近年、日本でも耳にすることが多くなった「ポリコレ」。
ポリコレとは、偏見や差別のない表現が政治的に妥当であるという考えをもとに、社会から偏見・差別をなくすことを意味します。
企業にとってもポリコレは注目されてきているキーワードですが、どのような取り組みがなされているのでしょうか。
今回は、ポリコレの定義、具体例、ポリコレに対する批判、企業のポリコレ対応への事例、企業がポリコレに注目する背景、組織内での取り組みについて紹介します。
ポリコレ
ポリコレとはポリティカルコレクトネスの略で、民族・宗教・性別・文化の違いなどによる偏見・差別のない、中立な表現を用いることを言います。また、偏見や差別をなくすこと自体を意味する場合もあります。
もともとは、1980年頃からそういった差別用語のない表現が政治的に妥当であるという考えから、Political correctness(政治的正当性)が使われるようになり、そこから意味が広がっていきました。
日本でも2000年代以降にポリコレという言葉が出てくるようになり、在日コリアンの方たちへのヘイトスピーチに対する問題などエスニック・マイノリティの人権問題と共にポリコレも知られるように。
ただ、ポリコレはどこまでの表現・言葉が問題ないのかの線引きが難しく、行き過ぎたポリコレは「表現の自由」を阻害するとして「ポリコレ叩き」と呼ばれる批判も少なくはありません。
ポリコレの具体例
それでは、これまでにポリコレの考え方で、差別のない表現へと是正された例にはどのようなものがあるのでしょうか?
アメリカでは下記の例があります。
・アフリカ系アメリカ人の方を「ブラック」と肌の色で判断しているかのような差別的な言い方であったのを「アフリカンアメリカン」へ。
・「メリークリスマス」はキリスト教以外の宗教への配慮が足りないとして「ハッピーホリデーズ」へ。
・「ビジネスマン」は働くことに女性を含んでいない差別的な用語として「ビジネスパーソン」へ。
日本語でも、下記の例があります。
・「看護婦・看護士」は性別を前提とした差別があるとして「看護師」へ。
・「保母・保父」は性別を前提とした差別があるとして「保育士」へ。
企業のポリコレ対応への事例
企業のポリコレに対する対応については、どのような事例があるのでしょうか。
ここでは、3つの事例を紹介します。
1.JAL「Ladies and Gentlemen」
2020年10月からJALは機内や空港のアナウンスで使用していた「レディース・アンド・ジェントルメン」という言葉を「オール・パッセンジャーズ」「エブリワン」など性別を表さない言葉に変更しました。
JALは2014年より「ダイバーシティ宣言」を社内外に打ち出しており、ジェンダーに左右されず、多様な人材が活躍できる会社づくりを行っており、その一環として取り組まれています。
無意識での性別を前提とした言葉を使用することなく、誰でもが利用しやすい環境を整えたいとのことです。
2.ファミリーマート「はだいろ」
2021年3月にファミリーマートは、全国で販売していた自社ブランドの女性用下着キャミソール・ショーツ・タンクトップの3種類を自主回収しました。
理由は、ベージュ色の表記を「はだいろ」としており、はだいろは人によって様々であるにも拘らず不適切であるということで社員や加盟店から指摘が入りました。
ファミリーマートは表現が不適切であったことを認め、出荷していた全商品22万5千枚を自主回収し、再発防止とチェック体制の強化に取り組むと発表しました。
その後は、「ベージュ」の表記にして再販売しています。
3.花王「美肌」
2021年3月花王は全ブランドのスキンケア商品・化粧品の表記に、「美白」という言葉を使用しないことを決定しました。
新商品の発売やリニューアルの際に、徐々に表記を変更していく予定で、手始めに3月発売された「トワニー」の化粧水などで実施。今後は、美白、ホワイトニングなどの言葉を避け、「ブライトニング」など中立的な言葉を使用していきます。
アメリカで起こった黒人差別への抗議運動を受けて、既にユニリーバやロレアルなどのメーカーが2020年6月に化粧品の表記に「白さ」「ホワイトニング」を使用しないことを決定。差別への助長を防ぎ、いち早く多様性への配慮を見せており、花王もそれを追う形で対応を決定しました。
その他にも花王は、ファンデーションの色を表現する際の「標準」という言葉を見直し、肌色のバリエーションも従来の2倍の色調に増やすことで多様性に対応していく予定です。
ポリコレに対する批判とは
ポリコレには明確な方針やレギュレーションなど存在しておらず、「どこまでがポリコレとして正当性があるのか」という側面があります。
そして、歴史的に出来上がったことばを細かく見ていき、差別的用語と批判することに対して否定的な人も少なくありません。
例えば、「嫁」ということばに対して、その漢字のつくりから「女は家にいるもの」という差別をはらんでいるなどとの指摘がありますが、そこまでは言い過ぎではないかという論争があります。
「言葉狩り」や「表現の自由」を脅かすのではないかと批判的な人や、「ポリコレ疲れ」という表現の配慮に疲れを感じる人もいるようです。
