厚生労働省が2016年に実施した「職場のパワーハラスメントに関する実態調査」によると、従業員の悩み、不満、苦情、トラブルなどを受け付けるための相談窓口に寄せられる最も多いテーマは、「パワハラ」であることが報告されています。
増加傾向にあるパワハラに対し企業はどう対策を講じるべきか、パワハラの基本情報から予防、解決のための取り組みについてご紹介します。
そもそも職場のパワハラとは?
パワハラ対策を企業で導入する場合、まずは経営者や人事担当者がパワハラについてしっかりと理解を深めることが大切です。では、そもそも職場で起こるパワハラにはどのようなものが該当するのでしょうか。
パワハラの定義
厚生労働省では、職場のパワハラについて、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」と定義づけています。
「職場内の優位性」には、職務上の地位のみならず、人間関係や経験、専門知識など、様々な優位性が含まれます。つまり、上司・部下の間で起こるもののほかに、先輩・後輩、同僚同士、さらに部下から上司へ行われるものについてもパワハラに認定されるということです。
パワハラの6類型
厚生労働省では、裁判例や個別労働関係紛争処理事案に基づき、下記の6類型をパワハラの典型例として提示しています。 (ただし、①~⑥は職場のパワハラに該当する可能性のある行為全てをカバーしているものではありません。下記に該当しない行為についてもパワハラに認定される可能性があります。)
①身体的な攻撃
殴る、蹴る、物を投げるなど体に危害を加え、威嚇し、従わせようとする行為
②精神的な攻撃
地位を脅かすような言葉、侮辱、暴言、名誉毀損に当たる言葉など、業務を遂行するのに不必要な言葉を使用し、精神的な苦痛を与える行為
③人間関係からの切り離し
仲間外れや無視など個人を疎外する行為
④過大な要求
業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことを強制する行為、仕事の妨害をする行為
⑤過小な要求
業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を与え続ける行為、仕事を与えない行為
⑥個の侵害
不適切な発言などにより個人のプライバシーを侵害する行為
パワハラが及ぼす負の影響
職場におけるパワハラは、被害を受けた当事者はもちろん、企業にも多くの負の影響をもたらします。
被害者に与える影響
パワハラは、被害者の労働意欲を低下させる、本来の能力が発揮できなくなるなどの弊害をもたらします。また、怒りや不安などのストレス、コミュニケーションの減少から被害者の心の健康を害することもあります。
企業に与える影響
パワハラは企業にも下記のような大きな損失をもたらします。
・優秀な人材の流出などの人的損失
・職場環境の悪化
・作業効率の悪化
・企業イメージの悪化
・裁判や損害賠償請求などによる直接的損失
企業が取り組むべきパワハラ対策
職場のパワハラは適切な対応により、予防・解決が可能です。厚生労働省の「パワーハラスメント対策導入マニュアル」では、パワハラ対策の基本的な枠組みについて下記の7つの取り組みを挙げています。
パワハラ予防編
①トップメッセージ
パワハラは全従業員が取り組むべき重要課題であることを明確に発信する
②ルールを決める
パワハラに関するルールや罰則を具体的、明確にする
③実態を把握する
社内アンケートなどでパワハラの実態をいち早く把握する
④教育する
全従業員に向けた定期的な研修を実施する
⑤周知する
ルールや相談窓口などパワハラに関する取り組みの計画的かつ継続的な周知
パワハラ解決編
①相談や解決の場を設置する
従業員が相談しやすい相談窓口を社内外に設置する
②再発を防止する
加害者が同様の問題を起こさない、また、新たな加害者が発生しないような効果的な再発防止策の策定、実施に取り組む
安心して働ける職場作りのために
企業が積極的にパワハラの予防、解決に取り組むことにより、職場環境が変わる、職場のコミュニケーションが活性化する、会社への信頼感が高まるなど のプラスの効果が見られることが報告されています。
経営者や人事担当者のみならず、組織全体でパワハラへの取り組みを行っていくことで、従業員が安心して働くことができる快適な職場環境を実現させましょう。
2020年6月にパワハラ防止法が施行
大企業については 2020年6月から、中小企業については2022年4月から パワハラ防止法が施行されるます。
何をしたらパワハラに該当するのか、自社の管理職一人ひとりが定義及び概念を知っておく必要があるでしょう。
また、社内からパワハラを一掃するための、管理職の評価の仕組みも捉えておけば、万全の対策を取ることができます。
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