会議などでファシリテーションの重要性が指摘されることが増え、いかにファシリテーションを円滑に行うかに注目する人も少なくないでしょう。
ファシリテーションは議論の質をあげ、より有意義な結論へと導くための手法であると理解しているものの、実際にどのように行うのがよいのかわからない方も少なくありません。
本記事では、ファシリテーションの意味、必要とされる場面、メリット・デメリット、上手な方法、必要なスキル、流れ、成功させるコツなど紹介します。
ファシリテーションとは
ファシリテーションとは、会社や学校など組織の会議などで、議論が円滑に進むよう促すことをいいます。ファシリテーションを実施する人のことをファシリテーターと呼び、ファシリテーターが会議などの司会・進行をつとめることでファシリテーションを行うのです。
ファシリテーターはただ単に会議を設定し時間を取り決めて進行を行うのではなく、参加メンバーの意見を引き出すことや、理解を促し合意へと導く役割を負います。
そもそもファシリテーションは、1960年代にアメリカで提唱された手法で、教育・ビジネス上の効率的に学ぶこと目的としたり、円滑に会議を進めたりするために提唱され、徐々に深められてきました。2000年代に日本でもビジネス上活発にファシリテーションが使用されるようになり、現在では一般的な手法となりました。
ファシリテーションの重要性
ファシリテーションは、企業がビジネスを創造し継続的に求められる企業として運営していくために重要な手法です。特に日本では課題として提起されやすいことに、「会議に時間を多くとられるが結論が出ない」というムダな会議が挙げられます。
企業が継続的に経営していくためには、社員が意見を出し合い新たなビジネスの種となる価値やアイデアを出し合い、方向性を定め、実行・振り返りを繰り返すことが大切です。
そのために、円滑な会議を実現できるファシリテーションの手法や能力は企業にとって重要な役割を果たすのです。
ファシリテーションが必要とされる場面
それでは、実際にビジネスでファシリテーションが必要とされる場面にはどのようなケースがあるのでしょうか。ここでは、ファシリテーションが必要とされる場面を4つ紹介します。
社内研修
新入社員研修や既存社員が能力をアップさせるための研修など、社員研修でもファシリテーションは役立ちます。ファシリテーターがいることで、社員は研修内容を習得しやすくなり、質問をしやすい雰囲気を形成するなど、学びを深めることができるでしょう。
特に新入社員は緊張して研修に集中しきれなかったり、意見をだしにくかったりするので、ファシリテーションが大切な役割を果たします。
会議
社内では毎日さまざまな会議が実施されますが、そこでもファシリテーションは欠かせません。会議の目的はそれぞれですが、報告内容の共有、仕事の振り分け決め、進捗状況の確認、新規事業の提案などです。
ここでも、ただ単に司会進行役を立てるよりも、ファシリテーションを実施するという意図を持って会議に臨む方が、成果が出やすいでしょう。
オフサイトミーティング
オフサイトミーティングとは、職場から離れて遊楽地など非日常の空間で行う会議のことです。毎日使用する会議室から離れ、新たな空間で話し合うことで独創的なアイデアが出やすいミーティング方法だと言われています。
ブレインストーミング
ブレインストーミングは、自由にアイデアを出し合うことで、今までにない課題解決法を探るのが特徴です。アイデアの質よりも量が重視されることから、参加が気兼ねなく発言できる雰囲気が欠かせず、ファシリテーターの役割も大きくなっています。
ファシリテーションのメリット
ここではファシリテーションのメリット主に3つを紹介します。
話しやすい場になる
ファシリテーションのメリットのひとつは参加者が話しやすい点にあります。ファシリテーターが、中立の立場を貫きながら参加者が話しやすい雰囲気を作ることで、参加者の意見を引き出します。
特に役職者などが参加する会議では、参加者が発言を躊躇ってしまうケースもあります。しかし、ファシリテーションでれば、普通の会議に比べて役職関係なく発言しやすいでしょう。
情報を上手く整理できる
ファシリテーションのメリットは情報を整理できる点にもあります。ファシリテーションの場ではファシリテーターが参加者の発言やアイデアを整理し、会議中に出た情報をホワイトボードに書き込んで可視化したり、各情報をグループ化して分析したりします。
また、論点にズレが生じた際の軌道修正や、参加者が共通の解釈をしているかの確認なども、情報を整理する中で適宜行ってくれるため、情報が整理されやすいというメリットがあるでしょう。
結論が導かれやすい
