ボーナスの支給は企業に勤めるビジネスマンにとっての大きなメリットのうちの一つです。
夏や冬のボーナスを楽しみにされている方も多いのではないでしょうか。ここでは、ボーナスの控除についてや、額面と手取りの計算方法(シミュレーション)を解説します。手取りボーナスの計算方法を理解しておきましょう。
目次
ボーナス (賞与) を計算する必要性
ビジネスマンの年収に対するボーナスの割合は意外と高く、生活のなかでも重要な位置を占めています。ボーナスは通常、額面からさまざまな控除が引かれます。将来設計のための貯蓄やローンの返済をする方は多いのではないでしょうか。
ボーナスを見込んで、支払い計画やレジャー計画を立てるケースも多いはず。そのため、ボーナス金額を計算しておくことは重要です。
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ボーナス(賞与)とは?定義をおさらい
ボーナスの計算方法を見る前に、まずはボーナスの概要、決算賞与との違いなどについて簡単におさらいします。
ボーナス(賞与)とは
ボーナスとは、毎月支払われる給与とは別に臨時で支給される金銭を指すものです。一般的には夏(6月もしくは7月)と冬(12月)で2回支給されます。
ただし、あくまでも臨時であり、支払い時期や支払い回数が決められているわけではありません。企業によっては年1回の場合もあれば、4回、5回に分けて支給される場合もあります。
決算賞与とは
ボーナスに似た賞与としてあるのが決算賞与です。その名が示すように決算時期に業績がよく黒字になった場合に支給されます。
決算賞与は決算月に支給されるため年一回が基本です。法人税として社会に還元するのではなく、自社の利益に貢献した社員に還元しようという節税対策の側面もあります。
なお、ボーナスの額は一部、業績に連動している場合もありますが、給与1ヵ月や2ヵ月分といった基本給連動型賞与が一般的です。これに対し、決算賞与は原則として黒字額によって支給額が決まります。
ボーナス(賞与)は必ずしも支給しなくて良い
ボーナスも決算賞与も法律で定められているわけではないため、企業に支給義務はありません。また、社内規定でボーナスや決算賞与を支給するとなっている場合でも、景気低迷による業績悪化により、支給額の減額や賞与カットといった可能性もありえます。
ボーナスを支給しない場合、企業側は計算する手間が省けるメリットがありますが、従業員側のモチベーションが落ちてしまう可能性があるのはデメリットといえるでしょう。
企業が支給するボーナスは3種類!それぞれの特徴を解説
企業が支給するボーナスは主に以下の3種類です。
- 基本給に応じた賞与
- 業績に応じた賞与
- 決算賞与
支給されるボーナスの条件により受け取れる金額が異なる場合があります。
それぞれ、どのように支給される仕組みなのか確認していきましょう。
基本給に応じた賞与
基本給に応じた賞与で受け取れる金額は以下のとおりです。
「基本給×給与◯ヵ月分」
多くの企業では基本給に応じた賞与で、夏季と冬季の年2回支給されるのが一般的です。
業績に応じた賞与
業績に応じた賞与では、名前のとおり、会社の成績に応じて賞与が変動する仕組みです。そのため、業績がよければ賞与を多く受け取れますが、業績が悪い場合には賞与が減額になってしまうため注意が必要です。
また、在籍年数が加味されないケースがあるため、若くても業績次第で賞与を多く受け取れる可能性があります。
しかし、業績に応じた賞与の仕組みは、日本国内で採用している企業は多くありません。
決算賞与
決算賞与は、決算期の前後に支給される特別な賞与であり、会社の業績によって支給額が変動します。利益が十分でない場合は、支給が減額されたり、見送られたりすることもあります。
また、従業員にとって臨時収入が得られることで仕事への意欲が高まる効果があり、企業にとっても節税対策が可能です。
なお、決算賞与は法律により、事業年度終了後1ヶ月以内の支給と定められています。
ボーナス(賞与)からは社会保険料と所得税が控除される
ボーナスは月給の2ヶ月分、といったように、明確に賞与規定を理解していれば、おおまかなボーナス額が想定できるはずです。
ただし、想定した金額がそのまま口座に振り込まれるわけではありません。
ボーナスは社会保険料と所得税が控除された金額が口座に振り込まれるのです。控除される社会保険料と所得税の計算方法を理解しておくことが必要です。
ボーナス(賞与)の額面と手取りの計算方法
ボーナスについては、額面と手取りを理解しておく必要があります。
額面と手取りの違い
会社の給与規定で計算された金額が「額面」といわれ、社会保険料と所得税が控除されて実際に口座へ振り込まれる金額が「手取り」です。
ボーナスから控除される社会保険料とは?
