セグメントとは?やり方や分類例、活用方法、企業事例など紹介

セグメントのイメージ画像

セグメントは、マーケティングで頻繁に用いられることばです。セグメントを有効的に活用すれば、施策の効果をより高めることができます。

本記事では、セグメント化による分類で用いる代表的な基準や、より効果を高めるための活用方法などをご紹介します。

セグメントとは

セグメントとは「分類」のほか、「区分」や「部分」を示す言葉です。ビジネスシーンでは、マーケティング施策の対象を洗い出すために「セグメント化」するというように使われます。

テレビ・新聞といった昔からある媒体に加え、インターネット、音声配信、動画配信、SNSなど、情報を得るための媒体が多様化した現代では、消費者と呼ばれる人々の要望も細分化しており、適切なセグメント化が効果のあるマーケティングに重要と考えられています。

セグメント化・セグメンテーションとは

セグメント化と同様、ある集団を一定の基準に沿って分ける行為を「セグメンテーション」と呼びます。

このとき、分類の基準となるのは、性別・年齢・年収・指向などさまざまです。たとえば、カフェの出店計画を練る場合に、立地予定地の顧客を「購買単価」別に分け商品開発のもとにするのがセグメンテーションです。こうしたセグメンテーションは、自社の商品やサービスの見込み客がいる市場を特定するのに適しているといわれます。

ターゲティングとの違い

セグメント化・セグメンテーションに似た言葉に、「ターゲティング」があります。どちらもマーケティング用語であり、適切な施策を検討するために使われるフレームワークですが、対象を絞る範囲と分析の目的に違いがあります。

セグメンテーションは、単純に市場をある一定の基準でグループ化するものです。セグメントによって、似た行動様式や指向を持った市場を見つけることができます。

一方、ターゲティングでは、セグメント化したグループの中から、アプローチする対象をさらに明確化するものです。「30代〜40代の男性(セグメント化)、そのうち、都内在住・独身・車が好きな人(ターゲティング)」というように、対象となるグループを絞ります。

なお、ターゲティングした対象について、家族構成や悩み、働き方など細かな人物想定を行うことを「ペルソナ」と呼びます。

セグメント化の目的

マーケティングにおいてセグメントを行う主な目的は冒頭にあげたように、消費者の多様化へ対応するためです。

テレビや新聞が中心だった時代は、消費者は「同じ情報」に触れる機会が多くありました。視聴率に代表される国民的歌番組などはその象徴といえます。好きな俳優は、中高生であれば〇〇、20代の女性に人気の化粧品ブランドは△△と、「大多数が支持するもの」が圧倒的に多かったのです。

しかしインターネットやSNSで人々が触れる情報量が膨れ上がった結果、その内容も細分化され、「支持するもの」や「好むもの」が分かれるようになりました。これが、消費者の多様化です。このように多様化した消費者に対しては、大多数への画一的なメッセージは大きな効果を期待できません。たとえ響くのが少人数だったとしても、より相手に合わせたメッセージを発するほうが、結果として多くの反応を得られるようになったのです。

また、セグメント化したグループへの適切な施策を可能にしているのが、発展したテクノロジーです。店舗のPOSシステムや、ウェブサイトのアクセス解析など、さまざまな行動情報がオンラインに残るようになり、それを収集・分析することが可能になりました。

多様化したニーズを、顕在化させることに成功した結果、企業はより正確に、より効果的にターゲットに施策を届ける必要があり、その一歩としてセグメンテーションが使われているのです。

セグメントの分類例

セグメントで使われる基準を「変数」と呼びます。代表的な変数には、地理的なもの、年齢や性別、行動特性などの4つがあります。

地理的変数(ジオグラフィック変数)

地理的変数(ジオグラフィック変数)とは、住んでいる地域、気候、人口密度といった地理的要素に基づいた変数をいいます。食料、衣類、家電製品など、生活習慣によって売上が変わる製品やサービスのマーケティングを考えるときに有効といわれています。

■代表的な地理的変数
世界の地域、日本の地域、日本の都道府県、人口密度、文化や生活習慣

人口動態変数(デモグラフィック変数)

人口動態変数(デモグラフィック変数)とは、年齢、性別、職業、所得といった客観的指標で人を分類できる変数をいいます。消費者のニーズと結びつきが強い変数のため、セグメンテーションにおいて最も一般的な基準といえます。

■ 代表的な人口動態変数
年齢、性別、職業、所得、最終学歴、家族構成、世帯規模

心理的変数(サイコグラフィック変数)

心理的変数(サイコグラフィック変数)とは、客観的・定量的な人口動態変数とは異なり、定性的な基準を用いた変数です。具体的には、パーソナリティやライフスタイルが当てはまります。これまでは明確にしにくい変数とされていましたが、インターネットの解析技術などの向上にともない、精度が高まった変数です。

