ビジネスの現場で頻繁に使用される「指標」という言葉。
改めて本来の意味や、「目標」との意味の違いについて把握しておくと、実際にビジネス上で指標を活用する場合に役立ちます。
指標を上手く活用すれば仕事のパフォーマンスがアップする可能性があります。そのためには具体的な事例も含めて、指標について深く理解することが大切です。
本記事では、最初に指標の概念を説明したのち、指標(KPI)と共におさえたいKGIとOKRの意味、指標の設定方法、企業事例などを解説していきます。
指標とは
指標(英語でindexやpointer)とは、状況を判断したり、物事を評価したりする際に基準となる目印です。客観的な計測データによって、環境の変化や程度を見定めるために使用されます。ほかにも、計算尺において目盛りを読むための付属具といった意味もあります。
目標との違い
指標に似た言葉に目標があります。目標とは、「物事を達成したり、ある場所まで辿り着いたりするための目印」です。ほかにも、射撃や攻撃におけるターゲットや、身体的運動において目指す最終的な結果などの意味があります。
指標の「判断基準となるもの」に対して、目標は「ゴールとなるもの」という違いがあります。
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指針との違い
指標の類似用語には指針もあります。指針とは、「物事を進める際に取るべき方向を示すもの」です。ほかに時計やコンパスなどの針を表すこともあります。
指標は「物事を評価する際の目印」なので、指針とは意味が異なります。
経済指標とは
経済指標とは、経済活動の状態を理解するヒントとなる統計的な数字です。物価指数、株価指数、生産指数、金外貨保有高などがあります。
指標生物とは
指標生物とは、主に「環境条件に支配されているかどうか」の度合いを示す生物です。たとえば、「生物Aの生育状態によって、そのエリアの環境を推定できる」といった場合、生物Aは指標生物となりますし、「生物Bを分析すれば、放射性物質の濃度や変化を推定できる」といった場合、生物Bは指標生物です。
なお、環境の指標となる植物は指標植物と呼ばれています。
ビジネスにおける指標とは
ビジネスにおいて使用される指標はKPI(Key Performance Indicator)といわれます。KPIは「重要目標達成指標」などと日本語に訳される言葉であり、「ビジネスの目標をどのくらい達成できたのか」を評価するための指標です。後述するKGIという最終的な目標に到達するための過程であり、中間的な指標ともいえます。
KPIは具体的な数値を用いて設定します。たとえば、オンラインマーケティングであれば、「自社ホームページからの問い合わせを12%増やす」「Twitterのフォロワーを1万4,000人増やす」などの指標です。KPI はKGIを意識した設定が必要であり、「KPIを達成することでKGIに近付くかどうか」といった視点が大切になります。そのために必要な施策を、KGIから逆算して設定します。
指標(KPI)と共におさえたいKGIとOKR
KGI(Key Goal Indicator)とは、「経営目標達成指標」などと日本語に訳される言葉であり、「ビジネスの目標を達成するうえで、何をゴールとするのか」を定める指標です。
KPI同様に具体的な数値設定が大切となります。オンラインマーケティングであれば、「今期の自社ホームページの売上目標として2,500万円を達成する」などの設定です。いつの時点までに、どのくらいの数字を達成するのかを明確にします。
OKR(Objective and Key Result)とは、「達成したい目標および達成のための主な成果」などと日本語に訳される言葉です。アメリカの企業が採用したのち、日本でもグローバルな成長企業を中心に導入され始めたことで知られています。
KPIが「最終目標に対する現在状況」を測定する指標であることに対して、OKRは「最終目標に至るプロセスの共有や可視化に重点を置いたフレームワーク」という違いがあります。KPIよりも柔軟性が高く、会社、部署、個人の目標と連動させやすいという特徴もあります。
指標(KPI)の設定方法
ここでは指標(KPI)を設定する手順を紹介します。具体的な手順をおさえることで、自社でKPIを導入する際のイメージにつながるでしょう。
業務プロセスの分析
企業ごとに業務フローや体制は異なりますし、業種や職種によってもKPIは異なります。そのため、最初に自社の業務プロセスを見直すことが大切です。「どのような業務項目があり、どのような流れで仕事を行っているのか」を分析することにより、適切なKPIを設定しやすくなります。
KGIの設定
KPIを設定する前に、最終的な目標であるKGIを明確化します。その際は、「自社がどのような物事を達成したいのか?」を考えたうえで、具体的な数値を設定します。売上高であれば「自社ホームページからの売上5億円を達成する」、利益率であれば「前年比130%を達成する」など、客観的かつ定量的な指標を定めましょう。
KPIの設定
KGIを設定したのちにKPIを定めます。KPIも具体的な数値で設定することが大切です。「KGIを達成するために必要なプロセスには何があるのか?」を考えたうえで、細分化して明確にしていきます。