ファシリテーションの場では、整理した情報をもとに会議を振り返り、制限時間内に結論を導きます。ファシリテーターは、全員が結論を理解しているのか、きちんと納得しているのかも確認しながら議論を結論へと導いてくれます。
結論まで導いたら、参加者に今後のアクションを認識させるので、結論が導かれた後のアクションにもつながりやすいメリットがあるでしょう。
ファシリテーションのデメリット
ここではファシリテーションのデメリットを3つ紹介します。
傾聴できないメンバーがいる可能性
ファシリテーションは公正な立場で相違する意見を聞き入れ、話しやすい雰囲気をつくることで議論を活性化させる働きかけのことですが、それが難しい場合もあるでしょう。参加者のファシリテーションへの理解や、人と話をする際の態度については性格が表れるので、もちろん傾聴が難しいメンバーがいる可能性もあります。
自分の意見が正しいと主張したいがために、相手の意見を否定する人がでてくるなどです。人によってファシリテーションのメリットが享受できない可能性がある点がデメリットと言えるでしょう。
バックグラウンドが結果に影響しやすい
ファシリテーターと参加者とのバックグラウンドが、ファシリテーションの良し悪しに影響を及ぼす点もデメリットです。ファシリテーションはファシリテーターの促しによって議論を発展させますが、参加者の中によく知らないメンバーがいると議論を引き出すことが難しいです。
ファシリテーターと参加者との関係性が結果に影響しやすいという難点があります。
実践の難易度が高い
実践の難易度が高い点もファシリテーションのデメリットです。
相手の意見を引き出し受け止め議論を盛り立て、周囲の納得を引き出しながら結論へと導く手法自体は理解しているものの、実際に実行しようとするのにはかなりのセンスと経験が必要とされます。議論を盛り立てようとしても、相手の意見は受け止める中で意見交換がストップしてしまったり、議論が広がりすぎて収集がつかなくなったりしやすいです。
またそのように活発に議論された内容から、納得度の高い結論を導き出すのにも論理的思考と話す力が必要となり、実践にはスキルが必要な点もデメリットでしょう。
上手なファシリテーションとは
上手なファシリテーションとは、内面的・外面的プロセスの両方を引き出すことです。
外面的なプロセスとはファシリテーションの段取り、進行、プログラムといったファシリテーションを円滑に進めるための外側で発生するプロセスのことです。内面的プロセスとはメンバー一人ひとり考えや思考的プロセス、感情、心理的なプロセスのことです。
内・外面的プロセスの両者に関わって、メンバー同士の相互作用を促進することが上手なファシリテーションと言えるでしょう。
参考:日本ファシリテーション協会「ファシリテーションとは?」
ファシリテーションに必要な4つのスキル
参加者に気を配りながら、情報整理や時間管理を行うファシリテーターには、幅広いスキルが必要です。ここでは、その中でも重要となる4つのスキルについて紹介していきます。
傾聴能力
参加者が話しやすい雰囲気を作るには、傾聴能力が不可欠です。ただ聞くのではなく、次のような”聴く能力”が求められます。
- 発言を最後まで聞く
- 相手の方に体を向け、目を合わせる
- 声のトーンや表情などを合わせる
- 頷いたり相槌を打ったりする
- 発言の背景にあるものまで理解しようとする
- 発言を言い換えて要約し、話に耳を傾けていることを示す
「あなたの話を聞いていますよ」と姿勢や反応で示すことで、発言者は安心感を覚えます。そしてそれを見た他の参加者も、安心して発言しやすくなります。話しやすさの好循環を作るためには、上記を自然に行える能力が必要です。
観察力
参加者の関係性、進行中の変化を見る観察力も必要です。様子を観察することで、場の雰囲気の調整、結論へのサポートがしやすくなります。
例えば、次のようなポイントを意識するだけでも、「役職者がいて話しにくいのかもしれない」「対立意見に少し感情的になりかけている」など、得られる情報があります。
- 視線や姿勢
- 声のトーンや表情の明るさ
- 発言のリズムやテンポ
- 使用する言葉や言い回し
ファシリテーターに観察力がなければ、積極的な発言を得られなかったり、参加者が対立してしまったりする可能性もゼロではありません。参加者の会話や、ちょっとした反応を見逃さないスキルが求められます。
質問する力
発言の意図を汲み取るためにも、議題に沿った結論へ導くためにも、質問する力が欠かせません。例えば次のような、内容を掘り下げたり、認識を擦り合わせたりする質問を、上手く使い分ける必要があります。
- それはどうしてでしょうか?
- こういった可能性はありそうですか?
- どんなことが例に挙げられますか?
- それはこういうことですか?
