の要請に応じていない飲食店などの利用自粛
・混雑している場所や時間の回避
・都道府県を跨ぐ移動の自粛
また、まん延防止等重点措置の対象区域以外の住民には、次のようなことを、要請ではなく「お願い」として通知しています。
・三つの密、感染リスクが高まる5つの場面などの回避
・対人距離の確保、マスク着用、手洗いうがい、手指消毒などの感染対策
・大人数での会食などの自粛
・発熱、倦怠感など、体調が優れない場合の帰省や旅行の自粛
・在宅勤務や時差出勤、テレビ会議などの活用
おおよその要請・お願いは、個々の意識や努力により応じられるものです。ただし、「都道府県を跨ぐ移動」「在宅勤務の実施」などは、勤務先である企業の理解や協力がなければ対応が困難です。
出退勤の時間、出退勤時の使用路線などによっては、混雑している電車やバスも多数あります。自社の社員を守るためには、積極的な理解と、在宅勤務や時差出社といった具体的な対応が求められます。
まん延防止等重点措置と緊急事態宣言の要請内容の違い
緊急事態宣言の特徴には下記のようなものが挙げられます。
・対象地域にて休業要請、営業時間短縮などの「要請」ができる
・要請に応じなかった場合には「命令」ができる
・命令にも応じなかった場合、罰則が設けられている
一見するとまん延防止等重点措置と似た印象を受けますが、実際にはあらゆる点で違いがあります。具体的な違いについては、次の表の通りです。
まん延防止等重点措置 | 緊急事態宣言 | |
要請できる内容 | 営業時間短縮などの要請および命令 ※立ち入り検査なども実施可能 | 休業、営業時間短縮などの要請および命令 ※立ち入り検査なども実施可能 |
発出基準の目安 | ステージ3 ※ただし、医療状況や感染拡大状況などを総合的に見て判断 | ステージ4 ※ただし、医療状況や感染拡大状況などを総合的に見て判断 |
対象地域 | 知事が指定した都道府県内の特定区域 | 都道府県単位 |
期間 | 6ヶ月以内(ただし延長は何度でも可能) | 2年以内(合計して1年を超えない範囲で複数回延長可能) |
罰則 | 命令に応じない場合:20万円以下の過料 立ち入り検査を拒否した場合:20万円以下の過料 | 命令に応じない場合:30万円以下の過料 立ち入り検査を拒否した場合:20万円以下の過料 |
まん延防止等重点措置と緊急事態宣言は、いずれも感染症のまん延を抑えるためのものです。内容に違いはありますが、どちらが発出されていても感染を拡げないための意識や行動が必要です。
社員やその家族、社員と接する機会のある顧客などを守るために、「自社がすべき対応」を今一度見直してみましょう。
東京都など主要県のまん延防止等重点措置実施状況
各主要都市におけるまん延防止等重点措置、緊急事態宣言の発出状況は次の通りです。
都道府県名 | 発出されている措置 | 期間 |
東京都 | 緊急事態宣言 | 2021年4月25日から2021年5月31日まで |
神奈川県 | まん延防止等重点措置 | 2021年4月20日から2021年5月31日まで |
埼玉県 | まん延防止等重点措置 | 2021年4月20日から2021年5月31日まで |
千葉県 | まん延防止等重点措置 | 2021年4月20日から2021年5月31日まで |
愛知県 | 緊急事態宣言 | 2021年5月12日から2021年5月31日まで |
大阪府 | 緊急事態宣言 | 2021年4月25日から2021年5月31日まで |
福岡県 | 緊急事態宣言 | 2021年5月12日から2021年5月31日まで |
※2021年5月14日現在
※上記以外の都道府県についても、内閣官房サイトや各都道府県のサイトなどで確認ができます。
日々感染状況は変動しているため、まん延防止等重点措置や緊急事態宣言は、いつどの都道府県に発出されてもおかしくありません。新型コロナウイルスの拡がりが落ち着くまでは、日頃から最低限の情報収集を心掛けておくのが好ましいでしょう。
まん延防止等重点措置を理解した上で社員への感染予防対策を!
現在の社会情勢では会社としての感染予防対策、社員への周知徹底は必要不可欠です。
まん延防止等重点措置について知った上で、「自社では具体的にどのような対策を行なうのか」「その対策を行なうことでどんな効果が得られるのか」などを考え、社内共有しましょう。
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