自己啓発の方法は?企業が従業員を支援する方法やメリット・事例を紹介

自己啓発のイメージ画像

「従業員の能力を上げるために自己啓発を取り入れたい」と思っても、自己啓発の方法が分からなければ取り入れることが難しいでしょう。

それ以前に自己啓発の効果と課題、注意点も気になるのではないでしょうか。

そこで、この記事では、従業員の自己啓発に関する情報を詳しくお伝えします。

最後に自己啓発を支援している企業事例も紹介しますので、自社で自己啓発を取り入れる際の参考にしてください。

自己啓発とは?

ビジネスシーンにおける自己啓発について解説します。

自己啓発の意味

自己啓発とは、従業員が能動的に知識・スキルを身に付け、能力や精神面の向上を図ることを意味します。会社からの指示ではなく、自由時間を使って自分を磨くという取り組みです。

自己啓発の具体例

具体的な自己啓発の方法に以下があります。

・読書

・オーディオブック

・コーチング、カウンセリング

・異業種交流会への参加

・スクール通学、通信教育

・副業(複業)

など。

自己開発との違い

自己啓発に類似した言葉に自己開発がありますが、厳密には違いがあります。

自己啓発は能動的に知識・スキルを身に付ける行為ですが、自己開発は人生の目標や価値観に根付いた資質を高める行為です。仕事とプライベートに共通する資質といってもいいでしょう。

主に次のような項目が自己開発に含まれます。

・コミュニケーション能力

・対人スキル

・自信の回復

・適応力

・誠実さ

・リーダーシップ

など。

自己啓発と能力開発の違い

自己啓発の定義は「本人が自主的に知識・スキルを身に付ける活動」ですが、能力開発の定義は「個人の保有する能力を発見・整理し、その能力の効果性を発達させる体系的な取り組み」を指します。

つまり自己啓発が能動的なスキルの向上という意味に対して、自己開発はすでに身に付いている能力の向上という違いがあります。

主な能力開発には以下があります。

・集合型研修

・職場研修(OFF-JT)

・職場研修(OJT)

集合型研修は複数人を集める研修です。日本の企業に馴染みある研修方式で、様々な拠点から従業員を集めて開催されます。従来はオフラインによる対面形式が一般的でしたが、現在はオンラインによる集合型研修も増えています。

職場外研修(OFF-JT)はOff-The-Job Trainingの略で、職場を一時的に離れて行う研修です。外部講師や外部機関の集合研修、セミナーも含まれます。

職場内研修(OJT)はOn-The-Job Trainingの略で、職場内の業務を経験しながら行う研修です。上司からサポートを受けて知識やスキルを習得します。

なお、自己啓発は自主的に目標設定を行うので、Off-JTやOJTでは実現できないことを実行できるという魅力があります。

自己啓発で期待できる効果と課題点

自己啓発の促進は従業員の能力アップにつながり、企業にとっても大きな効果が期待できます。自己啓発の具体的なメリット・デメリットを解説します。

自己啓発で期待できる効果(メリット)

自己啓発による企業のメリットには以下があります。

・従業員のスキルアップや精神面の成長を見込める

・従業員の成長によって事業の効率化を図れる

・モチベーションの高い従業員が増える可能性がある

自己啓発の直接的な効果はスキルアップですが、自主的に課題に取り組むことにより、精神面の成長も見込めるでしょう。

また成長に伴って業務時間が短縮すれば事業の効率化が図れますし、仕事に意欲的な従業員が増える可能性があるのもメリットです。

自己啓発を行う上での課題点(デメリット)

自己啓発による企業のデメリットは以下です。

・効果を得られなければ費用と時間が無駄になる

・学習によって得た知識を発揮できない可能性がある

・理論先行で視野が狭くなるリスクがある

自己啓発の費用を企業がサポートしても、効果を得られなければ無駄になりかねません。

また従業員によっては学習と仕事が結び付かず、結果的に現場でスキルを発揮できない可能性があります。

学習に重点を置きすぎて視野が狭くなるリスクもデメリットです。

自己啓発5つの方法

個人のスキルを高める自己啓発として主に考えられる方法は以下の5つです。

1.資格の取得

資格取得は学習を通して成長が見込めるうえに、総合的にスキルを学べるというメリットがあります。合格によって自信が付くことで、意欲的に仕事に取り組めるのもメリットでしょう。

従業員の性格や資格の種類によっては、知識に偏りすぎて視野が狭まる可能性があるのはデメリットです。

2.外部教育機関の利用(スクールや通信教育など)

