日本の国際競争力低下が懸念されるなか、注目を集めているのがアントレプレナーシップを持つ人材です。斬新な発想力で市場を切り拓き、社内で重要な存在となるアントレプレナーの重要性が増す背景にはどんなものがあるのでしょうか。
本記事では、アントレプレナーの意味やその重要性がます背景、またアントレプレナーシップを持つ人の特徴などについて解説します。
アントレプレナーとは?
「アントレプレナー(entrepreneur)」とは、「事業を起こす人」を意味する言葉です。フランス語の「entrepreneur」が語源で、元々は「仲買人」「貿易商」などを指していましたが、次第に「起業家」「実業家」などの意味合いで広く使われるようになります。
アントレプレナーは単なる経営者とは異なり、「ゼロから事業を起こす人=創業者」という意味合いが強く、斬新なアイデアを用いて市場を切り開いている人のことです。また、そこから転じて「市場や社会で重要な役割を担っている人」という意味でも使われています。
似た言葉に「イントレプレナー」がありますが、こちらは「社内で新規事業を立ち上げる人」を指します。企業から支援を受けながら新たなビジネスを始める点がアントレプレナーとの違いです。
アントレプレナーの重要性が増している背景
近年、チャレンジ精神や創造性などをもとに、変革を行うアントレプレナーの重要性が高まっているといえます。ここでは、その背景について見ていきましょう。
日本的経営が維持できなくなっている
従来の日本的雇用システムには、年功序列や終身雇用などの特徴がありました。しかし、近年そのシステムが崩壊しつつあり、成果主義やジョブ型雇用への移行など、各人の高いスキルやキャリアアップのための自発的な行動などが求められる傾向にあります。
今後は企業が価値を感じられない人材は解雇される可能性もあるなど、受け身で働くことがリスクとなり得るでしょう。
ビジネス競争に打ち勝つためには人材育成が鍵となるという考えから、経済産業省も「経営競争力強化に向けた人材マネジメント研究会」を立ち上げるなど人材育成に注力しています。そのようななか、新たなアイデアをもとに自ら事業を生み出すアントレプレナーの存在が求められています。
国際競争力の低下
IMD(国際経営開発研究所)が作成する「世界競争力年鑑(World Competitiveness Yearbook)」には、日本企業の国際競争力低下が顕著に示されています。日本の競争力総合順位は63カ国・地域中34位となっており、アジア・太平洋地域でも14カ国・地域中10位につけています。
特に日本の弱点といえるのが「財政」「生産性・効率性」「経営プラクティス」の項目で、改善傾向が見られないという現状です。なかでも、企業の意思決定の迅速さや機会と脅威への対応力、起業家精神などを判断する「経営プラクティス」は最下位の63位となっており、日本の大きな課題といえるでしょう。
日本企業では経営者の指示に従い、長時間労働も厭わない働き方が主流でしたが、変化の激しい時代にはそのような働き方では国際競争力を落とす一方です。そのため、自ら考えて行動する アントレプレナーが注目されるようになりました。
出典:三菱総合研究所|IMD「世界競争力年鑑2022」からみる日本の競争力 第1回:データ解説編
デジタル技術の発達
昨今、AIやIoT、ブロックチェーンなどデジタル技術分野における大きな変化が起こっており、ビジネスの環境も変容しつつあります。また、生産性向上やBCPの充実などのメリットを期待し、ビジネスの世界でもDX推進が重要視されているといった現状です。
そのようななか、新たな事業の創出を行う人材が求められており、企業内においても先進技術の舵取りや推進できる人材が求められています。
さらに、消費者のニーズが多様化したことによって商品・サービスのライフサイクルが短くなっていることからも、ビジネス創出に、よりスピードが求められていることがわかります。そのような状況が、変化の波にうまく対応し、率先して舵取りができるアントレプレナーが必要とされる背景といえるでしょう。
会社員にも必要なアントレプレナーシップとは?
