キャリア教育とは?伸ばすべき能力や目的、企業事例を紹介

(画像=Promo_Link/iStock)

キャリア教育は、社会との関わり方や働き方が多様化している現在において重要な取り組みです。

今回は、キャリア教育の特徴や目的、今こういった教育が求められている背景について解説します。

また、理解を深めるためにキャリア教育の企業事例も紹介しましょう。

キャリア教育とは?

キャリア教育とは、個人のキャリア発達を目指し、一人ひとりの状況に合わせて、必要な能力を育てる教育です。

中央教育審議会によると、キャリア教育は「一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育」と定義されています。

キャリア教育の特徴は、社会の中での役割や働くことを明確に意識している点です。

例えば、義務教育は「一般的・基礎的な、職業的・専門的でない教育」と定義されています。

しかし、キャリア教育は、職業、家庭、地域といったさまざまな社会との関わりの中で人は何らかの役割を持っているとした上で、その中で自分が果たす役割の価値や関わり方を選択できるように、能力や態度を育てるとしているのです。

キャリア教育の目的

キャリア教育は、子どもや若者が、それぞれのキャリアを形成する手助けをするために、それに必要な力を育成することが目的です。

文部科学省の資料によると、そもそもキャリアとは、人が他者や社会との関わりの中で一定の役割を果たし、関係性を見出していく積み重ねだと定義されています。

人・社会の関わりとは、働くことや家庭などさまざまな形がありますが、そこで自分の役割を果たし、自らの力で選択するには一定の能力や態度が欠かせません。

そこで、一人ひとりにふさわしいキャリアを形成していくために必要な力を身につけさせることがキャリア教育の目的です。

キャリア教育が求められる背景

現在、キャリア教育が求められる背景にはどのようなものがあるのでしょうか。

ここでは文部科学省が示す環境の変化にも触れつつ、子どもを取り巻く課題を紹介します。

子どもたちが抱える課題

現在、子どもたちは、さまざまな課題を抱えています。

例えば、自立の遅れです。

現代の子どもは、環境の変化などによって身体的には早熟傾向であるものの、精神的、社会的な自立は遅れている傾向があるとされています。

その結果、全人的な発達のバランスが悪く、人間関係をうまく構築できない、自己肯定感を持てない、自分で意思決定ができない、将来に希望が持てないといった子どもの増加が指摘されているのです。

生活体験・社会体験等の機会の喪失も挙げられます。

スマートフォンが普及し幼い頃からインターネット環境に触れる機会が増えたり、勉強や習い事に時間を割かなければならなかったりすることで、相対的に外部体験の機会が減少していると見られるのです。

社会環境の変化

また、社会環境の変化も挙げられます。

例えば就職です。

従来は新規学卒者が就職する際は、新卒一括採用が主流であり、ポテンシャルを見込んだ採用方法が当たり前でした。

しかし、現在は通年採用に代表されるように、採用方法の多様化が進んでいます。

また、デジタル産業が台頭していく中、新卒採用であってもポテンシャルよりもITスキルなどの専門性を要求する企業も増加しているのです。

また、雇用システムの変化も挙げられます。

従来は新卒一括採用、年功序列型キャリア、終身雇用が一般的な共通認識でした。

しかし、デジタル技術を中心とした産業構造の変化やグローバリゼーションの拡大などによって、雇用システムは流動化しています。

若年層の資質をめぐる課題

さらに、若年層の資質をめぐる課題もあります。

社会人や職業人として活躍するには、能力や態度といった基礎的な資質が必要です。

しかし、自立性の遅れがあると先述したように、現在の子どもはそういった資質の発達が遅れていると指摘されています。

つまり、社会の一員としての経験や意識も不足しているという傾向なのです。

キャリア教育で伸ばすべき「基礎的・汎用的能力」とは?

