パラダイムという言葉を聞いたことがあっても、あらためてどのような意味があるのか、パラダイムの正しい情報が気になるのではないでしょうか。
特にコロナ禍で「自社の体制を大きく変える必要がある」と危機感を抱いた人も多いと思います。
そこで今回は、パラダイムシフトの意味や注目される背景、事例、ビジネス上のパラダイムシフトや企業の対応方法などを詳しく解説していきます。
パラダイムとは
パラダイム(paradigm)は、アメリカの科学史家トーマス・クーンが1962年の著書「科学革命の構造」の中で提唱した概念です。「ある時代に支配的なものの見方、考え方、認識の枠組み」といった意味があります。
もともとは「模範」を意味する普通名詞ですが、学界・思想界ではクーンが提唱した意味で広く使われています。ビジネスシーンでも頻繁に使われる用語です。
クーンによると、「パラダイムとは科学者に一定期間、自然に対する問い方と答え方のモデルを与えるもので、広く世間に受け入れられる業績」とされています。
歴史的な事例としては、コペルニクスの「天球の回転」、プトレマイオスの「アルマゲスト」、ニュートンの「プリンキピア」などがあります。
なお、日本では訳語をあてず、パラダイムという言葉のまま使われる機会が多く、その場合は後述するパラダイムシフトとセットで使われるケースが多いでしょう。
パラダイムシフトとは
パラダイムシフト(paradigm shift)には「規範の遷移」や「思想の枠組みの変動」といった意味があります。ある時代に支配的な考え方の劇的な変化とも言えるでしょう。
ビジネスシーンにおいて使われる機会が多く、その場合は「革新的なアイディア」や「常識を覆す新たな手法」などの用途で使われるのが一般的です。
ただしパラダイムシフトは小規模な変化ではなく、社会規範・価値観・常識が覆るほどの大規模な変化なので、簡単に起こせるものではありません。
しかし歴史上、人類は何度もパラダイムシフトを経験しています。地動説や進化論のような科学のフィールドだけでなく、インターネットやスマートフォンの登場もパラダイムシフトと言えるでしょう。
パラダイムシフトの意味は以上ですが、シンプルに企業内変革をパラダイムシフトと表現することもあります。
パラダイムシフトが注目される背景
パラダイムシフトが注目される背景には、社会・経済・産業の変化があります。
もともと政府は、働き方改革の一環としてリモートワーク(テレワーク)を推進していましたが、コロナ禍で発令された緊急事態宣言を通して、より本格化したと考えられるでしょう。
しかし全ての企業がリモートワークに対応しているわけではありません。
リモートワークが困難な建設業や接客業は別としても、紙の請求書やハンコ問題、電話の多用、独自の社内システムへの依存などにより、リモートワークを全く導入できなかった、もしくは形だけクラウドツールを導入した企業もあります。
このような企業の課題はシステム化、およびデジタル化にあると考えられています。報告・承認プロセスの改善、人事評価制度の推進、就業規則の整備といったシステム化と共に、DX環境の整備(デジタル化)がポイントです。
DXはデジタルトランスフォーメーションの略で、「ITが浸透することで人々の生活が良い方向に変化する」という仮説ですが、DXを推進するには企業内変革が求められます。
つまり、社会・経済・産業の変化に対応するためパラダイムシフトの意義が問われているのです。
パラダイムシフトの事例
パラダイムシフトの過去の事例を4つ紹介します。
ニコラウス・コペルニクスの地動説
コペルニクスが1543年に唱えた「地球は太陽の回りを自転しながら公転する」という宇宙構造説です。
もともと天文学界を支配していたのは「地球を宇宙の中心とする」というプトレマイオスの天動説ですが、地動説を論理的に唱えたのはコペルニクスが最初と考えられています。
その後、ガリレイの望遠鏡による観測や楕円軌道説によって、本格的に地動説が進展していきました。
このように、かつて支配的だった天動説という考え方が、コペルニクスを契機に地動説に変化した事例はパラダイムシフトと言えます。
プランクの量子力学