たとえば、先ほどの「自社ホームページからの売上5億円を達成する」というKGIであれば、「検索エンジンからの流入数を30%増やす」「SNSのフォロワーを10万人増やす」「自社アプリのダウンロード数を20%増やす」などのKPIが考えられるかもしれません。
あくまでもKPIは、各企業の状況に基づいて設定しますが、「KPIをひとつずつクリアすることによってKGIの達成につながる」という相関関係は共通しています。
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KPIツリーの作成
KPIの設定後にKPIツリーを作成します。KPIツリーとは、樹形図型のフレームワークです。最終目標のKGIを頂点とし、中間目標のKPIを枝葉と捉えて作成します。
KPIツリーによってKGIとの関係性を可視化できるため、従業員一人ひとりが自分の役割を認識し、ボトルネックになる問題をスムーズに気付けるというメリットがあります。
指標(KPI)設定の企業事例
ここでは、メルカリのKPI設定方法を事例として紹介します。
そもそもメルカリでは、主要な目標としてLTV(Life Time Value)を設定しているそうです。LTVとは、「顧客生涯価値」などと日本語に訳される言葉であり、1人の顧客が特定の企業にもたらすトータルの利益を指します。
「LTVをアップさせよう」としても、原因の追及ができなかったため、メルカリではLTVをKGIに設定したうえで、KPIとして分解することを試みました。しかし納得感を得られなかったため、原因を分析したところ、「ステークホルダーの熟議によって決めたいものの、時間を確保することが難しい」という結論に達したそうです。
その結果、1泊2日の合宿を行い、取締役/執行役員、プロデューサー、データサイエンティストといったステークホルダーなどを集め、納得感を確認しながら議論を進めていきました。
合宿の準備段階で「LTVの直近の傾向や簡単な分解」などを行い、実際の合宿では議論に終始し、その結果をもとにKPIのモック(試作品)を作成したという流れです。細かな部分よりも、モックの作成を優先しながら、レビューと改善を繰り返してKPIを決めた、という事例です。
出典:mercan (メルカン)|メルカリ流!納得感のあるKPIの決め方
指標(KPI)を設定する際の注意点
KPIを設定する際の注意点には何があるのでしょうか。ここでは、主な注意点を6つ紹介します。
KGIに沿った設定にする
KGIという最終目標に沿ったKPIの設定が大切です。無関係なKPIをいくつ設定しても、KGIの達成にはつながりません。
そのためには、先述したように最初にKGIを設定し、逆算して必要なフローを数値化してKPIに落とし込む作業が必要です。その後はKPIツリーを作成して可視化しながら業務を進めていきます。
数を絞り込む
KPIの数は必要最小限に絞り込むのが理想です。設定しすぎると達成が困難になるため、多くても5個程度にとどめる必要があるでしょう。従業員のモチベーションを鑑みても、KPIを絞り込むほうが達成の実感を得やすいので効果的です。
期限を設定する
KPIは期限の設定が大切です。無期限の場合、いつまでも手付かずの状態となり、達成できないリスクが高くなります。「今やらなくてもいいか…」という思いが根底にあると、他のタスクを優先し、つい放置してしまうものです。
また、「いつまでに何を行ったのか」という進捗状況を測定するためにも、期限の設定は重要といえます。
責任者を明確にする
KPIを設定する際は「誰が責任を担うのか」を明確にすることが大切です。複数のKPIを設定している場合、全てを1人で管理することは現実的ではありません。KPIそれぞれに責任者を設けることにより、スムーズな改善策や意思決定が可能になります。
達成可能な内容にする
あまりにも目標が高すぎると、従業員は取り組む前から「無理かもしれない…」と弱気な気持ちになるものです。といって低すぎる目標は簡単にクリアできてしまうため、高すぎず低すぎず、適度なKPIの設定が重要といえます。
数値化して設定する
KPIは数値による測定と分析が大切です。仮に数値化されていなければ、進捗状況を正確に把握できません。「目標である20件の資料請求に対して、現在の問い合わせ数は13件」といったように、数値による具体的な管理がポイントです。
指標(KPI)を上手に設定して成果につなげよう
指標とは、判断や評価を行う際に基準となる目印です。ビジネスシーンにおける指標はKPIと呼ばれており、「業務における目標達成度」を示します。
KPIを設定するには、最終目標であるKGIを定める必要があります。具体的には、業務プロセスの分析、KGIの設定、KPIの設定、KPIツリーの作成という順序で進めていきます。
なお、KPIを設定する主な注意点には、KGIに沿った設定、数の絞り込み、期限設定、責任者の明確化、達成可能な内容、数値化設定の6つがあります。
上記を踏まえたうえで指標(KPI)を設定してみてください。
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