フランチャイズは、安定して独立開業を目指せる方法のひとつです。事業開発や経営が未経験でも、フランチャイズによって大手企業のブランド力やノウハウを活用することで、成功率の高い店舗経営が期待できます。ただし、フランチャイズ契約にはデメリットや注意点も存在するため、正しい知識を身に付けることが大切です。
本記事では、フランチャイズの仕組みやメリット・デメリットといった基礎知識にはじまり、フランチャイズ契約の手順や注意点、実際の企業事例なども紹介します。
フランチャイズとは
フランチャイズとは、本部が加盟店に対し商号や商標の使用許可とともにノウハウを供与し、一定地域内での独占販売権を与えて、その見返りに特約料を徴収する経営方法です。正式には「フランチャイズチェーン」といい、ほかにも「フランチャイズシステム」「フランチャイズビジネス」という言い方もあります。
フランチャイズによる経営はアメリカで開発され、日本に普及しました。もとは「franchisor=特権を与える者」という英単語で、日本ではプロ野球やサッカーの本拠地や興行権を指す言葉としても使われます。フランチャイズが活用される業種は幅広く、ファストフード店やファミリーレストランといった外食産業を中心に、コンビニエンスストア、洋菓子店、小売店のほか、学習塾や住宅建築にも派生しています。
フランチャイズ契約の仕組み
フランチャイズ契約では、本部は加盟店に対して以下の特権を付与します。
- 商標、ロゴやマーク、チェーン名称を使用する権利
- 本部が開発した商品やサービス、情報、販売に関するノウハウを利用する権利
- 本部が加盟店に対して行う指導や援助を受ける権利
これらの権利はパッケージングされて加盟店に提供されるため「フランチャイズパッケージ」と呼ばれます。
このフランチャイズパッケージを利用するには、加盟店は本部に一定の対価を支払わなければいけません。その対価のことを「ロイヤリティ」といいます。ロイヤリティのルールは本部によって様々ですが、多くの場合は売上に対して○%という形で割合が定められています。
フランチャイズの目的
なぜ本部は店舗を直営せず、フランチャイズ展開を採用するのでしょうか。最も大きな目的は、スピーディに事業拡大を図ることです。
フランチャイズによって加盟店に店舗経営を任せることで、複数店舗の開店を同時に進めることができます。開店スピードを早めて店舗数を増やすと、企業やブランドの認知度が高まるだけでなく、市場や地域内を独占できる可能性も高まります。競争力が強まることで、業界内でより優位に立つことができるでしょう。
また本部は店舗経営にかかるコストを削減できますので、その分を商品開発や研究、マーケティングにあてることができます。製品力を高めることに注力でき、その分さらに競争力の強化につながります。直営で店舗を増やす資金力がない企業でも、コア部分に注力しながら事業拡大をはかることができるため、フランチャイズが活用されているのです。
フランチャイズのメリット
フランチャイズによってメリットを得るのは本部だけではありません。加盟店にとっての代表的なメリットを紹介します。
ノウハウがなくても開業できる
フランチャイズでは製品やブランドだけでなく、販売やマーケティングのノウハウも供与されます。ほかにも、販売を軌道に乗せるために必要な指導や支援を受けることができます。そのため、経営や開業をやったことがない未経験者でも、安定した事業を展開することができます。個人で一から家業するよりも、事業の成功率を高めることができるのです。
質の高い商品を安定して販売できる
フランチャイズを利用することによって、すでにブランドイメージが確立された高品質の商品を、安定して取り扱えることも魅力です。一から自分で開業する場合は、商品や原料の仕入れ先から開拓する必要がありますが、フランチャイズでは仕入れのルートや品数もすでに確保された状態から事業をスタートできます。
ある程度の集客を見込める
