リフレーミングとは、ある出来事に別の視点を持たせる考え方のことをいいます。主観や思い込みから抜け出し、新しい見方を身に着けることで、物事を前向きに捉えることができたり、他者の長所に気づくことができたりします。
ここでは、リフレーミングの具体例やビジネスシーンで期待できる効果、練習方法について紹介します。
リフレーミングとは
リフレーミングとは、「物事の視点・枠組み(Frame)」を「組み直す(Re-Frame)」という意味の心理学用語です。ある出来事の枠組み(フレーム)を変えることで、出来事に別の視点を持たせることを指します。
「コップの半分の水」の話を聞いたことがある人も多いでしょう。コップに残された半分の水を見て、「もう半分しかない」と思うか「まだ半分もある」と思うかで、状況への捉え方がまったく異なるというものです。
コミュニケーション心理学の分野で発展した考え方ですが、近年では思い込みや固定概念を見直すことで、自信をつけたり人間関係を円滑にしたりする手法のひとつとして、人材育成やマーケティングなどビジネスシーンでも注目されています。
ポジティブシンキングとリフレーミングとの違い
コップの水のたとえ話をきくと、リフレーミング=ポジティブシンキングをイメージするかもしれません。しかしリフレーミングとポジティブシンキングは全く同じ考え方というわけではありません。確かに、リフレーミングはネガティブな物事に対してポジティブな側面を見つける際に、ポジティブシンキングと似た思考をとります。
しかし、ポジティブシンキングが物事を常に「プラス方向に捉える」のに対して、リフレーミングはおかれている状況の枠組みを考え直したり、自己の内面に関する感じ方や出来事の解釈を見直したりします。そして、新しい視点に気づき、発想の転換を促すものなのです。
リフレーミングの3つのパターン
リフレーミングは、「事実」への「見方」を変えることができる考え方です。以下に、3つのリフレーミングのパターンをみてみましょう。
事象のリフレーミング
起こった出来事や状況への解釈を捉え直すものです。ネガティブな事象に遭遇してしまった時にリフレーミングを行うことで、行き詰った状況から脱却したり、ポジティブに次の対応へと動くことができたりします。
たとえば、新しい企画を提案したにも関わらず上司からの反応が悪く、「企画内容をイチから練り直した方がよい。」と言われてしまいました。
この対応を受けて「自分にはこの仕事は向いていないのかもしれない」と落ち込んだとします。このとき、上司から「企画内容をイチから練り直した方がよい。」と言われ企画案をやり直すことになった事象に対して、「ある意味ではもう一度よりよい企画をつくるチャンスをもらえた」など良い面に目を向けます。
どういった意図でこのように言われたのか冷静になり、企画内容をどのように改善しようかと次のアクションについて考えることにつながるでしょう。
リフレーミングを活用したことで、「仕事に向いていない」というのは自己の行き過ぎた思い込みにとらわれて、前に進まない状況から抜け出すことができたのです。
性格のリフレーミング
生まれつきとされる「性質」や、人は変わらないと考えられる「性格」もリフレーミングの対象になります。
会話が苦手だという人は、言い換えれば聞き上手という面を持っています。物事への着手が遅くスピード感に欠けると評価される人が、綿密な計画を立てて慎重にミスのないプロジェクトを遂行できるかもしれません。
短所と長所は表裏一体です。リフレーミングで物の見方を変えれば、他人の粗探しではなく良い点に気づくことができます。また環境を変えることで短所が長所になることもあるため、職場では適材適所の配属転換に活かすことができるでしょう。
行動のリフレーミング
ついついしがちな行動やクセもリフレーミングを実施できます。
たとえば、大事な商談で失敗してしまったとき、激しく落ち込んで長時間引きずってしまう人と、振り返りはするものの短時間で気持ちを切り替えられる人がいます。気持ちをすぐに切り替えられる人は、そうした枠組みを持っています。
「商談に失敗してしまった」という点について、自分を責めて反省するのではなく、客観的にみてなぜ失敗したのかを再考しましょう。 「どのような方法をとれば失敗しなかったのか」「方法を変えれば次は成功するかもしれない」という面に視点を変えるだけで、今後の行動を変えていくことができます。