スクールや通信教育のような外部の教育機関を利用することで、スキル習得の目標が達成しやすくなります。

近年は自治体で無料講座も開講されていますが、資格スクールなどを利用すれば受講料が発生するので金銭面の負担はあるでしょう。

3.各種セミナー

セミナーやワークショップで知識を身に付ける方法ですが、中には営利目的で開催しているセミナーもあるので注意が必要です。

4.副業

本業以外の仕事を経験することで、個人のスキルアップに繋がります。ただし時間管理できなければ心身が疲弊し、本業に悪影響が及ぶかもしれません。副業の収入増加によって会社を退職する可能性があるのもデメリットです。

5.書籍

仕事関連の書籍を読むことでスキルアップできます。電子書籍を活用すれば隙間時間を有効利用できるでしょう。ただしインプットだけでアウトプットできなければ効果が出にくいというデメリットがあります。

企業が行う自己啓発支援の背景

厚生労働省が発表した「令和2年度「能力開発基本調査」の結果」によると、教育訓練費用(OFF-JT費用や自己啓発支援費用)を支出した企業は54.6%でした。全体の約半数の企業が教育訓練費用を支出していることが分かります。

他にも、能力開発や人材育成に関して、何らかの問題があるとする事業所は79.8%という結果が出ています。

個人調査においては、自己啓発を実施した労働者は34.4%で雇用形態別では「正社員」(44.1%)が「正社員以外」(16.7%)よりも高くなっています。

性別では「男性」(39.9%)が「女性」(28.0%)よりも高く、最終学歴別では「中学・高等学校・中等教育学校」(21.4%)が最も低く、「大学院(理系)」(69.6%)が最も高いという結果になっています。

このように全体の約3割の労働者が自己啓発に取り組み、特に理系大学院を卒業した男性正社員の比率が高いことが分かります。

令和5年度「能力開発基本調査」の結果を公表します

厚生労働省

企業が従業員の自己啓発を支援する方法

前述した厚生労働省の調査結果からも分かるように、社員教育に自己啓発を取り入れている企業は多い反面、能力開発や人材教育に関して何らかの問題があるとする事業所は7割以上となっています。

ここでは企業が従業員の自己啓発を支援する方法について解説します。

費用面での支援

費用面でのサポートが最も一般的かもしれません。主な自己啓発の費用には書籍購入費、教育機関への通学費や通信教育費などがあります。

目指す資格にもよりますが、資格取得のための通学費や通信教育費は高額なので、費用の一部や全部を負担することで従業員も大きな恩恵を受けられるでしょう。

時間面での支援

自己啓発は従業員の自主的な取り組みなので、日常業務が忙しいと余裕がないと感じるのかもしれません。企業としては時間面のサポートも考慮する必要があるでしょう。

たとえば資格試験直前は休日を取りやすくする、本試験日は有給扱いにする、勤務時間に社外の講習会などへの参加を認めるなどの支援が考えられます。

活動場所の支援

従業員がグループで勉強会を行う場合には、広いスペースを提供することで支援できます。

たとえば自社会議室の利用を認める、自社以外で確保できる場所を会社が予約するなどのサポートが考えられます。

情報・教材の支援

自己啓発のための情報や教材を支援する方法もあります。

たとえば仕事関連の資格情報を提供する、能率アップに繋がるビジネス書を貸し出すなどのサポートが考えられるでしょう。

自己啓発支援を行う際に設計しておくこと

企業が従業員に自己啓発支援を行う際の設計方法について解説します。

自己啓発を支援できる対象者の設定

全社員を対象にするのが難しい場合は、一定の範囲を定める必要があります。勤続年数、職種、職能資格者などで基準を設定すると良いでしょう。

ただし自己啓発の趣旨は自主的な取り組みですから、積極的にスキルアップを考えている従業員に対しては、企業としても前向きに支援するのがベストです。

対象となる資格や行われる講座

資格試験は数が多いので、会社が対象となる資格や講座を絞る方が効率的です。仕事に関連した国家資格に限定する、会社が通信教育を指定する、といった方法が考えられます。

たとえば経理部門の従業員は日商簿記検定、総務・労務部門は社会保険労務士、部長クラス以上は中小企業診断士など、業務や役職に応じて対象資格を設定するのも一つの方法です。

支援する内容と費用の割合

支援内容と費用割合の設定も大切です。支援の種類には金銭面の援助、時間の配慮、休暇の付与、情報提供などが考えられます。企業としてどのような支援を行い、どこまで援助するかを定めることで、全社的な自己啓発に取り組みやすくなるでしょう。