実際、アメリカのである調査によると約8割の人がポリコレは自国にとって問題との認識でおり、特に20代の若者の中でポリコレに対して不快感を示す人が多いとの報告もあります。
企業がポリコレに注目する背景
黒人差別の抗議運動などを契機に、ポリコレに対する企業の取り組みは加速しているようですが、この動きは一時的なものではないと考えられます。企業がポリコレに注目している背景には何があるのでしょうか。
1.労働人口減少による人材不足
一つ目は、労働人口が減少していることによる、人材不足です。
高齢化が進む中で、日本の労働人口は着実に減少しています。
今後はますます、優秀な人材を確保することが難しくなり、いかに自社に魅力を持ってもらい多様な人材に長く働いてもらえるかが重要です。
社内外でポリコレへの対応強化することで、より多くの人に興味を持ってもらえ、働きやすい環境を提供することができます。
2.社会の価値観の変化
冒頭でも説明した通り、黒人差別の抗議運動の他、オリンピック開催前の男女差別に関する発言への注目など、今人々の関心はいかに多様な価値観を認めて共存できるかに向いています。
働き方の多様化も同様で、従来からの一辺倒な日本の雇用システム内で「我慢をしながら働く」というスタイルはマッチしなくなってきています。
人々の価値観の変化に対応して、企業も多様性にマッチするよう変化が求められているでしょう。
3.国際化への対応
現在はコロナ禍の影響で、国の行き来が制限されている部分がありますが、今後も国際化は進むと考えられています。
国と国とを超えてビジネスを進める上で、差別のない中立な立場で取り組むことは必要不可。社内での国際人材へのポリコレの配慮も必要となるでしょう。
企業が組織内でポリコレに取り組む内容
企業のポリコレ対応への事例では、お客様に対しての表示や表現についてのポリコレについて見てきました。
直接的に顧客への表現とは関係のない業種であっても、ポリコレに取り組む必要はあります。ここでは、すべての業種に関係のあるポリコレの取り組みについて見てみましょう。
1.ダイバーシティ経営
ダイバーシティ経営とはまさに企業版のポリコレで、人種、性別、少数者などの要因によらず、どの人も能力を最大限に発揮できる機会を提供しようとするものです。
具体的には、女性の活躍、LGBTへの配慮、年齢の多様性、グローバル化、障がい者雇用などへ対応する動きがあります。
2.インクルージョン
ダイバーシティ経営と近い概念で、インクルージョンという取り組みもあります。
日本よりも海外で一般的な言葉で、多様な人材の参加を促す側面が強かったダイバーシティを補うために生まれました。
多様な人材が参加した後の制度や風土づくりに重きを置く考え方です。
「ダイバーシティ&インクルージョン」と呼ばれることもあり、実態としては、ダイバーシティと同様な取り組みを指すことが多いでしょう。
3.ジェンダー平等
男女平等の雇用機会を提供するという取り組みが続くなか、それでもまだまだ、女性の管理職の少なさ、出産後の働きにくさについて解消しきれてはいません。
管理職や総合職社員の登用を目標とするKPIの設定など、数値的な目標のみならず働きやすい制度の構築と企業文化の醸成など抜本的な解決に向けての動きが求められています。
組織内でポリコレに取り組む具体例
ここでは、ダイバーシティ経営としてポリコレに取り組む企業の具体例を紹介します。
■エーザイ株式会社
課題:製薬業界の競争環境が目まぐるしく変化する中、多様なステークホルダーとの関係性を基盤に顧客ニーズに長期的に応えていきたい
取組:グローバルタレントマネジメント体制の整備と、「働き方改革」で多様性を受容する労働環境を醸成する
具体的な取組:
・新任組織長への「ダイバーシティ研修」と、全管理職への「イクボス研修」を実施し、管理職の意識改革を徹底。
・人事評価の項目に「多様性への対応」を設定し、相互理解を促すために上司と話し合う「プロフェッショナル開発レビュー」を実施し、人事制度の改革を推進。
・女性社員のキャリア意識の醸成や挑戦意欲の向上を企図した育成プログラムを実施
・女性のキャリア採用を強化し、経営職や経営職候補の獲得にも取り組む。
・配偶者出産休暇、育児や看護・介護等のケアワークに関わる休暇や休業の制度改定を実施。男性社員を含めたワーク・ライフ・バランスの実現を推進。
成果: 2010年度で女性の管理職比率3%に対して、2020年4月時点で10.4%までに増加。
しかし、執行役の女性比率は13.3%対して、一つ下の階層である組織長の女性比率は8.4%と、まだ課題は残っており、女性躍進推進プロジェクトを軸に今後も取組を発展させ成果をのばしたいとしている。
経済産業省
社会の潮流や働きやすさに対応したポリコレを意識しよう
ポリコレは政治上やメディア上での発言を中立な表現にしようとする動きのみならず、企業の社内外での取組にも波及しています。
企業は社会の潮流に目を向けながら、多様な人材が活躍できる組織を目指していく必要です。人事制度や評価制度などを見直すことで、誰もが働きやすい組織を実現していきましょう。
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