「アントレプレナーシップ(entrepreneurship)」とは、「アントレプレナー」に状態や性質、地位、能力、技能などを意味する接尾語「ship(シップ)」を加えた言葉で「起業家精神」などと訳されます。アントレプレナーシップは行動全体と定義されることもあれば、姿勢ととらえられる場合もあります。
上からの指示を待つ社員が増えると危機的状況の際にも打開策が見つけられず、ビジネスを継続できなくなる企業も増えるでしょう。将来を見据えながら考え、行動できるアントレプレナーシップを持つ社員を増やすことは、企業にとって大きなメリットとなります。
アントレプレナーシップのある人材を採用するメリット
ここでは、アントレプレナーシップのある人材を企業が採用するメリットについて解説します。
多角的に事業を展開できる
アントレプレナーシップのある人材を採用することで、企業は新しいビジネスを展開できる可能性が高まります。既存の事業にとらわれず、顧客のさまざまなニーズに対応できる広い視野を持って行動できるようになるはずです。
経済や社会情勢が目まぐるしく変化する時代において、多角的に事業を展開できるのは大きな強みとなります。幅広い商品・サービスを生み出すことで、新規顧客の獲得も期待できます。新規事業の立ち上げがフットワーク軽く行えることは、企業にとって大きなメリットです。
社内に積極性を持った人材が増える
アントレプレナーシップを持つ人材は自ら積極的に仕事を作り出そうとし、さらに周囲を巻き込むことで社内に活発な空気が生まれます。そのような環境では、オリジナリティのあるアイデアが生まれたり、意見の交換が活発になったりしやすいでしょう。
アントレプレナーは周囲にポジティブな影響を与えるため、積極性の高い社員が育つ可能性が高まります。社員一人ひとりが自発的に考え動いて力を発揮することは、企業全体の成長にもつながります。
アントレプレナーシップを持つ人の特徴
ここからは、アントレプレナーシップを持つ人の特徴について解説します。採用の際の判断基準ともなるので、ぜひ参考にしてください。
強いリーダシップがある
アントレプレナーに欠かせないのが強いリーダーシップです。新商品の開発や新規事業の創出など、目標に向かって他のメンバーを巻き込んでいく能力は不可欠といえます。また、周囲にポジティブな影響を与えるリーダーとしてチーム全体をマネジメントしていく力や、どんな場面でも責任が取れる精神力も必要です。
目標に向けたプランを立て、進行を管理・修正するチームリーダーとしての力が求められるでしょう。
発想力・企画力がある
変化の激しい時代において、既存の考え方にとらわれず、柔軟で独創的な発想を持つことは企業の成長に不可欠です。アントレプレナーにはオリジナリティのあるアイデアを生み出すことはもちろん、経営資源をいかに有効活用しながら行動できるかといった視点も必要でしょう。
成功している競合他社の真似をするのではなく、独自性のある発想力・企画力で社会を変革するという考え方を持つ人が「アントレプレナーシップを持つ人材」といえます。
コミュニケーション能力が高い
アントレプレナーにはコミュケーション能力が高い人が多く見られます。人と積極的に関わることで新しいアイデアを生み出す機会が増えるため、社内では所属部署以外のメンバーとも関わり、また社外でも自ら率先して話しかけるなどのスキルが必要です。
周りとのネットワークを広げていくためには、誠実なコミュニケーションを重ねて信頼を得ることが必要になります。また、周囲を惹きつけるプレゼン力を駆使し、共感の輪を広げていけるのもアントレプレナーシップを持つ人材の特徴です。
ポジティブ思考
アントレプレナーには、常にポジティブに物事をとらえられる思考が必要です。新規事業を起こす際には不安や恐れといったネガティブな感情が現れることが多いものの、リスクに対して悲観的になると何も行動が起こせなくなります。
とはいえ、自分の能力やスキルを過信するのは危険です。現実を見据えたうえで、最適な解決策を選び取っていける力が求められます。
目的達成への意欲・行動力がある
アントレプレナーとは、さまざまなリスクや困難を乗り越えながら目的を遂行していく人です。目的達成のためには強い意志や行動力が必須となります。既存ビジネスを覆す情熱と行動力があれば、時にぶつかるリスクにも対応できるはずです。
ただし、情熱が先行すると独りよがりになってしまう可能性も高くなります。アントレプレナーシップを持つ人材は、周囲をうまく巻き込みながら適切なビジネスモデルを構築するスキルも必要になるでしょう。
アントレプレナーシップを活かせる企業の特徴
たとえアントレプレナーシップを持つ人材を採用できたとしても、企業側の準備が整っていなければうまく機能しないでしょう。ここでは、アントレプレナーシップを活かせる企業の特徴を3つ紹介します。
社内の風通しが良い
いくら独創的なアイデアを持つ人材がいても、それらを発表する場がなければ世に出ることはありません。アントレプレナーシップを活かすためには社員が自由に発言しやすい、風通しの良い企業であることが必須です。新しいことにチャレンジしやすく、目標達成に向けて協力し合える環境づくりが重要になります。
前例がないことを否定しない
既存の考え方に固執してしまうと、新しいビジネスモデルを展開させるのは難しくなります。一見、荒唐無稽に見えるアイデアであっても、前例がないことを理由に否定するのはNGです。企業全体が既存の考え方から抜け出せなければ、新たなビジネスチャンスを逃してしまう可能性が高くなります。
企業内に定着している常識を払拭し、常に新しい考え方に耳を傾けて「どうやって実現するか」を社内で考えることが大切です。つまり、アントレプレナーシップを活かせる企業風土が必要になるといえます。
新規事業のアイディアを募る制度がある
制約にとらわれることなく積極的に挑戦できる企業風土があればこそ、アントレプレナーシップは発揮されやすくなります。例えば、新規事業のアイデアを募る制度を設けるのも対策の一つです。そのような制度があれば社員も声を上げやすく、チームビルディングも活性化するでしょう。
また、米国の大手化学メーカー3Mには「15%カルチャー」があり、勤務時間の15%を自分の好きな研究にテーマに使えます。この試みからヒット商品の「ポストイット」が生まれたというのは有名な話です。このように、社員が行動しやすい環境を準備することは企業にとって必要です。
アントレプレナーシップを持つ人材の採用を検討してみよう
昨今、かつてないスピードでグローバル化やデジタル化が進んでいます。企業が競争に勝つためには既存の方法を踏襲するのではなく、新しい発想が必要になるでしょう。新たな視点で事業を見直し、顧客のニーズを満たすアイデアを出し続けることが欠かせません。
そのようななか、企業にとって今後ますますアントレプレナーシップを持つ人材の存在が重要になるでしょう。自ら考えて行動できる人材は他の社員にも良い影響を及ぼし、企業全体が成長するために不可欠な存在です。
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