ダイバーシティ経営とは、女性や高齢者・外国人など、多様な人材の能力を最大限に発揮できるような機会を提供することによってイノベーションを生み出し、ビジネスの成果へとつなげていく経営戦略です。
安倍内閣の働き方改革においても、ダイバーシティ経営は注目すべき取り組みとなっています。
今回は、経済産業省が「平成28年度 新・ダイバーシティ経営企業100選」として表彰したなかの3社にスポットを当てて、取り組み内容などを解説していきます。
経済産業省「ダイバーシティ経営企業100選」とは
「ダイバーシティ経営企業100選」とは、経済産業省が2012年度より実施している取り組みであり、ダイバーシティ経営に取り組む企業を全国的に拡大させていくことを目的として始められました。
多様な人材の登用と能力の活用を価値創造につなげている企業を経済産業大臣が表彰することにより、社会的に注目を集まり、日本企業の競争力に新たな側面が加わることが期待されています。
表彰制度の開始から5年間で205社が選ばれました。2015年度からは、今後の広がりが期待される分野として重点テーマを設定された「新・ダイバーシティ経営企業100選」と名称を変更して実施されています。
ダイバーシティ経営を実践している企業のうち、女性比率・外国人比率が高い企業は実際に優れた業績を達成する傾向がみられており、さまざまな人材の優れた能力を生かすことが、いかに重要かを表しているとも言えるでしょう。
引用:経済産業省
ダイバーシティ企業の事例
佐川印刷株式会社
1947年に愛媛県で創業された老舗印刷会社です。現在全従業員の約45%を女性が占めていますが、長年にわたり女性が活躍できる風土が基盤にありました。
長時間労働の是正を切り口にIoT (Internet of Thingsモノのインターネット) による業務の効率化や生産性向上が進められ、社員のモチベーションの向上に努めています。
既存インターネットショップの成長やフリーペーパー発刊など、多様な事業展開を実現しています。
株式会社ホテル佐勘
1933年に法人化されましたが、元々は平安時代から続く老舗温泉旅館です。1988年に入社した現社長は、その年に企業理念である「心の原点に触れるおもてなしの心」を改めて打ち出し、積極的な若手リーダー登用など大幅な構造改革を行ってきました。
その後新たな人事評価制度の導入、マルチタスクによる業務効率化、経営側の目線を持つ人材育成など斬新な企業改革を行い、「全社員経営」が着実に浸透しつつあります。
2016年には、同社の旅館「佐勘」が旅館として初めて「G7財務大臣中央銀行総裁会議」の開催場所となりました。高質なサービスが評価された結果と言えます。
株式会社キャリアプランニング
1986年に派遣事業からスタートしました。全従業員の6割強を女性が占め、2016年に産休・育休・時短制度を利用した社員は全女性従業員のうち20%にのぼります。
2014年には、特例子会社「株式会社キャプラ・ウィッシュ」を立ち上げ、チャレンジド社員9名によって同社の事務業を請け負う形で業務をスタートしました。
その後も、抜本的な働き方改革や女性社員のキャリア構築支援策を実施していることなどが、子育てしながら働く女性社員の増加、若手女性社員のモチベーション向上につながっています。
特例子会社への円滑な業務移管と連携もあり、女性・チャレンジド社員双方が尊重して成長しあえる風土が育っています。
ダイバーシティ企業の人事評価制度とは
3社の注目すべき取り組みとしては、ダイバーシティ経営の足掛かりとして、社員の声を直接聞こうとする取り組み・人事評価制度に対する取り組みが行われている点が挙げられます。
佐川印刷株式会社では、2007年の職場風土改革委員会(現「社員満足向上委員会」)における女性社員の発言が企業改革の発端となっており、女性のキャリアが途切れることのない制度改革や女性管理職の登用などが進められていきました。
正社員・パート・短時間勤務などを行き来できる制度を整えた上で、評価制度の公平性も担保しています。
株式会社ホテル佐勘は、2003年に整備した人事評価制度によって公平で透明性の高い評価を行っています。
「理想の社員像」を表す項目として挙げられた35項目について年に2回自己評価を行い、それに対する上司評価・面談の実施を義務化しています。
注目すべきは、上長の部下への評価基準に「前向きな失敗は最大限評価すること」という一文があり、若手社員の積極的なチャレンジが生まれやすい環境を整えている点です。
株式会社キャリアプランニングは、改革の足掛かりとして2013年に社員満足度調査を実施しています。
さらに2014年には、多様化する社員それぞれが働きやすい職場を作るためのプロジェクトチーム「Re-Vision」を設置しました。
性別や役職や雇用形態を問わずに集められた従業員間で積極的な提案が行われ、案として出た「風土改善」や「時間外削減施策」における取り組みが、その後の働き方改革として全社的な施策につながったと言えます。
ダイバーシティ経営の推進によって企業競争力の強化を図る
経済のグローバル化や少子高齢化に伴い、現状のままでいけば、労働人口は減少の一途をたどるでしょう。
労働力減少を食い止め、さまざまな人材を発掘して優れた能力を最大限発揮させることが、今後の企業発展を目指すためには重要な課題になると言えます。
ダイバーシティ経営を推進していくことは、今後の企業成長力・競争力を強化するために必要不可欠でしょう。
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