量子力学は、素粒子・原子・原子核・分子などの量子的現象を支配する力学体系です。ニュートンの運動法則やマクスウェルの電磁法則などに変わる新しい運動法則として知られています。
量子の考え方はプランクが1900年に唱えた放射公式に始まります。
その後、ボーアによる電子運動の量子化、シュレディンガーの波動力学、ハイゼンベルクによるマトリックス力学などによって統一的な体系が築かれました。
かつて支配的だったニュートンやマクスウェルの古典論から、新しい運動法則の考え方に変化したパラダイムシフトの事例です。
アインシュタインの一般相対性理論
アインシュタインが1915年~1916年に完成させた時間・空間に関する理論です。重力場の古典理論とも捉えられています。
「等速運動する互いの座標系は物理法則の記述で対等である」という考え方を特殊相対性理論と呼ぶのに対して、座標系間の一般の運動に対する相対性理論を拡張したのが一般相対性理論です。
なお、今日では実験技術の進歩により、宇宙の膨張やブラックホールや重力波の存在も予測されていて、新しい宇宙論に繋がっています。
このようなニュートン力学に再考を迫った一連の予測もパラダイムシフトです。
ダーウィンの進化論
ダーウィンが1859年の「種の起原」で唱えた進化理論です。人間を含む生物は長い年月をかけ、適者生存の結果として進化したことを科学的に立証しています。
進化論の考え方はキリスト教の教義の否定に繋がる部分もあり、思想界に大きな影響を与えたことから、パラダイムシフトの事例と考えられています。
ビジネス上でのパラダイムシフト
ビジネス上のパラダイムシフトを3つ紹介します。
スマートフォン
スマートフォンの登場は通信業界に大きなパラダイムシフトをもたらしました。
電話機は黒電話、プッシュ式電話機、コードレス電話機、テレビ電話、携帯電話と進化し、日本でガラパゴス的に進化したガラケーも記憶に新しいところです。
しかしスマートフォンは音声通話だけでなく、インターネット接続やアプリケーションによって電話の概念を覆しました。ソーシャルメディアによってコミュニケーションにも大きな変化が生じています。
スマートフォン以前の世界では、地下鉄やバスで読書する光景が日常的に見られましたが、今は多くの人がスマートフォンを開いています。
このようにスマートフォンによって電話の常識が覆り、新たな世界が生み出されたという意味で、典型的なパラダイムシフトの事例と言えます。
サブスクリプション
サブスクリプションとは、料金を支払って製品やサービスを一定期間利用できるビジネスモデルです。
知名度の高いサブスクリプションには、音楽配信の「Apple Music」や「Spotify」、映像配信の「Amazonプライム」「Netflix」「U-NEXT」「Hulu」などがあります。
また、サブスクリプションはレンタルと違って借りている物を返却する必要がなく、リカーリングビジネスのように使用量で金額が変わることもありません。
世界的な市場規模も年々広がっていて、2023年には1000億ドルを超えると予測されています。
かつては映画を見るためにDVDをレンタル、音楽を聞くためにCDを借りるのが一般的でしたが、現在はサブスクリプションで代替している層が多く、パラダイムシフトの事例の1つと言えるでしょう。
リモートワーク
前述したリモートワークもパラダイムシフトの事例に含まれます。
リモートワークが浸透した直接的な原因はコロナ禍にあるのかもしれませんが、「ライフワークバランスを保てる」や「育児や介護とも両立できる」などの理由から、働き方の変化に繋がっています。
コロナ禍以前から政府が推奨していることもあり、今後さらにリモートワークを導入する企業は増えるのではないでしょうか。
今後予想されるパラダイムシフト
これから予測されるパラダイムシフトを3つ紹介します。
1.DXの普及
今後さらにDXは普及されると予測できます。企業の発展だけでなく、危機管理やリスク対策としても重要と考えられているからです。
経済産業省が報告した「2025年の崖」でも報告されている通り、既存システムの問題をこのままにした場合、デジタル競争の敗者になるのみならず2025年以降最大12兆円/年の経済損失が生じる可能性が指摘されています。