■ 代表的な心理的変数
ライフスタイル、指向、価値観、パーソナリティ、社会階層

行動変数

行動変数とは、行動パターンや反応などでセグメント化する変数です。心理的変数と同様に、SNSやEコマースの発展と合わせて精度が高められてきました。

■ 代表的な行動変数
使用する頻度、使用する時間帯、使用する場面、知識の有無、利用頻度

セグメント化に重要な「4つのRの原則」 

事業のターゲットとするのにふさわしいセグメントを見極める際には、「Rank」「Realistic」「Reach」「Response」の4つの要素を満たすことが重要とされています。 

この「4つのRの原則」について詳しく見ていきましょう。 

Rank(優先順位) 

まずは、複数のセグメントの優先順位を検討しましょう。優先順位は以下のような要素から判断できます。 

  • そのセグメントのニーズは何か 
  • そのセグメントへのアプローチにどれくらいの費用・時間・労力がかかるか 
  • 競合他社はそのセグメントにアプローチしているか 
  • 自社の強みがそのセグメントへのアプローチに活かせるか 

ただし、「こうであれば優先順位が高い」という正解はありません。 

たとえば競合他社が参入しているセグメントについては、「競合が参入し成功しているから狙い目」と考えることもできますし、「競合の寡占状態だから優先順位は高くない」と考えることもできるでしょう。 

よって、優先順位はさまざまな観点から検討する必要があります。 

Realistic(有効規模) 

「そのセグメントの市場規模は、十分な売上を見込める大きさか」という有効規模を検討することも重要です。 

たとえば自社の強みを活かすことができ、なおかつ競合他社がアプローチしていないセグメントは一見ブルーオーシャンで勝率が高いように思えます。 

しかし、市場規模が小さければたとえそのセグメントへのアプローチが成功したとしても、大きな利益は見込めません。 

ビジネスとして成立する程度の利益が見込めるかどうかも、現実的に考えてみましょう。 

Reach(到達可能性) 

到達可能性とは、「自社の商品やサービスをそのセグメントに届けられるか」ということです。 

たとえば「海外在住」で絞ったセグメントの場合、自社の商品に対するニーズがあっても商品発送のために余分な手間や費用がかかります。 

そうしたコストがあることを踏まえてもなお、アプローチする価値はあるのか検討してみる必要があるでしょう。 

Response(測定可能性) 

「そのセグメントからの反応を確認できるか」といった測定可能性の検討は、マーケティング施策をブラッシュアップしより大きな成功につなげるために欠かせません。 

たとえばECサイトを使って自社商品を販売すれば、ユーザーがどの商品を見ていたのか追跡できます。実際に購入された商品だけでなく「関心度は高いが購入まで至らないことが多い商品」「商品ページでよく見られている部分」「ECサイトへの流入元」などもわかるため、商品改良やECサイト運営に活かせるでしょう。 

よって、ECサイトをよく使うセグメントをターゲットにすると、効率よく利益を伸ばしていけると考えられます。 

セグメント化の効果的な使い方

セグメントは、企業データベースやSFA、CRMといった各種マーケティングツールで行えます。セグメント化を効果的にマーケティングに活用するのは、「変数の掛け合わせ」に加え、「ターゲティング」「ポジショニング」が重要です。

変数を掛け合わせてセグメントする

セグメントを行う場合、これらの変数をただ用いればいいわけではなく、自社の戦略や商品に合わせて、かけ合わせることが大切です。「誰が」商品を利用するのかに加え、「なぜ」利用するのか、「どのようなときに」利用するのか、「いくらなら」利用するのか。こうした点を明確にしていくのが、セグメンテーションです。

たとえば、あるレトルト商品のマーケティングでは、まずセグメントする対象を洗い出すため、どのような人々が購入しているのかリサーチを行います。その結果「一人暮らし」が大きな購入層として判明したら、「一人暮らしの世帯の性別」「そのうち購入頻度が月〇回以上」というように、自社にとって有力な顧客層をセグメンテーションしていきます。

自社にとって優先度の高い市場をターゲティングする

ターゲティングは、セグメンテーションした市場からさらに細かい特性で対象となる消費者を絞り込みます。「一人暮らしの女性」「購入頻度が月2回以上」が、自社にとって有力な見込み顧客となった場合、「年齢・何のために買うのか・購入経路」など、自社が求める売り上げが見込める顧客層を洗い出しましょう。

どうなりたいかのポジショニングを忘れない

マーケティングの設計には、ターゲットを明確にした上で、自社商品やサービスが、ターゲットにとってどのような位置づけとなるかを決めなければいけません。これを、ポジショニングといいます。ポジショニングは、競合他社との比較や自社の強みなど、市場分析を行った上で、自社の目指すブランドイメージなどを設計します。

セグメントの使い方

セグメントを行うことで、以下のようにマーケティング活動で活用できます。

セグメントに合った広告が配信できる

インターネット上で検索キーワードに基づいて表示される「リスティング広告」や、閲覧履歴などに基づき表示される「ディスプレイ広告」は、セグメントが活用できるマーケティング施策です。セグメントを行えば、購買意欲の高い層に関連した検索キーワードや、共通した行動履歴を持つ層に、効果的にアピールすることができます。

