コミットメントとは?使い方、例文、組織コミットメントの高め方について解説

コミットメントのイメージ画像

コミットメント(commitment)は本来、約束や公約、責務や責任を意味する英語ですが、心理学用語や経済学用語、ビジネス用語としても使われており、使われる文脈によってニュアンスが異なります。

人事業務に関しても頻繁に出てくる概念のため、人事担当者はコミットメントの持つ意味や使い方、人事制度におけるコミットメントの活用方法について、しっかりと把握しておく必要があります。

この記事では、コミットメントの定義や分類、ビジネスや人事制度において使われる場合の意味や文例、人事教育において最重要とされる「組織コミットメント」に含まれる要素やそれを高める方法について解説します。

コミットメントとは

コミットメントの大意は「(積極的な)関与」です。そこから「確約」や「責任感を持って関与すること」といった意味でも使われています。心理学用語やビジネス用語としても使われるケースも多く、文脈によってニュアンスが異なります。

心理学のコミットメントとは

コミットメントという概念は、もともと、組織心理学や職業心理学において多用されてきました。

人が所属する組織は家族からグループや会社までさまざまな形がありますが、組織の規模に関わらず、主に3つのコミットメント(関わり方・意識)が存在するとされています。

・組織に関与すること得られる喜びや利益に基づくコミットメント
・組織に所属することで得られる安心感や安定感、忠誠心に基づくコミットメント
・組織から離脱することで発生する損失や開放感に基づくコミットメント

ビジネス上のコミットメントとは

ビジネスシーンにおけるコミットメントには、主に2種類の使い方があります。

まず、会議やプロジェクトなどに「(責任感を持って積極的に)参加する(コミットメントする)」といった使い方は、日常的なビジネスシーンでよく行われるものです。

次に、「ワークコミットメント」の意味で使われる場合もあります。ワークコミットメントとは、業務に関係する対象への関わり方や意識の持ち方です。ワークコミットメントは主に、以下の3つに分類されます。

・組織コミットメント:所属する組織に対する関わり方・意識の持ち方
・ジョブインボルブメント:従事している職務に対する関わり方・意識の持ち方
・キャリアコミットメント:キャリア(専門分野や職種)に対する関わり方・意識の持ち方

上記のうち、最も離職率に影響を及ぼすものが組織コミットメントです。くわしくは後述します。

コミットメントの使い方・例文

ビジネスシーンにおけるコミットメントの使い方は、主に「参加する」「承認する」の2種類です。「コミットメントする」を略して「コミットする」とも表現します。それぞれの例文を以下で挙げて解説するので、参考にしてください。

参加する

「実りある会議にするためには全参加者のコミットメントが欠かせない」
「チーム一人一人のコミットメントによってプロジェクトを成功させよう」

コミットメントの「(責任を持って)関わる」という意味から、ビジネスにおいては「参加する」という意味で使用されます。ただ参加しているだけで自発的な思考や行動がない状態はビジネス上で望ましくないため、コミットメントとはいえません。

承認する

「プロジェクトをスタートする前に部長のコミットメントを得なければならない」
「社長がコミットしない商談を持って行っても、クライアントは納得しません」

コミットメントには「責任者が承認する」という意味もあります。プロジェクトや企画、商談などが1社員の裁量でなく組織の責任者によって承認済みの確実な内容であることを相手に示したいときに使われる表現です。

組織コミットメントを構成する3つの要素

ワークコミットメントの中でも、特に組織コミットメントは離職率に及ぼす影響が大きく、組織的コミットメントが高いほど離職率が低くなるといわれています。

組織コミットメントと離職率の関係を考える際によく利用される尺度が、1990年にAllen & Meyerが提唱した3つの要素です。これらの組み合わせや各要素の程度によって組織コミットメントが決定付けられるとされています。

・情緒的(affective)コミットメント
・存続的(continuance)コミットメント
・規範的(normative)コミットメント

情緒的コミットメントとは、組織に対する愛着や組織の一員としてのアイデンティティーに基づく関わり方・意識の持ち方です。

存続的コミットメントは、組織を離脱する場合の損失を意識することに基づいた関わり方・意識の持ち方を指します。たとえば、会社を辞めると社内の役職を失ったり、社内で築いてきたキャリアを他社では活かせなかったり、転職先が見つけにくかったりするとしましょう。