支援できる条件の設定

必要であれば支援内容の条件設定も行います。資格試験の費用は合格した場合に援助する、もしくは不合格でも得点によって援助する、または合格不合格にかかわらず援助するなど、従業員に対して明確な条件設定を伝えることがポイントです。

自己啓発支援制度運用のための注意点

多くの企業では資格支援制度を運用する際、以下のことに注意しています。

・従業員に具体的なキャリアパスを明示する(自分に必要な経験などを理解させる)

・手軽で費用がかからないスマートデバイスやITツールなどを使用した学習機器による学習を検討する

・定期的に支援制度の利用状況などを振り返り見直しや改善を行う

・従業員自ら進んで自己啓発に取り組めるように促す

自己啓発は能動的な取り組みですが、企業としてキャリアパスを具体化することで、従業員は迷いなく進むことができます。

また手軽に使えるスマートデバイスやITツールの情報提供や、学習機器の貸し出しを行うことで、スムーズに取り組みやすくなります。

資格スクールによってはPDFファイル主体の通信教育もありますので、その場合にタブレットを提供すれば、従業員としてもメリットを感じることができるでしょう。

他にも定期的なフィードバックを行う仕組みを整えることで、モチベーションを保ちやすくなります。

大切なのは従業員が自ら積極的に取り組むことなので、それに応じた支援を行うのが効果的です。

自己啓発を支援している企業事例

自己啓発を支援している企業事例として、三菱東京UFJ銀行、株式会社三越伊勢丹、ファミリーマートの3社について紹介します。どの企業も積極的に自己啓発に取り組んでいるため、自社で自己啓発を導入するかどうかの参考になるでしょう。

1.三菱東京UFJ銀行

三菱東京UFJ銀行が取り組んでいるキャリア支援として、自己啓発プログラムの事例を紹介します

・主な取り組み内容

三菱東京UFJ銀行は従業員それぞれの成長段階に応じた自己啓発プログラムを提供しています。具体的な内容は以下です。

・学びの場の提供

平日夜間と休日に開催される自己啓発講座。相場の見方、企業分析の手法、ロジカルシンキング、PC、英語などビジネススキルを高める講座を開催。

・資格取得支援

公認会計士・証券アナリスト・ファイナンシャルプランナー等の資格取得費用の支援。

・語学学習

語学学校への通学や通信教育などを支援。

・e-learning

自宅で学習できるe-learning、タブレット端末で閲覧できる電子書籍、オンデマンド講座などを支援。

・得られたメリット

学びの場の提供には、延べ20,000人/年以上の行員が参加しています。

キャリア支援企業好事例集

厚生労働省

2.株式会社 三越伊勢丹

株式会社三越伊勢丹が取り組んでいるキャリア支援を紹介します。

・主な取り組み内容

株式会社三越伊勢丹は多様化する要員構成に対応した教育・研修を体系化しています。基礎教育、職務別教育、領域別教育、資格別教育、能力開発研修など約150種類の受講者数は年間延べ約2万人です。

他にも百貨店プロセールス資格として、フィッティングアドバイザー、ギフトアドバイザー、シューカウンセラー、パーソナルカラーアナリスト、手話といった資格制度取得も推奨しています。

・得られたメリット

従業員アンケートにおいて「成長への意欲」と「企業へのロイヤリティ」のポイントが向上しています。

キャリア支援企業好事例集

厚生労働省

3.ファミリーマート

ファミリーマートが取り組んでいるキャリア支援を紹介します。

・主な取り組み内容

ファミリーマートは「ファミリーマート・ビジネスカレッジ」という社員教育体系を提供しています。全階層のビジネススキル、語学プログラム、ダイバーシティマネジメント研修、選抜型・公募型の研修といった従業員のキャリアアップに繋がる教育プログラムです。

・得られたメリット

「自分らしいリーダーを考えるきっかけになりました」と回答されている従業員さんの声が以下の公式ページに掲載されていました。

人材育成の取り組み

ファミリーマート

自己啓発を支援して従業員のスキルアップにつなげよう

今回は企業における自己啓発の重要性や方法などを解説しました。

そもそも自己啓発は従業員の自主的な取り組みですが、企業として費用や時間の支援を行ったり、道筋を示したりすることで取り組みやすくなります。

実際に自己啓発に取り組んで成果を上げている企業もありますので、この機会に自己啓発を支援して従業員のスキルアップの考えてみてはいかがでしょうか。

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