リフレーミングの具体例
リフレーミングの具体例としては、以下のような状況で活用できます。
職場の上司が最近冷たい
新入社員のAさんは、少数精鋭の営業チームに配属され、マネージャーの元、営業活動に励んでいました。入社から1か月ほどは、マネージャーが営業のイロハを教えてくれ、提案書や商談について細かいフィードバックをくれたものの、入社半年たった今、どうも冷たい対応をされているような気がしています。先日も提案書のアドバイスをもらおうと考えていたのに、オフィスに戻って来るや否や別のチームメンバーと打ち合わせに入ってしまいました。
→「上司が冷たい」という根拠はあるのかリフレーミングしてみます。
・上司からひどい言葉をかけられたか
・無視されている事実はあるか
・そもそもアドバイスをもらうために打ち合わせの時間を調整したか
・もしかしたら上司は今仕事がすごく忙しいのかもしれない
・独り立ちができていると認められ、仕事を任されているのかもしれない
自分の行動や上司の言動を客観的に振り返ることで、上司とのコミュニケーションの取り方を見直し、上司から信頼されているという別の解釈に気づくことができます。
同僚がいつも仕事をさぼっている
チームの同僚が仕事をさぼっていると感じています。いい加減で、依頼した仕事の納期を守りません。また、しょっちゅうタバコ休憩に行っていて席におらず、電話対応や他部署からの依頼にいつも自分が対応していると思うと、今日もイライラが止まりません。
→事実確認や確率計算で、同僚のいい加減さをリフレーミングしてみます。
・依頼した仕事の納期に遅れたのは過去に何回あったのか
・納期が遅れたのは30回依頼したうちの2回。毎回当日ギリギリだが提出しており、遅れたのは別業務でのトラブル対応があったため
・タバコ休憩には1日2回~3回行っている。しかし、他のタバコを吸うメンバーも同じぐらい席を外すため、同僚だけが突出してサボっているわけではない
事実を数値に置き換えたり、他者の行動と比べたりすることで、「いつもさぼっている」という見方は行き過ぎた思い込みだと気づきます。
仕事で大きなミスをしてしまいもうダメだ
大きな契約の商談で、用意した提案資料のグラフを誤った数値で作成してしまいました。幸い商談時に先方からの指摘があり、口頭で上司がフォローしてくれたものの、商談の手応えは得られず、チームに顔向けができません。あんなに協力してくれた上司もきっと呆れているに違いないでしょう。「仕事ができないダメなやつ」と、みんな心の中で思っているはずです。
→もし親友が同じ状況で落ち込んでいたら、どう励ますかと想像しリフレーミングしてみます
・ミスは誰にでもあることだよ
・出来る限りのことはしたよ
・最終チェックを上司がするべきだったし、あなただけのせいじゃないよ
・ミスを振り返り、繰り返さないよう対策することが大事だよ
「絶体絶命」というような物事でも、他者を励ますつもりで考えてみると、別の視点や前向きな考えを持つことができます。
リフレーミングの4つの効果
リフレーミングで別の視点や新しい発想に気づくことは、以下のような効果をもたらしてくれます。
モチベーションがアップする
別の視点で捉え直す力が高まるため、ネガティブな出来事をポジティブに変換することができます。他者の言動の意味付けをマイナスではなくプラスに捉えたり、自分の短所を長所として見つめ直すことで、自信やモチベーションがアップします。
チーム力が高まる
リフレーミングは「あの人は〇〇だ」という思い込みを変えるのに有効です。短所ばかり目についていた他者の行動や性格に長所を見出せるため、コミュニケーションに変化が生まれます。人間関係が円滑になり、チームで協力し合ったり、互いの長所を活かしたりするなど、チーム力が高まるでしょう。
課題解決能力が高まる
リフレーミングではピンチをチャンスとして捉えるような思考習慣が身に付きます。「絶対無理」とこれまでは諦めていたような課題を前にしても、「どうしたら乗り越えられるだろう」と視点を切り替え、状況を切り拓く方法を見つけます。
クリエイティビティが向上する
