企業活動において、人材育成は永遠の課題であり、人事担当者も常に頭を悩ませている問題です。
優秀な人材を確保することがますます難しくなる昨今の状況において、社員の問題解決力や戦略策定力を引き上げる手段として、「メタ認知」という能力が企業から注目されています。
本記事では、メタ認知の意味や、メタ認知能力の高い人・低い人の特徴、トレーニング方法を解説します。
メタ認知とは?
自分を客観的に認識し、適切な目標設定や課題解決ができるスキルとして注目される「メタ認知」。
具体的に、どのような能力を指すのでしょうか。
メタ認知の定義
メタ認知とは、「自分が物事を認知している状態を、客観的に認知している状態」を指します。
メタというのは「より高次の」という言葉で、認知とは、思考や知覚、行動のことをいいます。
つまり、現在自分自身が行っている行動や思考そのものを認知の対象として、自分自身を客観的に認識する能力をメタ認知能力とよびます。
メタ認知能力が身に付いていると、自分自身の思考や行動を正しく理解することができます。
セルフコントロールやセルフモニタリングが容易になることで、問題解決や課題達成、戦略策定を自分自身で行う力を伸ばすことができます。
ビジネスだけでなく、教育現場でも育成すべき能力として、注目を集めています。
メタ認知の歴史
メタ認知は、1976年にアメリカの心理学者であるジョン・H・フラベルが定義した概念「メタ記憶」が基本となっています。
その後、A・L・ブラウンによってメタの概念の研究がさらに進み、“理解への理解”である「メタ理解」や、“注意を注意する”という「メタ注意」といった言葉に発展します。
メタという概念の起源となっているのが、古代ギリシャの哲学者・ソクラテスが提唱した「無知の知」という概念です。
その意味は「知らないことを自覚している」ということで、哲学の出発点と言われている、有名な考え方です。
この「自分は知らないことを認知している」という考えが、メタ認知につながっています。
メタ認知的技能とメタ認知的知識
メタ認知は、大きく「メタ認知的技能」と「メタ認知的知識」の2つに分けられます。
それぞれの概要を説明していきます。
メタ認知的技能
メタ認知的技能は、さらに「モニタリング」と「コントロール」に分けられます。
メタ認知的モニタリング
自分の認知行動を監視すること。
認知は正常か、適切な戦略がとれているかといった情報を、認知から取得する。
メタ認知的コントロール
自分の認知活動を制御すること。
モニタリングで得た情報とメタ認知的知識から、行動や戦略の改善を試みる。
例えば、突然経験のない仕事を任されてしまい、どう対処すればいいか困っているとします。
このとき、「自分には経験がない、でも、部長なら経験があるからわかるかもしれない」と認知・発見することがモニタリングで、「一人で解決しようとせず、まず部長に聞いてみよう」と戦略を策定・実施するのがコントロールです。
メタ認知的技能が身に付いていると、経験のない問題に対面した時でも、適切な解決方法を模索できるようになります。
メタ認知的知識
メタ認知的知識は、メタ認知に関わる知識全般を指す言葉で、「人」「課題」「方略」に関わる知識の3つに分けられます。
人に関する知識
自分の「人としての認知特性」に関する知識のことです。
例えば、「自分はマルチタスクをこなすのが苦手だ」「疲労が溜まっていると認知力が弱まる」といったものが一般的な認知特性です。
他にも「暗記が得意だ」「集中力が高い」といったことも、特殊な認知特性にあたります。
課題に関する知識
経験から得られた課題そのものに関する知識を指します。
「長時間手作業しているとミスが出やすい」「抽象的なテーマを扱う議論は結論が曖昧になりがち」など、課題そのものが抱えている特性のことです
方略に関する知識
課題を解決するための具体的な方法についての知識です。
「提案書には図説を入れたほうが伝わりやすい」「視覚情報と結び付けたほうが記憶に残りやすい」など、経験から増やせる解決策の要素です。
メタ認知能力が高い人と低い人の特徴
メタ認知の基本的な知識について解説してきましたが、メタ認知能力が高い人には一体どのような特徴があるのでしょうか。
それぞれの特徴を見ていきます。
メタ認知が高い人の特徴
メタ認知能力が高いと、行動に移す前に、なぜそうするのか、この方法が本当に適切かといった、その行動の具体的な目的を設定するようになります。
そのため、「なんとなく」とか「気分的に」といった明確な指針の無い行動が減り、達成に向けた適切な行動をとれるのです。
常に自身の現状を把握しているので、次のステージに向けての成長意欲が高く、自信を持った人が多いのも特徴です。
メタ認知が低い人の特徴
一方、メタ認知能力が低い人は、場当たり的で感情に任せた行動をとってしまいがちです。
自分の現状を俯瞰していないので、相手のことを考えずに一方的な言動をとってしまったり、思い込みが激しいといった点も特徴です。
そのため、仕事で与えられた課題を解決するのに時間がかかってしまったり、相手の信用を失ってしまうことも。