システムの維持費の高額化や、システムトラブルによるデータ紛失、サイバーセキュリティ事故などのリスク増加が報告され、DXを含めたシステムの再構築は企業にとって喫緊の問題として周知されてきているのです。このような状況を背景に、DXの普及へのパラダイムシフトは急速に進むと考えられるでしょう。
2.AIの進化
AIの進化はIT業界に大きなインパクトをもたらしましたが、今後ますます影響が広がると予測されています。小売や医療の現場でデバイスやロボットが浸透することも十分に考えられるでしょう。
他にもAIの進化によって、交通・行政・工場・建設など様々な業界が影響を受けるのではないでしょうか。そのようなAIによるパラダイムシフトはすでに起こりつつある出来事と言えるでしょう。
3.EV車への移行
自動車業界はガソリンエンジン車からEV車へのシフトチェンジが始まっています。
化石燃料に頼ったガソリンエンジン車の限界が叫ばれる中で、EV車の開発と販売に関心が集まり、パラダイムシフトが今後も進むと考えられるでしょう。
パラダイムシフトに企業が対応する4つのコツ
企業がパラダイムシフトに対応するコツを4つ紹介します。
迅速な意思決定プロセスへと変更する
コロナのような不測の社会的変化、パラダイムシフトが起こった場合、企業として迅速な意思決定が求められます。そのためにはプロセス自体を見直し、場合によっては大きく変更する必要があるでしょう。
たとえば、意思決定に複数上司の決裁が必要な場合、非常事態で対応が遅れるなどの問題が発生する可能性があります。そのような事態を防ぐには、迅速な意思決定プロセスへの変更が効果的でしょう。
ビジネスモデル・業務プロセスを見直す
社会的なパラダイムシフトに対応するには、現在のビジネスモデル・業務プロセスの変更が必要になるかもしれません。
飲食のようにコロナ禍で直接的な打撃を受けた企業以外でも、今までと同じビジネスモデルで売上回復が見込めなければ、時代に合った変革が求められます。業種によっては調達、生産、物流の拠点変更も必要になるでしょう。
つまり、時代の変化に素早く対応するためのビジネスモデル、業務プロセスの再設計が重要になるのです。
雇用スタイル・働き方の見直し
雇用スタイルや働き方の見直しもポイントです。正社員が毎日出社してフルタイムで働く、というスタイル自体に限界が訪れているのかもしれません。
他にも朝礼、会議、紙による回覧や日報など、現代に合っていない可能性があります。その場合はバックオフィスや事業部門を含めて、ペーパーレス化とクラウド化が必要でしょう。
未だリモートワーク体制が不十分な場合は、Webカメラや勤怠管理といった各種ツールの準備から始める必要があります。
人事評価制度の再構築
多様な働き方を実現するには、人事評価制度の再構築も重要です。特にリモートワークの割合が増えると、ビフォーコロナのように面談して評価する、近くで働きぶりを見て評価する、といったことが難しくなります。
その場合は仕事の成果物によって評価するのが一般的ですが、全従業員に浸透させるには、就業規則の改定も含めて、統一ルールを再構築する必要があるでしょう。
人事評価制度の再構築による副次的なメリットとしては、上司による個人的な印象だけで評価されなくて済むということです。その結果、優秀な社員の離職率が低下することも考えられるので、人事評価制度の再構築は大切になります。
なお、あしたのチームでは、クラウド化に対応した評価制度の構築ツールを提供していますので、ぜひご参考にしてみてください。
パラダイムシフトに対応して必要とされる企業を目指そう
パラダイムシフトとは、ある時代に支配的な考え方が劇的に変化することです。コロナ禍で訪れた社会的な変化もパラダイムシフトと考えられています。
科学史のパラダイムシフトには地動説や量子力学がありますし、ビジネスでもスマートフォンやサブスクリプションによってパラダイムの変化が起こっています。
企業が社会的な変化に対応するには、意思決定プロセスの見直し、ビジネスモデル・業務プロセスの改善、働き方の見直しなどが必要になるでしょう。
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