そのようなケースでは、退職したくても実際には難しいため、不本意ながら会社に留まる人が大半です。つまり、存続的コミットメントは、ネガティブな理由によって会社との関係を維持しようとする場合に高まります。

規範的コミットメントは組織への無条件の忠誠心や道義心に基づく関わり方・意識の持ち方です。たとえば、ライバル社から引き抜きを受けたなど、退職するほうが自分の得になる状況を想定してみましょう。

この場合、会社やチーム、上司や同僚に恩義や「自分が辞めたら皆が困る」などと感じているために退職する気になれないといったケースは、規範的コミットメントが高いといえます。

3つの要素はいずれも離職率の抑制につながりますが、ビジネスにおいて高いパフォーマンスを期待できるのは、情緒的コミットメントや規範的コミットメントなど、ポジティブなコミットメントが高い社員です。

一方、ネガティブな要素である存続的コミットメントだけが高い社員を定着させても仕事に対する意欲や積極性がみられないため、会社にとって不利益をもたらします。

ポジティブな組織コミットメントが高い社員の3つの特徴

組織コミットメント、特に情緒的コミットメントや規範的コミットメントが高い社員には、以下の特徴があります。

・会社のビジョンに共感している
・明確な目標を持っている
・チームの一員として自己肯定感を持っている

つまり、会社やチームの一員であることにアイデンティティーや自己肯定感を持っている社員ほど仕事に対するモチベーションも高く、明確な目標設定も容易です。喜びややりがいを感じながら積極的に働くことができるため、当然、離職率も下がります。

会社にとって有益な社員を定着させるには、社員の情緒的コミットメントや規範的コミットメントといったポジティブなコミットメントを高めていくことが大切です。

ポジティブな組織コミットメントを高める3つの方法

情緒的コミットメントや規範的コミットメントを高める主な方法として、以下の3つがあります。

・人事評価制度の見直し
・福利厚生制度の整備
・働き方の自由度を上げる

それぞれの方法について、以下で解説します。

人事評価制度の見直し

会社への貢献に対して正当に評価してもらえると実感できれば、社員の情緒的コミットメントが上昇します。とはいえ、全社員の実績を公平かつ客観的に評価するのは困難なため、人事管理システムの導入がおすすめです。

「あしたのチーム」は導入企業3,500社以上の実績を持つ人事管理システムとして、シェアNo.1を誇ります。社員教育から人事評価制度の構築や見直し・運用支援、クラウド化までワンストップでの提供が可能です。テレワークやジョブ型に合わせた設計もできます。

福利厚生制度の整備

社内での働きやすさやライフワークバランスの推進を図ることによって、社員の規範的コミットメントを高めることができます。

社員食堂や社内託児所、資格取得の支援制度や社内教育制度、有給休暇・育児介護休暇制度やボーナス制度など、自社の規模や社員の属性に合わせた福利厚生制度の充実を図りましょう。

働き方の自由度を上げる

2019年から順次、施行が始まった働き方改革により、自由な働き方ができる職場が増えてきています。社員それぞれの事情によって働き方を自由に選択できれば、情緒的コミットメントや規範的コミットメントの上昇につながります。

たとえば、コロナ禍による感染防止対策強化も影響し、働く場所に縛られないリモートワークも、かなり普及しました。

働く側にとっては、場所を問わず自分の能力を活かせる職場を提供してもらえることで、会社への感謝や愛着を感じ、情緒的コミットメントが高まるでしょう。会社にとっても、出社不要の勤務体制を整備することによって優秀な人材を日本中から求人できるメリットがあります。

また、育児中や介護中・療養中などフルタイム勤務が難しい社員のために時短勤務制度を設けることも働き方の自由度を上げる方法の1つです。社員は生活を犠牲にしなくても社内で築いたキャリアを保持できるため会社への恩義を感じ、規範的コミットメントが高まります。会社にとっても、優秀な人材の離職の抑制が可能です。

社員のコミットメントを高めて組織を活性化しよう

離職率を下げつつ優秀な社員の定着を図るには、社員のポジティブな組織コミットメント(情緒的コミットメント・規範的コミットメント)を高めることが大切です。それが組織の活性化につながります。

人事評価制度の見直しや福利厚生制度、自由な働き方ができる制度の整備を実施し、組織コミットメントの上昇を図りましょう。

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