BPaaSとは?SaaS・BPOとの違い、メリット・デメリットや活用事例など紹介

近年、ITテクノロジーの急速な進化により業務プロセスの効率化がますます加速しています。今注目されているのはBPaaS(Business Process as a Service)という新たなアプローチ方法で、クラウド上で業務プロセスをアウトソーシングすることでコスト削減や効率向上を図るというサービスです。

本記事では、BPaaSの概要をはじめ、SaaSやBPOとの違い、メリット・デメリット、実際の活用事例について解説します。

BPaaSとは

BPaaS(Business Process as a Service)は、業務プロセスのアウトソーシングを、クラウドを使用して提供されるサービスのことを指します。これは、企業が自社内で行っていた様々な業務プロセスを外部の企業によって提供されるクラウド上のサービスに委託することです。

BPaaSでは、さまざまな業務プロセスが、オンライン上でのデータ処理、アプリケーションの実行、自動化されたタスクの実行など、クラウド上のインフラストラクチャと機能を利用して効率的に実行されます。これにより、企業はリソースを集中的に管理し、コストと時間を節約できるのです。

一般的なBPaaSの例としては、給与計算、人事管理、顧客サービス、財務処理、調達管理などの業務プロセスが挙げられます。また、BPaaSは、RPA、AIの活用などより高度な機能や機能拡張を提供する場合もあります。

BPaaSとSaaS、BPOとの違い

BPaaS(Business Process as a Service)、SaaS(Software as a Service)、そしてBPO(Business Process Outsourcing)は、いずれも業務プロセスの管理やサービス提供に関連する用語ですが、それぞれ異なる意味を持っています。

SaaSはソフトウェアをパッケージ商品ではなく、インターネットを通じて提供するサービスです。ソフトウェアをハードウェアにインストールせずに、基本的にサブスクリプションベースで利用できます。クラウドサービスとも呼ばれ、BSaaSを提供する方法としては同じですが、アウトソーシングサービスは含まれません。SaaSは単にソフトウェアを提供するのに対して、BPaaSは複雑な業務プロセスをアウトソーシングで提供し、より包括的なサービスを提供する点が異なります。

BPOとはビジネスプロセスアウトソーシングの略で、企業が特定の業務プロセスを外部の企業に委託することを指します。BPOは、BPaaSとは異なり、クラウドではなく、主にオフショアやオンショアのサービスプロバイダーによって提供されることが一般的です。
BPaaSは、SaaSとBPOとを組み合わせたサービスと言えます。

BPaaSのメリット

それでは、BPaaSのメリットとは何なのでしょうか。ここでは、BPaaSの主なメリットを4つ紹介します。

コスト削減と変更の容易さ

BPaaSは、企業が業務プロセスを外部の企業に委託するため、自社でインフラストラクチャを構築する必要がありません。これにより、運用コストを削減し、投資やリソースの浪費を最小限に抑えることができます。また、必要に応じてプロセスのスケーリングや変更が容易であり、ビジネスの成長に柔軟に対応することが可能です。

専門的なサービス提供

BPaaSのサービス提供会社は、いくつかの業務プロセスに特化しています。これにより、企業は専門的な知識やスキルを持つ専門家による高品質なサービスを受けることができます。プロセスの効率化や品質向上に焦点を当てることで、企業は競争力を向上させることができます。

リソースの集中

BPaaSによって特定の業務プロセスを外部に委託することで、企業は自社リソースをより重要な業務に集中できます。例えば、戦略的なプロジェクトや新製品の開発にリソースを注ぎ込むことで、市場での地位を強化したり、イノベーションを推進することができます。

スピードと効率の向上

BPaaSでは特定の業務プロセスが専門的に提供されるため、自社でインフラストラクチャを構築するよりも実施のスピードが向上します。プロバイダーは標準化された手順を持ち、経験に基づいたベストプラクティスを採用しています。このため、企業は迅速なサービス提供と効率的なプロセスの実行を享受することができます。また、プロセスの自動化やAIの活用により、エラーのリスクを低減し、生産性を向上させることも可能です。

