新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大をうけて、2020年4月、「緊急事態宣言」が発令されました。
この発令によって、外出自粛や休校、大規模イベント休止等の協力要請がなされましたが、こういった緊急事態宣言の際に、企業はどのような対応が求められるのでしょうか。
この記事では、緊急事態宣言を受けて各企業が行っている対応や、企業が準備すべきことについて解説します。
東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県を対象に、2021年1月8日から再び発令されるか注目が集まるいま、改めて前回発令時の動きを再確認し、対策を検討してはいかがでしょうか。
コロナショックで発令された緊急事態宣言とは?
2020年4月7日、首相は感染拡大が進んでいる東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都道府県に対し、法律に基づく「緊急事態宣言」を発令し、16日には対象地域を全国に拡大することを決定しました。
期間は、当初5月6日までとされていましたが、政府は期間を延長することを検討。最長1か月程度とする方向で準備を進め、5月1日の専門家会議において一定の方針が示された後、4日に延長が正式決定しました。
また、最初に緊急事態宣言がなされた7都府県と、北海道、茨城県、石川県、岐阜県、愛知県、京都府の6つの道府県をあわせた13都道府県については、特に重点的に感染対策を行っていく必要があるとして、「特定警戒都道府県」と位置づけられました。
緊急事態宣言の発令は、政府が国民に対して外出自粛等の協力を要請する法的根拠となるものです。今回の発表とともに、密閉、密集、密接のいわゆる「3つの密」の環境を避け、人と人の接触を7割~8割削減することを呼びかけています。
政府は今回の緊急事態宣言について、海外のような「ロックダウン(都市封鎖)」を実施するものではなく、感染拡大防止のための「要請」に留まると説明しています。
※2020年5月25日夜、政府は対策本部を開き、東京等首都圏の1都3県と、北海道の緊急事態宣言を解除することを決め、安倍総理大臣が全都道府県の解除宣言を行いました。
過去に世界で発生したパンデミック
今回の新型コロナウイルスの世界的な蔓延をうけて、WHOは2020年3月11日に「パンデミック(世界的大流行)」を宣言しています。
人類の歴史を振り返っても、世界では過去に何度もパンデミックは発生しており、歴史を変えるほどの影響を及ぼしてきました。
最も古いものでは、紀元前のエジプトのミイラから天然痘の治療痕跡が見つかっており、古くから人類の感染症との戦いが始まっていたことがわかっています。
有名な感染症としては、14世紀に2500万人もの死者を出した「ペスト」の大流行や、1918年に4000万人以上の死者を出した「スペイン風邪」があげられます。
感染症の原因となる病原体が明らかになり、対処法が確立された19世紀後半以降、感染症による死亡者は激減しています。
しかし、2002年の「SARS」をはじめとする新興感染症が問題となるなど、現在進行形で新しい感染症の発症と、それに対する研究・対策が講じられています。
緊急事態宣言発令後の企業の対応
今回の緊急事態宣言発令をうけて、日本の企業ではどのような対応が行われたのでしょうか。事例を紹介していきます。
日産自動車
大手自動車メーカーの日産自動車では、予防ガイドラインの設定や在宅勤務実施といった対策を講じています。
メーカーとして生産工場を抱えていることから、事業継続のために出社がやむを得ない業種を特定して出社人数を最小限に抑え、それ以外の社員は在宅勤務にするとしています。
出社する社員については、公共交通機関の利用を可能な限り避けたり、ソーシャルディスタンス(社会的距離)を維持して業務にあたるとしています。
三菱マテリアル
電子製品の製造やエネルギー事業をてがける三菱マテリアルは、感染が拡大し始めた3月2日の時点で、都内の本社地区オフィスに勤務する全従業員に対して、原則的に在宅勤務にすると発表しています。
業務の都合上、やむなく出社する社員に対しては、時差勤務やフレックス勤務を活用するそうです。また、緊急事態宣言の発令後も、在宅勤務の対応を続けながら事業継続をするとしました。
エイチ・ツー・オー リテイリング株式会社
阪急百貨店を運営するエイチ・ツー・オー リテイリングでは、緊急事態宣言の期間内となる5月6日まで、百貨店店舗の一部について臨時休業の実施を決定しました。
阪急うめだ本店をはじめとする各百貨店では、平日は食品売り場を除き閉店させ、土日は全館休業となります。また、グループ会社が経営するスーパーについては営業を継続するとしています。