中央教育審議会では、キャリア教育で伸ばすべき能力として4つの「基礎的・汎用的能力」を定めています。

ここでは、それらを順番に紹介します。

人間関係形成・社会形成能力

人間関係形成に関する能力とは、相互理解的なコミュニケーションを行う能力です。

具体的には、多様な他者の意見に耳を傾けて状況や考え方を理解する能力や、自分の考えを正確に伝えられる能力を指します。

これは、年齢、性別、価値観、文化といったさまざまな立場の相手と関わっていく中では、特に求められる能力だと言えるでしょう。

社会形成能力とは、社会の中で自分の役割を果たしていく能力を指します。

具体的には、環境の中で自分の置かれている立場を把握し、他者と協力しながら社会に参加していく能力や態度が求められるのです。

自己理解・自己管理能力

自己理解・自己管理能力は、自分の可能性について肯定的に捉え、主体的に行動する能力です。

先述の通り、現代の子どもは自己肯定感が低かったり、将来に希望を持てなかったりする特徴が多くみられます。

そこで、自己の潜在的な可能性を理解し、動機付けをすることで前向きな行動に結びつけることが重要だとされているのです。

また、自己管理においては環境の変化が激しく多様性が重視されている社会の中で、自らの思考や感情を律したり、自己研鑽を続けたりする力が重要視されています。

課題対応能力

「課題対応能力」とは、さまざまな課題を自ら発見・分析し、計画を立てて解決できる能力です。

環境の変化によって、仕事やキャリアの絶対的な答えが見えづらい状況において、自らが行うべきことを発見して意欲的に取り組む態度や能力はますます必要とされていくでしょう。

特にデジタル産業が力を強めている中では、従来の思考や枠組みにとらわれることなく、主体的な態度で課題に取り組む力が重要です。

キャリアプランニング能力

キャリアプランニング能力とは、状況を適切に判断し、働く意義も自分なりに理解しながら、主体的にキャリアを形成する能力です。

キャリアは職業、家庭、地域などとの関わりの中で形成していくものであるため、計画を立てて情報を取捨選択し、能動的に取り組む力は生涯にわたって必要とされます。

キャリア教育と職業教育との違い

職業教育とは、「一定又は特定の職業に従事するために必要な知識、技能、能力や態度を育てる教育」です。

社会の中で何らかの役割を果たすには、基礎的な能力や意欲はもちろんのこと、その役割に応じて専門性や知識、スキルなどが求められます。

そういった能力全般を身につけるためのものが職業教育です。

一方、キャリア教育は、特定の職業で働くことだけを目的とするわけではなく、社会のさまざまな役割を果たし社会との多様な関わり方を選択できる能力を身につけることが目的とされています。

そのため、キャリア教育は、特定の分野や職業を念頭にした職業教育とは異なり、一生涯にわたって活用できる汎用スキルの獲得を目指すという特徴があるのです。

企業のキャリア教育事例

キャリア教育は、学校や公的機関だけでなく企業が行なっている事例もあります。

定番の種類は、大学生向けのインターンや、一般的に受け入れている会社見学などです。

インターンは、実際に大学生などを一定の期間働かせることによって、その企業で働くことのイメージを明確化させ、キャリア形成に役立てさせる狙いがあります。

会社見学とは、就職活動中の大学生だけでなく、小学生、中学生といった幅広い対象者に対しても開放するケースがあり、働くことや会社に対する理解を深めてもらうことが大きな目的です。

他にも、企業が学校などに出向き、出前授業を実施するといったものもあります。

テーマは、社会学習の一貫として企業の事業領域に関する内容を講義するものや、ユニバーサルデザインに関するものなどさまざまです。

パナソニック株式会社「学び支援プログラム」

パナソニックは「学び支援プログラム」というキャリア教育を実施しており、その取り組みが経済産業省「第10回キャリア教育アワード大企業の部」で優秀賞を受賞しました。

該当のプログラムは3種類で、1つ目は映像機材を貸し出して小学生から高校生の映像制作を支援する「キッド・ウィットネス・ニュース」、2つ目は中学生向けに教材提供や出前授業によって働くことへの価値観の醸成を支援する「私の行き方発見プログラム」、3つ目はオリンピックとパラリンピックを題材にしてさまざまな社会課題について学び、その解決方法を考えるプログラムです。

株式会社日本HP「学生向けプログラム」

日本HPは「プロジェクトマーズエデュケーションリーグジェイピー」というキャリア教育で、経済産業省主催の第9回「キャリア教育アワード」で経済産業大臣賞を受賞しました。

これは、火星での暮らしをテーマに、高校生、大学生、大学院生、高等専門学校生、専門学生などが学校と学年を超えてディスカッション、アイデア創出、プレゼンテーションをするというものです。

参加者はこのプログラムを通して、多様な人々との交流を行い、宇宙への興味だけでなく、自己の可能性を発見して将来の生き方への関心や意欲を高めることに成功したとレポートされています。

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