新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的な感染拡大の影響で、各国がそれぞれ感染防止対策に追われています。
日本同様に緊急事態宣言が発令される他にも、移動をより厳しく制限する「ロックダウン」が実施する国が散見されます。
もしロックダウンが実施された場合、企業にはどのような影響が出るのでしょうか。今回は、ロックダウンの概要や、海外の事例、今から企業が準備すべきことなどを解説していきます。
ロックダウンとは?
「ロックダウン(lockdown)」とは、都市封鎖を意味する言葉です。
政府の専門家会議では、ロックダウンを「数週間の間、都市を封鎖したり、強制的な外出禁止の措置や生活必需品以外の店舗閉鎖などを行う、強硬な措置」と定義しています。
日本では、3月23日に東京都知事がロックダウンの可能性について言及したことから、この言葉が一気にトレンドワードとなり、国民の関心を集めました。
今回、最初にロックダウンを行ったのは、新型コロナウイルスの発生源とされている中国・武漢で、住民の市外への移動を制限しました。
他にも、急速に感染を広げているイタリアやフランス、アメリカといった欧米諸国でも、スーパーへの買い出しなどの必要不可欠な場合を除いて、外出禁止措置がとられています。(2020年4月27日時点)
緊急事態宣言との違いは?
日本では、2020年4月7日に、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県・大阪府・兵庫県・福岡県の7都道府県に対して、5月6日までの緊急事態宣言が発令されましたが、16日に対象地域が全国に拡大されました。
緊急事態宣言とは、「国民の生命や健康に著しく重大な被害を与えるおそれ」があると政府が判断した場合に、改正インフル特別措置法(新型コロナ特措法)を基に発令されます。
政府が国民に対して外出自粛や休業を要請する場合、その法的根拠が必要となりますが、その根拠となるのが緊急事態宣言です。
ロックダウンは感染防止のための「手段」ですので、緊急事態宣言とは性質が異なります。
海外では、緊急事態宣言を基に、罰則を伴う外出“禁止”等の強力な行動制限を実施していますが、日本の緊急事態宣言には、そこまで強力な強制力はなく、あくまでも「要請」しか行えないことになっています。
そのため、日本では今後もロックダウンほど強力な措置がとられる可能性は低いとの見方が有力です。
海外のロックダウンの事例
現在までに中国、イタリア、フランス、イギリス、アメリカなど、多数の国でロックダウンが実施されており、世界各国で影響をうけた人口は30億人以上といわれています。
実際にロックダウンが行われている海外では、どのような対応がとられているのでしょうか。事例を紹介します。
アメリカ
連邦政府であるアメリカでは、各州の個別判断に基づき、外出禁止令を発令しています。全50ある州のうち、ニューヨークやシリコンバレー、ハワイを含む17州で外出禁止令が出され、840万人が対象となっています。
より厳しい措置を導入しているカリフォルニア州では、自宅以外で他人と集会を行うことを違法とし、レストランやバー、ジムなどの施設を一律閉鎖するなど、商業活動についても厳しい制限を設けています。
逆に、ニューメキシコ州ではそれほどの強い規制は行わず、日本と同じ「自粛要請」に近い措置がとられています。
インド
中でも、特に強力な封鎖を行っているのがインドです。3月25日から3週間、国全土を封鎖して、生活必需品の調達を除く外出を禁止しています。あわせて、スーパーなど必要最低限の店舗を除いて閉鎖し、公共交通機関やタクシーの営業も停止しました。
国民の移動を厳しく制限する措置ですが、物流が滞ることで食料品の品薄状態が続くなど、混乱も目立っています。
また、飲食店従業員やタクシー運転手など大量の失業者が、親族を頼って地方に向けて移動を開始しており、かえって感染を広げているといった指摘もあがっています。
ドイツ
ドイツでは、感染者の多い一部の地域で外出制限を行っているものの、アメリカやフランスのように厳しい外出禁止令は出されていません。
ただし、家族以外の他人と3人以上で集まる集会の禁止や、私的なホームパーティの禁止、人との距離を1.5メートル以上とることなどを盛り込んだガイドラインが出されています。
ガイドライン違反者への対応は州によって異なり、中には他人と距離をとるルールに違反した場合150ユーロ(約1万8000円)の罰金を科すところもあります。
ロックダウンに備えて企業が準備すべきこと
