退職する場合には退職届を提出しますが、退職願や辞表との違いを知らない人が少なくありません。
また、退職届の提出時期や正しい書き方についても、あらかじめ知識を持っておいたほうが、円満退職につながるでしょう。
この記事では、退職届の概要や提出時期、正しい書き方と例文について解説します。さらに、退職届を提出するフローや退職届を提出する前にやっておくべきことも紹介するので、参考にしてください。
退職届とは
まず、退職届の概要について押さえておきましょう。退職届は退職願や辞表と混同されがちですが、それぞれの意味は異なります。以下で、それぞれの特徴について解説します。
1. 退職届
退職届とは、退職が確定してから会社に対して退職を届け出る書類です。民法上では退職届を提出してから14日後に退職が認められるとされています。
退職届の提出先は会社の規定によって異なりますが、一般的には人事部や上司などです。また、会社によっては退職届のフォーマットが用意されている場合もあるため、人事担当者はあらかじめ把握しておきましょう。
2.退職願
退職願とは、労働契約の解除(退職)を希望する意思を会社に伝える書類です。退職願は必ずしも書類で提出する必要はなく、上司に「会社を辞めたいです」などと伝えるだけでも構わないとされています。
とはいえ、書面で退職願を出すほうが、口頭で伝えるよりも退職の意思が固いことを表現できるでしょう。また、会社に退職を願い出た根拠にもなるため、早めに退職したい場合は書面の退職願を提出するほうが確実です。
3.辞表
辞表とは、社長や取締役など会社と雇用関係のない役職者が役職を辞すことを会社に届け出る書類です。役職者が辞表を提出して役職を外れた後に、一般社員として引き続き同じ会社に勤務するケースもあります。
一般社員など会社に雇用されている立場の人の場合、辞表を提出する必要はありません。
退職届を提出する時期
労働者には「退職の自由」が認められており、民法627条1項では下記のように記載されています。
「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申し入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申し入れの日から2週間を経過することによって終了する。」
つまり、雇用の期間があらかじめ決まっていない場合においては、民法上では退職を希望する日の2週間前に退職届を提出すればよいということです。
正社員として雇用されている場合は、雇用の期間を定められていない契約に該当します。また、この場合は退職の理由も特に制限されていないため、どのような理由でも退職が可能です。
ただし、会社の就業規則においては、退職の1~2カ月前までに退職届を提出しなければならないといった規定がされているケースが一般的です。社員の退職にあたって、会社は補充人員の採用活動や業務の引き継ぎなど、イレギュラーな業務を行うことになります。
できるだけ会社に迷惑をかけず円満に退社するためには、あらかじめ就業規則を確認し、早めに退職届を提出するほうがよいでしょう。
なお、あらかじめ雇用期間が決まっている社員が契約期間中に退職を希望する場合、「退職の自由」は民法628条により「やむを得ない事由があるとき」に制限されています。ただし、労基法第137条により、1年以上の有期労働契約の場合は契約初日から1年を超えてからはいつでも退職が可能です。
また、労基法第15条には、雇用期間の定めの有無を問わずに労働者が即時、退職できるとするケースも記載されています。それは、雇用契約時に提示された労働条件が実際と異なる場合です。
退職届の書き方・例文
会社規定の退職届フォーマットが準備されている場合は人事部などからそれを入手し、名前や提出日などを記入してください。
特に決まったフォーマットがない場合の書き方と例文を以下で紹介します。一般的な定型文で構いませんが、特に丁寧な印象を与えたい場合は()の表現を使用するとよいでしょう。
レイアウトについてはインターネットで「退職届」と画像検索すると参考になります。横書きと縦書きでは項目の記載順や記載すべき項目が一部異なる点にも注意してください。
横書きの場合:
「退職届
○○○○年〇〇月○○日
社名(正式名称)
代表取締役 〇〇〇〇殿
所属部署名
氏名(印)
私儀
このたび、一身上の都合により、(勝手ながら)
○○○○年○○月○○日をもって退職いたします(退職いたしたく、ここにお届けいたします)。
(なお、退職後の連絡先につきましては以下の通りです。
住所
電話番号)
以上」
縦書きの場合:
「退職届
私儀
このたび、一身上の都合により、(勝手ながら)
○○○○年○○月○○日をもって退職いたします(退職いたしたく、ここにお届けいたします)。
(なお、退職後の連絡先につきましては以下の通りです。
住所
電話番号)
○○○○年〇〇月○○日
所属部署名
氏名(印)
社名(正式名称)
代表取締役 〇〇〇〇殿」
退職届の封筒の書き方
退職届はフォーマルな機密書類にあたるので、提出する際の封筒は白色無地(郵便場合枠なし)・二重封筒など中身が透けないものを選びましょう。また、退職届と封筒のサイズも合せるのがマナーです。退職届がB5サイズなら封筒は長形4号、退職届がA4サイズなら封筒は長形3号が合っています。
封筒の表書き・裏書きには黒の万年筆かボールペンを使用してください。表書きは封筒の中央・やや上に「退職届」、裏書きは封筒の左下に部署名・氏名を記入します。