BPaaSのデメリット

BPaaSにはもちろんデメリットもあります。ここでは、BPaaSの主なデメリットを4つ紹介します。

セキュリティリスクの上昇

ビジネスプロセスを外部の企業に委託することで、企業の重要なデータや機密情報が第三者にアクセスされる可能性が生じます。信頼性のある委託業者の選定や適切なセキュリティ対策の実施が不可欠ですが、完全にリスクを排除することは難しい場合もあります。

依存度の増加

BPaaSを利用すると、特定の業務プロセスが外部の企業に依存することになります。万一、委託業者に障害が発生したり、サービスが中断したりすると、企業の業務に影響を及ぼす可能性があります。適切なサービスレベル契約(SLA)の締結やバックアッププランの構築が大切です。

制御とカスタマイズの制限

外部の企業にプロセスを委託することで、業務プロセスの制御やカスタマイズの柔軟性を失う場合があります。委託業者が提供する標準化されたプロセスに合わせなければならない場合、企業固有のニーズや要件に対応しづらくなることがあります。

データの移行とロックイン

BPaaSを利用して業務プロセスを運用している場合、将来的に別の委託業者やインフラストラクチャに移行することが難しくなる可能性があります。これによって「ロックイン」状態に陥ることがあり、委託業者の変更が困難になる場合もあります。データの移行戦略を慎重に計画し、ベンダーロックインを回避する手段を見極める必要があります。

BPaaSのサービス

ここでは、具体的にBPaaSのサービスにはどのようなものがあるか、いくつか紹介します。

人事管理サービス

BPaaSによる人事管理サービスでは、企業の人事関連プロセスを外部の専門的なサービスプロバイダーに委託することができます。これには、従業員の勤怠管理、給与計算、人事データの管理、福利厚生管理、採用プロセスの支援などが含まれます。企業は人事業務に関する定型的な手続きをアウトソースすることで、効率的な人事運営を実現し、人材戦略に集中できるようになります。

調達管理サービス

調達管理サービスは、企業の調達プロセスを効率化し、コスト削減を実現するために利用されます。外部の委託業者がサプライヤーの選定、価格交渉、契約管理、物流の調整などの調達活動を担当します。これにより、企業は調達業務のプロセス改善とコスト最適化に専念でき、戦略的な調達の実現をサポートします。

財務・会計サービス

BPaaSを利用した財務・会計サービスでは、企業の財務業務を外部の企業に委託します。経理処理、資金管理、財務諸表の作成、税務申告など、企業の財務部門が担当する重要な業務を委託業者が代行します。結果、企業は財務プロセスの効率化とコスト削減を実現し、財務戦略の策定に重点を置くことができます。

これらのBPaaSのサービスは、企業が専門的な知識やスキルを持つ外部のサービスプロバイダーに業務プロセスを委託することで、業務の効率化と競争力の向上を実現するのに役立ちます。企業は自社のニーズと目標に合わせて、適切なBPaaSサービスを選択することが重要です。

BPaaSの導入に向いている企業

ここでは、BPaaSの導入に向いている企業の特徴を3つ紹介します。

ITリソースが限られている企業

BPaaSは、ITインフラやシステムの運用を外部のサービスプロバイダーに委託することができます。これにより、自社のITリソースが限られている企業でも、ITの専門知識を必要とせずに、高度なITサービスを利用することが可能になります。これは、特に中小企業やスタートアップにとって有益で、大規模なIT部門を持つことなく、最新のテクノロジーを活用してビジネスを運営することができます。また、ITリソースをより戦略的なプロジェクトに集中させることができます。

専門的なサービスの活用が重要な企業

特定の業務プロセスが高度な専門性を要求する場合、BPaaSの導入は特に有益です。例えば、複雑な税務申告や人事労務管理、医療業界の患者データの処理などは専門知識が必要であり、企業内でこれらの業務を完遂するのは困難です。BPaaSを利用することで、外部の専門的な企業に業務を委託することができます。その結果、企業は高度な専門性を持つ委託業者によって業務が遂行されるため、品質向上とリスク低減を実現できます。また、自社のリソースをより重要な業務に集中させることで、コアビジネスの成長に注力できる利点もあります。