ブランド力がある商品を扱えるため、マーケティングや広告に費用をかけなくても集客を見込むことができます。コンビニや牛丼店が代表例ですが、近所に有名店が開業したら、とりあえず足を運ぶという人は少なくないはずです。通常の店舗経営では集客に多くのコストを割く必要がありますが、フランチャイズならテレビCMや新聞広告の費用は本部の負担となります。
店舗運営に専念できる
ほかにも、加盟店は財務や会計に関する経営指導、開発物件の立地調査なども本部に依頼することができます。店舗を経営する上で発生するあらゆる手間や障壁を本部がカバーしてくれるため、加盟店は店舗運営に注力できるのです。
フランチャイズのデメリット
一方で、フランチャイズ契約をした加盟店は制約が課せられる部分もあります。フランチャイズにおけるデメリットを紹介します。
本部の方針に従わなければならない
本部のパッケージングを利用できることはメリットでもある一方で、経営の自由度が下がるというデメリットでもあります。店舗運営のルールや取扱商品、提供するサービス、販売価格など、店舗運営の安定やブランドイメージ保守を理由として様々な規定が設けられています。そのため、事業アイデアがあっても、自分の一存で実施することはできません。
契約期間が存在する
フランチャイズ契約は、契約期間が設けてあることがほとんどです。経営が難航して店じまいすることになった場合、契約期間が残っていると違約金が発生する可能性があります。
さらに、「競合避止義務」という契約後の義務が付帯していることも一般的です。これは本部のノウハウが流出することを防ぐためのもので、一定期間同業種での出店を禁止されます。
ロイヤリティを支払う必要がある
前述の通り、加盟店は本部のパッケージを利用する対価として、売上から一定の割合でロイヤリティを支払います。経営が難航しているときでも、ロイヤリティは必ず支払う必要があります。ロイヤリティは適正な対価ではありますが、割合を高く設定している企業だと、ロイヤリティによって経営が苦しくなってしまうこともあります。
イメージダウンの影響を受ける
大手企業のブランド力を利用できることはメリットですが、本部のブランド力低下によって思わぬ影響を受けることもあります。例えば、外食チェーン店やコンビニの従業員がSNSに不適切な書き込みをして炎上する事例が何度もニュースになっています。どこかの店舗が不祥事を起こすと、ブランド全体のイメージダウンにつながり、何もしていない自分の店まで影響を受けることがあるのです。
フランチャイズの開業手順
フランチャイズで開業する際の手順を解説します。
1.加盟する本部を決定
まずは、参入するフランチャイズ本部を決定します。選び方のポイントとしては、以下のような点が挙げられます。
- 確かなブランド力があること
- 教育やサポートが充実していること
- パッケージ内容の事前説明がしっかりしていること
- フランチャイズオーナーが多く、人気があること
また、単に人気や競争力だけではなく、自分が好きな業界や製品であることも大切です。フランチャイズで本部の力を借りるとはいえ、自分が経営者として運営する事業です。興味ややりがいを感じられる仕事を選ぶようにしましょう。
2.本部訪問や説明会への参加
加盟する本部に目星をつけたら、本部訪問やフランチャイズオーナー希望者向けの説明会に参加して情報取集を行います。契約内容や支援体制はもちろんのこと、市場の規模感や事業の収益性など、本当に参入価値があるのか確認しましょう。
3.直営店、加盟店訪問
直営店や加盟店を訪問して、フランチャイズ店舗の実態を調査することも大切です。本部の提示する条件や対応を鵜呑みにして契約を焦ってはいけません。提示した条件に嘘はないか、デメリットを隠していないか、既存店舗のオーナーの意見を聞いて、客観的に判断するようにします。
4.物件や立地、経営計画の決定
参入の意志が固まってきたら、店舗の出店計画に移っていきます。立地調査や経営計画は本部の力を借りることもできますが、任せきりにするのは禁物です。周辺住民の属性や競合店舗の有無など、自分でも確認を取るようにしましょう。
5.資金調達
