「ゆとり世代」という言葉はよく耳にしますが、具体的にどこからどこまでの年代のことを指すのかあいまいな方も多いのではないでしょうか。
ゆとり世代の特性を知っておくと、職場のゆとり世代社員ともより円滑な関係を築けるかもしれません。
この記事では、ゆとり世代の定義や特徴、類語との違い、ゆとり世代とのコミュニケーションのポイントについて解説します。
ゆとり世代とは
ゆとり世代とは、学習内容と授業時間数の削減や総合学習の取り入れなど、児童の負担軽減や思考力の向上に焦点を当てた一連の教育改革、通称「ゆとり教育」を受けた世代のことを指します。
ゆとり教育は、従来の詰め込み型教育の弊害ともいえる受験戦争の過熱化や落ちこぼれ問題の対策として導入されました。1977年度の学習指導要領の改定から段階的に始動し、本格的に実施されたのは2002年度から2010年度までです。
年代でいえば、1987年から2004年生まれの人がゆとり世代といえます。
ゆとり世代とさとり世代・つくし世代との違いとは
近年では、ゆとり世代に加えて「さとり世代」「つくし世代」という言葉も登場しています。混同されがちな言葉ですが、実はほぼ同年代を指す言葉です。
ゆとり世代に該当する人々は、バブル崩壊後の不景気社会で育ったことから、現実思考が強い傾向にあるといわれています。物欲が無くてインドア志向、恋愛にも淡泊で、まるで将来を悟ったように見えるという特徴から「さとり世代」という言葉が誕生しました。
その一方で、この年代は「みんなに喜んでもらいたい、仲間を大事にしたい」という「尽くし」の欲求をもっているともいわれており、その側面から「つくし世代」とも呼ばれています。
つまり、若者世代の気質や考え方から生まれた、ゆとり世代のサブカテゴリーととらえられるでしょう。
ゆとり世代が生まれた時代背景
ゆとり世代が生まれた時代には、どのようなことがあったのでしょうか。ここでは、主に4つの出来事について説明します。
バブル崩壊と不況の到来
ゆとり世代が生まれた1980年代後半から日本経済はバブル景気を迎え、高度な成長を遂げました。しかし、その後1990年代前半にバブル崩壊による景気後退が起こり、長期にわたる不況期に突入しました。このため、ゆとり世代は貧困や経済的な不安定さを、身をもって経験することになりました。
平成時代の始まり
ゆとり世代が生まれた時期は、1989年に昭和天皇が崩御し平成時代が始まった時期でもあります。平成時代は、日本社会に大きな変革をもたらす時代となりました。バブル景気の崩壊の他にも阪神・淡路大震災など、社会や経済に大きな影響を与える出来事が相次ぎました。また、IT技術の発展やグローバル化の進展など、多様な変化が起こった時代と言えるでしょう。
新しい教育制度の導入
ゆとり世代が小中学校を卒業する頃には、新しい教育制度である「新学習指導要領」が導入されていました。この制度は、従来の教育に対して、自由な発想力の育成や、授業時間の短縮などが盛り込まれ、それまでの教育とは異なる取り組みが行われました。
デジタル技術の進化
ゆとり世代は、インターネットや携帯電話などの情報技術が急速に発展した時代に生まれた世代で、デジタルネイティブとも呼ばれます。彼らは、携帯やインターネットは当たり前にあるものとして育ち、コンピューターやスマートフォンを自然に使いこなすことを得意とします。
ゆとり世代の前世代と後世代
ゆとり世代の前世代は、主にX世代(1965年〜1979年頃までに生まれた世代)が該当します。X世代は、経済成長期の余韻が残る時代に生まれた世代で、社会的にも経済的にも安定した時代を経験しています。しかし、高度成長期を生きた世代に比べて、格差が広がり、不況やリストラによる雇用不安も増加しました。そのため、物質的な豊かさや目に見える地位を重視する傾向があります。
ゆとり世代はY世代(1980年〜1994年頃までに生まれた世代)とZ世代(1995年頃〜2009年頃までに生まれた世代)にまたがって該当します。ゆとり世代の後世代であるZ世代は、スマートフォンやSNSなど、さらに進化した情報技術が普及した時代に生まれた世代で、Y世代よりもさらにITリテラシーが高い傾向があります。
また、グローバル化が進んだことから、国境を越えたコミュニケーションや交流が当たり前のように行われるようになりました。自由な発想力や多様性に富んだコミュニケーションを重視する傾向があり、就職においては、企業の社会的責任や自己実現を重視する傾向があるでしょう。
ゆとり世代の10の特徴
ゆとり世代の特徴について、もう少し詳しく掘り下げてみましょう。
競争意識が低い
テストの点数を競わせるような競争的な要素が希薄な教育を受けたことから、ゆとり世代は競争意識が低いという特徴があります。社会に出てから初めて周りとの成績競争を求められ、そのギャップに戸惑う人が多くいます。
ストレス耐性が低い
他者との競争に慣れていないという特徴は、ストレス耐性の低さとも結びついています。
幼少期から他者とあまりぶつからず、のびのび育てられてきたゆとり世代は、ストレスとうまく付き合う術を身についておらず、物事が続かなかったり、仕事をすぐ辞めてしまったりする傾向があります。
お金や物品に対する執着心がない
不景気の中で育ってきたことから、現実的な思考が強いという特徴も。お金や物品をより多く手に入れて豊かになろうとするより、現状の範囲内で慎ましく暮らすという意識が根付いています。
物事を合理的に考える
知識の詰め込みよりも思考力や総合力を高めることを重視したゆとり教育を受けた影響からか、合理的な考えを好む側面もあります。人に言われたことをただ行うのではなく、「何のためにやるのか」「どうやればより良くなるのか」を重視する人が多いです。
多様性への理解が高い