万が一、日本でもロックダウンの様な、より厳しい外出禁止措置がとられた場合、企業はどのような対応をとるべきなのでしょうか。
海外の事例を見ても、ロックダウンが実施されると外出だけでなく、公共交通機関の運行も制限されるため、社員の出社が困難になり、事業継続に支障をきたす可能性が考えられます。そのため、経営リスクに備えてテレワークの導入体制を整える企業が急増しています。
首都圏では、緊急事態宣言が発令されていることと合わせて、都知事が事業者に対して「できるだけ自宅で仕事をして欲しい」と呼びかけており、すでに多くの企業がテレワークを開始しています。
これから全国的にさらに感染者が増加する事態に備えて、地方企業でも同様の動きが見られています。
テレワーク導入のポイント
それでは、テレワークを導入する場合のポイントや注意点について解説します。
助成金を活用しよう
現在、感染拡大防止策として、国や自治体によってテレワークが推進されていることから、テレワークを導入した企業に対して助成金が用意されています。
各省で準備されている助成金は、以下の通りです。
働き方改革の一環として在宅またはサテライトオフィスにおけるテレワークを新規に導入した中小企業事業主に対して、費用の一部を助成しています。
上記の働き方改革推進支援助成金のうち、新型コロナウイルス感染症対策を目的にテレワークに取り組んでいる事業主を支援する特例コースを設けています。1企業当たりの上限額を100万円とし、導入費用の半分が助成されます。
テレワークに適したシステムや情報セキュリティについて無料で相談できる制度です。現在は、感染症対策のため、電話・WEB通話での相談を実施しています。
中小企業・小規模事業者が、テレワークに必要なITツールを導入するための費用の一部が補助されます。
また、東京都ではテレワークのサポートとして、独自に以下の制度が用意されています。
新型コロナウイルス感染症等の拡大防止対策として、都内中堅・中小企業に対し、テレワークの導入に必要な機器やソフトウエア等の経費を助成しています。
都内の中堅・中小企業に対し、テレワークの導入・拡大を推進するため、専門のコンサルタントが訪問し、課題解決などの支援を無料で行っています。
さらに、コンサルティングを受けた企業は、「はじめてテレワーク(テレワーク導入促進整備補助金)」を利用することができます。
働き方改革の推進に向けたテレワーク環境の整備や、企業における女性の新規採用・職域拡大を目的とした設備等の整備にかかった費用の一部が助成されます。
就業規則を整備しよう
テレワークを導入する前に、まずは自社の就業規則を確認する必要があります。
企業の都合でテレワークを指示する場合や、テレワークにかかる費用を社員に支給する場合には、その旨の規定が就業規則に記載されている必要があるためです。
就業規則を新設・改定するときは、以下のポイントが重要です。
- テレワークを認める条件
- テレワークの期間
- 就業時間
- 就業を認める場所
- 情報の取り扱いルール
- テレワークで発生した費用負担に関する取り決め
- 通信費や光熱費等、手当支給に関する取り決め
テレワークのICT環境を整備しよう
自宅でも、社員がストレスを感じず、スムーズに作業を進められる環境を整備するため、ICT(情報通技術)を取り入れるべきです。
具体的には、チャットツールや「ZOOM」を代表とするビデオ会議システムなど、円滑なコミュニケーションを行うためのツールが必要です。
また、業務に必要な情報をセキュアな環境で共有するためには、クラウドサービスを利用するといいでしょう。
人事評価についても、クラウド上で管理できるツールが望ましいといえます。クラウドで評価を管理することで、社員が自宅にいながらも評価内容をタイムレスに共有でき、評価に対する満足感を高めることができます。
社員の人事評価はクラウドで一元管理
日本でロックダウンが実施される可能性は低いとされているものの、感染が拡大されている地域ではすでに休業要請が出されている業種もあり、企業にもテレワークが推奨されています。
まだ感染が広がっていない地域についても、事前の対策が求められています。
また、テレワークを実施するにあたり、多くの企業が頭を悩ませているのが人事評価です。
顔の見えない状況において適正な人事評価を行うためには、クラウドで一元管理ができるツールが便利です。さらなる外出自粛要請の強化に備えて、ぜひ検討を進めてください。
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