仕事の企画やマーケティングにも、リフレーミングを活用できます。「品質はいいのに価格が高くて売り上げが伸びない」という商品があった場合、「価格の高さ」というネガティブな要素ではなく、「品質の良さ」という商品が持っている魅力に焦点を当てます。
高品質を強みにして、新しいアプローチを考えるのです。また、既存のサービスから新たなサービスを生み出すという際にも、「可能性は無限にある」とリフレーミングは斬新な企画を生み出す力につながるでしょう。
すぐできる!リフレーミングの練習方法
リフレーミングは、「もし〇〇だったら」という仮定で想像力を働かせたり、状況を解体して新たな焦点を見つけたりなどいくつかトレーニングの方法があります。今すぐにでもトレーニングできるのが、「言葉」と「時間軸」を用いたリフレーミングです。
「言葉」をリフレーミングしてみる
日常で、人々はさまざまな言葉に意味付けをしています。たとえば「あの人はのんきだな」と繰り返し言葉で意味付けをおこなうと、いつしか自分の中で「この人はこういう人だ」というイメージが固まってしまいます。この思い込みを崩すには、いつも用いている言葉を別の言葉に置き換えます。
言葉のリフレーミングの例
- のんき→おおらか、冷静
- ふざけている→陽気、場を明るくしてくれる
- 負けず嫌い→向上心が強い、一生懸命
この置き換えは、他者への思い込みだけでなく、自分への思い込みや状況の捉え方など、さまざまなシーンで活用できます。
時間軸をリフレーミングして状況を見直す
「今」を生きている私たちは、過去を振り返ったり、未来を想像したりして、出来事に意味付けを行います。この思考を利用し、状況や物事を捉え直すのが時間軸のリフレーミングです。
たとえば、とあるミスを犯した部下が報告してきます。当然、チームではミスのフォローに追われるでしょう。こうしたとき「どうしてミスをしたんだ」という怒りを、「もしこのミスの報告がもっと遅れていたら」と時間軸を未来に移してリフレーミングします。視点を変えることで、「早く報告してくれたから小さな被害で対応できた」と、部下の報告した行動自体を受け止められるようになるでしょう。
リフレーミング研修の実施方法
リフレーミングはグループワークなどを用いて社内研修に導入することもできます。以下に、実践方法と事例について紹介します。
リフレーミングをメンタルヘルス研修に導入
事象への見方を通じ、他者との認識の違いやコミュニケーションの難しさを実感し、物事には複数の見方が存在することを学ぶ研修です。物の見方を変える実践を通じ、仕事でストレスを受けたとき、自分なりの受け止め方や複数の対処法を身に着けることができます。
研修例
- たとえ話を用いた、リフレーミングの解説
- グループワークで、一つの事象に対して各々が考え方を書き、発表をしながら他者との捉え方の違いを学ぶ
- なにか出来事がおきたときの、捉え方や対処法を学ぶ
ネガティブワードをポジティブワードに変えるコーチング
言葉の置き換えは、研修で実践しやすいリフレーミングの練習法です。仕事で部下を評価する際に使う言葉を書き出し、別の表現で言い換えたり、ネガティブワードをポジティブワードに変換したりといったワークを通じ、コーチングのスキルを高めるというものです。
研修例
- 思いつくネガティブワードを書き出し、ポジティブな表現にリフレーミングする
- 最初は一人で行い、その後チームで内容を発表する
- 自分の短所と感じるネガティブワードを3つ選び、ポジティブワードに変換してみる
- グループ内でもお互いの評価をリフレーミングし合う
リフレーミングを活用してポジティブな社員の育成に取り組もう
リフレーミングを通じて、他者とのコミュニケーションを見直したり、自身の考え方のクセに気づくことができます。事実への物の見方が複数あると実感することは、物事を俯瞰して捉える力や自己認識力を向上させ、状況に適した判断を促し、問題を乗り越える力を引き出します。
リフレーミングは、いつもと違う表現を用いたり、想像力を働かせたりといった、ちょっとしたことから実践できます。繰り返しリフレーミングを取り込むことで、柔軟な思考を身に着け、課題解決力やリーダーシップ力に優れた社員を育成することができるでしょう。
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