また、答え方が決まっていないオープンクエスチョン、答えがYESかNOに絞られているクローズドクエスチョンを意識的に行えれば、より会議を進行しやすくなります。
整理する力
参加者のアイデアや、会議で出た情報を整理する力も必要です。適切に整理できなければ、折角のアイデアが無駄になってしまったり、結論へのミスリードにつながってしまったりします。そのため、次のような点を踏まえた情報整理が重要です。
- 箇条書きや図解などで可視化する
- アイデアや意見は漠然とした言葉でまとめずに明確にする
- 議論の全体像を掴み、各アイデアの関係性をつなげる
- 視点をズラして、多角的に考える
ファシリテーションの流れ
ファシリテーションはまず、会議など開催するまでの段取りが大切です。ファシリテーターは段取りの中で参加者に会議の目的やファシリテーションの意図を事前に伝えておきましょう。制限時間を基に、プログラムの流れと進行を想定して準備しておき、実際の会議を開催。目的の設定、円滑なファシリテーションを目指すための心持ちを参加者に改めて説明します。
議論がはじまると、ファシリテーターは参加者の意見が出にくい場合にはうまく質問をして引き出し、逆に議論が盛り上がり広がりすぎている場合は、整理してメンバーに論点を示します。傾聴に努めて、相手や場の空気を観察しながら質問をし、一人ひとりの意見を整理して全員に共有、論理的思考で必要な論点を提示し深めていくのです。
結論へと向かいはじめたら、結論を出します。結論を導くための基準を問いかけ、最適な結論を導きます。ファシリテーションの場はだいたいに制限時間や会議の時間を設定して実施するので、タイムマネジメントに留意が必要です。
このようにファシリテーションは、事前準備から実施まで、ファシリテーターが参加者とコミュニケーションを取り上手に流れの中で参加者の意見を上手に引き出すかという流れになります。
ファシリテーションを成功させる3つのコツ
ファシリテーターが会議を上手く進めるためのコツを、ここでは3つ紹介します。すぐに取り入れられるものばかりなので、ぜひ積極的に試してください。
空間を工夫する
机と椅子の配置は、意識や発言のしやすさに変化をもたらします。そのため、同じ部屋で会議をする場合であっても、配置には気を配りましょう。
例えば会議でよく見掛ける「ロの字に机を配置するスタイル」では、上座が明確、対辺の参加者がやや対立しやすいといった傾向がありします。しかし、「多角形を描くように机を配置するスタイル」では、平等な印象が拡がり、全体的に発言もしやすくなります。
その他にも、照明やBGM、ホワイトボードの位置を変えるだけでも参加者の意識は変わってきます。小さな配慮や工夫が、会議を有意義にするコツだと覚えておきましょう。
グループサイズを小さくする
会議の目的や状況に合わせて、グループを小さくするのもコツです。なぜなら、グループの人数が多くなるほど、積極的に発言する人とそうでない人との差が大きくなってしまうためです。
例えば、グループの人数を2人にすれば、必ず全員が発言するようになります。そして2人で話した内容を全体に共有してもらえば、全員分のアイデアを拾い上げられます。
グループが小さければアイデアの種類が少なくなったり、意見交換の幅が狭まったりする可能性もありますが、参加者の発言がなければ会議の進行が滞りかねません。状況に合わせて臨機応変にグループサイズを調整してみると良いでしょう。
板書をする
ホワイトボードなどへの板書も、ファシリテーションを上手く進めるには重要です。参加者の発言を残すことで、情報整理がしやすくなったり、結論へ導きやすくなったりします。その他にも、板書されたそれぞれの意見に意識が向きやすくなり、「新しいアイデアの切り口に気付ける」「全員の意見が均等に扱われている印象を与えられる」といったメリットも得られます。
なお、参加者の発言はそのまま板書するのがポイントです。要約してしまうと、参加者の意図とズレが生じる可能性があるため注意しましょう。
また、板書する時間がどうしても惜しいという場合は、ブレインストーミングツール、マインドマップツール、エクセルやワードなどを活用すると良いでしょう。PCで入力し、その画面をプロジェクターで映し出せば、板書の代わりになります。
ファシリテーションを活用して新たなアイデアを創出しよう
ファシリテーションは人同士の相互作用を引き出し、議論を活発化させ、よりよい結論を導き出すための促しです。ファシリテーションを行うファシリテーターにはセンスや経験が必要ですが、ファシリテーションが上手くいった場合にはビジネスへの貢献が期待できます。
「効果的な実践は難易度が高い」という認識を持って社員のファシリテーション力向上を目指しつつ、新たなアイデアの創出に役立てましょう。
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