社会保険料には、健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、労災保険料がありますが、企業が全額負担する労災保険料以外が、ボーナスから控除される社会保険料になります。
社会保険料の負担額と計算方法
社会保険料は、収入にあわせて負担額が決まります。計算は収入額に応じた料率をかけて算出されます。額面額から社会保険料を引いた額(課税対象額)に所得税率を掛けたものが所得税となります。
所得税率は、前月給与の課税対象額と扶養親族の数をもとに国税庁の「賞与に関する源泉徴収税額の算出率の表」から確認できます。
そして、額面から社会保険料と所得税を引いたものが手取りの金額となります。
ボーナス(賞与)の手取り計算シミュレーション
例えば、前月の給与が30万円、ボーナスが2ヵ月分で60万円、独身(32歳)で扶養0人のケースで手取り金額をシミュレーションしてみましょう。
前月の給与 | 30万円 |
ボーナス(賞与) | 60万円(2ヶ月分) |
家族構成 | 独身・扶養家族無し |
健康保険料
まず健康保険料を計算します。
健康保険料=ボーナスの金額×健康保険料率÷2
=60万円×9.90%÷2
=2万9,700円
※健康保険料率は協会けんぽの平成31年度東京都保険料額表を使用しています。
健康保険料は企業が半分負担してくれますので最後に2で割ります。
厚生年金保険料
次に厚生年金保険料を計算します。
厚生年金保険料=ボーナスの金額×厚生年金保険料率÷2
=60万円×18.3%÷2
=5万4,900円
※厚生保険料率は協会けんぽの平成31年度東京都保険料額表を使用しています。厚生返金保険料は企業が半分負担してくれますので最後に2で割ります。
雇用保険料
最後に雇用保険料を計算します。
雇用保険料=ボーナスの金額×雇用保険料率
=60万円×3/1000
=1,800円
※雇用保険料率は厚生省の平成31年度雇用保険料率を使用しています。
社会保険料の合計額
社会保険料の合計額は、
健康保険料+厚生年金保険料+雇用保険料
=2万9,700円+5万4,900円+1,800円
=8万6,400円
所得税
所得税はボーナスの金額から社会保険料の合計額を引いた額に源泉徴収税率を掛けたものになります。
所得税(源泉徴収税額)=(ボーナスの金額-社会保険料の合計額)×源泉徴収税率
=(60万円-8万6,400円)×6.126%
=3万1,463円
※源泉徴収税率は国税庁の「賞与に関する源泉徴収税額の算出率の表」を使用しています。前月の給与30万円から社会保険料4万3,200円を引いた25万6,800円から該当の税率を当てはめます。
ボーナス(賞与)の手取り額
ボーナスの手取り額は、前述の通りボーナスの金額から社会保険料と所得税(源泉徴収税額)を引いた額になります。
60万円-(8万6,400円+3万1,463円)=48万2,137円
このシミュレーションでは、ボーナスの額面が60万円で手取り額は48万2,137円になることが分かります。
ボーナスの平均支給額は?給与何ヶ月分?