新規顧客のニーズが把握できる

セグメントとは、市場を細分化することです。細分化によって、実はアプローチしていたと思っていた市場に、まだサービスや商品が浸透していない潜在層を発見することができます。

顧客への販促

顧客の行動や特性を適切に把握することで、顧客が必要としている情報を適切なタイミングで届けることが可能になります。またセグメントを行うことで、オンラインマーケティングで活用されるチャットボットといったツールも有効的に利用できるでしょう。

確度の高いカスタマージャーニーが作成できる

セグメントにより、見込み客のニーズを適切に把握し、いつ・どんなタイミングで・何をしたらいいのか、カスタマージャーニーが明確になります。オンラインやオフラインなど、さまざまなコミュニケーションを組み合わせながら、顧客との信頼関係を醸成し購買へとつなげます。

セグメントをマーケティングで活用するためのSTP分析とは 

単にセグメンテーションするだけでは効果的なマーケティングはできません。セグメンテーションだけでなくターゲティング、ポジショニングも行うことで、実践に活かせる分析となるのです。 

このようにセグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングを合わせた分析を、それぞれの頭文字をとって「STP分析」といいます。 

STP分析は以下の手順で行います。 

  1. 目的の明確化:売上や受注数などの目標を明確にする
  2. セグメンテーション:4つの変数や4つのRの原則などをもとに市場を区分する
  3. ターゲティング:どのセグメントをターゲットにするか検討する
  4. ポジショニング:選んだ市場において競合他社とどう差別化するか、どうブランディングするかなどを考える
  5. マーケティング施策を練る:ここまでの分析をもとに、どのようにマーケティングするか考える

STP分析をすると、自社商品やサービスの購入につながりやすい層を見極められるだけでなく、適切なマーケティング施策も練りやすくなります。目標達成に向け効率的に動けるでしょう。 

セグメントを活用した企業事例

セグメントの方法がわかったところで、実際にセグメントを活用した企業の事例も紹介します。セグメンテーションを実践に活かすイメージが、より具体的に浮かぶようになるでしょう。 

資生堂

セグメントを活用し事業成長につなげた事例に、資生堂があります。

資生堂は、長年「花椿CLUB」という会員制度を運営していました。そこに2012年「ワタシプラス」というウェブサービスをリリース。ワタシプラスでオンラインの消費者行動履歴を集めました。花椿CLUBでは店舗などオフラインの消費者行動履歴を集める。こうして得た顧客データをもとに、美容に関する意識を「モーメント」というグループにセグメント化したのです。

「ウキウキしている」「どんよりしている」といった、ユーザーの「モーメント」に合わせ、最適な内容やタイミング、タッチポイントとなるデバイスを掛け合わせてマーケティングを展開。それにより、消費者との信頼関係を築き、商品購入へとつなげています。

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TREASURE DATA

パナソニック 

パナソニックは、セグメンテーションによって2006年頃から法人向けパソコンの売上を大きく伸ばしました。 

当時は法人だけでなく個人でもパソコンを利用する人が増え、パソコンに求められる機能が多様化。パソコンを販売する各社はスペックや価格で競い合っていました。 

そうした中でパソコン事業が危うくなったパナソニックは、あえて外回り営業向けに特化したパソコン「レッツノート」を販売することにしたのです。 

「外回り営業」というセグメントに必要なスペックを厳選し、軽さ・長時間バッテリー・セキュリティなどに注力したところ売上が順調に伸び、2019年度には13インチ未満のモバイルノートパソコンとしてのシェア率が75%になりました。 

Apple 

パナソニックと同じくパソコン業界でセグメントを活かし売上を伸ばしたのが、Appleです。 

パソコン各社が機能性を競い合う中、Appleは「パソコン利用者の中にはデザイン性を重視する人もいる」という点に目をつけました。 

そこで、一定のスペックは備えた上でスタイリッシュかつデザイン性のあるパソコンを販売した結果、現在では世界中にAppleファンとも言えるユーザーを多く抱えています。 

ユニクロ 

セグメンテーションを活かした商品開発・マーケティングが主流になる中、あえて大雑把なセグメンテーションで汎用性の高い商品を売り出したのがユニクロです。 

アパレル業界は、特に細かいセグメンテーションを行う傾向にあります。それに対してユニクロは、女性・男性・子供といったごく大まかなセグメンテーションをもとに服やグッズを開発。 

デザインはシンプルで汎用性の高いものでありながら、カラーバリエーションを豊富にすることで個々人の好みにも合わせられるようにしました。 

その結果、現在では幅広い層から「日常的に気張らず着られる服」として愛されています。 

セグメントを利益アップに上手く活用しよう

消費者の指向やマーケティングの施策が多様化する現代では、ターゲット層を見極めるセグメントは欠かせないものです。セグメントに用いる変数や、効果的なマーケティングへの活かし方など基礎を知ることで、より確度の高い施策を実行することができるでしょう。

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