ゆとり世代は、性別や人種などの多様性を受け入れる傾向が強く、それぞれの違いを尊重することを自然とする特徴があります。
ITテクノロジーの発達により多くの情報に触れることで多様な価値観を形成するとともに、グローバル化が進んだ世界で育ったため、異なる人種、文化、性別、性的指向、宗教などの多様性に対して理解が深いことが要因でしょう。ゆとり世代は、人々が異なる背景を持つことを尊重し、個人の自由や権利を大切にすることが特徴です。
コミュニケーション能力が高い
ゆとり世代は、コミュニケーション能力が高い傾向があります。SNSやインターネットなどを通じて、リアルタイムで情報交換が行われることが多く、迅速に情報を共有し、意見を交換することが得意でしょう。また、グループでの活動や、コミュニティ活動に参加することで、協調性を発揮し、他者とコミュニケーションをとる能力に長けています。
個性的な価値観を持つ
ゆとり世代は、独自の価値観を持ち自己主張することが得意と言われており、自分らしい生き方を追求することができる社会を求めやすいです。勉強などで競うよりも自分の個性ややりがいを重視して育ったことも、個性的な価値観の形成を促したと考えられます。個人それぞれの意見を尊重し、相手の意見や立場に耳を傾けることも大切にするでしょう。
チームワークを重視する
ゆとり世代は、協調性が高くチームワークを重視する傾向があります。身近な友達と知人とSNSを通してコミュニティを形成する文化に慣れ親しんでおり、仲間と協調して助けあうことを得意とする世代です。各世代の違いを理解しながら、チームワークを発揮するのに向く特徴を持ちます。
環境問題への関心が高い
ゆとり世代は、地球環境に対する関心が高い傾向があります。東日本大震災、コロナ禍など様々な社会的困難に直面してきたことで、地球環境への配慮を意識する人が多いのです。エコロジーに配慮したライフスタイルや、リサイクル・再利用を促す活動に積極的に参加することが多い傾向があります。
グローバルな視点を持つ
ゆとり世代は、グローバルな視野を持つ傾向があります。世界的な情勢やトレンドに敏感であり、海外の文化や価値観にも理解を示しやすいでしょう。また、グローバルなビジネスにも関心を持ち、海外に進出する企業に就職することも多いです。
ゆとり世代が会社に求めるもの
ここでは、ゆとり世代が会社に求めるものついて、いくつか紹介します。
ワークライフバランスの確保
仕事とプライベートのバランスを大切にし、ワークライフバランスの良い働き方ができる環境を求める傾向があります。例えば、柔軟な勤務時間やリモートワークなどの取組みです。
ゆとり世代は、同僚との競争や仕事のみを重視する働き方に魅力を感じない人が多いでしょう。
キャリアアップの機会
ゆとり世代は、自分自身のスキルアップやキャリアアップにつながる機会を求める傾向があります。例えば、社内研修や外部研修の支援、プロジェクトのリーダー経験の提供などが挙げられます。
自己実現をしたい
ゆとり世代は、自分自身のアイデアや意見を仕事に反映できる環境を求める傾向があります。上司に言われた仕事をそのままやるというよりも、仕事をすることで自己実現をはかりたいと考える人が多いでしょう。
働きがいのある環境
会社が社会的な価値観や環境問題などに積極的に取り組んでいるか、社員の福利厚生やキャリア支援などが充実しているかなど、働く上でのやりがいや魅力を感じられる環境を求める傾向があります。
フラットな組織文化
上下関係が厳しい、縦割りの組織文化よりも、フラットでオープンな組織文化を求める傾向があります。例えば、社員同士のコミュニケーションが活発であること、マネージャーとの距離が近く、意見やアイデアを自由に言えることが挙げられます。
ゆとり世代の人材育成のポイント
ゆとり世代の人材育成において、以下のポイントが重要です。
個人の成長に合わせたキャリアアップの支援
ゆとり世代は、自分自身のスキルアップやキャリアアップにつながる機会を求めています。会社側は、社員一人ひとりの強みや興味を把握し、個人の成長に合わせたキャリアアップの支援を行うことが大切です。
オンライン教育プログラムの導入
ゆとり世代は、インターネットを活用して自己学習を行うことが多いため、オンライン教育プログラムの導入が効果的です。自分のペースで学べることや、いつでもどこでも学べることが魅力的なため、モチベーションを維持しやすくなります。
フィードバックの実施
ゆとり世代は、定期的なフィードバックや評価を求める傾向があります。会社側は、社員とのコミュニケーションを密にし、フィードバックを実施することで、社員のモチベーション向上や成長を促すことができます。
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柔軟な働き方の提供
ゆとり世代は、ワークライフバランスを大切にする傾向があるため、柔軟な働き方を提供することが必要です。フレックスタイム制度やリモートワーク制度、時短での有給休暇の取得などの取組みを取り入れることが求められます。
ゆとり世代とは十分なコミュニケーションが重要
ゆとり世代と円滑にコミュニケーションを取り、良好な関係性を築くには、彼らの特性に理解を示す姿勢が重要です。
例えば、合理性を求めるゆとり世代には、トップダウンで物事を言いつけるのではなく、何のためにやるのか、どうしてこの方法なのかを説明すると一層理解が深まります。
また、ストレス耐性が低いため、説明もなく意見を突っぱねるのは厳禁です。肯定的な態度を心がけ、「自分の意見に向き合ってくれる」と認識してもらったほうが、彼らの柔軟な思考力を活かすことができるでしょう。
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