退職届は文字が書いてある面を内側にして、まっすぐに巻き三つ折りにし、退職届の右上が封筒を裏から見て右上に来る向きで封筒に入れるのが正式です。手渡しする場合、封をする必要はありません。
退職届を提出する6つのフロー
トラブルなく円満退職するためには一定の手順を踏んで進めるようにしましょう。退職届を提出する前後のフローは以下の通りです。
1.退職の意思を固める
なぜ退職したいのか、退職後の転職先は確保できるかなどを考慮した上で、退職の意思を固めましょう。退職の意思が曖昧なままでは、なかなか言い出せなかったり、引き止められた場合に断り切れなかったりする可能性があります。
2.退職を希望する旨を直属の上司に口頭で、もしくは、退職願で伝える
いきなり退職届を提出するのではなく、まず、直属の上司に対して退職したい意思表示を行います。この段階では、部下の退職が業務に支障をきたす場合や上司の管理能力に影響するなど、さまざまな理由によって、退職を思いとどまるように上司から引き止められる可能性が大です。
しっかり退職の意思を通すためには、「退職したいのですが」といった相談ではなく、「〇〇の理由により、〇〇までに退職させてください」といった伝え方がよいでしょう。退職をしっかりと決断してから上司に伝えることが大切です。
3.退職日を正式に決定する
退職が認められたら、上司と相談の上で退職日を正式に決定します。その際は有給休暇の日数を確認し、有給休暇を消化できる日程で退職日を決めましょう。
最後に出社した日から退職日までに有給休暇をまとめて消化するパターンや、有給休暇を少しずつ消化しながら退職日を迎えるパターンもあります。どのように有給休暇を消化するかについても、上司と相談して決めましょう。
4.退職届を提出する
退職届のフォーマットや提出時期、提出方法は会社によって異なります。会社の規定に沿う形式で退職届を提出しましょう。
5.引継ぎ・貸与物の返却をする
退職後、上司や同僚、取引先の業務に支障が出ないように配慮することが大切です。自分の担当業務を引き継ぐ同僚への引き継ぎや、後任の担当者を取引先に紹介するなど、「立つ鳥跡を濁さず」を心がけましょう。
また、会社から貸与されたもの(スマートフォンやパソコン、社員証、制服など)があれば、忘れずに返却します。貸与物の返却方法についても社内規定がないか確認しましょう(返却先、制服はクリーニングしてから返却するなど)。
6. 退職あいさつなど
必要に応じて、社内外に退職のあいさつをします。取引先に担当者変更のハガキを送るなど、会社の慣例に沿って行いましょう。
退職届を提出する前にやっておきたい3つのこと
退職を検討する段階では、退職後の生活の見通しを付けておくことが重要です。退職届を提出する前にやっておきたいこととして、主に「転職活動」「失業保険の手続き方法法の確認」「退職後に必要となる出費の確認」などがあります。
1.転職活動
リタイアできるほどの蓄えがある場合は別として、退職後も生活していくための転職先をあらかじめ確保しておく必要があります。
転職後の収入を見積もるためにも、退職前の転職活動は欠かせません。転職サイトなどを活用し、有給休暇を利用して転職活動をしましょう。
2.失業保険の手続き方法の確認
雇用保険に加入していれば、退職後に失業保険の給付を受けられます。そのためには必要書類を揃えてハローワークに申請しなければなりません。主な必要書類は以下の通りです。
・離職証明書(会社からハローワークに提出)
・雇用保険被保険者離職票(-1、2)(離職後に会社が発行)
・雇用保険被保険者証(未発行の場合はハローワークで取得可能)
・個人番号確認書類(マイナンバーカード、通知カード、個人番号が記載された住民票のうち1点)
・身分証明書(運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなど)
・写真(正面上半身、縦3.0cm×横2.5cm 最近撮影したもの)
・印鑑
・本人名義の預金通帳かキャッシュカード(失業保険の振込先)
離職証明書は在籍中に本人が署名または記名押印する必要があります。このとき、離職の理由など記載内容が正しいかどうかを確認しましょう。
雇用保険被保険者離職票の受け取り方法は退職後に会社から郵送される、または、自分で受け取りに行くなど、会社によって異なります。
3.退職後に必要となる出費の確認
会社の福利厚生を利用できなくなるため、電車代・住宅費・家族手当などがなくなり、自己負担額が増えます。また、厚生年金が国民年金に、健康保険が国民健康保険に切り替わることに伴い、場合によっては自己負担額が増える可能性があるでしょう。
また、退職した翌年の住民税や国民健康保険の金額は会社に在籍中の収入に基づいて計算されるため、支払い額が大きくなる可能性があります。
転職後の会社でも社会保険に加入できる場合はよいですが、脱サラして起業する場合などは気を付けた方がよいでしょう。
正しい手順で退職届を提出しよう
退職手続きや退職届の書き方・提出方法には一定のルールが存在します。
社会人としてのマナーを守り、できるだけ会社や上司・同僚・取引先などに迷惑をかけずに円満退職できるように、正しい手順で退職手続きを進め、適切な時期に退職届を提出するように努めましょう。
退職届を提出する時期については就業規則を確認の上、余裕を持って提出することをおすすめします。
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