西武ホールディングス
鉄道やホテル、野球チームを運営する西武ホールディングスは、緊急事態宣言前から従業員のテレワークや時差出勤を実施してきました。
しかし、7都道府県が所在するグループ会社においては、出勤人員の更なる絞り込みやイベント開催の中止、および不要不急の対面での打合せの禁止等、さらなる取り組みを表明しています。
また、ホテルについては当面の間営業中止、鉄道やバスは一部を除いて通常通り運行されるそうです。
大庄
「庄や」「やるき茶屋」など居酒屋店を全国展開する大庄グループでは、5月6日まで一部店舗を除き直営店を臨時休業すると発表しました。
デパートやホテルなど施設側の営業要請がある店舗やランチ需要がある店舗などの合計十数店舗は当面、昼間のみ営業するそうです。
また、緊急事態宣言前から臨時休業していた首都圏のカラオケ店についても、対象を全国に広げて休業にするとしています。
テリロジー
ネットワークセキュリティを提供するテリロジーグループは、役員や委託社員を含めた全社員について、原則在宅勤務を実施しています。
また、出社を要する業務に関しては、可能な限りでオフピーク通勤を推奨するとしました。
緊急事態宣言で働き方を見直す企業も
各社の対応を見ると、緊急事態宣言を機にテレワークや時差出勤を実施している企業が多いことがわかります。
テレワークについては、対策の早い企業では感染が広まり始めた3月初旬から実施している企業も散見されています。
テレワークは、朝の通勤混雑解消や働き方改革、地方企業の活性化などを目的として、各省庁や地方自治体によって、以前から普及活動や助成が進められてきました。
そして、新型コロナウイルス感染防止のための有効な手段として、緊急事態宣言を契機に導入する企業が急増しました。
テレワークは通勤時間の削減やプライベートとの両立など、従業員にとってもメリットの多い働き方ですが、急な対応で準備不十分だった企業も多く、現場からは戸惑いの声も多く聞かれています。
テレワークに必要な環境・人事部が準備すべきこと
首都圏が中心だった緊急事態宣言が全国に拡大されたことを受け、今後はテレワークを実施する企業が全国に広まることが予想されます。
人事部は、テレワークに先駆けてどのような対策を取り入れるべきなのでしょうか。
就業規則の整備
真っ先に取り組まなければいけないのが、テレワークに関する就業規則の整備です。
出社のない状況で就業時間をどう規定するのか、業務を許可する場所はどうするか、光熱費やネット代などの費用負担についてなど、テレワークでは通常のオフィス勤務とは異なる取り決めが必要になります。
必要なルールは事前に整え、社員に周知しておきましょう。
ツールの導入
テレワークを経験した社員からよく聞かれるのが、「コミュニケーションがとりづらい」「必要な情報にアクセスできず、業務がはかどらない」など、業務体制の整備不足によるストレスです。
気軽な声掛けができるチャットツールや「ZOOM」などのビデオ会議システム、「BOX」のような情報共有のためのクラウドサービスなど、オフィスと変わらない作業環境を整えておきましょう。
セキュリティ対策
企業情報を社外に持ち出す必要のあるテレワークでは、万全なセキュリティ対策が求められます。
会社のPCで安全性の低いサイトにアクセスする、情報の入ったPCやデータ記録媒体を紛失するなど、様々なリスクが考えられます。
社員にセキュリティ教育を徹底するとともに、セキュリティソフトを導入するなどテクノロジー面での対策も必要になります。
人事評価基準の策定
人事担当者が最も苦慮するのが、人事評価の問題です。
オフィス業務は社員の働きぶりを対面で確認することができますが、姿の見えないテレワークでどのように業務を評価するのか、新たな基準を策定しなければなりません。
また、人事評価の結果や内容を、自宅にいる社員にスムーズに共有できる体制作りも必須です。
クラウド上で評価を共有できる人事評価システムを事前に導入しておくと、テレワーク移行後も通常勤務と変わらない環境で人事評価を行うことができます。
人事評価もシステム導入でテレワークに対応を
今回の緊急事態宣言では、人と人の接触を7~8割削減することを目標に、特定の娯楽施設には休業要請が出されるなどの措置がなされています。
この要請を受けて、首都圏の企業を中心に、多くの企業がテレワークを実施しています。緊急事態宣言が全国に対象を広げたことから、テレワークの需要も今後全国に広まるものと考えられます。
テレワークを導入するうえで、人事担当者が一番に着手するべきなのが人事評価基準の整備です。在宅の社員ともスムーズに評価を共有できる、人事評価システムの導入の検討から準備を進めてみてはいかがでしょうか。
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