達成感を上手く得られないため、自己肯定感が低かったり、成長意欲が低くなってしまう人も多く見られます。
メタ認知能力を高めるメリットとデメリット
メタ認知能力によって自己分析力やコントロール力があがるとされていますが、社員にメタ認知能力を身に付けさせることで、企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
メリットとデメリットをそれぞれ見ていきます。
メタ認知能力を高めるメリット
社員がメタ認知能力を身に付けると、業務に関する課題を適切に達成するための解決力や戦略策定力が向上します。
また、社員同士の円滑なコミュニケーションにも有効です。
自分と相手の考え方のギャップを発見し、それを埋めるための適切な方法を見出すことができるためです。
他部署や取引先とスムーズに打ち合わせを進めたり、状況を俯瞰して判断を下せるようになることで、効率的に業務を遂行できるだけでなく、社員自身の働きがいも向上します。
メタ認知能力を高めるデメリット
一方、ネタ認知能力を高めることには、集中しすぎてしまう、思考に頭を使いすぎてしまうというデメリットもあります。
どんな状況でも俯瞰して解決策を模索できることは利点ですが、常に頭を働かせている状態に陥ってしまい、思考力を疲弊させてしまうことも。
そうなったときは、一度一人で考えることをやめて、外に意識を向けてみるといいでしょう。
信頼できる上司や同僚の話を聞いてみるなど、一人だけで解決しようとしない姿勢を持つことを心がけてください。
メタ認知能力のトレーニング方法
企業でも取り入れると多くのメリットがあるメタ認知能力。
では、どうすれば身に付けることができるのか?その具体的なトレーニング方法を紹介します。
セルフモニタリング
メタ認知能力を高めるために最も重要なのは、自分を客観的・俯瞰的に見る能力を養うことです。
特に、自分の短所や欠点だと認識している部分と向き合う必要があります。
そのために、まずは、実生活で起こった問題やトラブルなどを思い返して「あのとき、自分はなぜそうしてしまったのか」といった状況や理由を分析してみましょう。
そこから、どうすれば解決できたのか、次はどう行動するかといった行動指針を考えます。
これを繰り返すことで、少しずつモニタリング力を高めていきます。
フリーライティング
ライティングセラピーとも呼ばれる方法で、自分が今抱えている悩みや不安、気になっている課題や思考などを紙に書き出して可視化するものです。
10~20分ほど、できるだけ手を止めず、頭のなかにある思考をとにかく全て紙に書き出していきます。
自身の思考を客観視できるだけでなく、精神を安定させる効果もあるとされています。
瞑想
集中力を高める方法としても注目されているのが瞑想です。
まずは、上半身の力を抜き、正座やあぐらなど、自分がリラックスできる体勢で背筋を伸ばして座ります。
次に、ゆっくり呼吸をして息を整え、目を閉じるか半目にして心を整えます。心を整えるとは、この瞬間の自分自身に意識を集中させることです。
呼吸音や肌で感じる空気の温度、日の光や周りの静寂といったものに意識を向けることで、刺激を感じている自分自身を認識します。
初心者は、1分程度の短い瞑想でも十分効果があるとされています。
メタ認知のトレーニングに役立つおすすめ書籍
さらにメタ認知能力の向上を図りたい方には、トレーニングに役立つ書籍がおすすめ。より実践的にメタ認知能力向上に役立てられるでしょう。ここでは3冊紹介します。
「メタ思考トレーニング 」(PHPビジネス新書)
物事をひとつ上の視点から考えるメタ思考を実践するために、具体的な思考法「Why型思考」と「アナロジー思考」を紹介。トレーニングのための演習問題が多数用意されています。
「仕事に役立つマインドマップ―眠っている脳が目覚めるレッスン」(ダイヤモンド社)
中心となる概念から枝状に分岐してつながりを表すマインドマップ。脳内の思考の広がり地図化するテクニックが紹介された書籍です。図式にしつながりが把握できるためメタ認知向上が期待できます。
「メタ認知で〈学ぶ力〉を高める: 認知心理学が解き明かす効果的学習法」(北大路書房)
メタ認知の概念から学習法、科学的根拠を紹介。メタ認知がどういうものなのかという点を重点的に勉強したい人によいでしょう。
メタ認知能力の向上とともに人事評価制度の見直しを
メタ認知能力を習得することは、業務における課題を適切に解決するだけでなく、社員自身が達成感や、やりがいを感じることにも繋がります。
そのため、人事担当者の方はぜひ取り入れておきたい能力です。
簡単な研修を導入するだけでもいいですし、専門家の講習やトレーニングをつけるのも選択肢のひとつです。
もちろん、社内で新しい取り組みを進める場合には、研修体制や評価制度の取り決めも必要です。あわせて人事評価制度の見直しを進めることも忘れないようにしましょう。
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