出店にどのくらいの費用が必要か見えてきたら、契約に向けて資金を調達します。銀行から借り入れする場合は、他加盟店の実績を参考にしながら事業計画書を作成します。仮入れ以外にも、助成金や補助金を活用できることもあります。
6.フランチャイズ契約
出店する店舗物件が確定したら、いよいよフランチャイズ契約です。契約書は本部から事前に送付され、一定の熟慮期間を経てから契約に移るのが一般的です。契約内容に不明な点はないか、自分でもしっかり読み込むようにしましょう。契約では、加盟金や保証金の支払いが発生しますので、忘れないようにしましょう。
7.開業準備
本部の設定した開業マニュアルに従って、開業準備を進めていきます。店舗の仕様は本部の定める規定に沿っている必要がありますので、指導員と連携を取りながら進めていきましょう。
フランチャイズの注意点
フランチャイズで店舗を出店する場合の注意点を紹介します。
必要な情報が開示されているか
本部は、中小小売商業振興法や独占禁止法に基づいて、契約において必要な情報を開示することを義務付けられています。
開示すべき内容は、本部の企業情報や加盟店舗数の推移、契約終了後の義務、ロイヤリティの算出方法など、加盟店が不利にならないために必要な情報が網羅されています。これらの項目を説明しなかったり、契約を急がせたりする場合は、悪質な業者である可能性も。開示項目については、自分が理解できるまで、納得のいく説明を求めるようにしましょう。
ロイヤリティは適切な割合か
ロイヤリティは定額制ではなく、「売上の○%」や「総利益の○%」という形で算出されることが一般的です。売上の不調やコスト増大によって経営が赤字であったとしても、ロイヤリティを支払わなければならない場合があります。
またロイヤリティの算出方法についても契約前に確認するようにしましょう。コンビニチェーンでは、廃棄ロスや商品紛失を無かったものとして取り扱う契約もあり、加盟店にとって不利になってしまいますので、注意が必要です。
収益予測は適切か
本部からの事前説明で聞いていた売上予測や経費予測が実態と大きく異なり、期待していた利益を得られない可能性があります。本部は過去の売上平均値や市場変動の予測などから予測値を算出していますが、その通りの売上を得られるとは限りません。説明内容をそのまま受け取らず、既存の加盟店オーナーから話を聞いたり、競合他社と比較したりして、予測値の妥当性を確かめるようにしましょう。
フランチャイズの事例
最後に、フランチャイズで経営されており、近年急激に店舗数を増やしている「コメダ珈琲」の事例を紹介しましょう。
コメダ珈琲は名古屋発祥のカフェですが、今では全都道府県に900以上の店舗があります。チェーン店ながら、昔からある純喫茶の雰囲気を残しているところが人気の秘訣です。落ち着いた雰囲気の中、ゆったりとしたソファ席でくつろげるところが、他のチェーンカフェにはない魅力となっています。
コメダ珈琲のフランチャイズの特徴は、ロイヤリティが座席数に応じた定額制であるところです。他のカフェよりも顧客属性が幅広いため集客がしやすく、オーナーの経営努力がそのまま利益増加につながります。また独立支援制度を用意しており、他店で正社員として安定した給与をもらいながら独立準備を進められる点も魅力です。
本部のサポートを受けながら経営者としての経験や知識を身に付けられるため、未経験者でも安心して開業を目指すことができます。安定した売り上げとサポートが期待できることから加盟店を増やし、事業を全国展開することに成功しています。
NIKKEI MESSE:
フランチャイズの仕組みを事業展開に活かそう
フランチャイズは、本部と加盟店の双方にとってメリットのある経営モデルです。本部にとってはスピーディに事業拡大を進められ、加盟店にとってはノウハウの提供を受けて安定した開業が可能になります。
実際、外食産業を中心にフランチャイズを活用して事業の全国展開に成功した企業は多くあります。まずはフランチャイズビジネスのモデルやメリット・デメリットについて理解を深め、自社事業に活かす方法を検討してみましょう。
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