グローバル展開が進む企業

海外進出やグローバルな事業展開を行っている企業は、地域ごとに異なる法律や規制、文化に対応する必要があります。BPaaSの導入は、グローバル展開において重要なサポートを提供。クラウドベースのプロセス管理によって、企業は地域専門のサービスプロバイダーや専門家と連携することができます。地域ごとの事情に詳しいプロバイダーが現地の法律や規制に準拠したサービスを提供し、文化的な違いを考慮しながら効果的なビジネス戦略を立案できます。これにより、適切なコンプライアンス対応とリスク管理の実現が期待できるでしょう。

BPaaSを提供する企業

ここでは、実際にBPaaSを提供する企業を2社紹介します。

Chatwork

Chatwork株式会社は、ビジネスプロセスをサービスとして提供するBPaaS(Business Process as a Service)を活用したオンラインアシスタントサービス「Chatwork アシスタント」を正式にリリースしました。このサービスを利用することで、ユーザーは業務のアウトソーシングを行うことができます。ITの知識が少ない企業でも、専任サポートが業務の構築・運用を代行するため、間接的にSaaSの利用メリットを享受することが可能です。

経理・労務・総務などバックオフィス関連の業務を中心に、様々な業務アウトソーシングサービスを提供します。ビジネスチャット「Chatwork」のユーザーは、「Chatwork」上から「Chatwork アシスタント」への業務依頼が可能です。BPaaSは、ビジネスプロセスそのものを提供するサービスで、複数のSaaSやITツールを利用して業務効率化を図ります。これにより、ITツールへの知識が少ない企業でも、間接的にSaaSを利用でき、その恩恵を受けられます。

トランスコスモス

トランスコスモスは、ITと業務BPOを組み合わせたBPaaS(Business Process as a Service)モデルを提供しています。基幹業務DX(Digital Transformation)による業務最適化と業務BPOも合わせたBPaaSとして提供し、システム標準仕様での導入によるコスト削減を実現します。ビジネス競争力の向上と業務効率化・最適化を実現するサービスです。

具体的には、経理、人事、販売、購買などのバックオフィス業務からシステム導入・運用のIT領域まで、BPO全体の課題を解決します。また、ハイパーオートメーション化によるビジネス競争力の向上、システム+運用パッケージでの業務効率化・最適化、SAP/COMPANY/ConcurなどのERPパッケージ導入~ロールアウト~運用定着を促進します。

高習熟度教育により、システム操作でミスが発生しやすい箇所や業務における新旧システムの相違点など、ポイントとなる部分をデジタルで完結します。さらに、連携処理の自動化により、様々な技術・ツールを活用して複数の業務を連携・自動化させることにより、シナジー効果を最大化し、業務のベストプラクティスを提供します。

参考:Chatwork「Chatwork、SaaSの進化版・BPaaSの仕組みを使った「Chatwork アシスタント」を正式リリース」

transcosmos「Business Smart Sourcing Services業務スマートソーシングサービス」

BPaaSの活用事例

日東電工は、BPaaSを活用して経理、人事総務、調達、ロジスティクスの業務プロセスをアウトソーシングし、コアとなる事業に経営資源を再配置することで、ビジネス基盤の強化に取り組みました。グループ各社でバラバラだったシステムを統一し、クラウドのシステムを活用してバックオフィスの業務を改革したことで、生産性を向上し、経営の敏捷性を高めました。

具体的には、コスト削減を図るために調達方法の統一や業務プロセスの標準化、可視化を実施。日本IBMが提供するBPaaSを活用して、経費精算、間接材の調達などシステムを導入し、中国でもアウトソーシングを稼働させました。今後はAIやRPAなどの新しいテクノロジーを採用する予定で、このBPaaSプロジェクトは、さらなる業務効率化の基盤作りとして重要な意味を持っています。

日本経済新聞「BPOのその先へ」https://ps.nikkei.com/ibm18/ibm1803bpaas/

BPaaSを適切に活用しよう

BPaaSは、ビジネスプロセスのアウトソーシングを通じて、コスト削減や効率向上を実現する新たなアプローチです。専門的なサービス提供やリソースの集中、スピードと効率の向上が魅力的なメリットとして挙げられます。

一方で、セキュリティリスクや依存度の増加、制御とカスタマイズの制限、データの移行とロックインといったデメリットにも注意が必要です。日東電工の事例を通じて、実際の活用事例も紹介しました。企業は自社のニーズと目標に基づいて、BPaaSの導入を検討することで、効率的なビジネス運営に向けた一歩を踏み出すことができるでしょう。

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