厚生労働省の「毎月勤労統計調査」によると、令和4年の平均賞与額は以下のとおりです。
- 夏季賞与(6月~8月):389,331円
- 年末賞与(11月~翌1月):392,975円
一方で、毎月の給与は約26万7,000円とされ、ボーナスの支給額は基本給の1〜2ヶ月分が一般的な水準と考えられます。
上記のデータをもとに、志望企業の待遇を客観的に比較するためにも、平均的な支給額を把握しておくことが重要です。
ボーナス(賞与)の査定期間と評価
ボーナスの基本的な計算方法は共通ですが、細かい査定方法や査定期間は会社ごとにことなります。自身のボーナスがどのくらい出るのか計算していくためには、会社のボーナス規定を就業規則でしっかりと確認し、理解しておくことが大切です。
査定期間は各企業ごとに違う
ボーナスを計算する際に注意したいのが、査定期間です。
査定期間は、個々の企業で独自に設定しています。
特に、実績評価が査定額に反映する人事評価制度の場合は、査定期間によってボーナスの金額は大きく違ってきます。就業規則で事前に確認し、見込んでいた金額と実際の金額の差に慌ててしまうことがないようにしましょう。
民間企業におけるボーナス
民間企業におけるボーナスの詳細は、各企業の就業規則などで規定されています。
ボーナスの支給の有無は自由
ボーナスの支給は法律で決まっているわけではなく、支給の有無は各企業が自由に決めることができます。
ただし、支給される場合は、就業規則に支給時期、算定期間、算定基準などを記載する必要があります。まずは、会社の就業規則を確認して規定を理解しておきましょう。
営業職のボーナスは実績ベースの場合も
営業職ならば、目標に対する遂行率や実績そのものがベースになってボーナスが計算される場合があります。
月例給に職位ごとに分けられた乗率をかけて算出する制度や、評価項目の達成度によって各個人の支給額が変動する人事評価制度を採用している企業もあります。
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民間企業と公務員のボーナス(賞与)の違い
公務員の期末・勤勉手当支給日は、年2回で6月30日と12月10日と決められています。ちなみに令和6年4月1日現在、一般職員(国家公務員)の期末・勤勉手当は、6月も12月も2.25ヵ月分(期末手当1.2ヵ月・勤勉手当0.985~2.05ヵ月)です。
参照:国家公務員の給与(令和6年版)16P|内閣官房内閣人事局
ボーナス(賞与)を計算する際の注意点
ボーナスを計算する際には、いくつかの注意点があります。特に保険料の計算や期日、支払い回数についてはしっかりと確認しておかなければなりません。ここでは、具体的な注意点について解説します。
雇用保険料の計算方法に注意
ボーナスから保険料の控除額を計算する際、健康保険料や介護保険料、厚生年金保険料は、ボーナス総支給額の1,000円未満を切り捨てた標準賞与額に保険料率を掛けて算出します。しかし、雇用保険料に関しては、ボーナスの総支給額に保険料率を掛けるため、注意が必要です。
ちなみに令和6年(2024年)4月1日から令和7年(2025年)3月31日までの雇用保険料率は次のようになっています。
事業の種類 | 雇用保険料率 |
一般事業 | 15.5/1,000(労働者負担6/1,000・事業主負担9.5/1,000) |
農林水産・清酒製造事業 | 17.5/1,000(労働者負担7/1,000・事業主負担10.5/1,000) |
建設事業 | 18.5/1,000(労働者負担7/1,000・事業主負担11.5/1,000) |
保険料や税金の期日までに必ず支払う
ボーナスを支給する場合の保険料や税金は必ず期日までに支払わなければなりません。社会保険料の場合はボーナスを支給した月の翌月末日までに年金事務所に支払います。
また、所得税の支払いは、所轄の税務署にボーナスを支給した月の翌月10日までとなっており、社会保険料の期日と異なるため注意が必要です。
退職予定者の社会保険料控除に注意
退職を予定している社員にボーナスを支払う場合、社会保険料の控除に注意する必要があります。なぜなら健康保険料や厚生年金保険料の控除対象となるのは、資格喪失の前月までに支給されたボーナス分までとなるからです。
たとえば、6月末日で退職予定の社員に対し、6月にボーナスを支給すれば、保険料控除の対象にはなりません。ただし、資格を喪失するのは退職日の翌日です。仮にボーナス支給日が6月30日だった場合は、資格喪失が7月1日となるので、控除対象となります。
ボーナスの支払い回数を確認
ボーナスの支払い回数により、保険料の取り扱いは異なります。たとえば、年に3回支給する場合、保険料はボーナスとしての保険料として取り扱うことが可能です。しかし、年4回以上支給する場合の保険料は、通常の給与として取り扱わなければなりません。そのため、回数により保険料の算出方法が異なるので注意が必要です。
計算時の端数の処理方法を確認する
税金と保険料によって計算時に端数が出た場合の処理方法が異なります。たとえば、所得税の計算で端数が出た場合は、1円未満切り捨てです。
しかし、雇用保険料の計算で、被保険者の負担額に1円未満の端数が出た場合、50銭以下は切り捨て、50銭1里以上は切り上げ(源泉控除)となっています。ただ、この決まりは厳密に定められてはあらず、労使間での合意があれば切り捨てのみでも構いません。
ボーナス(賞与)と人事評価制度
多くの企業が従業員の公平感やモチベーションアップを目指し、さまざまな人事評価制度を取り入れています。
自分が働く上で、どのような形で評価をされ、ボーナスが支給される制度が望ましいか、いま一度考えてみてはいかがでしょうか。

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